「知り合いから聞きました……アナティアさんが亡くなったそうですね」
「……はい」
ダンジョンに行く前に俺はギルドにやってきて、受付嬢のアルルさんと話をしていた。
彼女は心配そうな顔で俺のことを見つめてくる。
「これは噂で聞いたのですが……アナティアさんの技術と知識を受け継いだと」
「はい……押し付けられました。ハハハ」
「……なにか私にできることはありますか?」
「ありがとうございます。でも……大丈夫です」
俺は笑いながら、ハッキリと言った。
そんな俺の手をアルルさんは両手で優しく包み込む。
籠手越しだが、彼女の優しい想いが伝わってきた気がする。
「ジュラさん……一人で背負い込まないでください」
「……本当にいい人ですね。あなたは……」
アルルさんは本当にいい人だ。
ここまで優しくしてくれる人なんて、アストレア様ぐらい。
恋人になってほしいと思うぐらいいい女だ。
でも、
「ごめんなさい。この重みは……アナティアのことは一人で背負いたいんです」
「……そうですか」
少し残念そうな顔を浮かべたアルルさんは、すぐに笑顔を浮かべた。
「ダンジョン。頑張ってください」
「はい」
「ところで……一つ質問なんですか?」
「なんでしょう?」
「お一人で戦争でもするのですか?」
アルルさんの質問に、俺は苦笑した。
まぁそう思うよな。
今の俺は武装で身を固めているから。
軽装鎧の上に取り付けた超硬鉱物製の追加装甲に、腰に巻き付けた毒塗りナイフが収納したベルト。
背中には次元収納機能が付いたバックパックと何本の魔剣を背負い、両手の指には指輪型魔道具を装備している。
他の人から見たら戦争に行く人に見えるだろう。
実際、通りかかる冒険者たちは驚いた顔で俺を見てくる。
「まぁ……ある意味、間違いじゃないです。俺は戦争をしてくるつもりです」
「モンスターとですか?」
「いいえ」
俺は首を横に振って、否定する。
「運命と」
<><><><>
ダンジョンの一階層にやってきた俺は、フゥ―と息を吐く。
「やるか」
そう呟いた時、壁から無数のモンスター……ゴブリンが生まれた。
数は百体以上。
百体の醜いモンスターたちは俺の前と後ろに現れ、挟み撃ちにする。
前の俺なら逃げていただろう。
だが俺は逃げない。
逃げないと決めた。
これから行うのは、反逆。
決められた死の運命と俺は……戦う。
「さぁ……始めようか。反逆を」
俺は背中に背負っていた魔剣を二本抜き、両手で装備する。
そして力強く振るう。
凍結の嵐と暴風が巻き起こり、ゴブリンたちを飲みこみ、一瞬で殺した。
灰と化したゴブリンたちを無視して、俺は魔剣を振るい続ける。
凍らせて殺し。
風で切断して殺し。
それを何度も続けた。
そして魔剣は甲高い音を立てて、砕け散る。
「次!」
俺は迷わず背中に背負った魔剣を両手で引き抜き、迷わず振るう。
次は雷と炎が巻き起こり、ゴブリンたちを吹き飛ばす。
魔剣が砕け散れば、また新たな魔剣を使った。
だがゴブリンたちは溢れかえる。
【素材発見】のデメリットのせいで新たなモンスターが生まれた。
しかし俺は恐れない。
全ての魔剣を使い切っても、俺は攻撃をやめなかった。
「一番武装・装備」
俺がそう呟くと、右手の親指に嵌めた指輪が光り出す。
そしてなにもないところから二丁の拳銃が現れる。
これがアナティアの技術と知識で作った指輪型魔道具—――《
別次元に収納した装備を一瞬で取り出し、収納することができる。
シンプルだが、とてつもない性能。
「撃ち抜く」
俺は二丁の拳銃を構え、引き金を引いた。
次の瞬間、銃口から弾丸が飛び、ゴブリンたちの頭を撃ち抜く。
赤い血の花が咲き、モンスターたちは灰と化す。
弾がなくなったら指輪の中に収納し、新たな武器を取り出す。
「二番武装・装備」
右手の人差し指に嵌めた指輪が光り出すと、空中に現れたのは大きな戦斧。
アナティアが命を燃やし、魂を込めて作った武器―――《断絶》である。
俺は大戦斧を強く握り締め、叫びながら振るった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
振るわれた重い一撃はゴブリンたちを叩き斬り、命を奪う。
だがゴブリンたちは止まらない。
俺の背後からゴブリンたちは雄叫びを上げながら、襲い掛かる。
「
俺がそう呟くと、大戦斧はガチャガチャと変形を始める。
変形を終えた武器を俺は振るい、そして――――、
大戦斧が変形したのは、人間と同じぐらいの大きさの鋏だった。
血に濡れた二つの刃が怪しく光る。
「さぁ……続けよう」
<><><><>
ダンジョンの一階層で、一匹の猫はモンスターたちを駆逐していた。
鎧を纏い、多くの武器や魔道具を装備した猫は雄叫びを上げながら百のモンスターを殺していく。
血に濡れ、無数の魔石が地面に転がり落ちる。
壁から無数のモンスターが生まれようが、猫は止まらない。
猫はあらゆる武器で敵を殲滅する。
刮目せよ、運命。
恐怖せよ、運命。
正義の女神に仕える猫は武器と魔道具で、運命に抗う。
猫は新たな武器や魔道具を作り、装備し、暴れる。
なぜならその猫は―――、
気に入らない運命を否定し続ける『