老狼の子守唄   作:萎びた豆の妄想

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主人公ロボの過去編でもやってみっかと思い書いてみました。
正直第1話に全部出しきった後の出涸らしなのでご期待にそえると良いのですが。

読み飛ばして、どうぞ。


旧時代の骨董品

ここはかつてのシラクーザ、まだテキサスやラップランドが幼い頃の時代。

 

どんよりとした灰色の雲が空を覆う場所。そんな街の中でひとりの老人が杖を携えて歩いておりその後ろを小さな兄妹がついて行ってる。

 

だが彼らは祖父と孫の関係ではないことは一目瞭然である。

 

子供たちの身なりはみすぼらしい。おそらくは孤児であろう。

 

路地裏のような場所でふと足を止めると、待ってましたと言わんばかりに二人の大柄な男が老人を挟むように現れた。

 

孤児たちはすでに身を隠している、孤児であるが故の危機管理能力である。

 

「よお、爺さん。今日はいい天気だなぁ。」

 

「そうかい?普通、曇り空はいい天気とは言わない気がするが。」

 

「いや、いい天気だ。雨季なのに雨が降ってないならシラクーザじゃいい天気さ。それによ、こんだけ薄暗いとよぉ…テメェみたいなジジイが1人消えても誰も気づかねぇんだよ。」

 

そう言うやいなや男たちは老人に殴りかかる。その場に誰か一般人がいたなら悲鳴をあげる場面である。

 

しかし、男たちの拳は空を切った。

 

「元気なのは良いが…喧嘩を売る相手はしっかりと選ばねばならんよ。老いぼれといえども狼、爪はしっかり研いでいるとも。」

 

老人の言葉が響くとともに殴りかかった男たちのネクタイが地面に落ちる。

 

老人の手にはいつの間にか不思議な模様の入った細身の剣を手にしている。仕込み杖である。

 

「なっ…テメェ!?死ね!このクソジジイが!」

 

簡単に殺れると思っていた。殴って殺して、身ぐるみを剥いで小遣いにしようと思っていた。

 

だというのに自分たちの拳は避けられ、あまつさえお気に入りのネクタイを汚された。

 

プライドを傷つけられた男たちは怒りを剥き出しにナイフを取り出した。鈍く光る刃で確実に殺そうと斬りかかろうとした。

 

斬りかかろうとした。

 

「テメェらが死ね、役立たずが。」

 

そんな言葉とともに男たちの左胸から鋼が飛び出した。

 

なんてことはない、いつの間にかいた彼らの背後にいた別の人たちに後ろからナイフを刺されたのだ。

 

倒れ伏す男たちを蹴飛ばしながら堂々とした気風を纏った男が現れる。

 

「おや、アルベルト。彼らは君の部下じゃないのかい?」

 

「はは、ご冗談を。喧嘩を売る相手を見極めることすらできない低能なゴミどもが私の部下だなんて。では私は急いでいるので。」

 

男、名はアルベルト・サルッツォ。彼は非常に苛立ってた。ファミリーのワンマン経営をやっている彼は自分の、ひいてはファミリーの益にならないことをする部下がとにかく嫌いなのだ。

 

特にここシラクーザで喧嘩を売ってはいけない相手に喧嘩をふっかけるようなファミリーに不利益を齎す者は。

 

そう、ただの肉塊と化した彼らが喧嘩を売った相手はただの老人ではない。

 

不敵な表情を浮かべていたアルベルトだが彼は内心では少し焦っていた。

 

将来齢を取り、老練になった彼ならばともかくまだ若い彼には老人がファミリーに報復してくるのが怖かったのだ。

 

老人がファミリーに襲撃を掛ける前に、馬鹿ども自分たちの手で殺すことでファミリーは喧嘩を売るつもりはないことを示したが、焦りが周囲に露呈する前にさっさと退散したのだ。

 

その場に残った老人はせめて彼らの魂が荒野を駆け回れることを願いしばし黙祷を捧げる。

 

 

 

「もう大丈夫、出ておいで。」

 

老人がそう言うと兄妹がおずおずと現れる。

 

「さ、目的地はすぐそこだ。」

 

そう言って一行は歩を進める。

 

