殺気と幕末とシャンフロと   作:荒ぶるバスタブ

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ハァ....!ハァ....!(なんとか忙しくなる前に投稿しようと足掻く様)


鉛筆王国に殴り込み

 

 

「片っ端から奪い取れ!抵抗するなら()れ!!」

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

「随分と溜め込んでるじゃねぇか!アタリだな!!」

 

 商品棚を斧でぶち破り、慣れた様子で商品を抱えて入店から僅か数分でその二人組は去っていった。

 

「大漁だぜ!サッサとズラかろうぜ!」

 

「1日中前屈みなんてやってられるか!」

 

 

 

 ユナイト・ラウンズ、プレイヤー達から「世紀末円卓」と呼ばれているそのゲームにおいて騎士という設定のプレイヤーがNPCの売店を襲撃するなど日常茶飯事である。

そしてこの日常茶飯事にはまだ延長があり──

 

「イイモン持ってるね、お二人さん。」

 

出てくるのを狙いすましたかのように剣を片手に近づいてくる影

 

「ちょっとだけ頂戴、無料(タダ)で」

 

「ぎゃああああ!!」

 

大きく振り上げたときには勝敗は決まっていた。

 

 

 

 世紀末円卓(世紀末略奪ゲー)の世界において初心者とはちまちま四つん這いで草をムシってる奴、中級者とはNPCの売店から奪い取る奴、そして上級者とはそのアイテム(ネギ)を背負った中級者(カモ)から奪い取る奴のことを指す。

 

 こうなるとどうなってくるかと言うと、いくつかの集団が出来上がるのだ。

 略奪、奪ったアイテムを守る、どんな場合でも集団で動いた方が都合が良い。どこかの噂でキルすることが目的のゲームでは固定の集団が形成されない、という例外があるにしろ、プレイヤーが互いに干渉できるゲームであればそれは自然に形成される。

 

 とはいえ、そんな集団に含まれているプレイヤー達が仲良しこよしかと聞かれればそうではなく全員が全員、奪ったアイテムを自分が奪い取ろうとしており、その集団の中では信頼なんてものは欠片も存在しないだろう。

 

 

 そんな実質、全員敵とも言える世紀末を体現したゲームとしては百点満点のゲームで、暴れに暴れまわりあらゆる手練手管を駆使し王国の掌握を達成したプレイヤーがいた。

 NPCの王族すら彼女に進んで従いモンスターの釣り餌となる様は他のプレイヤーから見ても恐怖であり、本来のラスボスの魔王は完全に空気になり、いつしか「『超共産主義を掲げる帝国とその女帝の打倒』が目的のゲーム」と揶揄される事となった。

 

当然、反乱軍も出来上がり運営さえも予想しなかった展開でこのゲームの全ては変わった。

 

 

 彼女はストーリー上の倒せる(・・・)ラスボスとは訳が違う。

 意図的に配下にしなかったプレイヤー達から搾取したり、内通者にわざとレジスタンスを作らせる事で被害者達に反抗の意志を持たせ結託させることでゲームから離れないよう対策、結果的に運営に「あいつ、ゲームぶっ壊してるけど過疎ってないしNOTギルティ!!」と言わしめたほどだ。

 

 反乱軍の対人のプレイスキルならば自信がある奴、数で押し込めばいいと思ってる奴。その誰もが彼女に指一本、触れることさえ叶わなかった。

 

 

 そんな独裁共産政権を「倒したら面白そうじゃね?」という軽い気持ちで巨大な城の前に立つたった三人のプレイヤーがいた。

反乱軍にも王国軍にも属さない、本来(・・)なら敵としてさえカウントされない存在。

 

 

 だが、もしその内の一人がプロゲーマーであったなら、

クソゲーマーであったなら、もしくは彼女でさえも計り知れない存在であったならば────

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女に付き従う者達とはどんな者達なのか?

 

「富もドロップアイテムも皆で分けようね」

 

「オオオオオオ!!」

 

「王国は俺達のものだ!」

 

「同士!鉛筆戦士!!」

 

 玉座に立ち、見下ろしニコニコと宣言する彼女に声を上げる彼ら。しかし彼らも最初からこうであった訳ではない。

 

 プレイヤーとは強さ、所謂(いわゆる)プレイスキルだけが全てではない。1プレイヤーの強さとは犠牲を許容するならば数で押せば大体は崩れる。幕末の「ユラ」という怪物は例外として、普通(・・)は格闘ゲームなどの一対一でない限り、大勢を巻き込むことができるゲームならば強さとは最優先事項ではない。どれだけ周りを動かすことができるかという人心掌握術もプレイヤーを構成する大きな要素なのだ。

 

 元々彼女は新たに呼び込まれた新規のうち、その世紀末な環境に惹かれた所謂「無法者勢(アウトレイジ)」だった。そしてこの世紀末で彼女の悪名が轟くほどに彼女に従う者は増えていった。

 

