短編空戦小説・天空を支配す怪鳥達   作:グロキンTV_公式

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基本情報

航空機情報

固定武装:MK108 30mm機関砲 2門 装弾数合計180発
搭載兵装:R4M 55mmロケット弾 装弾数24発
型式詳細:Me 262 A-1a/R-1

搭乗員情報

操縦要員:アドルフ・F・イェーガー
所属国家:イグリア連邦共和国
所属部隊:第344邀撃飛行連隊


オペレーション

作戦内容

任務概要:領空に侵入した自由守護連合軍の敵爆撃機を全機撃墜せよ。
作戦地点:ルーム川流域
作戦呼称:前衛作戦

作戦目標

対空目標:B-17G戦略爆撃機 24機 P-40N護衛戦闘機 42機
対地目標:高射対空砲 14基

作戦参加機

Me 262 A-1a/R-1 12機 Bf 109 K-4 24機


Me 262 Schwalbe “鉄十字の燕“

午後11:00の深夜、敵味方が睨み合うルーム川は久々の静寂を迎えていた。今日は世界平和記念日、この日は絶対に戦わないという暗黙の了解がある。だから常に死を感じる最前線であるここも、不気味な程の静けさが辺り一体を包んでいた。

 

「こちら監視塔、対岸の敵に動きなし、司令部応答せよ」

「こちら司令部、監視を続行せよ」

 

日付が変わる頃、まだ敵に動きはなかった。お互いの航空基地は川から近い場所にあり、岸には大量の火砲や車両が配置されている。いつもなら1秒も暇がない程弾を撃ち合っていた。しかし、今は2日間続く世界平和記念日*1、戦士達はしばしの休息を迎えていた。が…

 

「…なんだ?」

 

後方にある航空基地に防空サイレンの音が鳴り響く。気づいたアドルフは目を覚まし、寝台から跳ね起きる。同じ部屋で寝ている同僚も次々と目を覚まし重い瞼を擦り、流れる様にパイロットスーツを着込んで次々と部屋から飛び出す。

 

向かった先は屋外にある格納庫、アドルフの向かった比較的大きく鉄筋コンクリートで作られた格納庫には、一際目を引く期待があった。通常あるはずのプロペラは無く、代わりに主翼に2つの穴の空いたポッドがある。この航空機はMe 262*2、世界で最初の実用ジェット戦闘機だ。

 

「アドルフさん、機外の機材のチェックは完了しました!あとは計器のチェックだけです!」

「助かった、出撃する!夜遅くに申し訳ない!」

「幸運を、必ず生きて帰ってきて下さいよ!」

 

ラダー*3を駆け上がり操縦席に乗り込む。整備員がラダーを片付けるとアドルフはスロットル*4を開きタキシング*5を開始、格納庫を出たところで風防を閉じる。格納庫から次々と戦闘機が、誘導路を鋼鉄の鳥は闊歩していく。

 

次々と離陸する戦闘機、アドルフの乗機の番になり、滑走路手前で停止する。深呼吸、スロットルを倒し再びエンジンに活力を与える。エンジンは再び元気を出し、唸り声を上げる。ぐんぐん加速する機体は揚力を受けて浮かび上がり、大仰角で上昇を始める。

 

 

 

 

「アドルフ合流したか!横列に編隊を組むぞ!」

 

12機のツバメは横に隊列を組んだ。爆撃機の編隊を真横から突く要領で攻撃、最大全速で離脱する一撃離脱戦法をとるつもりだ。未発達で弱点はあれど、誰にも追いつけない速さを持つこの戦闘機は爆撃機の迎撃には最高の装備品だ。

 

「全機良いか、敵の護衛機は無視しろ!俺たちの目標はあくまでも爆撃機だ!スロットルを絞るなよ!」

「目標見えました!B-17爆撃機*6のおよそ20機、護衛機多数です!」

 

全速力で飛行する迎撃部隊の正面に、サーチライトに照らされ対空砲火に晒される爆撃機の編隊が現れる。“空の要塞“という異名がつくに相応しく、爆撃機には目立った傷が一つもついていない。逆に対空砲群は護衛機に機銃掃射を受けてしまっている。このままでは基地や市街地が空爆されるのも時間の問題だ。

 

「戦闘機が見えた、P-40*7だ!」

 

