私は変態大好きです。
ゾンビも大好きです。
両方合わせたらこうなりました。
全国のゾンビ好きのみなさんごめんなさい。
そして全国のロリ巨乳好きの方もごめんなさい。
全ては作者が変態好きなのが悪いのです。でも罵らないでください豆腐メンタルだから。
もしあなたがゾンビ好きでもロリ巨乳好きでも人道主義者でもなければ、この物語をお楽しみください。
断末魔の絶叫で目を覚ました。
「ん…ぅ、あさ……?」
わたし――
ふわっと差し込む爽やかなお日様の光と香る死臭が、目覚めたわたしを優しく包み込む。
「ん、にゅぅ~~~~っ」
小さな体をぐぐっと逸らし、大きな胸をぷるんと揺らして伸びをすると、眠気がすうっと去っていき、意識が心地よく目覚めていく。
和やかな朝の爽やかな目覚め。この時間は夜柔らかい布団で眠る時と並んで、わたしの最も好きな時間の一つだ。
「ふわぁ……」
柔らかなそよ風が頬っぺたを撫で、どこからか腐臭を運んでくる。
目の前に広がるのは、二階の窓から望む、朝日に照らされた街の景色。
人気の無い閑静な住宅街。崩れた塀の上でのんきに欠伸をする野良猫さん。向かいの佐藤さん家の白い壁を染める赤い血痕。道路に転がった、変てこなオブジェみたいな壊れた車。そんな見慣れた街中を、のろのろと歩きまわる歪んだ人影。足を引きずり、手をついて這いまわり、中には両手両足を無くしても、芋虫みたいにもぞもぞと身体を動かして移動するのもいる。そんな彼らの動きはどこかコミカルでちょっと面白い。
「ふふっ」
そして、朝の心地いい空気を胸一杯に吸い込んで、気持ち良く呟いた。
「あぁ。今日もいい朝だなぁ~……」
ふわふわ陽気のぽかぽか天気。お空の鳥さんたちがチュンチュン歌い、地上の「うぼあーうーあー」っていう大合唱とデュエットしてる。
あ~。ほんとに気持ちいい朝だよ。うん。こんな日はやっぱり
「んじゃ、寝るかぁ~」
二度寝するに限るよね。
え?何で起きたばかりなのにまた寝るのかって?
ちっちっち。分かってないなあ~。
二度寝って超気持ちいいんだよ。何かと時間に追われる忙しい現代人の最高の贅沢なんだよ。時間があるけどあえて寝るっていうのにロックあるんだよ!それがわからないなら、お前はまだ二度寝を知らない(キリッ)。
……うんごめんね。半分ただこのネタ言ってみたかっただけだから本気にしなくていいよ。でも二度寝が気持ちいいのはホントだから、この文章を呼んで眠くなったなら今すぐ寝てみよう!
んじゃ、というわけで
「おやすみ~~~」
柔らかな布団の国に帰国して目を閉じる。そして、さあいざ楽しい夢の世界へと旅立とうとしたわたしのお腹に
「寝るなーーーーッ!」
全力の踵落としが決まりました。
「ふんぶひゃああああ!?」
おなかが爆発したんじゃないかというほどの衝撃に、女の子的にアウトな悲鳴を上げるわたし。
一方、蒼い目のサムライことアンディ・フグばりの踵落としを決めた張本人は。
「なに朝から優雅に二度寝してるのよアンタは!」
切れ長の瞳をキッと吊り上げて、阿修羅のごとく叫ぶのだった。
「うぅ~……ひどいよぉりっちゃん~」
涙目で抗議するけど、我が幼馴染さまは世紀末拳王様並みの迫力で睨みつけてくる。
「人が朝ご飯の支度に勤しんでるって時に、のんきに二度寝なんていい身分ねぇ……」
澄んだ声を震わせて、青筋立ててるおっかない娘――りっちゃんこと
意志の強そうな切れ長の瞳に、綺麗な髪を右で括ったサイドテール。背の高いすらりとした手足の美人さんだ。特にお胸もスラッとしていて、ちんちくりんなのに胸だけやたらと大きくてバランスの悪いわたしからすれば羨ましい限りだよ。でも前にそう言ったらめがっさ睨まれた。うん死ぬかと思ったね。
「……ねえ、何かすごく失礼なこと思ってない?」
「ううんぜんぜん思ってないよ!」
いきなり増大した殺気に、あわてて起き上がり正座をするわたし。りっちゃんはそんなわたしに溜息をついて。
