「はぁ……甘かった」
ダンジョンから全力で逃げた俺は肩を落としながらため息を吐く。
甘く見ていた。
【素材発見】のデメリットであるモンスター遭遇率補正がこんなにも厄介だったとは。
一階層であんな数を相手しなければならないといけないのか。
しかし強くなるためにはダンジョンに行かなければならない。
生き残るためにはダンジョンに行って戦い、強くなる必要がある。
「でも……今のままでは絶対にダメだ。もっと準備しないと。だけどその前にギルドに行って魔石とドロップアイテムを換金しないと」
俺はギルドの換金所に向かった。
背中に背負っているバックパックから魔石とドロップアイテムを取り出そうとして、手を止める。
「これ……どうするか」
バックパックに入っている
【素材発見】の力で手に入った希少鉱物。
これを売れば大金が手に入る。
しかし冒険者になったばかりの俺がこんなものを売れば、騒ぎになるだろう。
どうすればいいか。
俺が迷っていたその時、
「え?超硬金属?」
バックパックの中身を覗き込む猫人の受付嬢が俺の視界に映った。
俺は思わず「うわぁ!?」と声を上げ、慌てて距離を取る。
「アルルさん!?」
「す、すみません。驚かせるつもりは……それよりあの、それは?」
「あ、いや…これはその……」
俺は口籠りながら、言い訳を考えた。
しかしアルルさんはなにかに気付いたのか、彼女は俺の手を掴み、部屋に連れ込んだ。
突然のことに呆然としていると、アルルさんは優しく微笑みを浮かべる。
「大丈夫ですよ。きっとなにか事情があったのですよね?」
「……」
「もしよかったら教えてくれませんか。ギルドには報告しないと約束します」
「え?でも……いいんですか?ぶっちゃけ助かりますけど」
「いいんです。恐らくスキルか魔法で手に入れたんですよね?でも超硬金属をそんなに手に入れたとなるとギルドには言いにくい。なら相談できる人が必要でしょう?」
「まぁ……はい」
「私は受付嬢。冒険者の味方です。だから……力になりたいんです」
真剣な眼差しで見つめてくるアルルさんに、俺はドキリと胸が高鳴る。
やっぱりいい人だな……この受付嬢。
冒険者になってよかったとマジで思う。
「ありがとうございます」
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「なるほど……【素材発見】。確かにすごいスキルですが、同時に厄介ですね」
俺は【素材発見】のことをアルルさんに話した。
話を聞いていたアルルさんは顎に手を当てて、考え込む。
「はい。色々なドロップアイテムが手に入るからいいんですけど、襲い掛かってくるモンスターの数が……」
「なるほど……単純な戦闘技術だけでは無理ですね。ですが……なんとかなるかもしれません」
「ほ、本当ですか!?」
俺は思わず声を上げた。
アルルさんは優しく微笑みながら頷く。
「例えば毒を使うとかですね」
「毒……ですか」
「はい。毒は人間だけでなく、モンスターにも有効です。強力な毒なら一撃でモンスターを倒せますし、倒せなくとも動きを鈍らせることが可能です」
「なるほど」
俺は顎に手を当てて、何度も頷いた。
確かにアルルさんの言う通り、毒は使える。
モンスターの毒やダンジョンに生える毒草などを使えば強力な毒が作れるし。
生き残るために学んだから、毒の調合の基本技術は知っている。
「あとは……魔道具とか魔剣とかどうですか?」
「魔道具……ですか」
「はい。値段は高いですけど、色々な魔道具を使えば多数のモンスターと戦っても勝てるのでは?」
アルルさんの言っていることは正しい。
幻覚を見せるものや透明化になれるものもある。
魔道具……そうだ!
「アルルさん!魔道具を作るための道具とかどこで売っていますか?」
「え?……まさか作るつもりですか?」
「はい!と言っても、『神秘』の発展アビリティはないので凄いのは作れませんが」
確かに俺には『神秘』の発展アビリティがないから、強力な魔道具は作れない。
しかし俺には前世の知識がある。
その知識を使えば、強力な
「すみません……魔道具のことはさっぱりで」
「そうですか……」
「あ、でも……魔道具の製作道具に詳しい人なら知っています」
「誰です?」
「小人族の鍛冶師アナティアさんです」
「アナティアが?」
アナティアって、俺の装備を作った鍛冶師だよな。
なんで鍛冶師の彼女が魔道具の製作道具を知っているんだよ。
俺が疑問を抱いて首を傾げていると、アルルさんは丁寧に説明した。
「アナティアさんは鍛冶師であり、
「『神秘』の発展アビリティを持っているんですか?」
「いいえ。彼女はスキルの力で『神秘』の発展アビリティを一時的に発生させ、魔道具を作ることができるんです」
「そうなんですか……」
「アナティアさんが作った作品はどれも素晴らしいと聞きます」
「そんなに凄いんですね」
アルルさんの話を聞いて、ますます分からなかった。
なぜ防具や武具を作れて、魔導具さえ作れるアナティアが原作に出てこないのか。
受付嬢がここまで評価するなら、ダンまちの本編に登場してもいいのに。
考えられるとしたらやはりオラリオから出て行ったとか。
もしくは……いや、考えるのはやめよう。
「ありがとうございます。アルルさん。おかげで色々と考えがまとまりました」
「お役に立てて光栄です」
優しく微笑むアルルさんに、俺はマジで惚れそうになった。
ああ……こんな人が嫁になってほしい。
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部屋からジュラが出て行った後、優しく微笑みを浮かべていたアルルは笑みを消した。
冷たい目をしながら、猫人の受付嬢は懐から小さな水晶玉を取り出す。
「報告します。【アストレア・ファミリア】のジュラ・ハルマ―。彼は利用する価値があります。闇派閥に有益だと進言します」
誰もいない部屋のアルルの声が静かに響いた。