殺気と幕末とシャンフロと 作:荒ぶるバスタブ
チートか?
俺がイベント期間中に初めてそいつに出会ったときに抱いた感想はそれだ。
そいつは俺が狂犬に追われているときに突如として現れてランカー九位の狂犬をまるで
火薬などで「汚え花火だ……!天誅」の場合は除くが、少なくとも俺はランカーである彼らがここまでの速さで天誅されていくのを見たことがない。しかもほぼタイマンという状況でだ。
ここ幕末では過去に「チート騒動」なる悲しい(チーター目線)事件が起こっている。
「幕末」という修羅の世界でも、オンラインゲームたるもの、チーターによるチート行為とその対処は避けられない宿命ともいえる。幕末でも過去に一度だけ違法チートが流行ったとされるが、その際は普段は身内で共食いしている上位ランカー陣が結託。
運営もランカー陣に便乗した結果、チートに完全対応したランカー陣が埒外の動きをするチーター達をチートに頼らない素の実力で徹底的にボコボコにしてチーターの精神を圧し折って退散させ、ランキングも通常時と全く変動しなかったという逸話が残っている。
チート対応例としては
•高速化チート→素で対応して切り捨て御免天誅
•絶対命中チート→クイックドローで先手を取って天誅
•無限アイテムチート→半数がチーターを引きつけてる間に残り半数がそこらへんのプレイヤー虐殺して装備徴収による実質無限アイテムで天誅
•透明化チート→歩く際に捲き上る土煙と煙幕で座標を割り出して首切り天誅
•攻撃力超強化チート+高速化チート→完全に見切った上で団子の串縛りでノーダメ嬲り殺し天誅&「とりあえず生」的な「とりあえずリスキル」天誅
•無敵状態チート→バグ技で壁に埋めて延々と殴る蹴るの暴行を続けて心を折る。運営もチーターが心折れて消えるまで壁埋めバグを放置した。
運営がチーターをBANするでもなく、「バグは放置しとくからランカー、後は頼むで!」って感じで便乗するのやばくないか?数多のクソゲーを経験してきた俺でもこれは初めてのチート対応だった。
話は変わるがランカーの中でも異彩を放つレイドボスさんは、一見気の向くままに街を歩き回るぽわぽわした天然さんだが、たとえ初対面でも殺意と友好が表裏一体に噛み合ったコミュニケーションを強いてくる地雷系プレイヤーでもある。簡単に説明すると、会話の「リズム」が崩れると乱数的に殺戮スイッチが起動するので前触れもなくいきなり発狂して襲いかかってきたり、朗らかに挨拶した次の瞬間にはその相手は死んでいる場合もあるのだ。
そんなレイドボスさんだが、それとは別に本気でキレるパターンもあり一回だけこのチート騒動のときにそっちのキレ方をして、天誅の手口がエグくなった。具体的に言うと今言ったような生ぬるいものではなく言葉に表せないようなエグさの類だ。
ひたすら笑顔のドリームチームから袋叩きにされるチーターには流石に同情しました(哀憫の目)。そのことがあってから幕末ではチーターを見かけると生温かい目で手を合わせられる。チーターのコミュニティというかチーター界隈(?)というクソみたいな連中が「幕末だけはやめとけ」って暗黙の了解となっているのを掲示板で見かけたことがある。ちなみにすぐ通報しました。
チーターが消えたタイミングでとある掲示板に書き込まれた「もうやだあいつら」がチーターの嘆きであったのか、ランカーの犠牲になった幕末プレイヤーにリスキルされた新規の叫びであったのかは定かではない……。
────ランカーからクソ狙われる腹いせ天誅ゥ!