「……まあいいわ。じゃあさっさと顔を洗ってきなさい。せっかく綺麗な顔をしているのに寝癖だらけよ」
「えぇ~……高校に行かなくてもよくなったんだから、もうちょっと寝てたって大丈夫だよぉ」
「わ・た・し・が、そんな自堕落な生活を許せないのよ。それに詩音がそんなじゃ、世話を任せてくれたお兄さんに顔向けできないじゃない」
「むうぅ。そう言って単に兄ちゃんに褒められたいだけなんでしょ~?」
「な!?ち、違うわよ私は単に責任感でっ――」
「はいはいツンデレ乙~」
顔を真っ赤にしてツンツンする姿に肩をすくめると、りっちゃんは誤魔化すように大声で言った。
「いっ、いいから早く洗面所に行きなさい!」
「は~い……」
「駆け足!」
幼馴染さまに急かされ、短い手足でとことこ一階の洗面所に向かう。そして着いた先、洗面所の鏡の前に立てば、ちんちくりんの姿とこんにちは。
撫で肩にちょっと付くくらいの長さのボサボサの髪――美容院とかめんどくさいから適当にハサミでザクザク切ったらこうなった。シミ一つ無い肌はいつものごとく安定の青白さ。そしてなんといっても
「成長期……のはずだよねぇ……?」
ちっちゃい。それはもう全てが。背も小さければ顔も小さい。もちろん手足だって短くて、成長期に全力で喧嘩を売るような発育不良。とても花のJK16歳とは思えない見た目小○生のちんちくりん。お人形みたいで可愛いとか言われるけど、わたしは大人でアダルティーな魅力が欲しかった!理想の女性は峰不○子!
「だけどさぁ……」
うんざりと溜息をつき、ジト目で胸元に目を向ける。
「なんでここだけおっきいのよぉ……」
でかい。めっちゃでかい。もはや足下が突き出た胸で隠れて見えないくらいにでかい。そして重い。ずっしり重い。試しに下から持ってみると、パジャマ代わりの兄ちゃんのYシャツ越しにふにゅんと下乳に指が沈み、ずしっと重さがちっちゃな掌にのしかかる。ううだめだ、持ってるだけでもう手が疲れちゃったよ。わたしが猫背なのは絶対コイツのせいだ。コイツのせいで兄ちゃんに背中から抱きついても、速攻で振り払われるようになったのだ。まさに目の上のタンコブならぬ目の下のおっぱい。ロリ巨乳も楽じゃない。
「ほんと、りっちゃんに胸をあげるかわりに背丈をもらいたいよ……」
そうすればパーフェクトわたしになれて、りっちゃんも貧乳コンプレックスから解放されるのに……。
「へえぇ。それはまったくありがたい申し出ねえ……」
瞬間、わたしは死を覚悟した。
いる。私の背後に、殺気だけで人を殺せるナニかがいる。
戦慄が駆け抜け、悪寒が駆け巡る。そしてわたしの全身を押し潰すかのように圧し掛かる、おっぱいみたいに重い殺気。
ガチガチと歯を鳴らして、震える瞳で振り返ると、わたしの背後に、映画で見た鬼軍曹のごとく憤怒の炎を立ちあがらせた、貧乳の事になると堪忍袋の緒が誰よりも切れやすくなる幼馴染さまが……。
キレやすいりっちゃんが、キレていた。
「う、ふふふふふふ……」
「あ、はははははは……」
ニッコリ笑顔で笑い合って。
「ゴメンねりっちゃんお詫びにわたしが揉んでおっきくしてあげるからーー!!」
「余計なお世話よこんちくしょうーーーーーーーー!!」
全力で土下座したら全力の拳骨をもらいました。痛かったです。
◇◇◇
「うぅ……頭とお尻が痛いよぉ~……」
涙目で、ヒリヒリする頭とお尻をさするわたし。
なんでお尻かって? あの後怒れるりっちゃんにお尻ペンペンされたからだよ!あの地獄のペンペンタイムは、確実にわたしの人生トラウマアルバムに記録されたね。思い出すたびにお尻が痛くなるよ~。
「あんたがアホなこと言ってるからでしょ。自業自得よ」
ふんっと言う幼馴染さまこと鬼軍曹さま。
むうぅ……いくらなんでもここまですること無いじゃん。胸もちっちゃければ器も小さいね!
