生まれた双子の赤子は、それぞれ名前をつけられていった。
青髪の子はリリ、赤髪の子はクリスティーナ。
ほぼ間違いなく、ロキシーの子とエリオットの子だ。
ルーディアは幸せいっぱいといった顔で、二人を同時に抱き抱えていた。
これで三人の夫、それぞれの血を引く子供が二人ずつ生まれた形となる。
その後、フィッツ、ロキシー、エリオットは次は自分の子供を……と競いながらルーディアとその身を重ねていく。
シズカも子供こそ出来ないが、その身に秘めた愛は負けていないと積極的に行為を望んだ。
……そしてそれら全てを、元気になったルーディアは返り討ちにして吸い付くしていった。
ルーディアとの行為を終えた夫達は次の日、昼まで寝室から出てくる事はなかった。
あまりのルーディアの強さに、同時に行為を行う事も増えていき……そしていずれもルーディアに白旗をあげる結果となっていった。
夫達に愛され、子供達を愛で、身も心も満たされたルーディアは、日々を非常に満ち足りた気持ちで過ごしていくのだった。
「ニャー。かわいい。ニャー」
「可愛いミャ」
「ミー…………」
新たに生まれた双子の家族をそれぞれ覗き込む、シャロン、シャルル、シャーレの三つ子の姿があった。
パウロとギレーヌの間に生まれた三つ子は、物心がついてから初めて新たに誕生した命を、物珍しげに見つめていた。
この三つ子、シャーレは兎も角として、シャロンとシャルルの二人は非常に暴れん坊であった。
その暴れっぷりは、あのリーリャが疲労困憊となる程……と言えばその凄まじさがわかるだろうか。
そんな暴れん坊であった二人は、ある時を境にその暴れ方に指向性を与えられた。
それを与えたのが、なんと悪戯っ子ルーシーであった。
ルーシーは暴れん坊達が、無理矢理押さえ込まれて力を余してある事に気付いていた。
それに対する同情はあったかもしれないが、一番は……。
「この二人がいれば、悪戯の幅が広がる!」
との事だった。
ルーシーはおっぱいを条件にララを引き込み、間接的にレオを従え、二人を打ちのめして従える事に成功する。
こうして、現在皆を困らせる悪戯軍団が結成されるのだった。
とはいえ功績は大きい。
困った顔をさせられる事は多くはなっていったが、本当に困らせられる事、苦労させられる事は格段に減っていったからだ。
一時的にその悪戯軍団にルーディアが加入した事もあり、悪戯は過熱していたが、今は既に鎮静している。
シャロンとシャルルの二人は、今日もルーシーの元で悪戯を繰り返し、楽しく過ごしていた。
一方で、シャロンとシャルル、加えてシャーレへの教育も始まっていた。
ニャーニャーミャーミャーと猫語しか話せないのは問題だろう、と言語学習を中心に行われていた。
ただ、そこはやはり暴れん坊、大人しく座って勉学に励む等出来る訳がないだろう。
誰もがそう思っていたし、事実シャロンはその通りだったのだが、シャルルは違った。
意欲的に勉学に励む姿は、真面目そのものであった。
直ぐに言語を覚えたシャルルは、他にも色々学びたいと、先生役をしていたルーディアにすがりついていた。
「ルー姉!もっと教えて欲しいミャ!」
臆病なシャーレもそうだが、自分とパウロの間からこんな子供が生まれるとは、とギレーヌが密かに戦慄していた。
パウロはパウロで、自分の息子に剣を教えるのを楽しみにしていた為に、肩透かしを食らっていた。
剣に興味がない訳ではなさそうだが、それより今は勉学や魔法に執心している様子だった。
「……まぁ、しゃーねーか……」
シャルルはそのまま魔法を意欲的に学ぶようになり、あっという間に無詠唱魔術の使い手となっていくのだった。
その一方、勉学から逃げたシャロンは当然と言うべきか、剣に傾倒した。
