ニャンコ・ファミリア大戦記   作:薔薇尻浩作

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感想、一言評価ありがとうございます。

一言コメントで主人公の容姿についての説明があったのですが、気になる方はにゃんこ大戦争のもねこを検索してみて下さい。

その内改めて他者視点で容姿は書くつもりですが。


戯言日記 其の六

 

◯月¥日

 

 

 結局昨日は、ギルド職員との面談が夕方まで掛かってしまったので、その後帰宅。

 いつも通りマタタビ酒を飲みながら日記を書いているのだが、実は今日に関しては特に変わった出来事や予定も無かった。

 と言うか今日こそダンジョンへ。と思っていたのだが久々の大雨である。

 こんな天気の中外出する気分にならなかった私はダンジョンアタックを翌日に延期とした。

 今日はホームに神様も居たが、文句を言って来ないということは黙認してくれるのだろう。

 

 さて、今日の事については、こんな短文で終わってしまう程に暇だったので、せっかくだから昨日の面談の続きを詳しく書いていこうと思う。

 

 

 本人的にはどう思っているかはお察しとは言え、めでたく第一級冒険者の担当となったエイナ・チュール女史。

 ハーフエルフに相応しい凛とした美貌の彼女は、何故か面談が終盤に差し掛かる頃になると顔から生気がドンドンと無くなっていた気がしたのだが。

 まあ、それに関しては私の気のせいだろう。そういう事にしておいた。

 前世で例えるならばハリウッド劇場版の某電気鼠のような、疲れ切ったクシャクシャな顔をしつつも、エイナ女史は私に幾つかの注文をしてきた。

 

 

「あの、せめて装備だけは整えて下さい。お願いですから、せめて革鎧とナイフ、それから魔石を入れる袋や鞄ぐらい身につけて下さい」

 

 

 まず一つ目はダンジョンアタックの際の私の服装についてだ。

 

 私の外出時の服装は基本的にはダボダボのTシャツ一枚と、顔を隠す為のフード付きのローブのみである。

 『I♡サバ』とプリントされたサイズオーバーのこのTシャツは召喚した『ネコジャラミ』から度々頂戴しているお気に入りだ。

 足首まで隠れるダボダボのシャツに尻尾を通す穴を小さく開けただけの服は部屋着にも寝巻きにも最適である。

 

 基本的に洒落っ気の無い私は最低限の清潔感さえ有れば服装に拘りが無い。

 妹は年頃の女子らしくオシャレに興味があるのか、隙有れば私を着飾ろうと偶に服を買って来るのだが、何故かいつも女物ばかり。

 女装趣味の無い私が、フリフリのスカートやドレスなど着るわけもないので、こうして基本的に私は外出する時はシャツにシンプルなで真っ黒なローブのセット。

 

 それから安売りしていたサンダルと、白い毛がモコモコと膨らんだ猫の手を模したグローブをつけている。

 このグローブに関しては私自身も不思議なのだが常に着用していないと、どうにもソワソワしてしまって気分が落ち着かない為、家の中だろうが外だろうが必ず身につけている。

 恐らくだが私の元となったキャラクターである『もねこ』が常に身に着けていたからだろう。

 

 

「お金の無い零細ファミリアの新人冒険者ですら、そんな普段着でダンジョンに潜る人なんて居ないですよ」

 

 

 ギルドに訪れた私はローブを脱ぎ、シャツ一枚にグローブとサンダルという簡素極まり無い服装。

 まあ、前世の感覚で言うなら、近くのコンビニでちょっと煙草買いに行く為にジャージやスウェットでフラッと買い物に行く時の気の抜けたコーディネートだった。

 ダンジョンに潜る際もこの格好で行くつもりだったのだが、それを察したのかエイナ女史も釘を刺したのだろう。

 

 だが、まあ安心して欲しい。

 確かに見た目は小人族並みにちんちくりんだし、体つきも華奢だし、おまけに顔は『にゃんこ大戦争』のマスコットキャラである、もねこそのものなのだから、どっからどう見ても戦いに向いていないように見えるだろう。

 この間知り合った白兎少年のベル君よりも弱っちそうに見えると笑われても、我がことながら納得してしまう。

 

 だが私は上級冒険者なのだ。

 ぷにぷにモチモチの柔肌に、棒きれのような細い手足。

 そんなひ弱な姿に見えたとしても、偉業を重ねた器と蓄積された経験値を溜め込んだこの身体はそこらの竜種よりも硬い。

 もはや記憶は朧気とは言え、眷属が召喚できない状況だとしても、上層に出てくるようなゴブリンやコボルド程度で私に傷はつけられないだろう。

 だから心配しないで欲しい。目の前の彼女を安心させる為に、私は笑顔で彼女にそう説明するとエイナ女史は死んだ魚のような目で。

 

