殺気と幕末とシャンフロと   作:荒ぶるバスタブ

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三月クッッッッソ忙しいから今月のうちに更新しときたい


隠忍月下 其の四

 

「あっぶッッ!!」

 

 レイドボス倒したしイベントも終わりかぁ、なんか呆気なかったなぁ。って呑気に考えてたらレイドボスさんが唐突に銃出して弾撃ってきやがった。天誅した後に空をぼーっと見て黄昏れてたから「レイドボスさんもそういう時期あるよね。誰しもが通る道だなぁ」って優しい気遣いで触れずにいたのにこれはどういうことだ!

 

 二発放たれた脳天を狙っての銃弾は、一発は間一髪で避けられもう一発は刀で見事に真っ二つに裂けられて長屋の壁に食い込んでいた。

サラッとしてるけど至近距離からの銃弾を刀で弾くとかどういう反射神経してんだよ。驚きながらサンラクの方を見ると飄々とした顔でレイドボスさんの方を見ていた。

 

 あ、これあれだな。「銃弾かどうかは分からないけどレイドボスさんならなんかしてきそうだな。」って警戒してたな。いや、幕末への適応が凄すぎない?僕なんてイベント終わったし、三人で雑談でもしようぜ!って感じだったぞ。イベント限定とはいえ、これが幕末ウイルスの進行度の違いか......。まあサンラクなら警戒してなくても弾斬りくらいしそうだけど。

 

「ふう……ユラくん、ステイステイ。このまま平和的解決でいこうぜ?」

 

「なんで?こっからが楽しいのに」

 

 生粋の戦闘狂キタァァァァァァ!!最強すぎて戦いに飢えてるやつじゃん。80話くらいで過去編明かされるやつじゃん。貢献率とデスペナルティ、ここでしれっとレイドボスさん抜いてイベント一位になろうとしてたのに本人的には「報酬とか関係なしに......やろうぜ?(死刑宣告)」らしい。

 

「あっ、ちょッ」

 

この人全然話聞かないんだけど!また刀を取り出し天誅せんと斬りかかってくるレイドボスさんの攻撃を避けながらここからの打開策を考える。

 

 

 

………ん?気のせいか?なんか殺気と斬りかかるスピードにいつものレイドボスさんのキレが見えないような......。まあそれでも十分速いんだけど

 

「おい、夕日。手組まないか?」

 

「………なんの冗談?」

 

「今の状態のレイドボスさんなら二人がかりで天誅できる」

 

「それ本気?あのレイドボスさんだよ?あのランキング一位の」

 

「百本気。お前(・・)とならやれると思ってる」

 

「…………」

 

よく見てみるとあの妨害のせいなのか全体的に重心が斜め前で引きずるように動いている。

 

「なあ、一緒にやろうぜ。神殺し(・・・)......!」

 

一通りの攻撃を避け、僅かな隙の内に距離を取る。

 

 神殺し。このゲームのランカー不動(・・)の1位であるレイドボスさんを天誅できるチャンス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいね!乗ったァ!」

 

 この人を天誅する、その意味。相性次第で格上のランカーが1プレイヤーに天誅されるのも日常茶飯事の幕末で、100人規模での天誅でも笑顔で迎撃殲滅したという絶対的強者。幕末の中で常に捕食者という立場にある彼を天誅できるかもしれない一筋のか細い光。イベント報酬?そんなものはこれに比べたら参加賞もいいところだ。

 

あの日、為す術もなく天誅されセンスが皆無の辞世の句を読んだ自分。

 

 

 

それを、今日ここで超える。

 

 

 

 

 

 

 

「惜しい」

 

 そう意気込んだはいいものの、この人マジでどうなってんだよ。足のふらつきを感じさせないかのような身のこなしで長屋の屋根を伝って僕ら二人の攻撃を捌く様子は、「レイドボス」という二つ名に恥じぬ様だった。

このままじゃジリ貧だぞ、どうする?考えろ考えろ

 

 

 

「…………ん?」

 

「やぁっと見つけたでぇ!!」

 

「あっ!唯一剣さん!あの不幸な事故は大丈夫でしたか!?」

 

「黙れ」

 

あの後リスポーンしたのかなんの外傷も見当たらない唯一剣さんが屋根から此方へ体を動かす。あっそこ.........

