殺気と幕末とシャンフロと   作:荒ぶるバスタブ

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最近色んなゲームとか小説とかにハマっているから全然時間が足りない....

「後で」って時間先延ばしにすると自分の中の熱が失われるって経験でわかってるからどうにもできないっていう。後、パソコンがボロい....


隠忍月下 其の二

 

 走り出しながら刀を投擲のフォームで勢いよくぶん投げる。

 祭囃子と呼ばれているプレイヤーネーム「サンラク」はギョっとしつつも素早い対応で避け、逆に狂犬との間の遮蔽物としてそれを利用する。

 

「あァ!?なんだお前!?」

 

「うるせえ!邪魔だ!どけぇ!!」

 

 突如乱入してきた漁夫の利狙いでもない明らかな殺意を持っている僕に狂犬は動揺しつつも刀を向ける。そして躊躇いなく首に振るってきた刀を危なげなく体を下に反らすことで避けて、重心が前に偏っているであろう足を払う。予想通り体勢を崩した狂犬を前に最速で断首することで対処する。最速天誅でごめんな、後で辞世の句でも何でも聞いてやるから.....。

 

 ランカーである狂犬の噂は聞いていて「これはもしかするか....?」と思っていて今日初めて会ったが僕の推測通り、僕が天誅をする場合には限りなくやりやすかった。

 

 僕の「殺気が分かる」というちょっとした一芸は、殺意もといそのときの感情の大きさに比例して肌で感じる。よって僕が天誅しに行ったときに条件反射かのようにオートで最適な天誅返しをやられたら為す術もなくバック・トゥ・ザ・リスポーンだ。この世界で自分から積極天誅をしない理由はそこにあり、受けでの天誅は余裕で返せるが自分から天誅となると相手の無意識下の対応のときに僕の唯一無二といっていいこの一芸は効力を失ってしまう。幕末のプレイヤーって奇襲の対応が体に染み付いてるからなぁ......

 

 何はともあれ僕の一芸は相手が殺意マシマシで能動的なほど相性が良い(点での攻撃なら尚良し)。そのため刀一振りごとに塊の殺意が纏っている狂犬の攻撃は僕にとって脅威でもなんでもなく冷静に最速天誅できる。RTAだったら「これは素晴らしい好タイムですね~。自画自賛してしまいますよぉ」って言いそう。

 

 ちなみに狂犬の名誉のためにも言っておくが彼は決して弱い訳ではなく、ただ単に僕との相性が壊滅的に悪かったというだけだ。どのゲームにおいても迷いがないというのはそれだけで他者より優位に立つ事ができる。実際幕末でも出会ったらまず首、足を狙うといった相手に考える隙を与えない戦い方と貪欲な天誅、荒いがしっかり高いプレイスキルだけで小細工無しでランカーまで上り詰めたプレイヤーだ。イベントでは真っ先にレイドボスさんに喧嘩売るせいで順位低いけど。

 

「個人的な恨み天誅ゥ!」

 

「チッ!誰だお前!」

 

「チュートリアルで辞めていった同志たちの想いを受け継ぐ者さ……!」

 

「あの効率天誅が流行った後の被害者かよ!面倒だな」

 

長屋の屋根を駆け下りて地上に降りるサンラクに向かって刀を向ける。

 

「レビューの八割はお前のせいだ天誅ゥ!」

 

「そんなの知るか!」

 

「ランカーからクソ狙われる腹いせ天誅ゥ!」

 

「俺関係ねえだろ!」

 

「ガチャでSSR引けなかった腹いせ天誅ゥゥ!」

 

「段々雑になってきてねえか!?」

 

 天がやれと言っているため(ここ重要)心置きなく刀で斬りかかる。走りながらの天誅はこっちに分があるんだよォ!

 

 

その時、上空からの突然の殺気に対して体を翻して避ける。

 

「今度は何だ!」

 

長屋の屋根にいる、竹槍を持って此方を見据えてるプレイヤーは何故か様になっていた。

 

「二人まとめて天誅してあげるわ!」

 

 竹槍を投擲してくる「グングニルかぐや」はランキング大体15位の「上空竹槍天誅」の使い手だ。かぐやと名乗っているが、その挙動が姫ではなく猿のそれなのは割愛。ランキング上位陣であり十分強いのだが、ことイベント中においては────

 

「急に竹槍投げてくんな!危ねえじゃねえか!」

 

「殺人未遂罪天誅ゥ!」

 

僕とサンラクの意図せぬ息のあった連携天誅によって乱入してきた妖怪竹槍女は呆気なく天誅された。最速天誅記録更新か?