暫くするとシラクーザ名物の裁判所が見えてくる。

 

老人たちの目的地はそこに併設されている孤児院である。

 

孤児院に入るとブラウンのループスの子供が駆け寄ってきた。

 

「おかえりなさい!ロボさん!お邪魔してます!」

 

「ラヴィニア、また来てたのかい?来てくれるのは嬉しいがベルナルドが心配しているよ。」

 

「はい…ロボさん」

 

玄関の近くで話をしているとポツポツと水滴がが降ってきた。

 

「まあ、今日のところはおやつでも食べていきなさい。雨が止んだらちゃんと帰るんだよ。」

 

そう言うとラヴィニアは嬉しそうに破顔した。そこで、ようやく後ろにいる兄妹に気づいた。

 

「そう言えばロボさん、後ろの子どもたちは?」

 

「今日から新しくここの仲間になる子たちだよ。」

 

「そうなのね!私はラヴィニア!よろしくね!」

 

元気よく挨拶をするが兄妹は老人、ロボの後ろから出てこない。傍から見れば失礼な行為だがロボもラヴィニアもそれを咎めず暖かく見守る。ここに来る子達は皆、最初はこのような反応になるのだ。

 

 

 

孤児院の中では子供たちが院長のゼーヴという女性とおやつの準備をしていた。

 

「おやまあ、いらっしゃいロボさんにラヴィニアちゃん。」

 

「こんにちは!ゼーヴさん!」

 

「やあゼーヴさん、お邪魔するよ。今日は伝えていた通り新しい子を連れてきたんだが。」

 

「聞いてるよ、なんなら歓迎会の準備がちょうど終わったところさ!」

 

ゼーヴはシワの入った顔に太陽のような笑顔を浮かべ、兄妹の前にしゃがみ込む。

 

「それで、あんた達の名前は?」

 

名を問うと妹の方は警戒と怯えで兄にしがみつく。兄の方も警戒は解かずに妹をしっかりと抱きしめている。

 

触れたら爆発しそうなほど空気が張り詰め、ゼーヴがこれは少しそっとしておこうと思い立ち上がろうとする。

 

そこに口笛の音色が響き渡る。その音色はたちまち空気を沈静化し、兄妹の警戒を解いた。

 

「2人とも、名を聞かれたならちゃんと答えなさい。大丈夫、この人は信頼できる人だ。」

 

ロボがそう言うならと兄がおずおずと口を開く。

 

「……オノフレド。…こっちの妹がバジーリア。」

 

「そうかい、よく言えたね。ここまでよく頑張ったねぇ。今日からここがあんた達の家だ。」

 

おかえり、ゼーヴがそう言って兄妹を抱きしめると2人はわんわんと泣き始めた。

 

その光景を眺めながらロボは孤児院を建てたときのことを思い返す。

 

あれもまた、今日のような雨季の頃だった。

 

〜〜〜〜〜

ミズ・シチリアがシラクーザを纏め上げてから何度目かの雨季の頃。

 

桶をひっくり返したように降る雨の中、濡れないように傘を指しながらロボはある豪邸へと歩を進めていた。

 

豪邸の前につくと警備員が止めてくる。

 

「フェリルが来た、主にそう伝えてくれ。」

 

2人いる警備員は胡散臭そうな顔をしながら片方が念の為確認へ建物の中へ走っていく。

 

待つことしばし、ロボは邸宅の中へ招待された。

執務室に着くとそこにいたのはシラクーザで誰もが恐れる女性、ミズ・シチリアであった。

 

執務室に人が来たにも関わらず、彼女は暫く顔を上げることなく書類に目を通していた。

しばらくして漸く顔を上げた。

 

「それで、マフィアがなんのようかしら?」

 

「今はもうただの老いぼれさ、ミズ・シチリア。貴女に1つ、頼みがある。」

 

孤児院をつくって欲しい、ロボがそう頼み込むとミズ・シチリアは暫く押し黙ったかと思うと急に笑い出す。

 

「フッ…フフッw。そんなことのために私に直談判しに来たのはあなたが初めてだわ。」

 

それで、何故私に?

