そんなルーディアと対面した夫達の反応。
『フィッツの場合』
「ただいまー」
「おかえりフィッツ」
「……ん?ルディ……」
「ん?」
「……なんだろ、何時も可愛いんだけど、今日は一段と可愛……あれ?」
フィッツは違和感に首を傾げ、思わずルーディアの左頬に手を当てた。
ルーディアはその手に嬉しそうに頬擦りし、いつの間にか頭半分程も大きくなったフィッツを見上げた。
「気付いた?ノルンが治してくれたの」
嬉しそうに笑う妻に、フィッツは驚き、直ぐに笑みを浮かべた。
「そっか……ノルンちゃん頑張ってたもんね」
「知ってたの?」
「いや、詳しくは知らなかったよ。でも、ルディの為に頑張ってるような気はしてたよ」
「そうなんだ……ふふ、ノルン、頑張ったんだね……」
自分の頬を撫でるフィッツの手に自らの手も重ね、嬉しそうに頬擦りを続ける。
肌の凹凸に引っ掛からずスムーズに頬擦りが出来てご満悦だ。
そんなルーディアの姿に、フィッツは仄かに顔を赤くし、タイミングを見て親指をルーディアの口に入れた。
ずぼりと口の中に入ってきた指をルーディアは咥え、怪訝な表情を浮かべる。
「はむ?」
その行動の意図がわからず、ルーディアは思わず咥えさせられた指をペロリと舐めた。
途端、フィッツに雷が落ちたような衝撃が走り、その目を見開いた。
そして、ルーディアに身を寄せると、ひょいとその体を横抱きにしたのだった。
「あぇ?どうしたのフィッツ?」
「お腹とかの火傷跡も見ようかなって」
「まだ治ってないよ?全身だし、ノルンの魔力が足りないから、ゆっくりやっていこうって……」
「そっかぁ」
「……フィッツ?なんで寝室に行く足が止まらないの?」
「まぁまぁまぁまぁ」
「まだお昼だよフィッツ!ねぇ、聞いて―――」
バタム
ルーディアはその日、身体中の火傷痕を丹念に丹念に責められる事となる。
良くも悪くも敏感な火傷跡を責める事等今までなかった事から、今までとは違う感覚にルーディアは矯声をあげさせられる事となった。
次のノルンによる治療の日、モジモジした、少しだけ残念そうなルーディアの姿があったそうな。
『美味しくいただかれる』
『ロキシーの場合』
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい、ロキシー」
ルーディアと対面したロキシーは立ち止まり、戸惑い、その瞳を瞬かせた。
くしくしと目を擦り、改めてルーディアの顔を見つめ、首を傾げる。
そんな可愛らしい反応に、ルーディアは思わず笑ってしまった。
「ふふふ、どうしたんですか、ロキシー。私の顔に何かついてますか?」
「い、いや、むしろあったものが無くなったと言いますか……。
その、火傷跡、どうしたのですか……?あの痕は現代の治癒魔術では治療出来なかった筈で……」
「それが、なんとですねロキシー、ノルンが古傷にのみ作用する、特別な治癒魔術を作り出したのです!
