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◯月√日
前提として私は非常に機嫌がよろしくない。
あの馬鹿神による馬鹿丸出しの神命により、炭鉱夫よろしくダンジョンへ探索に行かなくてはならなくなった私は、先ずギルドに向かった。
さて。今さら言うまでも無いが、私はレベル5の第一級冒険者である。
冒険者の内、約過半数がレベル1の殻をやぶれない下級冒険者だ。
新人だろうが冒険者歴云十年のベテランだろうが関係無い。
才能が無い者や心折れてしまった者。レベルアップに必要な神々が認める『偉業』を成し遂げる力と勇気を持たぬ者は、皆平等に下級のタイトルからは逃れられない。
大事な事だからもう一度書いておくが、この世界の中心と言われるオラリオですら、過半数の冒険者は下級冒険者なのだ。
そしてレベルの壁を突破した、俗に言う上級冒険者ですら、その大半はレベル2止まりという現実がある。
ざっくりとした例を出すとすれば、もしオラリオに100人の冒険者が居たとする。
内50人はレベル1の下級冒険者で、25人がレベル2の第三級冒険者となるわけだ。
つまり、レベル3以上の第二級冒険者はこのオラリオにおいても上澄みの上澄み。
更に言うならば私のようなレベル5以上の第一級冒険者は世界中でその活躍が吟遊詩人に謳われる程の英雄と言っても過言では無い存在なのだ。
現に私がオラリオに来る前も、猛者の勇猛果敢な戦いぶりや、小人族の勇者を讃える詩を酒場で聞いたり。
重傑の怪力を面白可笑しく語った道化や、エルフの女王の偉大さを布教する修道者めいたエルフ達による説法擬きを何度も聞いたものだ。
つまり何が言いたいかと言うと、レベル5である私は、本来なら彼らと同じとは言わずとも、大きく劣ることは無いであろう知名度と畏怖を獲得し、それに見合う実力を持った冒険者の一人であるという事だ。
自分で言ってしまえば小っ恥ずかしいことでもあるが、それこそ時勢と運が重なったら世間から英雄や英傑扱いされてもおかしくない。
改めて読み直すと私がナルシストを拗らせた勘違い野郎に誤解されかねない内容だが、少なくともこのファンタジー世界ではそれが常識なのである。
それだけに、偉業を重ねに重ねた高レベル冒険者は、畏敬され、憧憬される、偉大な存在として扱われるのだ。
……で? そんな私に対して、中立をモットーにしている筈の、清廉潔白たるギルド職員である貴女は。
今、何と、仰ったのでしょうか?
「あ、あの。その。で、ですからですね? 他の冒険者の為にも、ダンジョンの中ではモネコ氏のスキルの使用をどうか控えて欲しいと。こ、こうして懇願している次第でして……!!」
涙目になりながら必死に頭を下げている目の前のギルド職員の名前は何と言ったか。確かエイナだがエイラだった気がする。
その耳が尖っている事から察するに種族はエルフ。もしくは耳の尖りが短めだからハーフエルフかも知れない。
……何と言うか、私はとことんエルフと縁がある猫人生を送っているらしい。勿論、悪い意味でだが。
さて、ガクガクと震えているエルフ娘の旋毛を眺めている趣味など無い私からすると、今の状況は誠に遺憾である。
「どうか、どうか御理解頂けないでしょうか……!!」
この対応には思わず私も嘆息。
とりあえず感情の整理も兼ねて私自身のスキルを見直す為にも、改めて私のスキルについて。
そして前世でハマった『にゃんこ大戦争』というアプリゲームについて書き記していこうと思う。
前世にて恐らく私が最もハマっており、死ぬ直前までプレイしていたアプリゲームが『にゃんこ大戦争』である。
ゲームの内容についてかなり雑に説明してしまえば、横スクロールタイプの2Dタワーディフェンスゲームだ。
流石に転生してからそこそこの年月が経っている為、果たして前世で自分がどんな人間だったかは覚えていないが、このゲームにだけはやたら夢中だった記憶はある。
『にゃんこ』と呼ばれるネコに似たキモカワな謎のキャラクターを召喚し、相手の城を倒せば勝ち。という非常にシンプルなゲームだった。
さて、既にこの日記を読んでいるであろう人も察しているとは思うのでズバリ結論を書くが、私の転生特典とでも言うべきスキルはこの『にゃんこ大戦争』というアプリに大きく関わりがある。