 

「モネコ氏の心配など初めからしていませんよ。むしろそんな隙だらけの格好のモネコ氏を見かけて、魔が差した他の冒険者が超危険人物である貴方を『丁度いいカモ』だなんて勘違いして、良からぬ悲劇が起きないか不安視しているだけですから」

 

 

 それは自業自得では? 猫は訝しんだ。

 理由や動機はともかく、ダンジョン内とは言えども他人に危害を加えるようなモラルの無いものに私が気を使う必要もないだろう。

 私はエイナ女史に前向きに善処する旨を伝えた。

 

 

「お願いしますからね……本当にお願いしますからね?」

 

 

 やけに念を押してくるエイナ女史だが、安心して欲しい。私は嘘が嫌いな人間だ。

 言葉通り、しっかりと前向きに善処はする。善処だけはする。

 善処した結果、普段着でダンジョンに潜ろうと決意しただけなのだ。

 その結果こちらを舐め腐って喧嘩を売って来るような馬鹿な冒険者が居たとしても、それは私の責任では無いし、ギルドの責任でも無いだろう。

 

 ギルドは中立なのだから。高位冒険者に絡んだ馬鹿な新人冒険者がどうなろうと、きっと責任は追及されない。多分。

 

 

「大丈夫かしら本当に……では、それとは別件でもう一つ。いくらモネコ氏が第一級冒険者とは言え、ダンジョン探索に関しては素人なのですから、この言葉を覚えておいて下さい」

 

 

 重苦しい溜息と共に肩を落としたエイナ女史は暫くこっちをジト目で睨んでいたが、やがて気分を切り替えたようにキリッとした顔つきで私にこう忠告した。

 

 

「『冒険者は冒険しちゃいけない』んです。死んでしまっては全てを失ってしまいます。ダンジョンは未知に溢れています。私達ギルド職員ですら想像も出来ないような危険に満ちているでしょう」

 

 

 エイナ女史は真剣な声色で私に諭すように語る。

 

 

「どうか、無理はなさらず御自分の命を大切にして下さい。そして、出来ることならば他の者の命も尊重してあげて下さい。モネコ氏のような力がある御方ならば、きっとそれが出来る筈ですから」

 

 

 お願いします。と深々と頭を下げるエイナ女史の姿を見て、私は了承の意を告げながらこんな事を考えていた。

 

 この娘、話が長いなあ……と。

 

 ぶっちゃけ私は結構前から飽きていた。

 ギルド職員全体に良い印象を抱いていない私からしてみれば、いくらエイナ女史が真面目で職務に忠実で、恐らく人一倍面倒見が良い性格をしているであろうとも、内心では「でもこいつもギルド側の人間だしなぁ……」と、どうしても色眼鏡で見てしまう。

 

 それにそもそも私は迷宮探索で無理をするつもりなど更々無いし、エイナ女史の言うところの『冒険』なんかも興味は無い。

 適当にダンジョンに潜り、適当にモンスターから魔石を取り出し、適当な時期が来て神様の気が変わるまで、やり過ごす。

 ダンジョン探索に命をかけている人間からすれば、ふざけんな死ね! と怒られるようなド底辺のモチベーションしか無いのが私の内心なのだから。

 

 欠伸を噛み殺しながらも、そろそろ終わらないかなぁ。と、すっかり面倒になって来たエイナ女史との面談が早く終われと、ひたすら念じていた。

 

 

 結局、この後も何だかんだでダンジョンのマナーやら上層や中層で注意すべきモンスターの特徴などを座学で叩き込まれたりしている内に、あっという間に時間は過ぎ去り夕方に。

 ただでさえやる気の無かったダンジョンアタックへのモチベーションが更にガックリと下がった私は、面倒な事は明日の自分に押し付けようとばかりにホームに帰還した。

 

 神様がホームに不在で、文句を言われなかっただけ幸運と思おう。

 明日こそダンジョンに向かわなければ……。

 

 

 

-追記-

 

 まあ結局は雨模様に負けて、更にダンジョンアタックを延期するハメになったのだが。

 

 

 

◯月※日

 

 

 昨日とは打って変わってのカラッとした晴れ模様。

 心地よい陽気に何処となく明るい気持ちになりながらダンジョンへ向かう。

 ……その前にふと思い出した事があったのでバベルの方へ向かう事にした。

 