 

 竹林エリアを根城にするそのプレイヤーは、ことイベントにおいては強制的に竹林から出なければならない為、大幅に弱体化する。とあるイベントでランカーを撃破しようとした際は最終的に竹槍のストックが尽きた所をハイエナ狙い達に袋叩きにされたらしい。

 

 また、竹林エリアという限定した場所において最強かと聞かれたらそうではなく、過去に竹林エリアで無双して「竹林ならレイドボスさんも倒せる」と豪語した所、有志によってユラくんが竹林に誘導され案の定天誅された。ご愁傷様です。

 なお下手に善戦したせいでレイドボスさんに地の果てまで追いかけられたらしく、その姿は完全に森を追われた獣が人里に降りて射殺される様子そのものだったという。

あれは嫌な事件だったね……。

 

 そんな訳で竹林エリアではどうなっていたか分からないがイベント中の長屋エリアでは油断せずに天誅したら案外弱いのだ。

 

なにはともあれ

 

「サンラクゥ!待てやコラァ!」

 

「チィッ!面倒な奴に絡まれた!」

 

何に怒っているのか分からなくなってきているが、そこはもうノリだぜ!!!

おのれサンラクゥゥ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある程度の攻防が続いたときそれは突如として現れた。いや、僕たち二人が気づかぬ内に近づいていたというのが正しいか。

 

「………!!」

 

 斜め後ろから迫りくる金棒を間一髪で体を捻り避ける。それと同時にバックステップで「それ」から距離を取る。サンラクも同様にして僕と横に並ぶ。

 

「おい夕日とかいうプレイヤー、悪いが一時休戦だ。この状況をなんとかするぞ」

 

「そうだな、兄弟!!」

 

「……切り替え早くないか?」

 

「……まあ元々そういうノリだったし」

 

 ゲームにおいてノリとかテンションは馬鹿にできない。目標を定めるのもそうだが、テンションの上がり下がりによってパフォーマンスが大幅に変わるプレイヤーもいるほどだ。まあ一番はその方が楽しいしね!

 

 しかし今はこの状況、おそらくレイドボスと見られる三メートル程の鬼がモチーフとなっているものと、左腕がダメージエフェクトを散らしておりおよそ使い物にならないと思われる満身創痍のレイドボスさんがいる状況をなんとかしないといけない。過去、運営からの挑発状とも取れるレイドボス形式のイベントではレイドボスさん(プレイヤー)が難なく天誅していたが、ここに来て運営が本気でも出してきたか!?なんでよりによって僕の初イベントなんだよ!!

 

「...!!クソッ!」

 

 レイドボスさんを狙った攻撃を見て咄嗟に腕を掴み戦線を離脱する。おっ手裏剣危ね。サンラクは時間稼ぎのためにその鬼の相手をする。流石ブラザーだぜ!離脱しながら鬼とサンラクの立ち合いを見る。

いや、これは.....

 

 

 

 

 

 

 

 このイベントにおいて何より一番の優先事項はレイドボスを倒すことであり、僕とサンラクもそれが分かっているため見たことがないほどダメージを負ったユラくんを抱えて離脱した。そして三人で顔を見合わせる。

 

「お願い」

 

「……分かった」

 

 サンラクはユラくんの言葉を聞くなり刀で天誅した。どうせレイドボスさんがなんとかするでしょ、の精神で誰も気にも留めていなかった「レイドボスに倒されたらイベント終了までリスポーンできない」という告知での一文。そして先程の鬼。この場にいる二人のプレイヤーは共通してレイドボスさんことユラがこのイベントから離脱したら実質的にクリア不可能だということに勘づいていた。そのうえで先程の鬼の攻略法について考える。

 

「首の部分以外はダメージ不可で戦闘の際には妨害が入る......。もしかしなくても複数人での攻略が前提だな。幕末で協力を求めるとか鬼畜か?」

 

「あっ、なら妨害してくる下忍とかいうのから倒すとかどう?」

 

「いやそれはその下忍とかいうのの数が分からない以上、イベント時間的に現実的じゃない」

 

「じゃあなんとかして首を斬らないといけないのか」

 

 ぶっちゃけ一番厄介なのはあの鬼の特性だ。魔法とかファンタジーな部分があまり関与しない幕末システムにおいてイベントではたまに見るらしいファンタジー要素。冷鬼という名に相応しいギミック的要素であるそれは、長期戦、耐久戦になるほどプレイヤー側が不利になることを暗示していた。妨害とダメージ不可で遅延して動きが鈍くなってる状態であの金棒...確かにレイドボスさんでも苦戦するはずだ。

 

「う~ん、最速で天誅……いけるか?」

 

「遅れた」

 

 リスポーンした後に爆速で戻ってきたレイドボスさんと合流し、本家の方へと歩を進める。レイドボスさんがいるだけで幕末プレイヤーが蜘蛛の子を散らすように離れていくぜ!マジバねえっす!

 

「勝とうか」

 

突如として結成されたこのイベント限定でのメンバー。

 

 

 

ずっと孤独だった最強のプレイヤーは、何故か嬉しそうな顔で此方を見ていた。

 

 

 

 

 

いや、怖

 




書きたいことを書くんだよォ!

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