ふふん、今日はルーディアと二人きりでデートの日。
きっかけがきっかけだし、負い目もあるし、普段はフィッツ達に遠慮してるけど、こういう機会では存分に楽しませて貰うわ。
「……こっちにきてからおめかしなんて初めてかも」
髪を梳かすくらいはしてたけど、今日はルーディアの妹のアイシャちゃんに頼んで、髪を結い上げて貰っていた。
うなじが露になってて、少し新鮮だった。
「綺麗で滑らかな髪で羨ましいですよ」
「そう?」
私の体は明確な変化が起き辛いとはいえ、肌や髪は傷みはする。
だからその辺りのケアは怠ってないつもりだったけど……実を結んでいるようで良かった。
素っ気ない返事をしたけど、内心とても嬉しい。
「……うん、よし完璧!それじゃ、お姉ちゃんとのデート楽しんできて下さいね!」
「ありがとう、アイシャちゃん」
笑顔を浮かべたアイシャちゃんにそう送り出されて、私はルーディアの待つ玄関へと向かった。
未だに本調子じゃない彼女は、車椅子に座ってノルンちゃんと話をしているようだった。
「ルーディア、お待たせ」
その言葉に会話を止めた二人の視線が私に向いて……今までは鉄面皮だったルーディアが、柔らかい微笑みを浮かべた。
「シズカ、その髪型とても似合ってますよ」
「んんっ!……あ、ありがと」
その表情の変化……慣れないっ!
元々美人だったけど、表情が変わると可愛さが滲んでくるっ!
更にノルンちゃんのおかげで顔の火傷もなくなって、魅力倍増だわ!
うーん、私の嫁が可愛すぎる……。
「それじゃ、私はこれで。二人とも楽しんで来て下さいね」
「うん、行ってきますノルン」
「行ってくるわ」
パタパタと家の中を歩いていくノルンちゃんを見送り、私達は互いに顔を見合わせた。
「では、行きましょうか」
「うん、今日は楽しみましょうね」
笑みを浮かべあって、私達は家を出る事にする。
ルーディアの車椅子を押して、穏やかな陽気の中、外へと足を踏み出した。
「まずは服よね。ルーディアいつも地味めな服だから……ほらこれとか!可愛いわよ」
可愛らしい上下の組み合わせで、ミニスカートのワンピースに上着という服。
そもそも肌の露出を好まないルーディアの生足、ないしはタイツの太ももを拝みたいという素直な欲望から差し出してみた。
「ん……ならシズカも着ませんか?私一人だと少し恥ずかしいですよ」
案の定少し恥ずかしいようで少し顔を赤らめたルーディアは、そんな提案をしてくる。
魔法大学の制服はこんなものだったけど、ルーディアはいつも裾の長いローブを着てたから……。
是非ともこういうのを着て欲しいわ。
その為ならペアルックくらい望むところよ。
「うーん……わかった、試着出来るみたいだし、着てみましょう?」
「そうですね」
早速とばかりにそれを手にして、試着室へと入る。
ルーディアの体を支えながら脱がし、早々にワンピースを履かせる。
そうして後は座りながらでも出来る状態にしてから、自身の着替えに取りかかった。
手早くそれを着た私は、最後に前のボタンをして、軽く体を動かす。
「…………うん、着心地も悪くないわ。ルーディア、どう?そっち、わっ!?」
悪くない着心地に気分を良くしながら、ルーディアのほうへと振り向くと、その光景に圧倒されてしまった。
「んんっ……前が、閉まらなくて……シズカ、ちょっと手助けして……」
サイズが小さかったのか、私が難なく閉める事が出来たボタンがまったく届かず、全面をその豊満な胸で押し上げているルーディアの姿があった。
薄手のワンピース故に上から見える谷間や、うっすら見える下着、何よりはち切れんばかりのその胸。
「……………………」(もみもみ
こんなものが目の前にあったらどうするか?
