ニャンコ・ファミリア大戦記   作:薔薇尻浩作

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沢山の感想、評価ありがとうございます。
前話にあたる『戯言日記 其の九』に対する感想があまりにも多いため、大変申し訳無いのですが、活動報告にて、まとめて返信させて頂きました。駆け足で大雑把な話ししか出来ませんが、もし良かったら読んでみて下さい。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=308393&uid=287829


感想、評価、とっても嬉しいです!!


戯言日記 其の十

 

✕月◎日 追記の追記

 

 

 昨日は散々だった……。

 

 あの後、一触即発、すわ抗争か。

 という感じの空気になったのだが、フィンさんがリヴェリアさんとその他のエルフ達を

 お年を召したドワーフの『ガレス・ランドロック』さんがベート? さんを宥めて、特に戦闘になる事も無く終わった。

 

 

「ウチの若い者がスマンの。『戦争狂(ウォー・モンガー)』」

 

 

 ガレスさんがそう言いながら私に頭を下げてくれたのだが、その瞬間にロキ・ファミリアの面々がざわついていた。

 見た目通りに、相当に偉い人だったのだろう。

 ……というか、この日記を書いている今になってようやく思い出したがあの人レベル6の『重傑(エルガルム)』じゃねえか。

 

 ロキ・ファミリアの最古参のメンバーで超がつくほどのパワーファイターだ。

 ガレオン船を軽々持ち上げた。なんて武勇伝を聞いたことがあるけれど、本当だろうか?

 間違っても真正面から喧嘩なんて仕掛けてはいけないタイプだ。

 良かった。ドワーフには珍しいぐらいに温厚そうな人で。

 

 『勇者(ブレイバー)』、『九魔姫(ナインヘル)』、『重傑』という格上三人を同時に相手するとなれば私も無傷で済むとは思えない。と言うか普通に負ける。

 ワンチャン勝ったとしてもリヴェリアさんに危害を加えたら少なくともオラリオでは住めなくなる。

 オラリオ中のエルフが今まで以上に本気で命を狙って来るだろう。

 

 おまけにあの時は遠征帰りって言ってた事から、精鋭を揃えていた筈だ。

 私と同じレベル5だって何人も控えていただろうし、低レベルでも恐るべき魔法を扱う魔法詠唱者も居たかも知れない。

 

 改めて考えても、突発的な殺し合いとかにならなくて良かった……。

 いや、本当に。

 

 

 団長と、最古参幹部の号令に従い渋々と言った感じで引き下がってくれたロキ・ファミリアの面々。

 だがそれでも、エルフ達を中心に思いっきり私の事を睨んでいたので、残念ながらファミリア間の火種は未だに燻っていると言えよう。

 だが、そもそも我々ニャンコ・ファミリアがバリバリ戦闘遊戯(ウォー・ゲーム)に巻き込まれていた時だって、ロキ・ファミリアとは特に関わりは無かったのだ。

 活動休止して最近までヒキニートをしていた身としては、ロキ・ファミリアという集団は小人族の勇者がいるだとか、エルフの女王がいるだとかの情報と。

 それからオラリオの一般常識として『フレイヤ・ファミリア』と双璧をなす二大派閥だという認識しかない。

 

 あとはクロ姉ちゃんの勤務先である飲食店に何度か通っていた当時に、何人かの顔を見かけた程度だろうか。

 

 お互い今までまともに顔を合わせた事も無かった関係なのだから、頼むから放って置いて欲しいのだが。

 

 結局、あの後。私は文字通り逃げ帰るハメになり、ホームで不貞寝した。

 二時間もしない内にホームに帰って来た私を妹が不思議そうな目で見てきたが、今日はもう酒飲んで寝る!!

 

 願わくばもう二度とダンジョンの中で、ロキ・ファミリアの面々には会いたくないものである。

 

 

 

-追記の追記の追記……ややこしい!!-

 

 

 そう言えば血塗れで走り回っていたベル君は大丈夫だろうか?

 明日にでも様子を見に行ってみようと思う。

 とは言え、彼等がどこで寝泊まりしているか分からない。

 ヘスティア様と仲の良い妹なら知っているだろうか?