彼女のカリスマ性?それもあるだろうが一番は敵に回したくないと思わせる力だろう。

 

 彼女はプレイスキルは高いが、「頂点に立つ」というほど突出している訳ではない。しかし彼女の悪行を見たプレイヤー達は知っている。彼女に何か手を出したとしたらきっと一生物のトラウマを植え付けられるだろうと。

 

 彼らは決して盲目ではない。だが知っているのだ、彼女についていけば勝てるだろうと。きっと最後には此方側が見下ろしているだろうと。

 

 

そんな彼もまた勝ち馬に乗った一人であった。

 

「いけェ!打倒鉛筆王国!!」

 

「あの悪魔を倒せ!」

 

 交戦する反乱軍を前に此方は冷静に対処する。何故か覆ることのない此方が有利な状況に奴らの顔が歪む。それもそうだろう、奴らの人数、弱点、全て知っているのだから。基本的に彼女は勝てない戦いはしない。今回は反乱軍側にスパイを忍び込ませたり、勝負が始まる前に何か手を打っており、俺たちは彼女の駒として動くだけだ。

 

今回の勝ち戦も横目で見ながら俺はもう違うことについて考えていた。

 

 

 

そんな戦場の場にそいつは突然現れた。

 

 いつの間に居たのか、戦場の、それもど真ん中に突然現れたそいつは言っちゃなんだが、強そうには見えなかった。

初期装備、無表情で何も読み取れない顔、そいつが与える印象の全てが謎だった。

 

「なあ、あいつどっちの陣営だ?」

 

「知らねえよ、誰か見たことあるか?」

 

「いや俺はないぞ」

 

「同士が何か言ってたか?」

 

 どちらの陣営のプレイヤーもそいつに困惑しており、敵か味方か分からないためどうすることも出来ない状況であった。そして少し経って近くのプレイヤーが声を掛けようかとしたとき、そいつは突然動き出した。

 

「なッ!?」

 

 無表情のまま近くのプレイヤーに持っていた剣を振りかぶる。突如として鮮やかにこっち陣営のプレイヤーをキルするそいつに、仲間かと反乱軍のプレイヤー達が喜びの顔を見せるが、次の瞬間近づいてきた反乱軍の一人をボロボロになった剣で首を一閃。

 

これには両陣営とも大混乱であった。味方でも敵でもない、その場における異物とも言えるそいつに何人かが武器を向ける。誰もがそいつがやられた()を考えていた。

 

だが予想外なことにそいつは未来でも見てるかのようにぼーっとどこかを見て縦横から来る武器を軽い足取りで避けたと思ったら、向かってきたプレイヤーの急所に的確に剣を振った。

 

 ここまで来たら王国側、反乱軍など関係なしに誰もがそいつに向かっていった。そいつは壊れた剣を放り出したと思ったらキルされた足元に横たわっている奴の武器を手に取り応戦した。

 

誰もが武器を向けるが、誰もが当てることも出来ずに散っていく。その様子を見ながら何か違和感が頭をよぎる。

 

俺はそいつを、似たようなプレイヤーを見たことがある。

 

 多くのプレイヤーからの縦横無尽の攻撃を難なく避けながら口を釣り上げながら一人、また一人と屠り去るそいつ。もはやそれは戦いなどではなく、一種の殺戮であった。

 

此方をキルすることしか考えていない目で見るそいつ。俺はこの感情を知っている。

 

 自分はゲームが得意な方だと思っている。そんな自分がログインしたはいいものの、どうすることもできなく一時間は頑張ってみたものの初期位置の部屋から出ることも出来なかったゲーム。彼らは多種多様だったが共通して異常なまでの対人での殺傷能力があった。そいつの目はそのときの怪物達(あいつら)と似ている。

 

横から来る斬撃を此方を見ながら避ける。同時に五人がかりでも止めることができないそいつに全員が向かっていく。それに対応しながらも此方を見つめるそいつにあのときの恐怖が蘇る。

 

 どんな攻撃もそいつには何故か当たらなかった。この場にいるプレイヤーは思い知る。このゲームを始めた頃に捨て去った一個人の単純な暴力を。それを押し通せる圧倒的な強さを。

 

 

 

俺の首にそいつの刃が通るのにそう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、ラスボス戦といこうか」

 

「彼、凄い変わりようだったけど」

 

「ああいうタイプは切り替わるスイッチがあるんだよ。あそこに居る奴らが可哀想だぜ」

 

 トラップを潜り抜け、守っているであろう配下が足元に転がっているのを横目で見ながら玉座の間の扉の前に二人して並ぶ。

 

そして設定故なのか運営が重たく設計した扉を開ける。

 

「反乱軍を囮にして侵入……少数精鋭で本丸を狙うとはやるねぇ」

 

 その玉座に座り込んだ、「反理想郷の女帝(ディストピア・エンブレス)」こと鉛筆戦士は落ち着き払った様子で此方を見ていた。

 

「はっ、もう少し噛み応えのあるトラップを設置してくれよ」

 