「ねえ詩音。何故か今猛烈にあなたを殺したくなったんだけど?」
「気のせいですサー!何でもありませんサー!さっさと朝ごはんを食べましょうサー!」
びしっと敬礼して、海兵ばりのダッシュでリビングに向かうわたし。後ろで溜息をついて、りっちゃんもやれやれとついてくる。
そしてリビングの前に着いたわたし達が、ドアを開けたら
そこに死体がいた。
でも、ただの死体じゃなかった。
くちゃ…ぐちゅ…。
指が何本か千切れた手で、テーブルの上のご飯を掴み、血まみれの口に押し込んでいく。
がちゅ……はぐぅ……。
裂けた口で咀嚼しようとするけど、破れた頬から中身がこぼれ、噛むたびにボロボロと黄ばんだ歯が抜け落ちて、上手く食べられない。
…ぐ、ぎゅ……う、くん……。
それでも何とか飲み込むけど、それも意味は無い。なぜなら、それを消化するための胃袋が無かったから。
……ぼた……たた……ぐちゃ……。
彼のお腹はがらんどうだった。皮膚を破られ中身を掻き出され喰いつくされたそのお腹から、喰い残しの内臓がだらんと垂れさがり、途中で千切れた食堂の管から、ぐちゃぐちゃになったご飯がぼとりぼとりと床に滴り落ちていた。
彼は、死んでいた。でも動いていた。そして喰らっている。
日本で、アメリカで、ユーラシアで、アフリカで、世界中の人類が生息するあらゆる場所に存在する同族と同じように。
世界が死んだあの日から、世界を喰らうこれの名は
「『ゾンビ』……」
生ける屍が、そこにいた。
そう、リビングに。リビングに、
「これがホントのリビングデッドだ!」
「バカ言ってんじゃないわよ!」
会心のギャグに、りっちゃんが拳でツッコんだ。ただしゾンビに。
頬に怒りの右ストレートをブチ込まれたゾンビくんは「うぶああ」と呻きながら血反吐を吐いて倒れ込む。
千切れた内臓とか赤黒い血しぶきが床に壁に飛び散るも、りっちゃん特に気にしない。だってそんなのどうでもよくなるくらいに怒ってるもん。
「あんたねぇ……」
一歩踏み出すと、背中から怒気的な何かがぶわっと噴き上がった。
「これ、最後の食糧だったのよ……」
怒れる美貌は鬼の軍曹フェイス。
「……一体、どうしてくれんのよゴラアアアアアアアア!」
女の子的にアウトな怒号と共に馬乗りになり、その腐臭漂う顔面に拳を打ちこんだ。
「ふんッ!」
「うべっ!」
そして息つく間もない二発目。
「はあッ!」
「がはっ!」
続く三発目からの四発目。苦しげに呻くゾンビくんにも容赦なく、何度も腐肉に拳をめり込ませるその姿は、まさに怒りのスーパー鬼軍曹。
「アンタがッ、謝るまでッ、殴るのをやめないッ!」
「いやゾンビにそれは無理!」
キレた第一部Jさん家の跡取り息子みたいに殴り続けるりっちゃんを、わたしはたまらず羽衣い締めして止めた。
「離してそいつ殺せない!」
「やめてゾンビくんのライフは元からゼロよ!」
怒り狂ったりっちゃんを力いっぱい押しとどめ、それからしばらくワーキャー騒いでようやく、りっちゃんが落ち着きを取り戻した。
「……ハァ……ハァ……ごめん詩音。私キレて我を忘れてたわ……」
「……はぁ…はぁ…いいよ別に。それより……」
りっちゃんを離して、ロリにはキツかった肉体系アクションに荒く息をつくわたしは、ビクビク痙攣する瀕死(?)のゾンビくんを見る。
何度も殴られたその顔は、鼻が折れ眼球は飛び出て、頬や額とか色んな所に折れた歯が突き刺さり、ぐちゃぐちゃのヘンテコな福笑いみたい。
「これ、朝に断末魔の悲鳴を上げてた人かな?」
