「私の鍛冶技術と魔道具製作技術を……受け継いで」
突然、アナティアはそんなことを言ってきた。
言っている意味が分からず、俺は混乱する。
クエスト?技術を受け継ぐ?はぁ、なんで?
「どういう意味だよ……説明してくれ!」
「私は自分が培った技術を、両親から受け継いだ技術を……終わらせたくない。だから……相応しい人に受け継いでほしいの」
「いや、なんで俺なんだよ?他にもいっぱいいるだろう」
「それは違うよ。ジュラ」
アナティアは首を左右に振り、真剣な目でジュラを見つめた。
「この魔道具はとてつもない技術で作られたものだよ。これほどすごいものを作れる君になら……私の技術を受け継ぐのに相応しい」
「いや……仮にそうだとしても受け継がれるのは魔道具製作技術だけで、鍛冶技術は……」
「できる。だって……ジュラは鍛冶ができるでしょ?」
アナティアの問いに、俺は思わず息を呑む。
「なんでわかった?」
「手だよ。ジュラの手を見てすぐにわかった。鍛冶ができるって……」
俺は彼女の言葉を否定できなかった。
確かに俺は鍛冶ができる。
だがそれはあくまでバイトのためだ。
金を稼ぐためにバイト先である鍛冶場で技術を学んだ。
それになにより俺は基本的なことしかできない。
簡単な武器とか鎧しか作れない。
「俺は……鍛冶師を名乗れるほどすごくない。多少、器用なだけ」
「その器用な君にお願いしてるの。だからお願い……私の技術を受け継いで」
「……受け継ぐとしても何年もかかるんじゃないか?」
技術はそう簡単に身に付く者ではない。
努力や才能、二つがなければ時間がかかる。
俺だってそうだ。
俺には才能がない。
ただ器用だけ。
だから色々なことを学んでも、基本的なことしかできない。
「大丈夫……一週間で教える」
「一週間ってそんな不可能だろう?」
「できる。私にはその手段がある」
「……本当に一週間で習得できるんだな?」
「うん。約束する」
真剣な表情を浮かべるアナティア。
俺は彼女の依頼を断ることができず、深いため息を吐く。
「わかった。それで報酬は?」
「特別な武器を一つ作ってあげる」
「おいおい、一つって……」
「
「!」
俺は言葉を失った。
超硬金属を超える硬さを持つ最硬金属。
最硬精製金属《マスターゴット》とも呼ばれる最高の素材の一つだ。
「お父さんとお母さんが大切に保管してたやつなのに。他のレア素材も使って、それで武器をつくってあげる」
「……いいのか?」
「うん。私の人生で作れる最高の作品になると思うの。それをジュラにもらってほしい」
「……わかった。お前の技術、受け継ぐよ」
「ありがとう。じゃあ明日から始めよう」
「ああ。正直に言うと助かる。眠くて」
「その目の隈を見ればわかる。君、眠ってないでしょう?ちゃんと寝ないとダメだよ」
「ああ、そうする」
「あ!ちょっと待って……帰る前にやってほしいことがあったの」
アナティアは自分の手を差し出した。
意味がわからず俺は首を傾げる。
「これは?」
「とりあえず握手してみて」
「?わかった……」
俺はアナティアと握手した。
その直後、今まで知らない知識と技術が頭のなかに流れ込んできた。
思わず俺は「うっわぁ!?」と声をあげ、地面に座り込む。
「いったい……なにをした?」
「別にただ……」
「継承をさせただけだよ」
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ジュラが姿を消した後、アナティアは店の奥で両膝を床につけた。
そして口から大量の血を吐き出し、床を赤く染める。
ハァハァと肩で息をする彼女は、ハハハと笑う。
「これで残りの寿命を大幅に減ったね。でも……死ぬ前に私の技術は確かに受け継がせた。あとは慣らすだけ」
鍛冶師の小人の少女は口についた血を腕で拭い、明るい笑顔を浮かべた。
「これで……心置きなく死ぬことができるよ」