異世界で僕は美少女に出会えない!? ~《ウェステニラ・サーガ》――そして見つける、ヒロインを破滅から救うために出来ること~   作:東郷しのぶ

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 2章スタートです! よろしくお願いいたします。


第2章 獣人の森の少女
1話 記念すべき初戦闘


 僕は、ついにウェステニラへ転移した。

 足場はシッカリしているし、呼吸も楽に出来る。海中や空の上では無さそうだ。

 

 ゆっくりと目を開ける。

 

 巨大な樹木が立ち並んでいる。

 どうやら、森の中に居るようだ。頭上より木漏れ日が差し込んでいるため、周辺はかなり明るい。

 

 夜では無いことに、ホッとする。

 いきなり見知らぬ真っ暗な森の中に放り込まれたら、最悪だったよ。爺さん神に感謝だね。まぁ、かなり運次第だったようなところはあるけど……。

 

 取りあえずボーッと立っていても仕方がないので、移動しよう。

 

 木々の枝葉が日光を遮っているせいか、足もとに雑草やツル植物のようなものは繁茂しておらず、意外と歩きやすい。気温や湿度も良い感じだし、新鮮な空気に包まれつつ小鳥(?)のさえずりを耳にしながらのウォーキングは、森林浴をしているみたいな気分にしてくれるね。

 

 森の中に漂う魔素の量も確認する。うん、充分な魔素がある。

 水魔法を使えば指先より水を出せるので、喉が渇いても安心だ。しかし、魔素を体内で魔力に変換する際には一定の体力が消費されてしまうから、いざという時のために不必要な魔力の行使は控えたほうが良いだろう。

 

 まず、水場を探すことにする。

 

 途中で、食べられる木の実が樹の上に()っているのを見付けた。

 ウェステニラの自然の中で採取できる食べ物については、ブルー先生の授業で習ったっけ。やっぱり、食べ物と飲み水の確保に、ある程度の見通しが立っていると安心できるね。

 

『異世界転移、大成功! でも、食べるものを見付けられず死にました。おしまい』じゃ、悲しすぎる。

 もしも映画だったら、観客の皆様、号泣不可避。「金返せ」との怒号も、不可避。

 

 まさに、〝知識は力なり〟だ。ブルー先生、ありがとう!

 

 ひとしきりブルー先生への感謝を捧げていると、背後でゴソリと音がした。

 

 僕はパッと振り向く。

 

 分かる、分かるぞ! 木々の陰に何か居る! しかも、明らかに僕を狙っている。

 プレッシャー具合より察するに、モンスターであることは間違いない。

 

 ウェステニラに来て時間は殆ど経っていないのに、いきなり初戦闘だ。武器無しなのはちょっとキツいけど、覚悟を決めるしか無い。

 

 どんなヤツが、僕の初戦闘の相手なんだろう? ゴブリンとかオークとかかな? 人型のモンスターだと、命を奪うのに躊躇してしまいそうだ。

 

 いや。ダメだぞ、サブロー。

 

 ここは異世界ウェステニラ。

 日本での考え方を引きずっていたら、命が幾つあっても足りない。

 

 未だ姿を現さないモンスターからは、動物めいた雰囲気を感じる。森に住むモンスターなので、熊や猪の変異種かもしれない。

 人型じゃなければ遠慮は無用だ。出現と同時に魔法の一撃を食らわせて、倒してしまおう。

 

「キュイィィィィィィン!」

 奇っ怪な叫び声とともに、ついに僕の前にモンスターが出てきた! 

 

 巨大なカニだった。

 

 え!? カニ? 森の中にカニ? 僕はパニくる。

 

 人間と同じくらいの大きさのカニが、飛び出した目で僕を睨みつけながら2つのハサミで威嚇してくる。

 なんで、森の中にカニが居るんだ!? 異世界だからか? いや、地球でも、カニが森に生息しているって話は聞いたことがあるような……。

 

 考えてみると、お伽話の『猿蟹合戦』に出てくるカニ。あの甲殻類は、明らかに地上での生活を満喫していた。何と言っても初登場シーンが、おにぎりを持っての散歩だ。子供心にあの絵本のイラストには違和感ありまくりだったなぁ……。カニがハサミでおにぎりを器用に持っていること自体、変だった。

 普通、おにぎりはハサミで真っ二つにならないか!? 