 以前、デメテル様をはじめとした三柱の女神とその眷属が我がホームに来場された時の話だ。

 デメテル様は御土産としてファミリア特製の野菜を。ヘスティア様はバイト先のジャガ丸くんを持って来てくれたのだが、この際ヘファイストス様からも御土産を頂いていたのだ。

 それが今、私がこうして手に持っている一枚の紙。

 ヘファイストス・ファミリアのエンブレムが印字されたこのカードは上級鍛冶師(ハイ・スミス)への推薦状なのだとか。

 

 上級鍛冶師(ハイ・スミス)とは発展アビリティで鍛冶を発生させた者達の総称である。

発展アビリティとは、そもそもレベルが上がった時にしか発生しない希少な者で、結果的に上級鍛冶師になるにはレベル2以上の者でないと、その領域に至る事が出来ない。

 以前も書いたがオラリオにおける冒険者の大半はレベル1の殻を破れない。

 そんな中で戦いの専門でも無い鍛冶師がレベルを上げる。

 その難易度の高さは私には想像もつかない。

 

 そんな並の冒険者以上のハードルを超え、鍛冶のアビリティを手に入れた上級鍛冶師(ハイ・スミス)はその武具の値段と同じくらいに誇りも凄まじく高い。

 もちろんそれに見合った偉業と腕前を持っているからこそのプライドなのだが、そんな上級鍛冶師ともなると鍛冶師の方から客を選ぶようになる。

 要するに幾ら金や実力があろうとも、彼等の気に食わない客なら門前払いされてしまうのだ。

 

 この推薦状はそんな気難しい上級鍛冶師へ直ぐ様コンタクトが取れるという、冒険者からすれば垂涎ものの希少な物らしい。

 これを貰った当初はダンジョンになど潜る気は無かったので、こんな物より包丁とか鍋とか貰った方がまだ有難いのに。と、内心で物凄く失礼な事を考えていたのだが……。

 

 まあ、せっかく貰ったものだから使って見よう。

 という訳でバベル内部にあるヘファイストス・ファミリアの店舗に初めてお邪魔して見たのだが、私はすぐに後悔した。

 

 

 さて、ちょっと話は逸れるが以前に私のスキルである【怪猫軍団(にゃんこぐんだん)】について触れたと思う。

 このスキルはヴァリスを対価に眷属となるキャラクターを召喚するものだ。

 もちろんキャラクターによって強さやら特色に大きく差があるので、そのお値段もピンキリだ。

 75ヴァリスという子供のお小遣い並みの値段で呼び出せるものも入れば、新人冒険者の平均日給3000ヴァリス程のキャラクターもいるし、もちろんそれ以上も居る。

 私はこれらの眷属を文字通り軍団として召喚、指揮することで数多の戦場を征して来たのだが、ここでちょっと考えて欲しい。

 

 軍団。すなわち集団なのだ。

 単独ではない。つまり私は戦闘の度にヴァリスのかかるキャラクター達を、十や百の単位で。

 大規模な戦争遊戯(ウォー・ゲーム)ともなれば千や万に近い大軍を召喚しなければならない。

 要するに私のスキルは戦闘の度に大金がかかるのだ。

 

 戦争遊戯(ウォー・ゲーム)専門派閥と他者から勝手に称される程に戦いに巻き込まれていた頃は、金銭という意味では困っていなかった。

 

 勝ってさえしまえば対戦相手のホームや土地、場合によっては店舗や権利書といった財産も丸ごと手に入ったのでかなりの収益だ。

 戦争遊戯の結果、生き残った敵側の眷属もレベルが高ければ我がファミリアに改宗(コンバージョン)して貰い、数日の内に『訓練中の不幸な事故』によって私の経験値として消えて貰うので得になる。

 低レベルの冒険者や非戦闘員の生き残り達は恩恵(ファルナ)を封印してもらう、若しくは改宗待機状態にしてもらった後に『イシュタル・ファミリア』への『人材斡旋業』によって、大金に変わるので無駄がない。

 

 必要な戦費は莫大だし、相手がより強大なファミリアになる度にその額はどんどん大きくなっていたものの、それを込みで考えても十分な黒字が見込めるリターンがあったからこそ、連戦に次ぐ連戦でも何とかここまでやって来れた。

 

 

 だが現在のニャンコ・ファミリアはつい最近まで活動休止状態だった。

 つまり大きな収入が無い状態である。

 今まで私がノンビリとヒキニート生活を楽しめていたのは、戦争遊戯時代に稼ぎまくった貯蓄をゆっくり溶かしているからなのだ。

 

