『氷狼』蛇足編   作:如月SQ

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夫婦

「ノルンとの結婚、私達に認めさせてみなさい!」

 

 そう言って母様はルイジェルドに腕を組んで向かい合った。

 私達、というのは母様、ママ、お母さん、そして私の4人の事。

 向かい合うのはノルンとルイジェルドの当事者二人。

 母様はルイジェルドにだけ何かをさせるつもりだったようたけど、ノルンの物言いが入った。

 

「お母さん達を認めさせなきゃいけない、ってのはもう良いけど!

 結婚ってのは二人でするものでしょ?ルイジェルドさんだけの問題じゃないでしょ?私も参加する!」

 

「むー……仕方ないわね。認めましょう!」

 

 母様は渋々と言った様子だったけれど……何処か楽しそうでもあった。

 ……まぁ、そういう事、だよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一の試練は、家事よ!今の時代、夫婦片方だけが家事をするのは時代遅れ!いざという時には、普段しない夫も出来るようになるべきよ!パウロは出来ないけど」

 

「わざわざ言わなくて良くないか?」

 

「家事という事なら私が適任でしょう。

 お掃除、お洗濯、お料理の三つをこなして下さい。

 それらの成果を私が審査させていただきます」

 

「ルイジェルドさん!頑張りましょう!」

 

「ああ」

 

 母様の言葉に、ママは張り切っているようだった。

 眼鏡をクイッと上げて、光らせている。

 

 一方でノルンとルイジェルドは……気合い十分みたい。

 ノルンも家事を一切しない訳じゃないし、ルイジェルドも長生きしてるんだからきっと大丈夫だろう。

 そう思って静かに事見守ることにした。

 

「ルイジェルドさんは窓拭きをお願いします!私は床を……」

 

「あっノルン姉、ルイジェルドさん、いきなり水でやると逆に汚れるよ」

 

「え、そうなの?」

 

「む……本当だな、逆に濁ってしまった……」

 

 ……大丈夫かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴシゴシ

 

「んんー!結構お洗濯大変……!もう腕が……!」

 

「ノルン姉、ノルマまで半分だよ!頑張れー!」

 

ゴシゴシビリッ!

 

「…………む、力を込めすぎたか。破けてしまった……すまない」

 

「あら……旦那様のパンツが……仕方ありませんね。

 あまり力を込めすぎない事と、その時の布によって力加減も変えてみるといいかもしれませんね」

 

「ああ、わかった。やってみよう」

 

「……俺のパンツ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「干す時も気を付けないといけません。

 しっかりと広げて乾かさないと、乾いた時に皺になってしまいます。

 なのでこうしっかりとピン、と広げて乾かします」

 

「ふむふむ……じゃあ、こう、ピン、と!」

 

パンッ!

 

「成程、こうか?」

 

パンッ!ビリッ!

 

「ああ、お父さんのシャツが……ルイジェルドさんはもう少し手加減しないとねー」

 

「面目ない……」

 

「……なんで俺の服ばっかり?」

 

「私達の服をルイジェルドさんに洗濯して貰う訳にはいかないでしょ?」

 

「…………そりゃそうか。そりゃあ、そうだけどよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノルン、調味料を入れる前に、本当にそれであってるか確かめるべき」

 

「え、あっ!これ砂糖!?危なかった……!魚の砂糖焼きになるところだった……」

 

「ルイジェルド様、かなり手慣れておりますね」

 

「ああ、食は大事だ。故に最低限は、な」

 

「ノルン?夫のほうがご飯が美味しいのは……問題じゃないかしら?」

 

「むぅ……それは確かに……」

 

「ふふん、仕方ないわね。私がお父さんをゲットした、ギース直伝のレシピ、教えてあげる!ルイジェルドさんの口から、毎日食べたいって言って貰いたいでしょ?」

 

「うん……うん!言って貰いたい!お母さん、私頑張ります!」

 

「その意気よ!」

 

「私も……教えて貰って良いですか?ゼニス様……」

 

「アイシャ……勿論よ!貴女も私の可愛い娘なんだから、遠慮なんてしないで良いのよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は子守りよ!夫婦なんだから、いずれは子宝に恵まれる筈よね!