 

「お前には一回言いたいことが」

 

「邪魔」

 

あぁぁ!!なんてことだ!不慮の事故Part2だぁ!横からレイドボスさんがもの凄い勢いのある蹴りをして吹っ飛んでいった彼女に静かに手を合わせる。

 

「唯一剣さん………貴方のことは忘れません。」

 

「勝手に殺すなや!」

 

半壊した長屋から殺意のある刀が向かってくるので避ける。そんな怒るなって。軽いジョークじゃん。

 

「天誅」

 

「ヒイィィッッ!」

 

あ、刀を投げ捨てた唯一剣さんを一番に天誅しようとレイドボスさんが斬りかかる。あーあ、そんなすぐ刀なんて投げるから

 

「この世は無常………南無」

 

「南無南無」

 

いやお前はなんで横で呑気に観戦してんだよ。レイドボスさんの矛先が彼女に向かった途端、「ふう、ハーフタイムだ.....。」って休憩してんの何気に僕より外道だぞ。

 

「さて」

 

戦闘中の長屋へ助走をつけて勢いよく走り出す。

 

そして予想以上に逃げ回ってる彼女の背中へと勢いをつけてドロップキックゥゥゥ!!

 

 

素早く瀕死になった唯一剣さんを抱えてレイドボスさんの前に立つ。

 

「助けに来ましたよ!!」

 

「やってることと違くない?」

 

レイドボスさんの攻撃を唯一剣さんの体で防ぐ。

 

「今、地球上で一番リサイクルしてますよ!」

 

「こんな血生臭いリサイクル見たことないなぁ」

 

環境問題に優しい肉盾を持ちながらサンラクへと交代する。

おっ、もう終わりって顔してるねぇ。

 

 

安堵してる唯一剣さんに手持ちの花火を取り付けてっと、

 

「人間花火いけぇ!オラァ!!」

 

勢いよく放り投げた花火はそれはもう綺麗に散っていった。人生と同じだよね......。

 

「花火持ちすぎだろ……」

 

「花火マイスターって呼んでくれてもいいぞ」

 

流石に紅蓮寧土さんには負けるけど。とはいえ、あいつ(↑)対策として大量の花火持ってて良かったぁ。めっちゃ役に立つじゃん。今日から花火愛好家になろうかな?

 

「まあ、そんなうまくいかないよね」

 

煙の後、何事もなかったように此方に向かってくるレイドボスさんを見て気を引き締める。

 

「サンラク、1個だけ考えがある。それに合わせてくれ」

 

「オーケー」

 

刀を手に殺気立った目で此方に走ってくるレイドボスさんを見て、あるものをウィンドウを操作して取り出す。

 

「それは......」

 

おっ、サンラクも気づいたか。

 

 幕末最強の盾であり幕末の中でも数少ない破壊不可能オブジェクトである「釜の蓋」。過去に「ドヤ顔ダブル釜蓋(シールド)」という、釜の蓋の特性を生かして膂力を上げまくって釜の蓋を両手持ちするトチ狂ったプレイスタイルが流行ったことがあるが、闇討ちや袋叩き、誅殺が日常的に横行する幕末では正面からの攻撃には無敵程度では気休めにしかならず儚く露と消えた。

 

そんな古のプレイスタイルを今やってるのだから、それはレイドボスさんも驚くだろう。

 

斬りかかってくる攻撃をガード!ガード!ガードォ!

 

しかし流行ったということはレイドボスさんも対策はしてる訳で、今のままじゃ逆立ちしたって一撃も入れられないだろう。

 

 

「………少し失望」

 

失望?笑わせんな

僕からすれば、幕末プレイヤーはこの幕末最強の盾の使い方をことごとく間違っている。

 

「これは………………こうやって使うんだよォ!!」

 

ガードしていた釜の蓋をぶん投げる(・・・・・)

 

咄嗟にレイドボスさんは刀で受ける。そうやると思ってたぜ。

 

 クリティカルを出せば全ての装甲を無視して対象物を切断できる「錆光」を持っているレイドボスさんは基本的に避けるということはしない。なんせ、全攻撃でクリティカルを発生させてくるレイドボスさんだ。実質的にこの刀は何でも斬ることのできる刀ということになる。

 

 さて、問題です。何でも斬ることのできる刀と破壊不可能オブジェクトである盾、この二つが勢いよく当たればどうなるでしょうか?