揉むしかないわ。
きっとフィッツ達も、特に私の胸さえ見てくるロキシーなんかは大いに賛同してくれる筈だわ。
「……シズカ?」
暫し夢中で揉み、その相変わらずのハリと柔らかさを堪能していると、ルーディアが困ったように笑って私を見上げていた。
さ、流石にやりすぎたわ。
私は素直に謝る事にした。
「はっ。ご、ごめんなさい」
「……ふふっ……続きは夜に、ね」
けど、そんな蠱惑的に笑うルーディアに、押し倒したくなるような強い衝動を覚え、それを押さえる為にそんな謝意は何処かにすっ飛んでいった。
あの後結局は似たようなデザインのものが大きなサイズのものがあった為に購入、そのまま着てペアルックでデートを続行する事にした。
少し実用的な買い物として魔道具店を見に行く。
とはいえ今回は特に入り用なものもなく、目ぼしいものもなく、ただ冷やかすだけで終わってしまった。
それでも、ルーディアと過ごすだけで本当に楽しくて、幸せだわ。
ルーディアもそう思ってくれると嬉しい……そう考ながらえ車椅子を押しつつ様子を伺うと……ルーディアも嬉しそうに笑っていた。
その笑顔で、自然と心が暖かくなる……この子と結婚して良かった……。
改めてそう思って、私達はデートを続けるのだった。
とはいえルーディアはやはり本調子ではないみたい。
カフェで軽食を取った後、目を擦り始めてしまった。
「あら……眠い?」
「ぅん……ごめんなさぃ……」
「ふふ、仕方ないわ。帰ってお昼寝しましょう?」
申し訳なさそうなルーディアの頬を撫でて、私は微笑みを浮かべた。
正直まぁ……残念ではあるけど、こればかりは仕方ない。
眠ったルーディアを連れ回しても何も楽しくないもの。
そう思って帰路を着いた時、不意にとある露店が目に入った。
シンプルなアクセサリーを売ってる店で、値段も安い。
「……ちょっとした思い出として、悪くないわね」
「……シズカ……?」
「ちょっとだけ待っててね、ルーディア」
そんな中で私の目についたのは特に装飾もないシルバーのペアリング。
パッとみた感じ、サイズも悪く無さそう。
「これ貰える?」
「はいよ、ありがとよ嬢ちゃん」
指を指しながら代金を差し出すと、露店のおじさんは嬉しそうに笑ってその指輪を差し出してくれた。
私はそれを受けとると、ルーディアの傍らで片膝をついた。
「んむ……?」
その右手を取って、その中指にその指輪を嵌める。
あら、やっぱりほぼピッタリね。
それをルーディアは眠そうな目で、不思議そうに瞬きをして見つめた。
「……右手の、中指……なの……?」
「そ、これでいいのよ」
私はその頭を優しく撫でて、自分の分の指輪は左手の中指に通す。
うん、これでいいのよ。
「さ、帰りましょ。今日は楽しかったわね」
頭上にハテナマークを浮かべるルーディアに笑い、私は車椅子を押すのを再開した。
うん、楽しかった。
また、こんな風にデートしたいわね……。
「ぅん……楽しかった……」
眠そうな声で、今にも眠りそうな声で、それでも嬉しそうなルーディアの言葉に、私は自然と笑顔を浮かべていた。
その日の夜。
寝室で、月明かりが照らす艶かしい肢体がベッドの上で仰向けで私を見つめていた。
右目だけで、けれど熱に浮かされたその瞳に、知らず知らずに喉が鳴る。
何度体験しても、なかなか慣れないわ……綺麗過ぎて。
豊満でけれどしっかりと引き締まった一糸纏わぬその体に、私はゆっくりと近付いていく。
ギシ……
身を乗り出すと、ベッドが軽く軋む。
そしてそのまま、私は覆い被さるように身を任せ、私の左手とルーディアの右手の指が絡んだ。
カチャ
そこでリングが当たって、音を立てる。
その音と月明かりで仄かに光る指輪に、私は笑みを浮かべて、ルーディアの唇を貪った。
左中指――人間関係の改善
右中指――邪気から身を守る