 

 結局、猿に酷い目に遭わされるカニをこれ以上責める気は無いが……。

 

「キュイィィィィィィン!」

 

 どうやら巨大ガニは、僕を襲う気満々のようだ。

 じゃんけん勝負必敗が運命づけられている生物の分際で生意気な! すぐに、一泡吹かせてやる!! 

 いや、よく見ると既にブクブクと泡を吹いてますね……。

 

 確かカニが泡を吹くのって、呼吸困難に陥っている証拠だった気がする。

 コイツ、放っておいてもそのうち死にそうだな。

 

 だいたい、ウェステニラにおける記念すべき初戦闘の相手として、カニは相応しくない! チョキチョキとハサミを振り上げて自己宣伝に努めたって、認めてなんかやらないぞ! 頑張ったところで、お前は横歩きしか出来ない生物なんだ。あきらめろ。

 

 僕が巨大ガニのモンスターとしての弱点を脳内で指摘していると、それに抗議するかのように巨大ガニはザザザッと前進してきた。

 

 おい、カニのくせに何で前歩き出来るんだ! カニの関節は、横歩きしか出来ないようになってるんだぞ。

 お前は、カニとして間違っている!

 

 とっさに後方へ下がり、カニの攻撃を避ける。

 ブラックの特訓では、武器無しの戦闘講習もあったからね。レッドのシゴキによって体力も底上げされているし、僕は素手でもソコソコ戦えるのさ。

 

 カニと再び睨み合う。

 

 う~ん、どうしようかなぁ。このまま逃げても良いんだけど、カニに舐められっぱなしってのも悔しい。

 よし! 僕の魔法がウェステニラのモンスター相手にどれくらい通用するのか、確認してみよう。

 悪いが、カニには実験台になってもらう。

 

 では、何の魔法を使おうか? 

 水魔法で水をぶっかけたら、逆に元気になりそうだね。土魔法で地中に埋めようかな? でもカニって、砂浜では地面に穴を掘って巣を作ってるよね。よほど深く埋めないと効果が無さそう。火魔法で焼いてしまうのが手っ取り早いかな。美味しそうだし。しかしニオイに釣られて、余計なモンスターがやって来るかもしれない。そしたら面倒だ。

 

 そんな訳で、風魔法で戦うことにした。

 

「キュイィィィィィィン!」

 

 巨大ガニが迫ってくる。

 いくら前歩きが可能でも、カニはカニ。動きは単調だ。

 

「《風刃(ウィンドカッター)》」

 

 僕は風の刃を飛ばして、カニの脚を切断する。

 狙い目は胴体にくっ付いている関節部分だ。

 

 最初の1、2本が切り離されても辛うじて耐えていたカニだったが、ハサミ部分を除いた全ての脚を失うと、さすがに(こら)えきれずバッタリと倒れて動けなくなってしまった。

 カニの飛び出た眼と視線が合う。何となく恨みがましい目つきだ。

 

「許せ、カニ。この世は所詮、弱肉強食。お前は弱いから僕に負けたんだ。迷わず成仏してくれ」

 

 日本では販売店の店先に陳列されたカニを見ても『美味(うま)そう』としか思わなかったくせに、ウェステニラに来たせいでカニの心情に思いを馳せるはめになるなんて、妙ちくりんな感じだな。

 

「なむなむ」と、カニの成仏を祈る。ウェステニラに仏教は無いだろうけど。

 

 僕がカニさんの供養をしていると、『巨大(ジャイアント)(キャンサー)をやっつけるなんてスゴいニャ!』と驚きの声を上げつつ誰かが近づいてきた。

 

 ……ニャ?

 語尾が〝ニャ〟?

 

 え! これ、ひょっとして猫耳美少女との対面イベント発生案件?




 ついに、2人目のヒロイン登場! ちなみに1人目のヒロインはイエロー様(殴)。
 あと前進や後退りが出来るカニも、地球には居るそうです。
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