「でしょうね。たぶん食料を求めて街に出て喰われたんでしょ」
きょとんと小首をかしげる無感動なわたしとは違って、りっちゃんの声には同情の響きがあった。やっぱりりっちゃんは優しいなあ……主に殴ったのりっちゃんだけど。
「あれ、でもさ…?」
ふと、あることに気がついたわたしは疑問の声を漏らす。
「なによ?」
「りっちゃんさ、玄関はきちんと閉めたよね?」
「当たり前でしょ。窓も玄関もきちんと閉めたし、戸締りはいつも万全にしてるわよ」
「だよねえ。……じゃあさりっちゃん」
「まだ聞きたい事があるの?」
ちょっと鬱陶しそうな顔をするりっちゃんに、わたしは言った。
「なんで、このゾンビくんはここに入ってこれたのかな?」
「――ッ!」
瞬間、並んで立つわたしたちの背後に気配を感じて振り返ると同時に、りっちゃんは突然現れた男の人に後ろから掴みかかられた。
「きゃっ!?」
「りっちゃん!?」
「動くなア!」
慌てて駆け寄ろうとすると、背中からりっちゃんの首に右腕を回して拘束している男の人――30過ぎくらいのおじさんが、左手に持った包丁を向けて怒鳴りつけてきた。
「一歩でも動いたらこのアマぶっ殺すぞ!」
唾を飛ばして目を血走らせ、りッちゃんの顔に包丁を突き付ける。
わたしはその言葉の通りに、駆け寄るのを寸でで止めた。
「そうそういい子だ、それでいいんだよ……」
おじさんは顔を歪めてにやりと笑う。
「……アンタが、ここに忍び込むためにどこかの鍵を開けたのね?」
「ああそうだ。玄関の扉をピッキングして忍び込んだはいいが、コイツが入ってきちまった時はどうしようかと思ったぜ。だが……」
顔面ぐちゃぐちゃゾンビくんを見て「フン」と鼻を鳴らした。
「おかげでこうしてあんたらを捕まえられたんだ。感謝するぜゾンビ野郎」
「……それで、アンタはこれからどうするのよ?」
りっちゃんが、多分臭いおじさんの息に顔をしかめつつ聞く。
「大方、食料目的で忍び込んだんでしょうけど、おあいにくさま。こっちだって最後の食糧が今尽きたところよ。……それに、今は日中。この家の周りはゾンビがたむろしてるわ。奴らの多くが家に帰る夜中までこうしてるつもり?」
その言葉に、おじさんはクヒっと喉を鳴らして、野良犬みたいに叫んだ。
「もうどうでもいいんだよんなことは!」
「なんですって?」
「どうせもう世界はゾンビで溢れちまって人類は終わりなんだよ!どうせ俺もすぐに死ぬさ。だったらぁッ――」
「きゃっ!?」
捕まえているりっちゃんの顔を、グイッと引き寄せて
「ここで死ぬまで思う存分楽しんでやる、このイカれた世界をエンジョイしてやるよ!」
その美貌を、息のかかるような距離から覗きこんだ。
「お前らの身体でなぁ……」
舐めるような視線で全身をねぶり、舌なめずりする。
そして、片手がりっちゃんの胸を揉みしだこうと、下から掬い上げるように動いて
スカッと空ぶった。
「あ、あれ?」
残念!りっちゃんのは掬い上げられる程の大きさじゃないんだよ。貧乳を甘く見た。それがお前の敗因だ!
困惑するおじさんの視線が無い胸に逸れた瞬間、わたしはすかさずおじさんに向かって駆けだした。
「りっちゃんを離せーー!」
そしてタックルを決めようとして、胸が大きく揺れたせいでバランスを崩してつんのめった。
「んにゃあ!?」
そうだった。わたしっていきなり動くと、胸が弾んで大抵バランスを崩すんだった。なんと忌々しきは我がおっぱい。
巨乳を甘く見た。それがわたしの敗因だ!