 

 

✕月Å日

 

 

 この日記を読んでいる方は既に御存じの事かとは思うが、悪名高いニャンコ・ファミリアとも交友を深めてくれる『ヘスティア・ファミリア』は団員一名のみ、主神がバイトで生計を支えている零細ファミリアだ。

 

 唯一の団員にして団長である『ベル・クラネル』君は田舎の村からオラリオに出て来た純真な少年。

 主神である『ヘスティア』様は慈愛の女神とも呼ばれるお方で、炉や聖火、家庭の秩序を司るギリシア神話の処女神の一柱。

 そう、実は零細ファミリアの主にしてはヘスティア様はギリシア神話の中では結構なビックネームなのだ。

 

 現代日本に生きる人間からするとあまり馴染みの無い女神に聞こえるかも知れないが、ゼウスやハデスやポセイドンの姉弟と言えばその偉大さが分かるだろうか。

 あとヘラやデメテルとも肉親の筈だ。

 ……まあ、とは言えこの不思議な異世界で、どれだけ前世で知られている神話が当てになるかは解らないが。

 少なくとも、この世界ではヘスティア様とデメテル様は神友ではあるが血縁関係は無いみたいなので、前世の知識は話半分くらいに当てになればいいと思っておこう。

 

 なんだったら、この前お会いしたヘファイストス様に至っては独眼の女神になっていた。

 前世でのギリシア神話で知られるヘパイストスは、醜男扱いされたり奇形児扱いされたり、挙げ句妻であるアフロディーテに浮気されたりと、不憫な扱いで有名な男神だった筈なのだが……。

 そう言えばロキ・ファミリアの主神のロキ様も女神らしいし、案外神々の性別なんてアテにならないのかも知れない。

 

 さて、話がだいぶ逸れたがヘスティア・ファミリアの話へ戻す。

 まあ、そんな駆け出し零細ファミリアのヘスティア主従は、何と意外な事に既にホームを構えているのだそうだ。

 私の知らない内に実は既に遊びに行ったことがあったらしい妹に道を聞き、夕方頃にふらふらと酒を飲みながら歩いて向かったのだが……。

 

 

 何と言うか……。

 

 うん。

 

 凄く……廃墟です……。

 

 いや、まあ。廃墟は言い過ぎだな、うん。

 壁がボロボロで罅が入って、何かよく分からない植物の蔦がグルングルン巻き付いて。

 粉砕されている石畳から雑草がボウボウに生茂ってる。

 窓なんかガラス部分が殆ど空洞になっているけど……うん。

 でも、ほら。かろうじて外観だけ見れば教会だとは判断できる位には原型を留めているというか。

 

 

「お客さんですかー? ……ってあれ? モネコさん⁉ ウチのホームに何か御用でしょうか?」

 

 

 御土産のお菓子の詰め合わせ。もう少しいっぱい持って来れば良かったな。

 ごめんね、ベル君……気の利かない猫人で。

 

 私って、本当バカ。

 

 

「あの、モネコさん? 何故急にそんな全てに絶望した顔を……? と、とりあえず上がりますか? 神様と僕は地下のスペースで暮らしているんですけど」

 

 

 御言葉に甘えて廃教会の中にお邪魔する。

 内部はまあ、予想通りボロボロではあったが地下の生活スペースは想像以上に広く、それなりに片付けられていた。

 

 

「今、神様はちょっと留守にしていてバイト先の打ち上げがどうとか。あ、今お茶を出しますから」

 

 

 精一杯、私をもてなそうとしているベル君の純粋な健気さに思わずホロリときながらも、私はお構い無くと言いながら右手に持った瓢箪を振る。

 ちゃぷちゃぷと音立てた瓢箪の中にはまだまだマタタビ酒が入っている。

 

 

「モネコさんって本当にお酒が好きなんですね」

 

 

 数少ない私の趣味である。

 さて、先ずは先触れもなくいきなりお邪魔して申し訳無い。と私は軽く謝罪をした。

 

 

「いえ、確かにビックリはしましたけど前にネネコも来てくれましたから気にしないで下さい。ダンジョン探索に出ていない時なら基本的にいつでも僕は此処に居ますし。それに、今日に関して言えばタイミングが良かったと言いますか……」

 

 

 どうやら妹とは仲良くしてくれているらしい。

 年齢も一緒だから話も合うのだろうか。

 ベル君の言うタイミング云々は少し気になったものの、とりあえず私は今日こうしてベル君の顔を見に来た理由を説明した。

 

 つまりつい先日、ベル君が血塗れになりながらも奇声を発して疾走していた現場を偶然見つけてしまったので、怪我でもしていないかと様子を見に来た旨を伝えた。

 

 

「み、見られてたんですか。恥ずかしいなぁ。えっと、実はあの時……」

 

 

