原作に記憶を読む魔法があったらしいです。にわかすみません。つまりここでの部下は、「世間知らず故に勘違いした子」になっています。すみません…
「アウラ様が敗れました」
「…は?」
唐突な報告。母が敗れた?20数年前の勇者以外に敗北らしき敗北をせず、その後も魔王が倒れてもなお七崩賢の座にいた母が敗れた?バカな。今残っている勇者一派でさえ、魔力量の低いエルフしか…
「エルフに破れたのか?」
「そのようです」
「…まじか」
思案。母の仇でも取りに行くか、この部下を切り捨てて行くか。話によればそのエルフは魔王城に向かっているらしい。まあ、そもそも俺は魔王が死んでから拾われたような魔族だから、魔王知らないけど。
「…会いに行くか」
死者に会える土地があると、母から聞いたことがある。魔王のいない魔王城に向かう理由としては、残党狩りか、死者に会う場所が魔王城になったためだろうか。
「魔族は死んでも残らんというに」
「正気ですか」
「母さんについて聞くだけだ。そろそろ会う時期だったしな」
「そのエルフは今デッケに居ますが」
「話が早いね。さあ…まって、今のデッケは死ぬほど寒かったよな?」
「はい」
「…行く、かぁ」
七崩賢。母が所属していた、魔王直下の…まあやべーチーム。南の勇者とかを蹂躙してたはずだが、なんせ俺はそれを知らん。すごいんだなー、としか思えない。訳で。デッケどこ?
「ここです」
そーいやこの部下、ツノ生えてんな。俺生えてねえのに。羨ましいな。まあツノ自体はそんなデカくないけど。
「早く行きましょう、ゼヴァール様」
「ゼヴァールじゃなくてヤパーで良くない?」
「センスがありません」
「へあっ」
部下からの突然の拒絶!俺は傷ついた…と、ダラダラ歩いたり飛んだりしている。だが、なんだろうか。俺はこの部下よりも弱いはずなのに何でこの部下俺に着いてんの?母様に言われてんの?あ、そうなの?…わ、過保護。
「今更何でそう思うんですか?」
「なんとなくだよ、なんとなく。じゃ、ここら辺でエルフ見てないか調べるか」
「私の出番ですね」
ちなみに、この魔族は他者の記憶を読み取ることができる。人でもエルフでも魔族でも。後は、物体からも。便利な部下だよ。本当に。
「…どう?」
「見てはいますが、かなり遠いですね…太陽の位置から一年前か、それとも極最近…」
「てことは…もうデッケ?」
「そうなりますね」
「寒いね…」
「北側ですから。」
「その記憶によると、エルフはどこに行ってたの?」
「…あっち、だと思います。遠すぎてやんわりとしか。赤い服の男がいなければ確証が持てませんでした」
「えーと…」
赤い服の、ということは、少し前、紅い竜を一撃で倒したとかいう男だろうか。ならば別に良いのだが、いや、良くはないが。出会ってすぐに殺されそうなのが怖いな。なんだかエルフと会いたくなくなってきた。でも引き返そうにももう寒すぎるし…
「この寒波ではエルフも動けないでしょう。我々もこの寒波が終わるのを待つべきです」
「…とうっ」
ボフッと雪が跳ねる。とは言っても、魔法で洞穴を作っただけだが。入り口を周辺の木で固め、なるべく寒さが入ってこないようにする。寒い。洞窟にたまにだけ入ってくる動物を焼いて食べてると、ふと部下がこんなことを言った。
「こんな時間が続けば良いのに。」
「バカ言うな。この肉のないリスなんか俺はたらふく食いたくないぞ」
「でしようね。ゼヴァール様に話したのが間違いでした」
「ヤパーにしよ、今からでも遅くないからさ」
「ゼヴァール様がゼヴァール様たる所以です。変えません」
それから大体1ヶ月後。寒さが落ち着いたので、外に出てエルフ探そうぜの旅再開。した途端、目の前をエルフが通った。
「!?」
「あれは知りませんね」
「エルフか…俺としては偶然と思いたいんだが、どーも思えんよなぁ」
「そもそも、アウラ様を殺したエルフは女です」
「エルフに雌雄あったんだ」
「我々にもありますからね、一応」
「その偏見で辛い思いしてきたんだよなぁ」
「そうです。ゼヴァール様は私達の苦しみを知ってください」
「ねえなんでエルフの意見に同調してるの?怖いよ?」
「いつのまに」
「話し声が聞こえたからな」
…そういやでけー声で喋ってたな。しっかりしろよ俺。ヤパーになりたいだろ俺。しかしこのエルフ、どう見ても強い。このエルフが倒したんじゃないのか?ならどんなバケモンがいるんだよ。エルフってのは化け物しかいないのか?