エリオットの素振りを見学し、自らの母親との仕合いを見届けて、目をキラキラさせていた。
以前ガル達とオルステッドの果たし合いを見てはいたものの、動きが早かったり高度過ぎたりで、よくわかってはいなかった。
だが多少成長し、また本気ではない動きな為にシャロンでも二人の仕合いは十分見る事の出来る物だった。
「あたし、やるニャ!」
拙い言葉でそう宣言したシャロンは、それから剣術に打ち込んだ。
パウロとギレーヌの娘だけあり、才能はピカイチ。
見る限りではどの流派を学ぼうと活かすだけの才能が見て取れた。
ただ、性分としてはやはり剣神流、という事で、主にエリオットが教える事が多かった。
「振り方は、こうだ」
身振り手振りでシャロンに教えるエリオットを、ギレーヌは感慨深い思いで見つめていた。
そして、三つ子の最後の一人シャーレ。
子供達の中でも一際大人しく、臆病で、泣き虫な子だ。
真っ白な髪と耳、肌も色白と、シャロンとシャルルとは傍目には兄弟には見えないだろう。
しかし、シャロンとシャルルはシャーレを守るべき妹としてしっかりと認識しており、よくシャーレをグルーミングしている姿が見て取れた。
シャーレも涙目ではあるものの逃げずに大人しく受け入れていた。
シャロンとシャルルの二人は時折喧嘩しているが、二人がシャーレに手を出した事は一度もなかった。
家族の誰もがシャーレを愛すべき、守るべき子だと認識しており、皆の愛を受けてゆっくりと育っていた。
その代わりなのか、シャーレの言葉はシャロンより更に遅く、未だにミーミーと鳴いている。
勉学にも剣術にも興味は示さず、見た目の儚さから体が弱い印象を持ってしまう。
少し前まではルーディアにくっつくとなかなか離れず、実親のギレーヌすら引き離すのに苦労していた甘えん坊だった。
最近ルーディアがレオの抜け毛(少し刈り取りもした)を使って作成した、白い狼のぬいぐるみを与えられた事で、多少なりとも甘えん坊の緩和が見えていた。
そんな折だった。
シャロンとシャルルの言い争いがひょんな事から喧嘩に発展した。
それ自体は珍しい事ではなかったのだが、丁度、本当に丁度その時、三つ子しか部屋にいないタイミングだった。
室内ではあったが、二人は取っ組み合いの喧嘩となる。
「ミー!ミー!」
涙目で鳴くシャーレだったが、二人はそれを意から外して、目の前の弟(姉)を叩きのめすべく、手をひっきりなしに伸ばしていた。
互いに服をひっぱりあいながらゴロゴロと転がり、ぽこぽこと殴打しあい……。
やがてどちらの手か、払い除けられた手が、シャーレの握っていた白い狼のぬいぐるみを弾き飛ばしたのだ。
その瞬間、ピタリと止まったシャーレの泣き声。
あまりにも瞬間的な事で、シャロンとシャルルの動きも止まってしまった。
そして、恐る恐る、二人がシャーレのほうを見ると……。
「ミ……ミ……」
その瞳いっぱいに涙を浮かべたシャーレが、ふるふると震えていた。
その悲しげな様子に二人は後悔に苛まれ、即座に謝ろうと二人がシャーレへと向き直った、その瞬間だった。
「ミィイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
「ニ゛ャッ!」
「ミ゛ャッ!」
音が衝撃となって、二人は打ちのめされ、悲鳴をあげてその場に崩れ落ちた。
二人は知るよしもない事だが、シャーレが放ったのは、ドルディア族固有の魔法、咆哮魔術だった。
二人の体は完全に麻痺し、意識も朦朧……。
そんな中、二人が見上げた先の光景は、シャーレが大きく息を吸っている所だった。
「おねえとおにいの、ばかぁああああああ!!!」
奇しくも、それがシャーレが発した初めての言葉となり……二人は敢えなく気絶したのだった。