と言うか乱暴に言ってしまえば、『にゃんこ大戦争』に登場したキャラクターを召喚出来るという、ファンからすればとても嬉しい能力だった。
もちろん、原作ゲームと違った制限や法則もあるのだが、そこは今は割愛。
覚えておいて欲しいのは私が齡十歳から傭兵として活躍し、オラリオで巻き込まれた数多の理不尽な
なのに目の前の眼鏡女子の、あの理不尽極まり無い発言と言ったら……。
ふむ、これは遠回しに喧嘩を売られているのだろうか。
私は平和主義者である以前に男女平等主義者であるので、喧嘩を売られたら遠慮なく買うことにしているのだが。
「ギッ、ギルド職員に危害を加えたら即ブラックリスト入りですよ⁉ 場合によってはオラリオ中のファミリアに
おや、私の視線から何を誤解してしまったのか、もはや青を通り越して白い顔になった女性は半泣きになりながらも私に強く警告して来た。
一体どうしたというのだろうか。
私は私や身近な者に手を出そうとする愚か者や、契約や約束を守ろうとしない嘘つき以外には我ながら寛容で寛大な人間だと自負しているのだが。
その証拠に
「そ、そんな恐ろしい笑顔でっ、脅しっ……脅しても無駄ですからね⁉ そ、それに貴方はいくら
もはや自棄になったのか今度は顔を真っ赤にしてこちらに怒鳴りかかって来た職員の女性は情緒不安定だ。
一体全体何を言っているのやら。
喧嘩を売られたから買った。
殺しに来たから殺した。
唯それだけの話だろうに。
寧ろ報復として肉体的な拷問にかけたり精神的に苦痛を与え続けたりだとか。
そういった相手を無駄に苦しめたりする行為は基本的には避けて来たのだから、私は逆に感謝されるべき存在ではなかろうか?
「な、何この人……会話が通じ無い……
何やらまた顔を青くしてついにメソメソ泣きながら崩れ落ちた職員は見てて哀れだが、そろそろ話を戻そうと思う。
つまり私のスキルについてだ。
【
・眷属を召喚する。
・召喚範囲は視界に依存する。
・代償にヴァリスを失う。
これが私の虎の子のスキルだ。
要するに『にゃんこ大戦争』のゲームに登場したキャラクターを召喚する為のスキル。
魔法に詳しく無い人間は私が眷属を召喚する度に召喚魔法の一種かと勘違いされるが、チートとも言えるこのスキルで召喚は行われる。
この【怪猫軍団】に加え、任意でヴァリスをアイテムボックス的な不思議空間に収納しては、キャラクターを召喚すると同時に対価としてヴァリスを自動消費してくれるスキル【
目を瞑ることによって戦場をまるでゲームをプレイするかの如く、常に遠くから俯瞰気味に見下ろす事ができる【
ある程度酔っ払ったり、半分眠っていても無意識の内でほぼ自動的に身体と意識が動いて、キャラクターを召喚、指揮する【
その他のスキルは割愛するが、まあこれらのチートとも言えるスキルを組み合わせ事によって、私は今までの数多の戦場でも生き残って来たし、オラリオでの無謀とも言える格上との
と言うか、もうはっきり言ってしまおう。
情けない話になるが私はこのスキル達に依存した戦い方しか出来ない。
武術に精通しているワケでもなければ、特殊な訓練を受けて来たわけでも無い。
魔法も一応は使えるが、これも結局は転生特典の『にゃんこ大戦争』関係のものばかりだ。
以前日記にも書いた通り、私とまともに戦いを成立させるには同じレベルの人間が十人。
つまりレベル5を十人連れて来ないと話にならない。
だが、これはあくまで私がスキルを十全に使えることが前提の話だ。
スキルの使用が禁じられた。つまりキャラクターの召喚が出来なくなった私など、はっきり言ってただの雑魚である。
相手がまともなレベル5なら一対一では先ず勝ち目など無いだろうし、対人特化なら相手がレベル4やレベル3でも勝てるか怪しい。
と言うか防御なんかも『ゴムネコ』や『ネコキョンシー』といったキャラクターを壁にして賄っている為、それすら出来なくなると考えると悪夢だ。
最悪、強力な魔法や魔剣さえ使えればスキルの使えない私などレベル1の下級冒険者ですら倒せてしまうかも知れない。
それ程に私という猫人は『にゃんこ大戦争』絡みのスキルに依存しているのだ。
そんな私に対して何が起こるか分からない無法地帯のダンジョンにおいて、目の前の女は私にスキルを使うなと言っているのだ。
これはつまり、ギルド側から遠回しにお前は死ねと言われているのと同意では無いのだろうか?
