異世界で僕は美少女に出会えない!? ~《ウェステニラ・サーガ》――そして見つける、ヒロインを破滅から救うために出来ること~   作:東郷しのぶ

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7話 ミーアの可愛さ

 ミーアパパが繰り出すククリナイフ(?)を(かわ)していると、〝む! お前、できるニャ!〟っていう感じでミーアパパの僕に対する評価が上がったのか、何とか言い訳を聞いてもらえる状態にまで持ち込めた。

 

『そうニャのか! あくまで〝異種族間の相互理解〟のために、ミーアのゴニョゴニョについて質問したニョだな』

『そニョとーりなんです! お義父(とう)さん。お嬢さんに対する個人的興味は、カケラも、これっぽっちも、ほんの僅かさえ(にゃ)いのです』

『だから、〝お義父さん〟呼びは止めろニャ! 俺の名前は、ダガルだニャ』

『ゴニョゴニョが2つで、助かりましたニャン。14個だったら、困ったに違いありませんニャ』

『うむ。14個は、俺も困るニャ』

『20あったら、絶望ですニャ』

『絶望は、乗り越えるものニャ。男は、タフでなければならないニャン』

『ダガルさん』

『サブロー』

 

 僕とダガルさんが和解にこぎつけているのを横目に見ながら、ミーアが『ニャんかサブローにょ言い様には、腹が立つのニャ。パパも変なこと、喋ってるニャン。あとで、ママに言いつけてやるニャ』とブツブツ呟いている。

 

『お話は終わりましたかニャ?』

 

 長老が近づいてきたので、僕とダガルさんは姿勢を正した。

 

『ハッ。お騒がせして申し訳ありませんでしたのニャ』とダガルさん。

『やれやれ。ダガルの家族への溺愛っぷりは、相変わらずですニャン』

 長老の隣で赤猫さんが呆れた顔をしている。

 

 血の気の多いダガルさんとクールな赤猫さんは好対照だ。

 どちらも長老の側近だそうで、ダガルさんは狩人のまとめ役、赤猫さんは庶務の責任者、という印象を受ける。

 

 白猫の長老が、僕のほうへ顔を向ける。

『それで、サブローはしばらくニョ(あいだ)、この村に滞在したいと思っているのですニャ?』

『ハイ、数日で良いニョで』

『5日後に、ベスナーク王国から行商人の一団が村にやってきますニャ。丁度良いタイミングですニョで、彼らと一緒にナルドットの街へ向かわれたらいかがですかニャ?』

 

 赤猫さんの提案した内容を、検討してみた。

 

 どうせ行ってみるなら、獣人差別が激しい聖セルロドス皇国よりも、比較的獣人に寛容なベスナーク王国のほうが良さそうだ。

 猫族皆さんの言葉だけで判断を下すのは早計かもしれないけど、僕はもう、聖セルロドス皇国に対して好感を持てそうにない。

 

 聞くところによると、ナルドットは猫族の村より徒歩移動で4日の道程にあるらしい。ベスナーク王国で、獣人たちが住む森のもっとも近くに存在している街なのだそうだ。

 

〝猫族の村との取引を終えたら、行商人たちはそのままナルドットへ赴くはずだ〟と赤猫さんが教えてくれた。

 

『そうさせて頂きますニャ。数日の間ですが、よろしくお願いしますニャン』

 長老と赤猫さんへお礼を述べる僕のすぐ側で、ミーアが何か言いたげにしていたが、結局黙ったままだった。

 

『ところで、この村の周辺に他の獣人の方々が暮らす村はあるニョですか?』

『犬族と狸族の村がありますニャ』

 僕の質問に、赤猫さんが答えてくれる。

 

 犬族と狸族か……。

 語尾が「ワン」の犬耳美少女や語尾が「ポン」の狸耳美少女が居るならぜひ訪問してみたいけど、赤猫さんの話を聞く限り、犬族や狸族も猫族と同じようなリアル獣人だそうだし、積極的に行くほどでは無いかな。犬族や狸族にもちょっと会ってみたい気もするが、今回は諦めよう。

 代わりに、5日間をフルに使って猫族の皆さんともっと仲良くなれるように努力しよう。

 

 ちなみに犬族と狸族にも、それぞれの部族を守る神様が居られるとのこと。

 犬神様はともかく、狸神様はどんな姿をしているのか想像もつかない。まさか猫神様が招き猫そっくりだったからと言って、狸神様は信楽(しがらき)(やき)の狸そっくりなんてことは無いだろうね? 