 ルディにジーク君とリリちゃんとクリスちゃんを連れてきて貰ったわ!」

 

「子守りは割りとしてきたからな、審査はあたしがしよう。

 とはいえ、子守りは大丈夫だと思うがな?皆最低限出来るだろう」

 

「ルイジェルドさんとの……子供……」

 

「ノルン姉ー何考えてるのー?顔真っ赤だよー?ししし」

 

「な、なんでもないよ!リリちゃんよしよーし!良い子だねー」

 

「きゃは!」

 

「ジークハルト、か。 力強さの感じられる良い名だ。

 この髪色だ、この先我らのせいで苦労する事も多いだろう……。

 だが、強くなれ。そして、大事なものを守れるようになるんだ」

 

「あぅー……?」

 

「びぇえええええええん!あぁあああああああああん!」

 

「ク、クリスちゃーん、じいじだぞー、怖いことなんもないぞー……。

 だ、抱きかたおかしくねぇよな……?全然泣き止まねえ……」

 

「あー……クリスはエリオットが大好きなので、姿見えないとすぐ泣いちゃうんですよ。

 私でもなかなか泣き止ませるのが大変で……ほーらよしよし、もうちょっとしたら赤パパくるよー?よしよーし」

 

「……うむ、やっぱり問題なさそうだな。ゼニス、良いだろう?

 家事は頑張りましょうだったが、子守りは大変よく出来ました……と」

 

「そう……ね。第二の試練はクリアね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第三の試練はやっぱり腕っぷしよね。ノルンを守れるか、証明してみなさい!

 こっちで暴漢を用意したわ!ルイジェルドさん、やっちゃって!」

 

「…………何してるんですかお父さんに、フィッツさん達……」

 

「お父さん?違うなぁ!俺はグレイラット仮面1号!」

 

 シャキン、とポーズを取る父様。

 顔面に鼠の仮面をしているだけの、普段通りの父様だ。

 剣は木剣だけど。

 

「同じく!グレイラット仮面2号!」

 

 シャキン、と父様と鏡合わせになるようなポーズを取るのはフィッツ。

 妙にノリノリで……なんだかちょっと可愛い。

 

「お、同じく……グレイラット仮面3号……」

 

 小さな体躯でボソボソと呟いたのがロキシー。

 仮面の隙間から見える耳は真っ赤に染まってる。

 うーん、可愛い。私の夫達が可愛くて困る。

 

「あっ、ルーディアです。エリオットの代わりですね。

 ルイジェルドさんと手合わせするのも久し振りです。お手柔らかにお願いしますね」

 

 エリオットも本当なら参加させるつもりだったんだけど、クリスがどうしても泣き止まないので世話を任せている。

 今は穏やかな顔で寝入っているので、安心してこちらに専念する事が出来る。

 久々に全てを装着した氷狼鎧を起動させながら、視界が狭くなる直前ににこりと笑った。

 

「……ノルン、下がっていろ」

 

 たら、とルイジェルドに冷や汗が滲んでいた。

 まぁ、ルイジェルドなら感じるだろう、私がこの軽い態度とは裏腹に、割と本気な事を。

 母様の意図は理解したけれど……私も本当の所はそこまで納得してなかったんだろう。

 ここいらで一つ、ルイジェルドには悪いけれど憂さ晴らしも兼ねて、この程度の試練はさらっとクリアして貰おう。

 

「ルイジェルドさん……」

 

 心配そうなノルンへ、ルイジェルドは優しく微笑みかけた。

 

「案ずるな。お前が惚れた男の勇姿、見せてやろう」

 

 あまり柄ではない、少しぎこちない言葉だけれど、ノルンには効果抜群だったようだ。

 頭を撫でながら言われた言葉に、ノルンは顔を真っ赤にして嬉しそうに笑い返していた。

 

「えへへ……頑張ってください!」

 

「……あんな仲好さげな二人の仲を引き裂くんですか……?」

 

 ロキシーがひどく情けない声を出した。

 仮面の奧でなんとも言えない表情を浮かべているだろう事が、見なくてもわかる。

 ノリノリだったフィッツも、少しテンションが下がっているようだった。

 

「頑張ってくれたら後で、ごほーびあげますよ」

 

「「!」」

 

 なのでこんな言葉で鼓舞する事にする。

 母様の為に……頑張ろうね。

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