 

言外にそう問うミズ・シチリアにロボは答えを返す。

 

「どこかのファミリーに頼むことも考えはしたんだがなぁ。それだと他のファミリーが攻撃するかもしれなくて子供たちの安全を確保できないんだよ。そこで貴女だ、ミズ・シチリア。シラクーザを支配し、全てのファミリーが恐れる貴女の名のもとであれば他の奴らはそう手が出せない。」

 

「へえ。貴方、名前は?」

 

「ロボ。ロボ・W・フェリル。」

 

「ああ、貴方が噂のフェリルファミリーの元ドンだったのね。……待って頂戴、貴方、そのミドルネームは?」

 

納得の表情を浮かべたミズ・シチリア、その顔はすぐに驚愕に染まる。

 

彼女の質問には理由がある。シラクーザを支配する彼女は主要なファミリーの名前は覚えている。しかしそこにWのファミリーネームを持つものはいなかった。

 

いないはずなのだ。

 

「驚いた、未だにこの名を知るものがいるとは思わなんだ。いや、少し貴女を舐めていたようだ。非礼を詫びよう。改めて、私の名はロボ、ロボ・ウルヴス・フェリル。私こそが最後のウルヴスだ。」

 

「そう…あなたが。実在したのね、ウルヴスの名は。」

 

 

 

ウルヴス、その名の起源はとても古い。

かつて先民が現れてすぐの頃、彼らは種族で集まった。

 

ペッローはペッロー同士、フェリーンはフェリーン同士、そしてループスはループス同士で集まった。

 

当然、種族ひいては集団が異なれば争いが生まれる。争乱の時代だ、どんな種族にも偉人は生まれる。

 

名をウルヴス、狼達の英雄である。

 

しかし、種族の壁が消え多様性の時代がやってくるとその血族はひっそりと姿をくらました。

 

その痕跡は僅かに古書に残っているばかりであった。

 

 

 

「わかったわ、あなたの言う通り孤児院は作りましょう。ウルヴスに貸しを作れるのは大きいもの。でも1つ聞かせて頂戴。」

 

「なにかね?」

 

「なぜ、あなたはシラクーザを纏めようとしなかったのかしら。仮にもウルヴスの後継なのでしょう?シラクーザはマフィアが蔓延り狼主たちの遊技盤だったのは知っているでしょう?」

 

「ふむ、貴女は1つ勘違いをしている。」

 

「あら、何かしら?」

 

「ウルヴスは決して支配者ではない、ただ狼達を守る守護者なのだよ。群れの中で起きる順位争いには関わらないし、関われないのだよ。それは狼主たちに対しても同じだ。」

 

「そう…。」

 

ミズ・シチリアはそう言うと顔を伏せてもの思いに耽る。

 

老人はすでに屋敷からいなくなっていた。

 

 

 

 

雨の降る中、傘をささずに道をゆくループスが1人。

 

「守護者気取りで見てないで、もっと早くにこうするべきだったな。そうすればお前を救えたのかなぁ。なぁ、ブランカ……。」

 

雨に濡れながら亡き妻を思い浮かべるその背中は英雄の子孫と言うには寂しく、小さくて頼りないものであった。

 

 




どゆこっちゃねん?
・ウルヴス―ずっとむかしの英雄、一族は隠れて暮らしてた
・Wの名―ロボが心音にアーツを混ぜ込むことでウルヴスの名を知るものにだけ認識できるようにしてる
・骨董品―知っている人にとっては価値あるもの、そうでなければただの古いガラクタ


人名などは基本的に狼やイタリア関連
・ロボ―ご存知狼王ロボ
・ブランカ―狼王ロボの妻
・ゼーヴ―ヘブライ語で狼
・オノフレド―仲間のために戦うもの…らしい
・バジーリア―バジル…なのかな?
・全話のお菓子―ミルフィーユ以外全てイタリア発祥
など

評価、感想などはニマニマしながら見るので甘めの採点でどしどしください。

日常回って何だ…?

  • ロドス・バー(ラ・プルマたち)
  • 鬼の飲み会(ホシグマたち)
  • 戦闘任務(フェン、クルースたち)
  • ペンギン急便バイト(テキサスたち)
  • アーツによる医療部手伝い(ケルシーたち)
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