ニャンコ・ファミリア大戦記   作:薔薇尻浩作

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戯言日記 其のニ

 

◯月♡日

 

 

 昨日は早い時間から自棄酒したからか、珍しく早朝に目が覚めた。

 デメテル・ファミリアからの帰り道、たまには外食でもしようかとフラフラうろついていたのが悪かったのだろうか。

 人通りの多い真っ昼間から襲撃である。

 しかもアイツらレベル差があるからかご丁寧に大量の魔剣まで仕入れて来やがった。

 鼻歌歌いながら機嫌良く歩いていたら、いきなり視界全てが埋まる程の、炎の渦と氷の壁に襲われた私の気持ちを考えて欲しい。

 案の定と言うべきか、襲撃者の種族はエルフだった。

 いや、君たちって故郷の森を焼き払った魔剣を恨んでなかったっけ? そこら辺はどうなのよ?

 

 襲撃者は五名、内レベル3が一人と、あとは全員レベル2。主犯格がダークエルフで、それ以外は全員エルフだ。私はどうしてこうもエルフに嫌われる運命なのだろうか……

 と言うかレベル5の私が言うのも何だが、レベル2以上の上級冒険者はオラリオ内でもそれなりに希少な筈なのだが、襲撃かましてきた彼らは一体何をやっているのか。

 カチコミやる元気があるならダンジョンに行けよ、ダンジョンに。

 

 サクッと返り討ちにした後、私は召喚したキャラクター『ネコライオン』に飛び乗って現場から速攻でトンズラ。

 治安維持を請け負っている前世でいう警察や自警団に近い立ち位置である『ガネーシャ・ファミリア』に、何故か目をつけられている私としては、こんな騒動はいい迷惑である。

 さっさとホームに帰還してシャワーを浴びて、自棄酒を飲みまくってそのまま爆睡、気がつけば朝だった。というわけだ。

 

 全く。たまに外出すればコレだ。きっとその内、事情聴取を理由にガネーシャ・ファミリアの連中がホームに押しかけて来るのだろう。

 難癖つけてペナルティを課すようなら、こっちもヤリたいようにヤってやる。

 

 

-追記-

 

 あまりにも不機嫌なのが態度に出ていたのか、妹が媚びを売るように私を覗いながら、慣れない手つきで態々私に酌をして来た。

 普段から家事を初めとした面倒事を押し付けているのだから、その内に何かしら報いてやるべきだろうか。

 やっぱり手っ取り早く機嫌を取るにはプレゼントだろうか?

 時期的に考えて、近い内にあの女神様からお呼びがかかるだろうから相談してみようと思う。

 

 

 

◯月♤日

 

 

 昼過ぎに目覚めると珍しいことに神様がホームでごろ寝していた。

 ネコ缶をモシャモシャやりながらマタタビ酒を呑んでいたので、とりあえず御相伴に預かる。

 

 

「ダンジョンって、いいよねー」

 

 

 イイ感じに酔いが回って来たところで、神様が唐突にこんな事を言い始めた。

 

 

 ダンジョン。

 まあ、迷宮都市と呼ばれるこのオラリオ最大の特徴がダンジョンだというのは間違いない。

 未知を冒険する為。強者となって歴史に名を残す為。人生の一発逆転を狙う為。

 そんな野望を叶える為に冒険者を志した者達は、オラリオに集う。

 そして使えるべき主神を見つけ、神の恩恵(ファルナ)を授かり冒険者となりダンジョンへ挑んで行く……。

 

 と、まあオラリオの冒険者はこういうパターンの人間が大半だろう。

 かく言う私も、オラリオに移住して来た当初はダンジョンに胸ときめかせながら挑戦したのものだ。……ただ、なあ。

 

 

「ダンジョンって、すごく、いいよねー」

 

 

 ぶっちゃけて言おう。

 ダンジョン探索はヴァリスを稼ぐにおいて、非常に効率が悪いのだ。

 

 

 いや、確かに下層や深層まで深く潜れば潜る程に強力なモンスターから獲られる巨大な魔石を手に入れる確率は高くなる。

 ドロップアイテムなんて運良く見つけたらラッキーだ。さらなる大金を手に入れられることだろう。

 

 

 

「ダンジョンって、すごーく、いいよねー」

 

 

 だがネックなのが移動時間、それから常に命の危機に晒される事だ。

 

 

 まず移動時間に関しては単純だ。

 私のような高レベル冒険者は上層に住むゴブリンやらウォーシャドウなどのクソザコモンスターから獲られる小金では満足出来ない。

 必然的に狩り場はもっと下層、奥深くとなる。すると、どうなるか?