「それで、魔族が何やってんだ。人攫って」
「俺は魔族なんだがな」
「…?そう、か?」
「ツノがない魔族もいるんだよ」
「ん、あ、そうか。なるほどね。」
「なんだよこいつ」
「あの、女エルフを知りませんか?」
「女エルフ?フリーレンのことか?」
「そいつか?」
「さあ…名前までは」
「俺が寝泊まりしてる小屋に来るか?」
「それは良いかな。もうしばらくは洞窟で寝てるし」
「そうか。じゃあな」
…勇者一行のエルフ。このエルフは女で、しかも母さん…アウラを倒している。最後の母さんの記憶はそのエルフが持っているだろう。その記憶を見て、会ったことにしようか。
「…フリーレン、ね」
「そのフリーレンですよ。アウラ様を殺したのは」
「…行ったら死んでたな」
「ですね」
「あっぶねー!」
と、デッケの冬を越えた。後少しで死んでたぞ。俺。というわけでフリーレン探しの旅、再開。今度こそ本当に再開。位置的にはかなり近いはず。多分、あのエルフと暮らしてただろうから、近くに小屋とか…
「あった」
「いましたよ、ゼヴァール様」
「マジか」
白髪のエルフ、紫色の髪をした女、赤い服の男。確かに聞いた通りの姿だった。ただ、それだけでもおかしい。3人で母さんに勝ったのか?首無し兵ばかりいるはずの母さんが?それでなくとも、部下もいたはず。その部下さえも?
「おーい、待ってくれーい」
「なんだ、あ」
「魔族だね」
「っ!」
「警戒しないでくれーい。俺はゼヴァール。んでこっちは俺の部下。名はない…ないよな?」
「ヤパーです」
「…本当に魔族?」
「魔族だよ。でも片方は人だ」
「エルフってのはツノがなきゃ人間なのか?他のエルフにも言われたぞ」
「ですね。フリーレンでしょうか?」
「何の用かな。自殺?」
「違うって。アウラについて聞きにきただけだ」
「信じられないね。魔族の言葉だ」
「そうです。魔族は言葉で人を誑かします」
何だろうか、エルフは偏見で苦しんできたのだ、とつい最近聞いたのだが。どーもそうは思えない。しかもエルフから。まあ魔族自体そんなことをやりすぎてはいるので、仕方ない…殺される前にお母さんとか言う奴もいるしな。
「で、フリーレンに何の用事なんだ?」
「シュタルク様?」
「アウラのことを聞きたいだけだ。最後に俺のことを言ったりしたのか、してないのか。」
「さあね。今更聞かれても、あんな奴のことは思い出さないよ」
「そもそも、お前なんでそのアウラって奴のこと聞きたいんだよ」
「…」
言いづらい。何か、魔族に子作りなんて概念があるのかを聞かれても知らないとしか答えられないから。そもそも、俺は父の顔どころか俺と母さんとその部下以外の顔をまともに覚えてない。
「俺はアウラの子供だ。と言いたいが━」
「子供?嘘だね。魔族の中でもプライドの高い奴が子供を作るとは思えない」
「だよねぇ。」
「それと」
「?」
「君、何歳?」
「…俺って何歳なんだ?」
「私が出会った時を5歳とすれば、25…くらいでしょうか」
「若すぎるんだよ。その若さなのにその成熟…」
「魔族が20年であのように育つのですか?」
…あれ、もしかして俺、本当に魔族じゃない?いやでも、母さんには魔族って言われたし、母さんの部下たちにも同じように言われた。何人もが集まってなお見間違えることはないだろ??
「ゼヴァール。君は─」
「俺は魔族だ。母アウラに認められ、その部下たちにも認められた魔族だ。」
「違う。君は人間だ」
なぜだ。何故あんなにも否定する。貴様にとってそんなに大事なことか。俺が人間であっても良いだろう。現に俺の部下は魔族であり、その魔族が俺に対して忠誠を誓っている。なのに魔族じゃない?
