アイテム屋で色々な材料を買い、多くの荷物を持って俺はホームに帰った。
「ただいま戻りました……って誰もいない」
どこかに行っているのか、アストレア様の姿はなかった。
「仕方ない。美味しいご飯でも作って待ってるか」
俺は荷物を部屋に置き、スキル【商品購入】を発動。
目の前に投影されたウィンドウの写真を指でタッチし、お金を投入。
なにもないところから段ボールが出現し、中から食材を取り出す。
「本当に【商品購入】は便利だよな。金さえあれば地球の食材が手に入るし」
スキルや魔法は神の恩恵を受けた者の願望や経験で生まれる。
【商品購入】は間違いなく前世の影響だろう。
だがそのおかげで食事には困らない。
こんな闇派閥の奴らと戦争状態だというのにまともな飯が喰えるのは最高だ。
他にもキャンプ道具や治療道具なども【商品購入】にはある。
とはいえなんでも買えるわけではない。
例えば地球の武器や核兵器、ロケットなどは買えない。
専門の医療機器とかも無理だ。
あくまで一般人でも手に入る程度のものしか買えないのだ。
「さて……飯を作るか」
俺は調理場で料理を始めた。
地球産の野菜や肉などを切り、フライパンで焼き、調味料で味付け。
香ばしい香りが俺の鼻を刺激する。
んん~最高。
「よし、できた」
今日、作ったのはナポリタンとコンソメスープ、そしてシーザードレッシングをかけたサラダだ。
デザートにプリンも用意した。
「あとはアストレア様を待つだけだな……それにしても俺がアストレア様の眷属になるとはな」
俺は苦笑を浮かべながら、自分の手のひらを見つめた。
ジュラ・ハルマ―は本来、【アストレア・ファミリア】と敵対する存在。
【アストレア・ファミリア】を壊滅した原因になったと言える。
そんな奴に転生し、アストレア様の初めての眷属になった。
不思議なこともあるものだな。
「ただいま戻ったわ」
玄関から聞き覚えのある女性の声が聞こえた。
どうやら女神様が帰ってきたようだ。
「おかえりなさい。アストレア様。今日はどちらに?」
「孤児院で子供達の面倒を見ていたの。あら……いい匂いね」
「ご飯を作ったので食べましょう」
俺とアストレア様は椅子に座り、食事を始めた。
「「いただきます」」
アストレア様は美しくフォークでナポリタンの麺をとり、口に運ぶ。
食事の時ですら美しく、俺は思わず見惚れてしまう。
「とても美味しいわ、ジュラ。こんな時代にこんな美味しい料理が食べられるなんて嬉しいわ」
「喜んでもらえて嬉しいです。アストレア様」
俺も料理を食べようとしたその時、
「ねぇ……ジュラ。少し真面目な話を聞いてほしいの」
アストレア様は真剣な声を漏らした。
彼女の言葉を聞いて俺はフォークを持っていた手を止める。
「どうしました?」
「この料理はあなたの【商品購入】で買った食材や調味料で作ったのよね?」
「はい……それがなにか?」
「その【商品購入】……食材以外にも買えるの?」
「は、はい。……治療道具とかキャンプ道具とか色々なものが……」
「ジュラ……【商品購入】のことは隠して。最悪の場合、闇派閥に捕まって利用されるか殺されるわ」
アストレア様の言葉を聞いて、俺は思わず息を呑んだ。
「【商品購入】はあなたが思っているよりもとても危険なものよ」
「そんな……言いすぎですよ。ただお金を払って、食材を買うだけですよ?この魔法は」
「そう……
「!」
「こんな時代よ。食材や治療道具が必ず足りなくなる。今でもギリギリなのよ?だけどあなたの魔法があればその問題はなくなる。言ってしまえば……最強の補給能力。それさえあれば戦える者達は、
アストレア様の言葉を聞いて、俺は目を大きく見開いた。
彼女の言う通りだ。
【商品購入】は金さえあれば食材や治療道具などに困らない。
こんな魔法が使えると闇派閥に知られたらどうなる?
絶対に捕まえられて利用される。
だって俺の魔法があれば食事には絶対に困らないから。
うまい飯を食うだけで人々は元気が出る。余裕が生まれる。
【闇派閥】が俺の魔法を知ったら間違いなく捕まえて利用するだろう。
もしそうなったら【闇派閥】は食事に困らず、戦い続けられることができる。
「すみません……俺、【商品購入】はただ便利な魔法だと思っていました。確かに【商品購入】はとても危険なものです」
補給最強の魔法。
どうやらやっかいなやつを手に入れてしまったようだ。
「ええ。だからその魔法のことは隠して。もしそれを他の人に言うとしても、これから入ってくる【アストレア・ファミリア】の子たちだけにしましょう」
「そう……ですね」
「だけどもし……もしその魔法を使わざるおえない状況になったら、それは
最悪な状況。
その言葉を聞いて俺は『死の七日間』という文字が頭の中に浮かんだ。
『死の七日間』。それはオラリオで最悪の悪夢。
多くの者が死に、誰もが絶望した地獄。
もし使うとしたらその時だ。
「そんな時が……来ないといいんだが」
俺はアストレア様の耳では聞き取れない声で呟いた。