クソ狙われる.....か。ここまでのことからその夕日ってプレイヤーが何故ランカーに執拗に狙われるかは想像がつく。おおよそ、ランカー達も疑っているのだ。彼のプレイスキル云々では説明のつかない回避や遠距離からの予測できないものへの回避に。
レイドボスさんを抱えて一時離脱するときも背後からの手裏剣と思わしきものをまるで背中にも目があるかのように、あるいは俯瞰的な神視点で体を動かしているかのように周りを
今他ゲーで計画してる悪巧みが脳裏に浮かぶ。
もし、
もし仮に相手の攻撃の波長や攻撃してくる部位などが明確に分かるならば──────
「フッ、我が封印されし右腕が疼くぜ......。」
……………この現役の厨二病のやつを見て本当に自分の仮説が合ってるか不安になってくるな。
「あれぇ?サンラクくぅん、まさか怖気付いてるのぉ?」
「うっ、嫌な奴思い出すからやめてくれ」
「反応がマジじゃん……。」
トラウマとなった奴と口調が似てるからか、思い出したくもない懐かしい過去を一瞬思い出す。あいつ「クソゲー」では会わないけど一歩でもクソゲーを飛び越えて「普通ゲー」の領域に入った途端何故か居て俺を探してるんだよなぁ。一時期は一貫したプレイヤーネームを変えようかとまで思ったほどだ。まあ、あいつのせいで変えるのもなんか癪だし「サンラク」のままなんだけど。
そうこうしている内に目的のレイドボスを目視できるようになる。
ていうかレイドボスさんとクソ紛らわしいな。誰だよ!1プレイヤーにこんな大層な二つ名つけたの!強さが二つ名と見合ってるから何も言えねえ........。
「開戦じゃあァァァ!」
夕日が持っていた刀を首目掛けてぶん投げる。此方に気づいた鬼はギリギリで避ける。それも想定の内なのかウィンドウを操作して新たな刀を持つとそのまま斬りかかる。
「クッ...!硬ッ!」
夕日と連携してなんとか体勢だけでも崩そうとAIであろうと変わらないはずの支えである足に向かって斬りかかるが効いてる気配がない。
その隙にレイドボスさんが屋根に駆け上りそこから最適な動きで首に刀を振るも、当たるか否かという所で妨害が入り体勢を立て直す。
「なあ!策ってなんのことなんだ!?」
「まあ任せろ。秘技!あいつ(↑)対策奥義!!」
そう言うと、夕日は鬼のちょうど下の座標に大玉花火を転がす。
そして大きな爆発音の後、大きく吹っ飛ぶ鬼。
「思った通り!ダメージ不可だが、衝撃までは消せない!!」
長屋にそのまま吹っ飛んだ鬼に向かって走り出す。
「だあァァァァ!鬱陶しいなぁ!山ん中で手裏剣ごっこでもしてろやァァ!!」
さっきから増えてきた妨害に堪えたのか夕日が大玉花火を手裏剣が放たれた長屋に向かってぶん投げる。火薬を長屋に投げる奴初めて見たわ.....。
そして長屋爆発の後、一時的に妨害が無くなった隙にレイドボスさんが鬼が吹っ飛んでいった先に駆ける。
「クソ鬼!こっちだ!!」
ヘイトを自分へと向ける。そして向かってくる金棒を刀で受け流す。妨害が無くなったこいつなんて中ボス以下なんだよォ!
「単純で助かるわ!単細胞な鬼ィィ!!忍術じゃなくて義務教育習った方がいいんじゃないかァ!!」
「たのしい」
俺に気を取られている隙に後ろに回ったレイドボスさんの強い踏み込みからの一閃。
イベントの終わりはそんなレイドボスさんの天誅で終わった。
さーて、これで一件落着!
「あっぶッッ!!」
まあそんな簡単に行くはずもなく、二丁の銃、リボルバーを脳天に放ってきたレイドボスさんに対して、夕日は間一髪で避け、俺はギリギリで刀で弾斬りした。
イベントの終了となるレイドボスの消滅までの五分間。
いつもなら即諦める状況。
だが、こいつとなら─────
第二ラウンドファイッッ!!!
とある場所にて
唯一剣さん「これチートか?」
運営「そいつチート一回も使ってないで」
ランカー陣
「「えええ.......」」