俺が悪役に転生するのは間違っている   作:グレンリアスター

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始まり

「はぁ……まさかこの俺が【アストレア・ファミリア】に所属することになるとは……しかも初めての眷属」

 

 用意された部屋に入った俺は深いため息を吐き、ベットに腰かけた。

【アストレア・ファミリア】。

 アストレア様が作った正義のファミリア。

 アストレア・レコードで大活躍するファミリアでもある。

 オラリオにとってはなくてはならない存在。

 民には愛され、信頼される存在。

 しかし【アストレア・ファミリア】は原作が始まる前に滅びるのだ。

 

 原因はこの俺、ジュラ・ハルマ―によってだ。

 

 原作では【ルドラ・ファミリア】に所属していたジュラによって罠に嵌められ、呼び出されてしまったジャガーノートという化物によって【アストレア・ファミリア】は壊滅。

 生き残ったリュー・リオンは復讐者となり、多くの闇派閥を潰した。

 

「俺は……このファミリアにはいてはならない」

 

 それが答えだった。

 俺は【アストレア・ファミリア】を潰す癌だ。

 このファミリアからは出て行った方がいいだろう。

 とはいえ、今すぐというわけにはいかない。

 ある程度は強くなって『改宗(コンバージョン)』をすればいい。

 だから最低でも一年は【アストレア・ファミリア】にいなければならないのだ。

 

「まず俺がやらないといけないのは……ダンジョンで鍛錬。でもその前に準備はしなくちゃいけないな」

 

 俺は顎に手を当てて考える。

 この時代に生き残るには知識を学び、技術を身につけ、あらゆる準備をしなくてはならない。

 今日は遅いから休むとして明日からは回復薬や防具や武具を買い、ギルドに行って冒険者登録をし、アドバイザーから知識を貰う。

 

「金をちゃんとあるよな」

 

 俺は持ってきていたバックから袋を取り出し、中身を見る。

 袋の中には大量の金貨が入っていた。

 よし、小さい頃からコツコツと貯めたお金―――三百万ヴァリス。

 これがあれば少し良さそうな防具や武具は余裕で買えるだろう。

 この世界に転生してから俺は死なないために多くのことをした。

 筋トレ、走り込みはもちろん、お金を払って薬屋に毒や薬の調合を教えてもらい、傭兵に武器の扱い方、戦いの心構えなどを教えてもらったのだ。

 他にも色々。

 バイトしながら必死に学び、鍛えた。

 金運はいいのに、なぜか不幸が続いたから強制的に強くならなくてならなかった。

 自分で言うのもなんだが頑張った自身がある。

 

「絶対に……死んでたまるか」

 

 俺は絶対に運命に呪われている。

 だがそれがなんだ?

 運命に殺されるつもりはない。

 無様でかっこ悪くても、泥水を啜っても生き残ってやる。

 それが今のジュラ・ハルマ―()だ。

 

「それより……腹が減ったな。なにか喰いてぇ」

 

 ぐううぅぅぅぅと鳴る腹を手でさすりながら、俺は部屋を出た。

 リビングに向かうと、アストレア様がお茶を飲みながら本を読んでいる。

 彼女の横顔があまりにも美しく、俺は思わず見惚れてしまう。

 

「どうしたの?ジュラ」

 

 視線に気づいたのか、こっちに向かって微笑みを浮かべるアストレア様。

 俺は顔が熱くなるのを感じながら、視線を逸らす。

 

「い、いや……腹が減ったし、なにか作ろうかなと」

「あら?作ってくれるの?」

「はい、こう見えても俺…料理は得意なんです。色々な飲食店でバイトしていたんで」

「まぁ頼もしい。じゃあそこの棚に食材があるから、自由に使って。といっても……固いパンしかないけど」

 

 俺はアストレア様が指を指した方向にある棚を開ける。

 確かに固そうなパンが二つあるだけ。

 う~ん、これは困った。

 これじゃあ栄養が……でも仕方ないか。

 今の時代は暗黒期。

 またもな食事ができないのはしょうがな……。

 

「いや……俺にはあるじゃないか」

 

 自分の魔法のことを思い出した俺は、さっそく使ってみる。

 

「『異界の商品よ、買わせたまえ』」

 

 俺は【商品購入】を発動。

 するとなにもない空中に画面が投影された。

 その画面には食材や商品などの写真や説明文がある。

 

「おお~すげぇ~めっちゃ便利」

 

 指で操作しながら、俺は食材をいくつかタッチした。

 するとなにもないところから小さな箱が出現。

 その箱を見て一瞬だけ俺は首を傾げたか、すぐになんなのか気付く。

 

「ちょっと待っててください。アストレア様」

 

 俺は小走りで部屋に行き、お金を袋から取り出し、小さな箱に入れた。

 するとなにもないところからいくつもの段ボールが出現。

 段ボールを開けると、選んだ食材が入っていた。

 

「こいつはいい。金さえあれば食事には絶対に困らない。いや……医療道具やキャンプ道具なども買えるからめちゃくちゃ便利だ」

 

 俺がいた世界の物を買える魔法。

 戦闘などには使えないが、それ以外ではほぼ無双状態だ。

【商品購入】様様だな。

 

「よし、これでうまいもんを作るか」

 

<><><><>

 

「お待たせしました。アストレア様」

 

 俺は机の上に大きなオムライスとクリームシチューを置いた。

 目の前の椅子に座っているアストレア様は驚いた顔を浮かべる。

 

「すごいわ……とても美味しそう」

「ささ、食べてくだせぇ」

「え、ええ」

 

 アストレア様は木のスプーンでオムライスを一口食べた。

 すると彼女はわずかに目を見開く。

 

「美味しい……とても」

「そいつはよかったです」

 

 アストレア様の言葉を聞いて、俺は思わず笑みを浮かべた。

 

「さて俺も食べるか」

 

 俺はクリームシチューを一口食べ、さらに頬を緩める。

 ん~……地球産の食材で作ったからめちゃくちゃうまくできてる。

 やべぇ、泣きそう。

 

「あ、アストレア様……デザートもありますので」

「あら、それは楽しみ」

 

 俺たちは笑い合いながら、温かい食事を楽しんだ。

 これがアストレア・ファミリアの始まり。

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