連合軍の軽量主力戦闘機として活躍するP-40、最初は誰もが軽視していたが程良い機動性と攻撃力に防御力を兼ね備えた機体は発展すると段々と恐ろしい軽量級戦闘機となった。奴等の相手をするのはBf 109達。格闘戦には無理があるが高い速力と攻撃力で互角にやり合うことはできる。しかも今揃っているのは前の戦争も経験したベテランばかりだ。

 

「間も無くロケット弾の射程圏内に入ります」

「全機防御銃座に気をつけろ、最大出力でやり過ごす!」

 

遂に爆撃機が射程圏内に入る。同時に爆撃機からはこれでもかと無数の弾丸をぶち撒け、編隊の周りに弾幕を張る。奴等よりも高い高度で緩降下しながら照準に奴を捉えると、アドルフはトリガーを引く。ラックから吊り下げられたロケット弾は炎を噴き出して急速に加速、爆撃機に向かって直進する。

 

アドルフの機が発射したのは7発、内3発は見事爆撃機に命中し、被弾した2機の爆撃機は機内の爆弾と燃料に誘爆して大爆発を引き起こし、無惨にバラバラになって落下した。同じく味方の攻撃で、合計7機の爆撃機が爆散、撃墜された。後続のBf 109*8は爆撃機に一撃入れた後、編隊に絡みつきながら護衛機と爆撃機に攻撃を仕掛けている。

 

「全機、離脱したら左方向に旋回し反転しろ、もう1度攻撃を仕掛ける」

 

P-40は追いかけてくるが、高高度で600km/hちょっとしか出せない奴等とはどんどん距離を離せていってる。Me 262の最高速度は850km/h以上、向こうが追いつける訳がない。

 

そしてもう敵機が見えなくなった頃、隊長は「旋回開始」と合図を出し、僚機全機で左方向に旋回を開始した。コックピットから敵機は見えない、順調にトップスピードをなるべく維持したまま機種を爆撃機の編隊に向けていた…が

 

「敵機だ!」

「被弾した、主翼が」

 

1機との通信が爆発音と共に切れた。どうやら速度が一時的に低下する旋回中を狙うために諦めずに追跡を続けていたらしい、最後尾の2機が被弾し、内1機が撃墜された。機体の特性上急に加速はできず、この状況で有利なP-40は狙いを定めてくる。

 

「仕方ない…全機直進、奴等を振り切るぞ!」

 

隊長が指示を出し、アドルフ含む全機が直進し始める。隊長は爆撃機の編隊に絡みつく味方機に応援要請を、内7機余りが支援に駆けつけるとのこと。次に隊長は、全機散開して振り切るとの指示を出した。追いかけてきているP-40は2機、こっちは11機なので散開すれば逃げ切ることができる。

 

「アドルフ、俺についてこい」

「了解!」

 

尾翼に紅の派手な塗装をしているのは隊長のMe 262であり、先の戦争で20機以上を撃墜したエースパイロットだ。そしてこの戦争で、彼はこの戦闘機最初の撃墜記録を出した人物でもある。襲撃を仕掛けてきたP-40は彼らの2機に狙いを定めた。俺の機体の対気速度は現在540km/h、ほぼトップスピードを維持した奴等にはすぐ追いつかれてしまう。

 

「回避運動を考えるな、今は速度を稼ぐことだけを考えろ」

「了解、もし被弾したら?」

「その時は潔く機体を捨てるんだ、機体に執着するんじゃないぞ」

 

彼の言葉は正しかった。撃墜される多くのパイロットは、自分と慣れ親しんだ乗機を最後の最後まで助けようとして無理をし、隙をつかれて撃墜され、死んだ。惜しいがそれでも生きていれば次の戦闘機に乗れる、そう信じて脱出することがパイロットにとっても大事、と言うのが彼の考えだった。

 

機体はゆっくり、ゆっくりと速度を取り戻していく。570km/h…600km/h…そして遂に速度が650km/hを超えると、P-40との差が開き始めた。尾翼部分数箇所には直径1cm近い弾痕があったが、飛行には問題がない。そのままトップスピードを目指し直進していると、アドルフの機体後方で爆発音が2つ聞こえた。

 

「何が起こった?」

「こちらルーデル、救援に参った」

 

