『氷狼』蛇足編   作:如月SQ

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皆様、あけましておめでとうございます!
更新は遅いですが、それぞれちゃんと終わらせられるよう、更新していきたいとおもいます。
今年もどうかよろしくお願いします。


不審なシズカ

 アレクを五人目の夫に迎えて暫く。

 今までで最もパワフルな赤子であるシアに四苦八苦しつつも、その件についての家族の反応が緩和し始めた頃。

 シズカとの行為を終えて、ベッドの中で語り合っていたルーディアは、 ふとその態度に違和感を覚えた。

 

「……そうね」

 

 何処か上の空と言うか、考え事でもしているのか、どうにも返事がおざなりであった。

 

「……シズカ、どうしたの?気持ちよくなかった?」

 

「え?なにが?いつも通り、気持ちよかったわよ?」

 

 しかし、ルーディアがそれを疑問に思い問い掛けてもきょとんとした顔で返されてしまう。

 嘘を言っている様子はなく……けれど暫くすればやはりまたどうにも態度がおかしくなってしまう。

 

「…………むぅ」

 

「……?」

 

 それでもシズカ自身に自覚がない以上、ルーディアはそれ以上踏み込むことは出来なかった。

 問い質しても答えは出てこないような気がしたからだ。

 

「……そろそろ寝よう、おやすみ、シズカ」

 

「あ、うん、おやすみ、ルーむきゅ」

 

 ルーディアは僅かに感じる不満を誤魔化すように、シズカの頭を抱え込んで眠りについた。

 ぎゅう、と自らの胸に押し付けて、その温もりを堪能し……つむじに顔を埋めながら目を閉じた。

 一方で、顔をルーディアの豊満な胸に埋められたシズカは、甘いミルクの香りと僅かに感じる汗の匂いに包まれていた。

 息苦しさにもがくものの、膂力の差は歴然であり……気絶するように意識を飛ばすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、シズカは朝早く家を出ていった。

 その直前に、シアを穴が開く程に見つめてから。

 ルーディアはシズカの思いの全てを理解は出来なかったものの、悪感情……害そうという思いは感じ取れなかった。

 表情は真顔で、やはり何か考え込んでいるような様子だった。

 

「どうしたんだろう……」

 

 どうにも様子のおかしいシズカに、ルーディアは首を傾げた。

 最近は熱心に何処かへ通い詰めているようであるし……。

 思い詰めた様子はなく、体調が悪い訳でもなさそうだし、とルーディアは不思議に思いつつも、その後ろ姿を見送っていた。

 

「ニャ?シズカの奴かニャ?探ってみるかニャー?」

 

 そこに、遊びにきていたリニアが声をかけた。

 シャロンとシャルルに纏わりつかれ、両耳を引っ張られた状態を気にする事なく、次の瞬間には二人をポイポイと放り投げていた。

 

「リニア……うーん……そうですねぇ……」

 

 ひらりと空中で体勢を整えて着地し、歳の離れた従兄弟へと再度突撃していくシャロンとシャルル。

 それを嬉しそうにいなすリニアを眺めながら、ルーディアは暫し悩む。

 多少の違和を感じる程度で、問題が起きてる訳でもない。

 特段、緊急性があるとも思わない。

 

「……うん、気になるから、お願いして良いですか?」

 

「りょーかい……ニャッ!」

 

「ニャー!」

 

「ミャー!」

 

 けれど、ルーディアはお願いする事にした。

 単純に気になってしまった事もある。

 けど、微かに頭に過ったのは『前』の世界での話。

 オルステッドから聞いた、帰れない事に絶望したシズカの話。

 自ら命を絶つ程絶望している様子は微塵もないけど、故郷に帰れないのは変わらない。

 何が切っ掛けかわからないのだから、警戒して然るべしだろう。

 

 宙を舞う歳の離れた弟妹達を見守りながら、言い訳のように思った。

 ……根底にあるのは、自分との時間の間に上の空だったシズカへの不満であることは、胸の奥に閉まっておいた。

 自分は五人も夫を持っていながら、その相手には誠実さを求めるなんて……あまりにも身勝手だったから。

 そんな自覚があったから。

 自分のそんな醜い一面を自覚しつつ、穏やかな笑みを浮かべて本心を覆い隠していた。

 