 

「悪いね、レイドボスさん」

 

釜の蓋を受け止めたことで一時的に怯んだレイドボスさんに向かって刀を振るうサンラク。

 

 一瞬とはいえ、それは致命的な一瞬でありサンラクが見逃すはずもなく、レイドボスさんが避けようとしてもそれは今更だったようで左腕が飛んでいった。

 

「もう1個、おかわりだァ!!」

 

持っていたもう1個の釜の蓋を満身創痍のレイドボスさんへと投げる。

 

今度は上空へと避ける。だがそれは予測できている。

 

 

上空へと飛んだレイドボスさんは飛ぶと同時に投げ込まれた大玉花火に大きく目を見開く。

 

「避けが遅いぞ、最強」

 

大きな爆発音の直後、向かい側の長屋にのめり込むように吹っ飛んでいった。

 

 

 

畳み掛けるようにサンラクと一緒に駆けるが、近づいたときに二人とも足が立ち止まる。

 

 

 

それは数多のクソゲーをやってきた中で培われた危険察知能力なのか、

多くの殺気に触れる中で本能的にどの殺気がヤバいのか感じるがゆえか。

 

 

瓦礫の下から出てきたランキング1位は口を吊り上げながら笑っていた。

 

「いいね、君」

 

空気が変わる。

 

「今、最高に楽しいよ.....!」

 

愉悦の目を浮かべながら出すのは異様なまでの長さの刀。

 

「だから………少し本気(・・)でいくよ」

 

噂では聞いてあった100人斬りを成し遂げたと言われるそれ。だが、実際に見るのは初めてだったサンラクは咄嗟に言葉を紡ぐ。

 

「斬星竿......!?おい!見て(・・)から動くな!何か感じたらすぐッ?!」

 

「え?」

 

それに手をかけたと思えば、次の瞬間にはサンラクの首が消し飛んでいた。この状況のヤバさに今更ながらに気づいた夕日はいち早く距離を取る。

 

 

────何か感じたらすぐ

 サンラクの言葉がなかったら首が飛んでいただろうギリギリの斬撃の避け

 

「くッ!?」

 

 その形状から十中八九、巌流島の決闘にて使用された佐々木小次郎の「物干し竿」をモチーフとするそれ、「斬星竿」は斬撃を飛ばすなどというトンデモびっくりなファンタジー性能を持っている訳ではない。

 

 「斬星竿」に備わった効果は空気抵抗軽減。非常にシンプルなその効果は、一般的なプレイヤーが使えばここまでにはならず、本来その長さ故に大きな隙を晒す筈である。だが、ことユラの圧倒的な技能でそれを扱えば「斬星竿」は極めて危険な災害へと変貌する。

 

「くっそッ!?」

 

ヤバいヤバいヤバい。何がヤバいって段々と速度が上がってきてる。本来、線での攻撃は僕なら避けられるはずだ。なのに「レイドボスさんwith斬星竿」となると速すぎてどんなに殺気を読んでも間に合わない。

 

どんどん斬撃が当たり始めてるし本格的にマズイ。

 

「………楽しい」

 

斬りかかる一太刀を避ける。そして次の動作を見極める。

 

 

 

 

だが、彼は失念していた。

 

物干し竿にそれを扱う達人。であるならば、燕をも斬り落とす返しの刃(・・・・)も存在する。

 

「天誅」

 

「ハッッ!?」

 

 真下からの更に速度を上げる一太刀。普通なら誰だって天誅だろう。だが、直前であろうとも攻撃の予兆が分かる夕日は体を無理やり捻ってそれを避ける。

よくやった!と自分を褒めたいが今はそんな時間はない。それならと更に速度を上げてくる斬撃を避ける。

 

 

集中しろ。感じて避けるな。これまでの動作、殺気から次の攻撃を予測しろ。どんなプレイヤーにも癖はある。それはレイドボスさんも一緒だ。その癖を見極めろ。

 

微かに避け始めた夕日に怪訝な顔をするユラ。

 

雑に避ければいいってもんじゃない。どう(・・)避けたら次の回避の行動に繋げやすいか考えろ。

 

 

刀で受け止めて避ける。

 

屋根を伝って避ける。

 

 

レイドボス撃破から5分。いける!このまま────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思ったのと同時か、蹴飛ばした左腕(・・)が此方にくる。予想外の攻撃に雑になる回避。レイドボスさんがそれを見逃すはずもなく、体の損傷など感じさせない身のこなしで此方へと踏み込む。

 

「ありがとう」

 

暗転していく視界の中で最後の光景が見える。

 

 

 

唐突な感謝を述べながら刀を振るったレイドボスさんは少し寂しそうな顔で笑っていた。

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