応援を要請したBf 109の部隊だ。こちらに夢中になっていたP-40は彼らの存在に気づくことができず、あっけなく撃墜されたようだ。ルーデルと名乗るパイロットは、機体が綺麗な水色一色で塗装されたBf 109 K4に乗っている。

 

「爆撃機はあと7機だけ、全部あんたたちのおかげさ!」

「護衛機は殆ど片付けたから安心しろ」

 

なんと、随伴していた彼らは既に敵の護衛戦闘機を殆ど片付けていたらしい。Bf 109と編隊を組んで敵機の方へ向かうと、護衛戦闘機らしき小型の機体の影は殆ど見えない。本当に護衛機は制圧されたらしい。

 

「早めに終わらせよう、もうすぐ味方の司令部に着いちまう」

 

アドルフ達Me 262の部隊は全てのロケット弾をB-17に向けて発射した。夜闇の星の様に輝くロケット弾は、爆撃機を一撃で破壊した。1機残らず、爆撃機は殲滅された。残った敵の護衛機も随伴していたBf 109の部隊によって全て撃墜、予想外の襲撃は犠牲を負いながらも大戦果を出し終わったのであった…

 

 

 

 

「こちら管制塔、着陸の誘導を開始する」

「アドルフ了解、ギアを展開し着陸経路に侵入する」

 

ギアを展開して着陸態勢に入る。Me 262はその高い性能と引き換えに着陸がレシプロ機に比べて少々デリケートで、離着陸には細心の注意が必要だ。アドルフは慎重に姿勢を修正し、滑走路に機体を近付ける。車輪が地面に接地すると、一度の衝撃と共に機体は減速を始めた。順調に機体は速度を落としていく。

 

滑走路の半分を過ぎた頃、機体の滑走速度は20km/hを切った。アドルフの機は左側の誘導路に侵入し、駐機するためにあの格納庫へ向かった。帰ってきたのは10機、この作戦でMe 262が2機失われた。1機はP-40に、もう1機はP-40によってダメージを負って2回目の攻撃の際に味方からの対空砲の巻き添えを受け、墜落した。Bf 109の部隊も損害は大きく、大きな戦果を挙げる事が出来たが、相応の犠牲を払うこととなった。

 

「そう落ち込むんじゃあないアドルフ、仕方ないさ、予想外の奇襲だったんだからな」

「あぁ…だが前もってわかっていたらここまでの犠牲は出なかったんだ…」

「…そういつまでもしょぼしょぼしている暇はないぞ、俺たちであいつらの仇を討ち取るんだ、わかったか?」

「…あぁ!」

 

アドルフは顔に明るさを取り戻し、整備士と共に作業を始め、他の者達も各々の作業を再開する。そう、彼らの戦いまだまだ続くのである…

*1
この架空の世界において数年前にあった、奇跡的な休戦期間を記念して設けられた交戦禁止期間

*2
1930年末から開発が開始され、第二次世界大戦末期に実戦投入が行われたナチス・ドイツのジェット戦闘機

*3
飛行機に乗り込む際にドアにかける応急的な階段

*4
エンジンに送る燃料の量を調整する、コックピットに設置されたレバー

*5
離陸するために滑走路へ向かうための移動

*6
かつてアメリカによって開発された、世界初の本格的な戦略爆撃機。高い防御力と強力な防御用銃座、そして搭載量が特徴

*7
アメリカで開発され大戦全期をかけて活躍した軽量級戦闘機

*8
ドイツによって開発されスペイン内戦から本格的に実戦参加した戦闘機、高い速度と上昇力が特徴




今回取り扱った航空機について

Me 262とは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって開発、運用された世界初のジェット機である。戦闘機タイプのシュバルベ、そして戦闘爆撃型のシュトゥルムフォーゲルも、大戦末期に戦局が絶望的なドイツで数少ない大戦果を挙げた航空機の1つである。

しかし、前例のないジェット航空機ということも相まり、運用時の整備難や離着陸での事故などがあり、長所と短所の両方を抱えた航空機であった。

今回取り扱ったMe 262 A-1a/R-1というタイプは、本作で登場したロケット弾を本格的に懸架できるように改修を施したタイプである。本作では2門の機関砲を下ろしているが、現実では最大機関砲4門、ロケット弾を24発装備することが可能である。
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