 一応『デメテル・ファミリア』との商売で食費や雑費を賄える程度の小金は稼いでいるものの、収支はほぼプラマイゼロ。

 貯金を崩している現在は微妙にマイナスとも言える。

 活動休止が続くならばそれでも良かったのだ。

 戦争遊戯は儲かるので、稼いだ総額のヴァリスは億を超えていたから猫人二人と神様一人の生活費や交遊費など余裕で賄えた。

 何だったらあと二、三人は眷属が増えても遊んで暮らせる程度のレベル。

 

 だが本格的にダンジョン探索を始めるとなると、話が大きく変わる。

 以前も書いた通り、私は【怪猫軍団】をはじめとした様々なスキルに大きく依存している。

 攻撃や防御は勿論、偵察や囮なんかも全て召喚したキャラクターでこなしている。

 つまり戦えば戦う程、強制的にヴァリスが消えてしまうのだ。

 

 ダンジョンで稼がなければならないのに、戦えば戦う程に出資が嵩んでは意味が無い。

 とは言えダンジョン初心者の私はどの階層まで潜れば、どの程度稼げるのか等の知識があまり無い。

 精々がエイナ女史から聞いた冒険者のレベル別の平均収入の情報ぐらいだ。

 

 まあ、つまり何が言いたいかと言うと、今後どの程度の出費が嵩むのか。またどの程度の収入を得るのか分からない現在は、吝嗇家と蔑まれようとも大きな出費は避けなければならないという事だ。

 

 ……だと言うのにこれだ。

 目の前のショーウインドーに飾られている、なんかちょっと切れ味が良さそうな短刀が800万ヴァリス。

 お隣の紅色がかった長剣など3000万ヴァリスである。

 

 質の良い武器は高いなんて当然の知識、もちろん私は知っている……否、知っていたつもりだった。

 3000万、3000万だぞ?

 金属の棒っきれが八桁の値がつくだなんて想像も出来ない。

 

 もしも3000万ヴァリスもあれば中規模ファミリア相手なら四、五回は戦争遊戯で滅ぼす事が出来る程の大金だ。

 えぇ……武器ってこんなに高いのぉ……?

 

 

 ぶっちゃけ私がヘファイストス・ファミリアの店舗に顔を出した理由はせっかく貰った御土産を使ってみたかっただけなのだ。

 武器なんて『ネコヴァルキリー』を召喚して槍を借りればいいだけだし、解体用のナイフも『勇者ネコ』の剣を借りればサイズ的にも丁度いい筈だ。

 考えれば考える程、大金払ってまで大して必要の無いモノに金などかけたくない。

 

 とは言え、もう御土産の紹介状は店員に渡してしまったのだ。

 どうしよう。用事思い出したとか言って帰ろうかなぁ……

 

 などと不埒な事を考えていたのが悪かったのだろうか。

 

 

「先日ぶりだな『戦争狂(ウォー・モンガー)』! ついに得物を持つ気になったか。良い良い、皆まで言うな。宴でも言った通り手前が記念に一本打ってやるとも!! なーに遠慮など要らんぞ!! 手前の今の全力の一振り、お主の為に打ってやろう!!」

 

 

 ヘファイストス・ファミリアが誇る鬼人にして奇人。

レベルも実力も誇りも、そして恐らくそのお値段も一番高いであろう、まさかの『椿・コルブランド』さんとの再会はとてもじゃ無いが喜べるものでは無い。

 

 

 「ふむ……改めて見ると『戦争狂』は小さくて抱き心地が良さそうだな、丁度人肌が恋しかったところよ」

 

 

 

 そう言うや否や、私を抱擁した椿さん。

 彼女のような美女の、豊満な胸の感触を顔全体で味わうという至福の時。

 

 にも関わらず、きっとその瞬間の私の瞳は屠殺された豚のように濁っていただろう。

 

 

 

-追記-

 

 私を抱擁する椿さんからは汗と仄かな鉄、それから女性特有の蕩けるような甘い薫りがした。

 

 長くなったので次のページに続く。

 

 





・ネコジャラミ

ごくたまに敵をふっとばす。
破壊をつかさどる巨大ネコ(範囲攻撃)。
Tシャツが伸びるので良い子はマネしない方がいい。1950ヴァリス。


・ネコヴァルキリー

天界より降臨した戦う女神。
神さまから授かった最強の槍ニャングリルは
敵をまとめて攻撃する(範囲攻撃)。3000ヴァリス。



・勇者ネコ

勇者にあこがれる戦闘向きのキャラ。
「赤い敵」にめっぽう強い。300ヴァリス。

グロ描写

  • 入れろ。内臓抉り取れ。
  • 止めろ。自重しろ。
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