「ギルドは中立です!! 一冒険者を一方的に敵視したり不遇したりは決してしません!!」
はて? かつて私が
「あ、あの件に関してはギルド長ロイマンの独断による不正行為として話がついている筈です。ニャンコ・ファミリアに対してはギルド側から謝罪と慰謝料をお渡しして、解決した筈ですが……」
気不味そうに視線を逸らす職員を思わずジト目で睨んでしまう私は悪くないだろう。
私は、はっきり言って、ギルドに対して良い感情を抱いていないのだ。
と言うか今思い出したのだが、私が五年前に初めてオラリオにやって来た時に冒険者登録を受け付けしたのが目の前の職員だった。
その後、オラリオの生活に慣れる前に前触れも無く
どうにか相手側のファミリアに対して仲裁してくれないか。
と、必死になって何度も頭を下げた私に対応したのはまた別の職員ではあったが、その職員は冷たい笑顔でもって。
「ギルドは中立ですから」
と言う言葉であっさりと私の懇願を切って捨てられたのだ。
あれは非常に悲しかった覚えがある。
オマケに何とか次々と申し込まれる
「いくら
等ととふざけた言い掛かりまで、ふっかけてきやがったのだ。
その時は精々、豚エルフの片耳を引き千切る程度で勘弁してやったのだが、今思い返してみれば改めて沸々と苛立ちが沸いて来る。
「り、理由はちゃんと有るんです! ダンジョンには多数のモンスターが生息していますが、その全てが解明されている訳では無いんです。中には強化種や希少種、もしくは新種が発見される事だってあるんですから」
私の機嫌が目に見えて悪化したのを察したのか、目の前の女職員が慌てて告げた。
「ですからモネコ氏のスキルによって召喚された眷属がモンスターと誤解される可能性が非常に強いのです。モネコ氏含めたニャンコ・ファミリアは最後に表舞台に立ったのは二年前の
まあ、言いたい事は分かる。
私が召喚するキャラクターは控え目に言って『キモカワイイ』。
と言うか、はっきり言ってしまえば普通に『キモい』。
『キモネコ』なんかは名前からしてキモイし。
そんなキャラクター達がダンジョン内にてモンスターと勘違いされて攻撃される可能性は確かにあるだろう。
そして私は見知らぬ冒険者に眷属を攻撃されたら、もちろんそれなりの対応をする事になる。
「あの、因みに。もしも、の話なんですけど……新人冒険者が誤ってモネコ氏の眷属に攻撃した場合、貴方はどうするつもりですか?」
もちろん、今まで通りの対応だ。
私は、私に敵対する者にはそれ相応の対処をする。
降り掛かる火の粉を払うという言葉があるが、そもそも心からの安寧を得たいなら火の粉を一々振り払うよりも、そもそもの火元を根本的に潰してしまえば早い話だ。
それは、もう。徹底的に。
「あの……モネコ氏? 無言になられても困るのですが……」
さて、話は変わるが。全くもって話は変わるが。
ダンジョンでは遺体が残らないと聞いたことがあるのだが、それは本当のことだろうか?
勘違いしないで頂きたいのだが、もちろん今の質問はただの好奇心によるものなので、先の問答とは一切関係ないことである。
「イイ笑顔で何てことを聞いてくれてるんですか貴方はああああぁぁ!! 怨みますからねギルド長おおおぉぉぉ!!」
何やら感情を爆発させたギルド職員の女性は盛大に慟哭。
察するにギルド長の豚エルフに私の対応を押し付けられたであろう、目の前の可哀想な女性のあんまりな醜態に憐憫を感じた私は、ほんの少しだけギルドに妥協してやろうという気持ちになった。
きっと今の私ならダイダロス通りのスラムの浮浪者にも優しく出来る。
不思議とそんな確信があった。
-追記-
結果的に妥協案として新人の多い上層では眷属の召喚を控える事になった。
但し、あくまで控えるだけであって緊急時には召喚が許可されている。
そしてその緊急時にはもちろん見知らぬ冒険者に襲われた時。も含まれている。
話し合いを終えた時のギルド職員、改めて名前を尋ねた『エイナ・チュール』さんは何故かゲッソリとした顔をしていた。
・ゴムネコ
まさにカベに徹する為の盾専用キャラ。
ゴムの弾力を利用してさらに強化されたが
攻撃力はあいかわらず(範囲攻撃)。150ヴァリス。
・ネコキョンシー
異国のホラー映画に影響されたコスプレイヤー。
額のお札が現在の全財産。
生産コストが安く量産が可能で、必ず生き残る。240ヴァリス。
・キモネコ
遠くの敵を攻撃できる遠距離型キャラ。
単発だけなら攻撃力はハイクラス。600ヴァリス。
グロ描写
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入れろ。内臓抉り取れ。
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止めろ。自重しろ。