 

 でっかいふぐり(・・・)が特徴で片手に徳利を持ってる、太鼓腹の狸。

 招き猫と信楽焼の狸が並んでいる光景はめでたさ満点だけど、異世界の雰囲気は台無しだ。

 

『犬族と狸族以外ニョ部族の村は? 例えば、牛族の村は近くにありませんかニャ?』

 真意を隠しながら、さり気な~く訊いてみる。

 

『残念ニャがら、牛族は近隣に住んでいませんのニャ。サブローは牛族に興味があるニョですか?』と赤猫さん。

『ええ、まぁ……』

 

 だってなぁ。猫族女性のお胸事情が地球の猫そのまんまだったと言うことは、牛族女性皆さんのお胸は地球の牛そのまんまである可能性が高い訳で……。

 もし、そうなら一目で良いので拝んでみたい。

 

 牛さんのタユンタユンを妄想していると、『サブロー、目つきがニャんだかイヤらしいニャ』とミーアが僕の(すね)を蹴ってきた。猫キックだ。

 ミーア、痛いよ!

 

 

 長老たちとの会合が終わったあと、猫族による僕への歓迎パーティーが開かれた。開催場所は、村の中央広場。

 大勢の猫族が老若男女を問わず集まってきた。さすがに村人全員ではないけど、100人を軽く超えているのは確かだ。ちょっと圧倒されてしまう。

 

『え~、サブローと言いますニャ。数日の間ですが、仲良くしていただけたら嬉しいですニャン』

 

 僕の挨拶にペチペチペチと肉球による拍手をしてくれる、猫族の方々。長老直々の紹介や僕が猫族の言葉を喋ることもあって、割と好意的に迎えてもらえたようだ。

 

 しばらくして、広場に集まった皆に料理が振る舞われる。メインは、巨大蟹(ジャイアントキャンサー)の鍋。

 

『うぉぉぉぉ! カニ鍋にゃー』『巨大蟹のスープ、美味しいニャ~』『まさか、生きてカニを(しょく)せる日がまた来ようとはニャ。長生きはするもんニャ』『ほっぺたが、落ちそうニャン!』

 

 大好評である。

 偶然に倒しただけのカニが、これほど役に立つなんて思わなかった。カニさん、ありがとう。

 

『サブローも食べるニャ~』

 真っ先に食事にありついていたミーアだったが、しばらくすると料理をよそったお椀を僕の元に持ってきてくれた。

 椀の中身は、カニ以外にも素材が何なのか良く分からない肉やら山菜やらが混じっている煮込みスープだ。

 

 ここで躊躇するのは失礼だな。それに、とても食欲をそそる匂いがする。

 僕は思いきって、口にした。

 

『…………』

『サ、サブロー。なに、泣いてるんニャ』

 

 僕の目尻に浮かんだ涙を見て、ミーアがアタフタする。

 

『ごめんニャ。あまりにも美味しくって、つい涙が』

『そうニャの!? 猫族の料理をそんなに喜んでくれるニャんて、アタシも嬉しいニャン!』

 

 ミーアがニッコリ笑い、肉球で僕の涙を拭ってくれる。

 プニプニにする肉球の感触が、こそばゆい。

 

 いや~、でもこのスープはホントに美味しいね。まさに絶品! 

 

 こんな美味しい料理を食べたのはいつ以来だろうと考えて、愕然とする。特訓地獄では、食べ物を口に入れることが一切許されなかったのを改めて思い出したのだ。

 となると、このスープは僕があの不思議な空間で爺さん神に会って以降、初めて口にする食事ということになる。あまりにも地獄の環境に慣れすぎたせいで、ウェステニラに転移してから今まで、自分が空腹状態だったことに全く気付かなかったよ。

 

 我が身が不憫すぎる。

 

 おのれ、地獄の鬼教官カラフルメンバー! 僕を鍛え上げてくれたことにチョビッとばかし感謝してたけど、やっぱアイツらは恨みの対象だね。

 