「にゃあああああああ!?」
「うおぁ!?」
その時、わたしはつんのめった勢いのままにおじさんに向かって倒れ込み、おじさんは慌てて、本当に思わず、包丁を私に向かって突き出した。
そして、私のお腹に、さくりと包丁が突き刺さった。
「ふぇ?」
私はお腹に根元まで刺さった包丁を、キョトンと見つめる。
「う、うわあああああああ!?」
おじさんが悲鳴を上げて、包丁を横に薙いで引っこ抜くと、横一文字に切り裂かれたわたしのお腹から、血が溢れて
どぷり。
と、弾けるように内臓が飛び出した。
「ひいいッ!?」
おじさんが見つめる中、ピンク色のホースみたいな大腸と、一回り小さくてミミズみたいな小腸が、ぼとととぐちゃりとリビングの床に重なり落ちる。
そしてわたしは、流れ広がる血だまりに足を滑らせて、ほんのりと湯気の立つ、血と内臓の海に倒れ込んだ。
「う、うひゃあああああああああああああああああ!?」
赤く染まった視界の外で、おじさんの狂ったような絶叫が聞こえる。
「お、お前が悪いんだぜッ俺は殺すつもりなんて無かったのにおお前が飛び出すからアアアッ!」
泣き叫ぶような、恐怖を必死に振り払おうとするかのような、そんなおじさんの声を聞きながら、わたしは……。
「あ~ビックリした~」
のんきにつぶやいて立ち上がった。
「ええええええええええええええ!?」
あ、おじさんがビックリしてる。
いやいやビックリしたのはこっちだよ。だっていきなり刺してくるんだもん。
「も~酷いよおじさん。もしわたしが死んでなかったら、わたし死んでるとこだったよ!」
腰に手を当ててプンスカ怒ると、おじさんは物凄い脂汗を浮かべて、ガチガチと歯を鳴らしながら、恐怖に目を見開いた。
「な、何だよお前なんで動いてんだよだってお前……ッ」
わたしのお腹にぽっかり空いたがらんどうと、床に広がる内臓を見て。
「もう、死んでるじゃねえかああああああ!?」
金切り声で絶叫するおじさんに、わたしは
「え、そうだよ?」
当たり前の事を聞かれたのできょとんと答えた。
「へあ?」
呆然とするおじさんに、わたしはちっちゃな身体でおっきな胸を張り
「だってわたし、ゾンビだもん♪」
ニッコリ笑顔で答えた。
「……あ?」
「も~信じてないでしょ~嘘じゃないんだからね」
我ながら会心の名乗りに思いのほか薄いリアクションを返され、頬を膨らませて床にこぼれた内臓を手に取った。
「ちゃんと肌は冷たいし心臓だって止まってるよ」
まだ温かなそれを、お腹に空いた傷口から中にえいっと詰め込んでく。
「違うのは、ちゃんと意識を保っていることと……」
一通り詰め終わり、それからお腹にきゅうっと力を込めると
「再生能力があるってことだけ」
じゅうじゅうと湯気が出て、傷口周りの皮膚が泡立ち、すぐに湯気が収まると、そこには傷一つ無いツルッツルのお腹がこんにちは。
「ほらこんなふうに、ね☆」
今度こそバッチリ笑顔で決めたわたし。ウィンクまでサービスしたこれへのリアクションはッ
「ウッ、うげええええええええええ!」
おもいっきり吐かれました。なんでよ!?
「ちょっ、なんで吐くのよ!?」
がびーんとショックを受けるわたしの前で、りっちゃんを離して床に片膝をついてげーげー吐くおじさん。
「ちょっと乙女にたいしてそのリアクションはなによ!」
乙女のプライドを傷つけられて怒る私に、おじさんはまるで化け物でも見るかのような目を向ける。
「よ、寄るんじゃねえ化け物!これ以上上近づくな殺しても死なねえバケモンがッ!」
「いや挙句の果てに化け物扱いとか酷くない!?」
堪らず抗議するわたし。もちろん溜息をついて「そりゃそうでしょ……」と額を押さえるりっちゃんなんて無視だよ!
「それにこれでも結構大変なんだよっ。始めの頃は身体がダルくてダルくて仕方なかったし、いくら食べても人肉以外じゃ満腹にならないしで苦労してるんだよ!それにこの再生能力だって――」
お腹をポンと叩くとグゥ~と鳴った。
「使うとすっっっっっっごくお腹が減るんだから!」
そうだそうだとグ~グ~鳴くわたしのお腹。
「おかげで今空腹がクライマックスなんだから、おじさん責任とってよねっ」
「せ、責任……?」
ポカンとするおじさんに、わたしは指を突き付けビシッと言った。
「おじさんの
き、決まった!
わたし今きっと最高にカッコいい。これならきっとおじさんも――
「うひぃああああああああああああああああッッ!」
ナイスリアクションいただきました!
やっぱりゾンビの端くれとしては、これくらいビビってもらわないと死んで動いてる甲斐が無いっ。
案の定おじさんは涙を流して逃げようとするけど、そうはロメロ御大が許さないよ!