「ヌルすぎて初見突破余裕でした^^」

 

実際は俺とカッツォじゃないとちょいキツイレベルのトラップだったが顔には出さない。

 

「よく喋るねぇ。でも残念、もっと早かったら分からなかったけどもうじき私の配下がここに来るよ」

 

「それはどうかな?」

 

ピクリと、ずっとニコニコとしていた顔が少し固まる。

 

「それってどういう───」

 

言葉の途中で、バン!と扉が開かれる。

 

「同士!大変です!此方側と反乱軍、全て一人のプレイヤーによって壊滅させられました!」

 

「…………」

 

ずっと座っていた鉛筆戦士はようやく此方を敵として認識したのか立ち上がる。

 

「まだお友達が居たみたいだね」

 

「ちょっとしたフレンドを呼んだんだよ。お前が尻尾巻いて逃げたゲームのな」

 

煽れば彼女は少し顔を歪めながらやっと剣を手に持つ。

 

「サンラク君にカッツォタタキ君……覚えた」

 

明らかな殺意を持って此方を見据える鉛筆戦士に俺たちも臨戦態勢に入る。

 

「もう一人に会えないのが凄く残念だけど後で聞いておくよ」

 

 プレイスキルはそこそこ?冗談も大概にしてくれよ配下共。俺ら二人でも勝てる気がしないぜ。不意を狙ったはずだが、そりゃあこういうときの対策もしてるか。「準備をさせたら負け戦」とはよく言ったものだ。

 

「さあ、ボスバトルだ。私を倒して『革命騎士』になれるかな?」

 

 

 

 

 

 

 カッツォが鉛筆戦士に迫り長剣を振るう。彼女も段々と自分が押されてることに気付いたのか先程までの余裕は消え真面目な顔で応戦していた。

 

 カッツォは、長剣を持った黒い全身鎧という派手な装備のせいで誤解されがちだが、本来のプレイスタイルは相手を研究しつくし万全の状態で相手を迎え撃つ徹底的な理詰め型である。最初便秘で会ったときに初見かつバグの少ないDL版をプレイしていたカッツォにバグ盛り盛りで15連勝したが、後にパッケージ版を購入し本業そっちのけで研究された結果、20連敗という圧倒的な実力を見せつけられた。

 

 そしてデータを集めれば集めるほど強くなるとはいえ、少ないデータで弱い訳では決してない。いつぞやか、本人が便秘で話していたがプロの試合となると情報が少ないということは日常茶飯事であり、そんな状況で勝ちを積み上げなければいけない。

 

 0と1は違う。そんなプロの試合で安定した勝率を保っているカッツォのことだ。少ない情報から相手の手札、取る選択肢を推測するのも、アマチュアじゃ比べ物にならないほど綿密で正確である。

 

 そんなプロゲーマーであるカッツォだからこそ鉛筆戦士が繰り出してくる多くの選択肢にも対応できるのだろう。

 

そして

 

「カッツォ!スイッチ!!」

 

 もちろん俺もいる。二週間前から「鉛筆戦士」というプレイヤーを反乱軍などから聞き、研究していたカッツォほどではないがこういうタイプの攻撃は大体分かる。

 

「くっ...!」

 

「クソゲーのギミックと似てんぞぉ!鉛筆戦士ィ!」

 

 まさか好きでやってたクソゲーの経験が役に立つとは。一瞬感謝しそうになったがあの地獄さえ生ぬるい日々を思い出し我に返る。クソゲーに感謝なんてし始めたらそれこそ何か大事なものが崩壊するぞ、サンラク!気をしっかり持て!

 

 それはさておき、何が言いたいかと言うと時間が経つほどに此方側が有利になるということだ。もし鉛筆戦士に僅かでも時間を与えたとしたらこの状況がどうなっていたか分からないが、こっちが多くの時間を費やしたならば戦局は自ずと決まってくる。

 

「ハア..!ハア.....!」

 

「王手だ、鉛筆戦士」

 

倒れた鉛筆戦士を見下ろす俺。もう勝負は決していた。

 

しかし、真の魔王である彼女の目は光を失ってはおらず気味が悪い笑みを顔に浮かばせていた。

 

「何がおかしいんだ?」

 

「いや、前々からこれをやってみたくてね」

 

意味不明な言動に首を傾げる。

また時間を稼ぐ作戦かと思い、今度こそ手に持った剣を彼女の首の額に当てる。

 

その直後、何か彼女が動いたかと思ったら城が揺れ動く。

 

「なっ....!」

 

サプラーイズ!!

 

 

王城が揺れ崩壊する。

 

瓦礫が鉛筆戦士の真上から降る。

 

そして急いで逃げようとする俺とカッツォの上からも大質量の物体が落ちてくる。

 

「やられたな....!」

 

一つのゲームのラスボスと呼ばれるだけある。

 

 

沈みゆく意識の中で考える。

 

 

 

 

次はどんなクソゲーに挑もうか?

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