 ベル君の話はこうだ。

 いつも通りダンジョン上層の浅い箇所。新人冒険者向けの二階層や三階層で狩りをしていたが物足りなくなり、五階層まで降りた。

 そこで何とミノタウロスと遭遇したと言う。

 話半分に聞き流していたエイナ女史のダンジョン学の知識を漁ってみるも、上層のモンスターにミノタウロスなんて居なかったと思うのだが。

 

 

「本来はもっと下の中層に出るモンスターらしいんですけど……何故か五階層で遭遇しちゃって。本当に、あの時はもう一歩で死ぬところでしたよ」

 

 

 全身全霊の力で逃走するも、中層のモンスターは脚力も凄かったらしい。

 あっという間に追い詰められ、もはやここまで。諦めたその瞬間、とある上級冒険者に助けられたのだそうだ。

 

 

「はい! ヴァレンシュタインさん……『アイズ・ヴァレンシュタイン』さんが一太刀でミノタウロスを切り捨てて、僕を助けてくれたんです!!」

 

 

 『アイズ・ヴァレンシュタイン』。

 確かレベルアップの最速記録保持者のヒューマンだった気がする。

 現在は私と同じレベル5で、その美貌と圧倒的な実力で『剣姫』の二つ名を頂いた時代のヒロインみたいな扱いを受けているそうだ。

 ちなみに所属は『ロキ・ファミリア』。

 つまり先日バッタリ遭遇したあの面々の中に、アイズ何某さんが交じっていた事になる。

 生憎と記憶に無いが、ベル君がここまでキラキラした瞳で語るという事は相当な美少女なのだろう。

 

 

「血塗れだったのはミノタウロスの返り血です。あとは、もう頭真っ白になっちゃって……気が付いたら大声上げながらギルドに向かって全力疾走してました」

 

 

 ご心配おかけして申し訳ありません。と真っ赤な顔で謝るベル君に、無事ならそれで良かったと軽く慰めながらも私は考えた。

 登場人物の男女を逆転させれば、まるで王道の異世界ファンタジーにおける、ヒロインとの出会いのシーンにも写らないだろうか。

 

 成る程成る程、つまり、アレだ。

 ベル君、君。アイズさんに惚れちゃったんだね?

 

 

「惚れっっ⁉ ち、ちちちち違いまっ……!! …………せん。はい」

 

 

 頭が沸騰せんばかりに真っ赤になったベル君はベッドに沈没して脚をバタバタ捺せたかと思うと、やがて沈黙。

 初心丸出しの反応に思わずニヤニヤしてしまう私だが、頭の中では初恋は実らないと言うしなあ。と諦観に似た妙な虚しさを感じていた。

 

 派閥の問題やレベルの問題。

 この二つの障害だけ考えたとしても、残念ながらベル君の恋が叶うことは無いだろう。

 とは言え、最近できたばかりの年下の友人に辛い現実を突きつける必要もあるまい。

 私は上手くいくように陰ながら応援しているよ。と無責任なエールを送った。

 

 

「うぅ……は、恥ずかしい。でも、ありがとうございますぅ……」

 

 

 さて、では私はお暇しよう。

 とりあえずベル君が無事で良かった事と、今後の探索でも決して無理はしないように。と軽く念を押した私は、渡しそびれていた御土産をテーブルに置いて立ち上がった。

 

 

「あ、御構いもせずに……じゃなくてっ、ちょっとモネコさんにお願いがあって」

 

 

 

 私にお願い事とは何だろう?

 情けない事に恋愛相談では頼りにならないと思う。

 未だに片思いの姉貴分に求愛をヒラヒラと躱されている身なので。

 

 

「いや、そうじゃなくて……えっ、片思い⁉ 求愛⁉ も、モネコさんがですか⁉ 何それ凄く気になるんですけど⁉」

 

 

 まあ、そうガッつかずに。

 残念ながらこの話が聞きたいなら、お互いにもっと仲良くなってからにしようじゃないか。

 ヒラヒラと手を振ってベル君の追求を躱した私は、彼に改めて要件を聞いた。

 

 

「え……あ、はい。その、良かったらなんですけど、今晩夕食とか御一緒に、どうかなって」

 

 

 ベル君の言葉の意味を理解した瞬間、私は瞬時に『ネコカベ』を召喚し、その背後に隠れた。

 

 

「も、モネコさん? どうしたんですかいきなり?」

 

 

 ベル君……私は君の夢がハーレムを目指す事だとは知っているし、何だかんだ言いつつも本心から応援している。

 

 

「へ?……あ、はい。確かにニャンコ・ファミリアの面接で、ハーレムについて僕は語りましたけど。 でも、それが何か?」

 

 