わたしは足を踏み出し、ぶるんと弾むおっぱいにも負けず今度こそ駆け出した。
そして、目指すはおじさんの床に立てた片膝。そこを右足で力いっぱい踏みつけて、残る左足の膝を振り上げて繰り出すはッ
「シャイニング・ウィザァァァァァァドッ!!」
兄ちゃんとテレビでプロレスを見てから一度はやってみたかった、素晴らしき中二ネーミングの飛び膝蹴りだあ!
「ふぶえッ!?」
顔面に叩きつけた膝から伝わる、バキバキと顔面を粉砕しつつめり込む感触。
「超・気ッ持ちいいいいいいいい❤」
たまらず歓声を上げ、軽く絶頂するわたしの膝で、おじさんの頭がクラッカーみたいな音をたてて、脳漿ブチまけ弾け飛んだ。
「うひゃあああああああ♪」
鮮やかなピンクの脳漿がぺちゃぺちゃ当たり、首から噴水みたいに噴き出した血で全身ずぶ濡れになったけど、わたしのテンションはもう最高。気分はまさにビールを浴びる野球選手。ビールかけってきっとこんなカンジなんだろうね!
「……あ~詩音。気持ち良く笑顔キメてるとこ、ちょっといいかしら?」
そんなわたしに声をかけてくるりっちゃん。
ははん。さてはあまりのカッコよさに惚れちゃったね?でも残念わたしに百合属性は無いのだよ。悪いけどりっちゃんは兄ちゃん一筋でいてね❤
「なんかすごく失礼なこと思われているような気がするけど、ここは置いておくわね……ねえ詩音、ちょっと周り見てちょうだい」
なにやら頭痛をこらえるようなしかめ面のりっちゃんに言われて、わたしは周りを見渡した。
壁、赤い血しぶきがとっても鮮やか。天井、弾けた脳漿がこびりついて、血と一緒にぺちゃぺちゃ落ちて雨みたい。床、一面血だまり内臓だまり、ピクピクしてるゾンビくんも心なしか気持ちよさそうだね。
「どう思う?」
もちろん輝く笑顔でサムズアップ。
「超サイコー!」
するわたしに、りっちゃんもニッコリ笑顔で
「で、誰がこれ片付けるの?」
時が、止まった
「……………」
世界が、凍った。
「……………」
総てが、沈黙した。
「……………」
長き停止と静寂の果てに
「だ・れ・が・か・た・ず・け・る・の?」
そして時は動き出す!
「テヘペロ☆」
「オラアッ!!!!」
全力で拳骨されました。
必殺スマイルとか無駄無駄でした。
◇◇◇
『この日世界は終わり、そして始まる』
一人の男がそう告げた日、世界は死んだ。
そして奴らは現れた――生ける屍、ゾンビ。
人類の生息域全てに現れた彼らは、その圧倒的増殖力をもって瞬く間に世界を呑みこんだ。対して人類は、持てる知恵と技術の総てを使い、全力で生き足掻く。
そして現在、人類は荒廃した都市に、人里離れた山中に、絶海の孤島に、遥かな海上に、それぞれが集まり、生きるための闘争を続けていた。
これは、そんな死に果てた世界で
「ひぃ~んもうヤダお腹すいたよぉ~……」
「いいから黙って掃除しなさい!ほらそこ脳漿着いてるわよきちんと拭き取って!」
精一杯に今を楽しもうとする
「これ終わったらご飯にするから、それまで頑張るわよ」
「ほんとに!?うんわかったわたし頑張っちゃうよ!」
「まったくあんたは途端に元気になるんだから……って詩音!張り切るのはいいけど、いきなり走りだしたら――」
「うにゃあああああああああああ!?」
そんな、彼女達の物語。
――世界の終わりに、男は言った。
『
ここまで読んでいただきありがとうございます。
メインヒロインはちんちくりんのロリ巨乳で倫理観難ありのサイコパスです。この物語はそんな彼女を中心にゾンビワールドをエンジョイする人々を描いていきます。
次の投稿はメインで連載している作品が詰まったらなので、作者自身何時になるかは分かりません。ゆるりとお待ちください。
あ、ちなみにメインヒロインの名前は、作者が初めて見たゾンビ映画の主人公から取りました。フリーマンがちょい役で出てるやつね。