 単純に移動距離がどんどん伸びるのだ。

 

 蓄えた経験値と高レベルによる身体ブーストがかかり、いくら超人じみた速度で攻略出来るとは言え、長距離移動は必須となる。つまりそれだけ移動時間がかかる。

 言うまでも無く往復する時間を考えて、だ。下手したら理想的な狩り場に到着した時点で、往路にかかる時間を計算した結果、何も出来ずに蜻蛉返り。なんて事もありうるだろう。

 

 まあ、それこそ強さを求めて隙さえあらば、常日頃からダンジョンに潜っている冒険者ガチ勢なら何日も穴蔵の中に泊り込みで狩り続けるのだろうが……

 毎晩しっかりお布団で眠りたい私からすれば考えられない暴挙である。

 

 

「ダンジョンって、本当に、すごーく、いいよねー」

 

 

 

 そして、もう一つの問題点。それはダンジョン内においては常に命の危機に晒される事になる点だ。

 隙あらば冒険者を殺そうとするモンスターの脅威はもちろん。一番恐ろしいのは同業者からの闇討ちだろう。

 

 例えば先日の襲撃は冒険者以外の住民が多数いる中での暴挙だ。

 何をどう言い訳しようが、白昼堂々殺人未遂をかましたのだから間違いなく犯罪である。

 目撃者だって沢山いただろうし、証拠だってしっかり残っていた筈だ。

 今頃はギルドの地下牢にぶち込まれているか、ガネーシャ・ファミリアの一室で厳しい取り調べの最中だろう。

 

 

 だが、これがダンジョン内の話となると、こう簡単には行かない。

 まず闇討ちが上手くいってしまえば、死体が残る確率はほぼ、無くなる。あっという間にモンスターに食われてしまうからだ。

 闇討ちを返り討ち、もしくは命からがら逃げ出してギルド側に訴え出ても大抵は証拠不十分で相手にして貰えない。

 ファミリアによっては内輪揉めの結果、ダンジョン内に誘き出してから殺してしまう。なんて恐ろしい事例もあるのだとか。

 

 ただでさえ嫉妬を集めやすい高レベル冒険者である私は、諸事情あって方々から逆恨みに近い悪感情を抱かれている。

 低レベルの有象無象がいくら群れてこようが特に脅威には思えないが、それでも油断は禁物だ。

 それに、このオラリオにはレベル6やレベル7といった私以上の強者が何人もいる。

 そんな人間から知らず知らずに恨みを買って、ダンジョン内で襲い掛かられたら溜まったものじゃない。

 

 ……うん。やはりこうやって色々考えると、ダンジョン探索なんて、馬鹿馬鹿しくてやってられないな。

 収入のアテはちゃんとあるのだから、これからもノンビリと引き籠もり生活を楽しもうじゃないか。

 

 

「ダンジョンって、本当に、すごーく、すごーーーく、いいよねー。マジで」

 

 

 だから、あの。神様?

 段々こっちに圧をかけながら変なアピールするの止めてくれませんか……いや、私は本当に行かないですからね⁉

 ただでさえ襲撃にあったばかりなんですからね⁉

 

 

 

◯月♀日

 

 

 夕方頃に、またもや来客。

 と言っても門前で手紙を渡して直ぐに帰ってしまったが、実はこれに関してはいつもの事である。

 

 大体、月に一度。多くても二度。懇意にしているファミリアから宴への招待状が届くのだ。

 封蝋に刻まれた紋章は予想通り、娼婦を模した特徴的なものである。

 便箋からフワリと香るこの薫りは麝香だろうか。何と言うか、実にあの女神様らしいお手紙だと思う。

 

 さて、内容は予想通り女神が開いた晩餐会への招待状だったので、妹に今夜の夕飯は要らない旨を伝え、手早く準備を済ませた。

 

 

「その……行ってらっしゃいにゃ、お姉ちゃん」

 

 

 おいコラ、お姉ちゃん言うな。

 私は男だろうと何度も言っているだろうに。

 

 確かに私のこの身体の元ネタとなったであろうキャラクターは女性ではあるが、私自身はれっきとした男だ。

 胸だって無いし、股間にはそれなりの御立派様がぶら下がっている。

 ジト目で妹を。元は私が召喚した唯のキャラクターという存在でしかなかった『ねねこ』を軽く睨んでやると、それでも彼女は大きな瞳にじんわりと涙を浮かべながら、不機嫌そうに負けじとこちらを睨んでいる。

 

 全く、毎回コレだ。

 どうにも我が妹は、私がかの女神様の宴へ参加する事が。

 と言うか、宴を口実に夜のお誘いをされる事が非常に気に食わないらしい。

 

 だが、断るわけにもいくまい。

 あの女神様には商売の関係でかなりお世話になっているし、そもそも我がファミリアとは比べ物にならない大手様だ。

 一度向こうの団長に『色んな意味で』襲われかけた時、九割ほど本気でブチ殺しにかかってやった事もあったので、単純な戦力で言うなら負ける気はしない。

 だが、一部とは言えオラリオ内において自治権を獲得しているあのファミリアの影響力は恐ろしいものだ。

 かの女神様を敵に回す事は絶対に出来ない。

 

