ギルドから出た後、俺は空に向かって伸びた巨大な白亜の塔―――バベルにやってきた。
「すっげぇ~!」
俺は心から感動した。
あのダンまちの舞台でもあるバベル。
ここが主人公のベル・クラネルが挑戦するダンジョンが存在する。
「おっと……感動している場合じゃない。装備を買わないと」
俺はエレベーターに乗り、上に行く。
確か四階から八階までがあの有名な鍛冶ファミリアの【ヘファイストス・ファミリア】のお店が並んでいるはず。
三百万ヴァリスを持っているとはいえ、お金を残しておきたい。
とはいえ命懸けのダンジョン探索。
できるだけいい装備は買っておこう。
<><><><>
「三……三千万ヴァリス……だと?」
ガラス越しにある武器をを見て、俺は頬を引き攣った。
今、俺は四階の高級武具販売店に来ていた。
明らかに上級冒険者らしき人達が多く歩いている。
流石は高級ブランドである【ヘファイストス・ファミリア】の武具……すっげぇ~高い。
目玉が飛び出るかと思ったわ。
「とりあえず買えそうな物を探そう」
俺はよく値段と武具や防具を見ながら、あちこちの店を回る。
しかしどれも高い。
とりあえず八階に行くか。
八階なら鍛冶師の駆け出しが作ったものが並んでいるはず。
「よし、行くか」
俺はエレベーターで八階に向かった。
<><><><>
「おお~!」
俺はまたしても感動した。
初心者らしき冒険者たちが駆け出し鍛冶師が売る武具を真剣に見つめている。
四階と比べたらみすぼらしいが、それでも俺は感動してしまう。
だってあのベル・クラネルが初めて防具を買った場所だから。
ここであの相棒の鍛冶師であるヴェルフ・クロッゾと出会ったんだ。
すっげぇ~感動!
売られている武具や防具も一万ヴァリスぐらい。
これなら俺でも買える。
「なにかないだろうか……ん?」
俺はある店の前で立ち止まる。
「これは……」
その店で売られている防具や武具は他のやつと比べて、少し高い。
短剣で十万ヴァリス。
だがそこらへんで売っているものより、遥かにいいのが素人の目でもわかる。
「『鍛冶』のアビリティを持っている鍛冶師が作ったのか?」
ステータスには基本アビリティと発展アビリティが存在する。
レベルが上がるごとに、発展アビリティが現れるかもしれない。
そして鍛冶師の場合、『鍛冶』の発展アビリティがあるのとないのでは作られた武具や防具の性能が段違いなのだ。
「お客さん。私の商品に興味があるの?」
売られている商品に視線を向けていると、下のほうから声が聞こえた。
下に視線を向けると、そこにいたのは背の小さい女の子。
草のような緑色の短い髪と瞳が特徴的で、幼い顔立ちをしている。
「
「そうだよ。私はアナティア……これでもレベル2の鍛冶師さ。お客さん、ウチの商品に興味があるの?」
ニッと笑いながら問い掛ける小人族の少女。
「え?ああ。冒険者になったばかりでな。ダンジョンに入る前にいい武具や防具を装備しておきたい」
「いい心がけだよ。因みに予算は?」
アナティアと名乗る小人族の鍛冶師は親指と人差し指で丸い形を作る。
「そうだな……とりあえず五十万……いや百万は出せる」
「そんだけあるならいいやつを買えるよ。で?なにがいい?」
「そうだな」
俺は顎に手を当てて、考える。
オラリオに来る前、俺は出会った傭兵にお金を払って武具の扱いを教えてもらった。
剣はもちろん、弓や槍なども使える。
とはいっても才能はあまりなかったから素人よりうまく使える程度だが。
「武具は……盾と斧だな。サブ武器として剣と短剣。防具は軽装の鎧がいいな」
俺が一番うまく使えるのは斧だ。
剣のように刺すなどできないし、リーチも短い。
だが斧は剣よりも重く、モンスターの骨ごと身体を切り裂くことができる。
硬い皮膚や鱗も叩き斬ることができるのが、斧の魅力だ。
盾はやはり攻撃を防ぐためにも使うが、打撃武器としても使える。
これはある傭兵に『盾は防ぐだけでなく、攻撃にも使え』と教えてもらった。
あとは予備で剣と短剣。
メイン武器である斧と盾を失った時のことを考えて。
軽装の鎧は万が一に逃げる時のことを考えてのこと。
重装では肉体を守れても動きを制限し、逃げることができない。
「なるほど……なら丁度いいものがあるよ」
そう言ってアナティアは店の奥に行き、大きな箱を一生懸命に持ってきた。
中に入っていたのは、灰色と緑の軽装の金属鎧と猫の顔を模した兜。
「名前は《
「いくらだ?」
「三十万ヴァリス」
「結構高いが……試着してもいいか?」
「うん。もちろん」
俺は服の上に鎧を纏い、兜を被った。
おお、軽い。
金属でできた鎧なのにすっごい動きやすい。
「いいな。コイツを買うよ」
「毎度あり。で……武器なんだが、コイツはどうかな?」
そう言ってアナティアは店の奥から布に包まれたなにかを持ってきた。
俺はそのなにかを受け取り、布を取る。
「こいつは……」
俺の視界に映ったのは、黒い光沢を放つ戦斧。
素人の目でもわかる。
この武器は魂を込めて作られたのだと。
「《
「すげぇ~……いくらだ?」
「五十万ヴァリス」
「たっけぇな!?」
「まぁその分、性能は保証するよ」
高い……五十万もするとは。
ただ、それだけいい武器というのはわかる。
サブ武器の剣と短剣は諦めるしかないか。
「わかった。買った」
「ありがとう!いや~頑張って作ったのに売れないから助かるよ!」
「まぁこっちとしてもいい武器と出会えてよかった。あとは適当にいい盾も頼む」
「うん。そういえばあなたの名前は聞いてなかったね?」
「俺はジュラ・ハルマー。【アストレア・ファミリア】の冒険者だ」
「ジュラ……覚えた。こんな時代だからお互い大変だけどさ。頑張ろう」
笑みを浮かべながらアナティアは手を差し出した。
俺は彼女の手を強く握る。
「ああ、お互い頑張ろう」