 僕が脳内で赤青黄黒緑の鬼たちをまとめて燃えないゴミ集積所に放り込んでいるうちに、いつの間にやら少し離れた場所でミーアが同年代の猫族少年少女たちに囲まれていた。

 

『ミーアが、巨大蟹をやっつけたのかニャ?』『さすがミーアにゃ!』『これからは、カニ狩り(カニハンター)ミーアと呼ぶニャ!』

 

〝カニハンター・ミーア〟なる称号をもらって、ミーアは満更でも無さそうだ。『いや~、まいったニャ~』なんて言ってる。

 

 おい、ミーア! 若気の至りで変な別名(マイケル・ザ・リッパーとか黒影の武士(ブラックサムライ)だとか)を自分に付けると、数年後に羞恥のあまり夜中に絶叫するはめになるぞ。

 中二病の専門家たる僕が断言するんだ、間違いない!

 

 僕の内心の忠告が届いたのか、ミーアは『巨大蟹を倒したのはアタシじゃなくて、サブローなのニャン』と友人たちに真相をうち明けた。

 

 ミーアは正直者だ。

 

『あの人間がニャ!?』『人間のくせに、あなどれないニャ!』『その話、ホントなのかニャ?』などといった意見を述べる友人たちに対し、ミーアは『ほんとニャ! サブローは、とっても強いんニャ!』と両手を振り回しつつ熱弁を振るっている。

 猫族の村での僕の立場を、少しでも良くしようとしてくれているらしい。

 

 ミーアは優しいね。

 

 しかし、猫族少年少女の集団の中で、ミーアの存在は一際目立っているな。

 もし僕がミーアの知り合いじゃ無かったとしても、まず最初にミーアを個別認識するだろう。

 

 若手の猫たちの体毛の色は様々だけど、黒猫はミーアただ1人。更に金色の瞳だ。ミーアと同じ黒猫である父親のダガルさんも、さすがに瞳の色は黄金じゃなかった。

 

 惹かれるのは、瞳や毛の色だけじゃ無い。

 

 明るさ。しなやかさ。温かさ。躍動感。天真爛漫(てんしんらんまん)な、その雰囲気。生命の輝き。

 

 実際、ミーアは〝猫族の女の子〟として、とびきり魅力的だ。

 グリーンの特訓によって、僕の恋愛に関する(?)能力――真美(しんび)を見抜く――は全生物対応タイプに進化しているからね。

 わざわざ探知機能を発動するまでも無く、ミーアの可愛さが良く分かるのだ。

 

 正直なところ、思わずミーアにモフモフしたくなる瞬間が、これまで何度もあった。けど、必死に自重した。

 ミーアは地球の猫じゃなくて、ウェステニラの猫族だ。接する際にも、最低限のエチケットは守らなきゃならない。変なことをして、ミーアに嫌われたくないという思いも、当然ある。

 

 何と言っても、ミーアは僕がウェステニラに来て初めて会った〝人〟だからね。

 ミーアとの出会いによって、僕は自分がウェステニラという異世界に転移したことを実感できたのだ。

 

 え? カニとの接触がミーアより先じゃないかって? あれは、ただの食材の調達であって、出会いではありません。

 

 しばらくして、ミーアたちの仲間内における僕への評価が定まった。

 

『分かったニャ。ミーアがそこまで言うにゃら、信じるニャ』『カニにありつけたニョは、あの人間のおかげなんにゃネ』『これからは、カニ狩り(カニハンター)サブローと呼ぶニャ』『決まりだニャ』『そうするニャ』『賛成にゃ』

 

 やめてください……。

 

『《カニハンター・サブロー》爆誕(ばくたん)にゃ』『めでたいニャン』『少し待つのニャ! 髪の毛と目の色が黒いし、ダークネス・カニハンター・サブローのほうが良いと思うのニャ』『カッコイイにゃん』『痺れるニャ』『びりびりニャン』『ダークネス・ビリビリ・カニハンター・サブローに……』

 

 もう、許して。

 

 

 

♢おまけ

 

※ミーアのイラストです。

 

【挿絵表示】

 




 ミーアのイラストは、あっきコタロウ様よりいただきました。ありがとうございます!

 カニは、猫の餌にはお勧めできないそうです(一応、加熱すれば大丈夫だとか)。
 ミーアたちは異世界の猫族なので、カニを食べても問題ありません(強引な論理)。それに、鍋ですし……。
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