 君が将来、経験を重ね器を広げ、立派な冒険者となり英雄の道を駆け抜けたその先に。

 ハーレムの主とならん君の望み通り、沢山の美姫達が君の足下に侍っている未来があるのかも知れない。

 

 私は君の夢も君の趣向も否定しない。

 若く、夢に溢れ、希望に満ちている君の前途に幸あらんと願っている。

 

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

 

 だが聞いて欲しい。私は男だ。

 私は、男なのだ。

 確かに顔だけ見ればそこらの娼婦よりも女らしく整った顔立ちをしているかも知れないが、私は普通に女性が好きなのだ。

 

 申し訳無いが私は君の想いに答えてやれないし、君のハーレムに加わる事も出来ない。

 君という人間は決して嫌いでは無い。むしろ好ましく思う。

 だがどうしても私は男性同士でのアレコレはちょっとトラウマがあるから割と本気で勘弁して欲しいと言うか……

 

 

「ちっ、ちちち違いますよ!! 変な勘違いしないで下さい!! 僕はただ神様と一緒に外食する予定があったんです!! でも神様が何処かに行ってしまったからその代わりとしてお誘いしてるだけです!! 僕は決してモネコさんを女性と勘違いしてデートに誘ってるワケじゃありません!!」

 

 

 Hahahaha. もちろんそんな事は分かっている。

 ただの、ニャンコジョークである。

 

 

「……モネコさんって普段は気安くて凄く優しい人なのに。偶に、物凄ーくイジワルになる時、ありますよね」

 

 

 ネコカベを消して陽気に笑って見せる私を、ジト目で睨むベル君に平謝りしつつ。

 実は今の私は、物凄い勢いでテンションが上がっていた。

 

 同性の友人から食事に誘われる。

 実は私、今世、初の体験である。

 

 オラリオに移住してからは戦争遊戯の毎日で友達なんかクロ姉ちゃん以外に出来る訳もなく、私はハッキリ言って友情に飢えている。

 可哀想な奴だと笑われるかも知れないが、何度でも言ってやろう。

 私は男同士の友情に、特に飢えている!

 

 おまけに相手がベル君である。

 ハーレム願望があり、初恋を自覚したばかりの彼ならば「どしたん、話聞こか?」と人の孤独の隙間に漬け込んでは無理やり酒を飲ませて、強引にベッドに連れ込むようなホモの強姦魔に豹変する心配は欠片も無い。

 

 オラリオに来る前は私は傭兵をやっていたのだが、傭兵時代に縁あって仲良くなった男達から夕飯や宴会に誘われた事は何度もあった。

 当時から割と人との繋がりに飢えていた寂しい少年であった私が、ホイホイとその誘いに付いて行った結果。

 大抵の場合は無理やり押し倒され、娼婦の代わりに犯されかけた。

……いや、マジでこの顔に生まれ変わってから、何度飢えた獣に尻を狙われたか。

 

 まあ、人の尻を狙うのはある意味、クロ姉ちゃんも一緒ではあるけども。

 

 

「まあ、とにかく。喜んでくれるなら思い切って誘ってみて良かったです。何分、初めて行くお店だから一人でっていうのは、ちょっと敷居が高くて」

 

 

 成る程。まあ、外食というのは大抵自炊よりも高くつくものだ。

 経済的に余裕の無いベル君からすればちょっとした冒険気分なのかも知れない。

 私は私で外食など滅多にしない。主に闇討ちが面倒だからという理由だが……。

 

 さて、ベル君。ちなみに今夜向かう所は何てお店なのかな?

 手持ちには割と余裕があるから余程の高級店でもなければ問題は無いのだけれど。

 

 

「あ、はい。西地区の方の酒場通りにあるお店ですね。確か名前は『豊饒の女主人』だったかな……?

 

 

 あ、あの。モネコさん? どうしたんですか? 店名を聞いた瞬間、いきなり死に掛けのゴブリンみたいな表情に……え?

エルフ怖い? いつもやりすぎてしまうエルフが怖い……?

 

 ちょっ⁉ いきなり僕のベッドに潜り込まないで下さいよ⁉ 急に丸まってどうしたんですかモネコさん⁉ モネコさーん!!‼」

 

 

 

-追記-

 

 まさか、こんな短い期間でまたあのファミリアと再会するとは……長くなるのでページをまたぐ。

 

 

 

 

 





・ネコカベ

まさにカベに徹する為の盾専用キャラ。
攻撃力はあいかわらず(範囲攻撃)。150ヴァリス。

グロ描写

  • 入れろ。内臓抉り取れ。
  • 止めろ。自重しろ。
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