「まだまだニャー!」

 

「まだまだミャー!」

 

「いくらでも相手してやるニャ」

 

 リニアは甥と姪に絡まれて、とても楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイシャに一言断り、エンド傭兵団の仕事を休んだリニアは、慎重にシズカの後を追った。

 軽快な足取りで進むシズカは、暫く帰らないと宣言していた。

 空中要塞にでも向かうのかと思えば、どうにも転移魔法陣のある方向と違う。

 

「なんニャなんニャ。面白くなってきたニャ」

 

 リニアからすればボスが少し気にしていたようだったから、その気を晴らせれば良いかくらいの軽い気持ちで承った追跡ではあるが、何が出てくるかわからなくなってきた今、リニアは少し浮き足立ち初めていた。

 それこそ、追っている相手が少しでも戦えるような相手であれば、即座に気付かれてしまうくらいに、気配の抑え方等もおざなりになっていた。

 

「……」

 

 けれど追われているのはまったくと言って良い程、戦いに覚えのないシズカ。

 そんな稚拙な追跡であろうと気付かれる事なく、追跡は無事続いていった。

 

 人里を離れ、森を抜け……。

 その時点でリニアがラノア魔法学園で目撃した、シズカの歩行距離を優に越えていたが、それでもなお進んでいた。

 シズカがここまで外を歩くとは思っていなかったリニアは驚きつつも、見晴らしの良い草原の先に見えた、ぽつんと建っている小屋に目を細めた。

 シズカの足は、明らかにそちらへと向かっている。

 

「あれが目的地かニャ」

 

 漸く……という程長い追跡ではなかったが、出不精だと思っていたシズカのイメージからするとこの移動距離は予想外であり、多少疲労を覚えていた。

 それが終わるのだと、リニアはホッと安堵の息を吐いた。

 

 だが、見晴らしの良い草原という事で、そのままついていけば流石にバレる。

 身を潜められる場所で留まり、目を凝らして小屋へと向かうシズカを見つめていた。

 幸いにもリニアの目は良く、小屋の前にシズカが辿り着いてもハッキリと見えている為、小屋に入ってから近付いて様子を見よう、そう思っていた。

 

 小屋の前に辿り着いたシズカが扉を叩き、その扉がシズカを招き入れるように開いて……そこから現れた顔にリニアは目を見開いた。

 

「…………!」

 

 ひょろ長の丸眼鏡……ザノバがシズカを出迎えていたのだ。

 しかも、気持ち悪いくらいの笑みを浮かべて。

 明らかな歓迎ムードに、リニアの胸に違和感が募る。

 

「あのザノバが、シズカを笑顔で……?妙だニャ……?」

 

 自他共に認める人形狂いのザノバに、殆ど人と交流を持たなかったシズカ。

 ルーディアを中心に多少関わりはあったのだろうが、あの二人が二人きりで人里離れた場所で会う理由がわからなかった。

 二人に険悪な様子はなく、一言二言言葉を交わして小屋へと入って行ってしまった。

 惜しむらくは、流石に距離があって声までは聞こえない事だろうか。

 

「さてさて、あの二人が、二人きりで一体どんな話をしているのかニャー……?」

 

 リニアは好奇心のままに、扉の閉じられた小屋へと近付いていった。

 暫く様子を見て出てくる様子はなかった為に、あの小屋で何かをしているのだと確信して。

 ついでに、悪いことに利用する気はないが、何かしら弱みでも握って弄ってやろう、などとニヤニヤと笑いながら、けれど慎重に聞き耳をたてたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ、ここにいれるのですかな……?」

 

「ええ、そうよ、そこよ。あってるわ」

 

「ぬ……少しキツイですな」

 

「ん、大丈夫よ。一気に押し込んで良いわ」

 

「む……わかりました、行きますぞ……!」

 

「そう……その調子よ……良いわ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニャ……!!!???」

 

パキッ

 

 リニアは聞こえてきた会話に、顔を真っ赤にして後退りしてしまい、小枝のような物を踏みつけてしまった。

 そして、同時に止まった小屋の中の会話に焦り、全力でその場を後にした。

 

「ぼ、ボスに報告ニャ……!」

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