「━!」
「ダメです、ゼヴァール様」
「っ」
「フリーレン、我が主の粗相を許してください」
「良いよ。別に」
「私の魔法は、他者の記憶を読み取り、それを第三者に渡す魔法です。」
「…で?」
「その魔法で貴方とアウラ様が戦った記憶を読み取ります。それだけをさせてください」
「…ダメだ。そろそろ良いかな?」
「死ね」ブンッ
「っ!」
このエルフはなんだ。魔族を人と言い出した挙句に魔族の言葉は信用ならない?なら俺の言葉は信用できるはずだろ。どうせ、勇者が死んだ時も碌に泣けやしなかっただろうに、何だこいつは。仲間の死に時にいないくせに、何様なんだこいつは。
「フリーレン、聞いたぞ。お前、勇者が死んだ時泣かなかったらしいな?」
「!」
「嬉しいな。お前は人じゃない」
「
「っ!」
ゾルトラーク。一般化した魔法だ。防ぐことになんら苦労はしない。それが普通の魔法使いの扱うゾルトラークなら尚更。だが、相手はエルフ。何年生きたかは知らないが、母を倒したことから母と同等…それか、それ以上と考える。
「相殺」ピッ
「相殺なんかしてないでしょ」
「当たり」ドゴッ
俺の魔法は吸収と放出。つまりそっくりそのまま返すこと。だからこそ魔力量は関係ない。だからこそ俺は魔力量ではなく身体を鍛え続けた。
「シュタルク」
「っだぁ!」ブォッ
視界が消える。このエルフ、まさかこいつのこの一撃を放つためにゾルトラークを?いや違う。赤髪の攻撃が逸れている。狙いは俺じゃない。なら━
「…凄まじい攻撃ですね」
「はずした!」
「十分だ」
「やめろフリーレン!!」
「
「待ってくださいフリーレン様」
「…なんだいフェルン」
「その方が人間なら、信用に値するんじゃないでしょうか?」
「そうだね。そうかもしれない。だけど、こいつはあのアウラの子供だ」
「ヤパー!」
「わかりました」ギュッ
記憶を読む魔法。魔法でないにしろ、それを実行する魔族や魔物はいた。それを魔法に仕上げたのは俺の部下だ。フリーレンはおろか、大魔法使いのフランメなどと言う奴さえ知らない魔法。
「─」
「フリーレン様!?」
「逃げるぞヤパー!」
「わかりました!」フワッ
「待てや」ブォンッ
目の前でヤパーが斬られた。左右に分かれて斬られた。この男、一体どんな鍛え方をしたんだ?空を飛んで逃げようとした俺たちを追いかけるどころか、走って飛んで、俺より上にいたヤパーを斬りやがった。
「逃げ道はないぞ」
「っ、
「おわっ!?」
当たれば即死、ゾルトラークの出番だ。これでどうにか、これでこの男だけでも。ヤパーを殺した、この男だけでも。
「危ないですよ、シュタルク様」
六角形の防御術式がそれを許さなかった。
「だって撃ってくるとは」
「駄弁るなゴミども!
ゾルトラークと共に駆け出す。走って、走って、魔法使いを、力でねじ伏せて、ゾルトラークで赤髪を━
「危ねえ!」ザンッ
「っ…!」
斬られた。赤髪の男に。雪が溶けて水の染みている土に体が横たわる。上下に分かれた片割れを見てようやく知れた。ようやく頭が覚めてきた。
「敵討ちなんてしに来たわけじゃねーんだわ…」
「それでよく生きてるね」
「フリーレンか…聞かせてくれ、アウラの言葉」
「…『私の子供ともうそろそろだったのに』って。意味は知らないよ」
「そ…か」
「
よくある設定
ゼヴァール:アウラの子(養子)。アウラがどこかの戦争を見に行ったところ、見かけたので拾った子。実年齢はフェルンの一個下くらい。
ヤパー:アウラに言われたからいたわけではなく、自主的にいた。記憶を読み取るすごい魔法を作ったが、魔導書はおろか誰にも教えてないので闇に葬られた。と、死後思ってる子。
アウラ:そろそろ子供と会う時期だったので屍と部下で可愛がろうとしていた。ヤパーを知らない。拾った当初は、『アウラって子供に腑抜けにされたらしいぜ』と噂を流させて勇者に負けた後に表舞台に立たなかった理由にしようとしていた。