 

「それは、分かってるにゃ。でも……でも」

 

 

 デモもストも無い。未だに何が言いたげな妹の髪をクシャクシャと撫でて誤魔化した。

 全く、可愛い妹であることは間違い無いとは言え、ややブラコンの気質があるように感じるのは気のせいだろうか。

 適当な御土産を買って来ることを約束して、私は日が暮れた頃になってからホームの門を出た。

 

 

「アタシ達が迎えと護衛だ。宜しくな『戦争狂(ウォー・モンガー)』。……まあ、いつものことだから態々説明しなくても判ってるだろうけど」

 

 

 するとそこには予想通り、扇情的な装いをした褐色の美女達が立っていた。

 

 

「つーか、そもそもコイツに護衛なんて要らねーだろ? フリュネの奴をボコボコにした化け物だぞ?」

 

「おい、無駄口叩くな。どの道、逆らうワケにも行かないだろう。イシュタル様からの命令なんだから」

 

「私はつまんない男の相手をするより、こっちの方が楽できるからイイけどねー」

 

 

  もはや顔馴染みとなりつつある戦争娼婦(バーベラ)達は、軽口を叩きながら気安く接してくれる。

 無駄に私を恐れたり、恨んでくる連中が多い中、こうしてフランクに接してくれる彼女達の存在は私にとって有り難いものだ。

 

 

「つーか好い加減、ウチのファミリア入れよなー。イシュタル様からは団長を任せても良い。って言われてるんだろ? 何が不満なんだよー」

 

「本当本当。あのヒキガエルよりもアンタが上に立ってくれた方がアタシらも嬉しいんだけど。見た目的にも実力的にも」

 

「ウチの家族になれば好きな娼婦を選り取り見取りだよー?」

 

 

 とは言え、こう何度もファミリアの移籍を打診されるのは参ってしまうのだが。

 確かに彼女達の提案は悪くないものだし、かの女神様からは褥の中で直々に勧誘を受けている。

 それも、何度も何度も。非常に情熱的に。時には神威を滲ませた魅了を使ってでもだ。

 

 それでも今の神様に恩があるのは事実だし、他の神を主神に崇めようとは思えない。

 それに何より、私の前世の知識や今抱えているスキルから考えて、他所のファミリアに移籍した瞬間、とんでもない悲劇が……

 

 

「ほら、ボーッとしてないでさっさと行くぞ。遅刻でもしたらイシュタル様からどんな目に遭わされるやら」

 

 

 私は脳内に浮かんだ下らない妄想を掻き消して、先導する娼婦達の左右に揺れるヒップを眺めながら目的地へ向かった。

 

 

 

-追記-

 

 むせ返るような甘ったるい薫りが広がる寝室。

 汗の雫を艷やかに纏い褐色の肌を彩る美の極地。

 妖艶という言葉こそ、かの御方の為にある美神。

 そんなイシュタル様から受けた褥の上での攻撃と勧誘の凄まじさはレベル5のこの身であっても油断出来ない程だった。

 非常に、情熱的で、官能的で、天にも昇るようなものだったと書き記しておく。

 

 

 

◯月♂日

 

 

 

 腰に力が入らない。レベル5の身体能力を持ってしても敵わないってイシュタル様はひょっとしたら最強の女神なんじゃなかろうか。

 酒を飲む元気すら無く、体力回復の為にひたすら布団の上でゴロゴロしていた。

 

 あと妹がやけに不機嫌である。ちゃんと御土産買ってきたのに……。

 

 

 

◯月Å日

 

 

 我がファミリアに入団希望者がやって来た。

 我がファミリアに入団希望者がやって来た。

 

 ……えっ、ちょっとマジで? どっかの神の悪戯とかじゃなくて?

 入団希望者を装った暗殺者とかじゃなくて?

 

 

 ちょっと信じられなさ過ぎて妹に五回ぐらい聞き直した。

 

 どうやら、マジらしい。

 悪名高き我がファミリアに入団したいとはどんな理由なのか。

 

 おぉ……何か久々にテンション上がって来たぞ。

 私らしくも無いが、ワクワク気分で、思わず表情だってニコニコだ。

 

 

 さて、では勇敢なる入団希望者である若き雄よ。

 早速、面接を始めようじゃないか。

 

 ねぇ?『ベル・クラネル』君。

 

 

 

-追記-

 

 久々に腹の底から大笑いした一日だった。長くなるので後日纏めて詳しく書く。

 

 

 

 

 

 





・ネコライオン
俊敏な動きで移動力に優れたキャラ。
頭のタテガミは拭き掃除にも使える。750ヴァリス。

・ねねこ
アイドルを夢見る妹型にゃんこ。
でも歌いたくても勇気がでない……。
憧れの人はもねこ(たまにクリティカル)。148ヴァリス。

グロ描写

  • 入れろ。内臓抉り取れ。
  • 止めろ。自重しろ。
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