見てください、このツルツルの肌。頬擦りしてもひっかかる事ないんですよ!」
「それは……嬉しいですね」
満面の笑みを浮かべるルーディアだったが、ロキシーはその様子に何処か複雑な表情を浮かべていた。
もっと喜ばれると思っていたのに、と不思議に思い、ルーディアが首を傾げると、ロキシーはふぅ、と小さくため息をついた。
「いえ、すみません、喜ばしい事なのはわかってるのですが……。
ノルンちゃんが治癒魔術の勉強を頑張っていた事も知ってましたし、何か特別な試みをしているの知ってました。
ただ……それが実った事を今まで知らず、そもそもルディの火傷跡を治すのを諦めていた自分が……情けなくて」
「そ、そんな事ないですよ、先生、元気出してください!」
ルディは落ち込むロキシーを抱き締める。
何時もなら豊満な胸に埋まり、だらしない笑みを浮かべるロキシー。
だが、今回は自分の得意分野である魔術関係であり、教師として教え子の一人の努力を知らなかった事、更には妻の傷痕を治すのを端から諦めてたいた事を突き付けられ、その心は深く深く落ち込んでしまっていた。
「はぁー……ルディ……僕はもうダメです、ダメ教師です……何十歳も年下の子供に求婚されて喜んでた変態野郎です……」
「せんせぇ!」
ルーディアはその胸にロキシーの顔押し付けるも、落ち込んだロキシーはなかなか復活する事はなかったのだった。
『凄く落ち込む』
『エリオットの場合』
「ただいま」
「おかえり、エリオット」
出迎えたルーディアの顔を見たエリオットは、その瞬間ガチン、と動きを止めた。
目を見開いてルーディアの左頬を見つめていた。
「ほら、エリオット、気付いた?ノルンが治してくれたの」
朗らかに笑うルーディア。
するり、と頬を撫で、嬉しそうに笑みを浮かべるルーディア。
そんなルーディアを見て、エリオットはかつての日々を思い出していた。
フィットア領で、家族と共に暮らす日々……そこにルーディアも混ざって、ずっと続くと思っていた日々……。
そして……。
ポロッ……
「え、エリオット……?」
気付けば、エリオットの瞳からは涙が溢れた。
転移事件が起きて、盗賊に捕えられ、暴れたエリオットは酷く痛め付けられ……いや、殺される寸前だった。
それをエリオットはルーディアに庇われたのだ。
結果、ルーディアは傷つけられた。
初めて捕えられていた場所から連れ去られた後、響いたルーディアの悲鳴は、長年エリオットの耳にこびりついて離れる事はなかった。
戻ってきたルーディアは酷く憔悴した様子で……それでも気丈に振舞い、痛みと恐怖に泣くエリオットに笑みまで浮かべて励ましてくれていた。
食事はエリオットに分け与え、脱出を試みた時もルーディア任せで、そこが火事となった時もエリオットには何も出来なかった。
結果、自分は五体満足だったのに、ルーディアは酷く酷く、心も体も傷ついて。
それでも前を向いて『必ず帰りましょう』と無機質な声で、無表情で、火傷跡の残る顔で……言ってくるルーディアに、エリオットは心底自分が情けなかった。
そんな火傷跡が、綺麗さっぱり無くなっていた事が、エリオットは嬉しくて堪らなかった。
「ルーディア!」
「わっ」
エリオットはルーディアに覆い被さるように、その体を抱き締めた。
首筋に顔を埋めて、涙を流し続ける。
「良かった……良かった、ルーディア……」
エリオットは肩を震わせて泣き続け、ルーディアはその頭に手を伸ばした。
「……うん。私はもう、大丈夫だよ」
その頭に左頬を当て、その赤毛を優しく撫でた。
「うっ……うぅうう……!良かった、よがっだぁ……!」
ぎゅうと、少し苦しいくらいに抱き締めてくるエリオットを、ルーディアは慈しむように笑みを浮かべ、落ち着くその時まで優しく撫で続けていた。
『号泣する』
『シズカの場合』
「ただい……ルーディア!その顔!」
「おかえりなさい、えへへ、ノルンが治してくれたんです」
「え、でも確か治癒魔術じゃ治せないって……」
「ずっと研究してたらしくて……専用に改良してくれたんです。
ふふ、凄いですよね、自慢の妹ですよ」
「へぇー……凄い……触ってもいい?」
「勿論ですよ」
「ん……気持ち右よりもちもちしてる?ハリがあるというか。
うーん、それにしても凄いわね……」
ふにふに
「頬擦りしてもざりざりしないので、嬉しいですね」
「そんなの気にしてたの?ま、火傷跡あった時も貴方は綺麗だったけどね」
「今は?」
「もっと綺麗だわ、ルーディア。良かったわね、治って」
「はい、気分は最高です!」
「可愛い……。後で一緒にお出かけでもしたいわね」
「いいですね!」
『デートの約束をする』
誤字報告ありがとうございます。
修正しました。