多少グロテスクな表現があります。苦手な方ばご注意下さい。
✕月◎日 -追記の続き-
話が飛んでしまったので、覚えている限りで時系列順に書き記していこうと思う。
五年ぶりのダンジョンに向かった私は、もはや記憶が朧気な懐かしい洞窟の風景に柄にも無く胸を躍らせていた。
装備はいつものオーバーサイズのTシャツにサンダル。
それから椿さん作の新しい猫の手グローブを両手に装着し、右手には愛飲しているマタタビ酒がたんまりと入った瓢箪。
つまりいつものリラックス部屋着スタイルなのだが、今日は上層をフラついてグローブの性能を確かめつつ早めに上がるつもりなので、問題は無いだろう。
一応ギルド側の指示に従って眷属たるにゃんこは召喚していない……ように見える筈だ。
音立てるように短く足踏みをすれば、洞窟の地面にいくつもの波紋が浮かび上がる。
念の為の護衛として地面を泳いでいる十体の『ネコ半魚人』からの無言のアピールに一安心である。
どんな硬い陸地でも水を泳ぐようにスイスイと移動し、潜水ならぬ潜地によって隠れる事が出来るこのキャラクターは奇襲にも護衛にもうってつけだ。
さて、実はこの時点で傾いたシーソーに乗った大きな不幸の予兆は出ていたのだ。
時おり酒を飲みながらもフラフラと歩いているのだが、一階層、二階層、三階層とひたすら、ただ歩いているだけの時間が過ぎて行く。
何故か出ないのだ。モンスターが。
五年前に潜った時は普通にゴブリンやらコボルドやらがワラワラと沸いた覚えがあったのだか、何やら環境が変わったのだろうか。
漠然と嫌な予感がしたのだが、折角ここまで来たのだからと結局更に奥へと進む事に。
此処で引き返していればあんな不幸な遭遇はしなかったと言うのに……いや、今となっては過ぎた事だ。
そして不幸の予兆はまだ続いた。
猫人である私は他の種族より音や匂いに敏感だ。
聴覚は兎人、嗅覚は犬人や狼人に猪人。ついでに言うなら力や体格では大抵の虎人に劣るのだが、それでも並の小人族やヒューマンよりは優れている。
まず嗅ぎ取ったのは鉄臭さだ。
それと共に次第に聞こえてきたのは、歳若い男の悲鳴だろうか。
臭いも声も次第に強く、大きくなっていく。つまりはこちらに近付いて来るようだ。中々の速さである。
まさか探索初日からいきなり闇討ちか。
ゴクリと大きく喉を鳴らしながらマタタビ酒を煽った私は、暗闇広がる洞窟を睨み付けるようにして推定襲撃者を待ち構えた。
……果たして、その正体とは。
「だああああああああああああぁぁぁぁぁー!!!!」
……。
えぇ……?
え、今のベル君だよね?
なんか血塗れだったけど、物凄い奇声を上げながら並の兎人よりも素早い速度であっという間に私を追い越して行ったよね?
え? マジで何やったんだベル君は。
あんなに元気に走り回ってる事からして、あのバケツ一杯の血を被ったような有様は、モンスターの返り血か何かを浴びてしまっただけなのだろうけど……。
私は暫くの間、脱兎の如く駆けているベル君の背中をポカンとした間抜け面で見送っていた事だろう。
この時点で、割と真剣にベル君の奇行が心配だった私はダンジョン探索を中断してでも、ヘスティア・ファミリアに事情を聞きに行くか悩んだのだ。
とは言え、取り敢えずは五体満足なのは間違いなさそうだし、また機会があったら食事にでも誘った時に聞いてみればいいか。
そう納得してしまった。
だからこそ私は結局、探索を続ける事を決意して。
五階層へ向かう階段を降りたのだった。
そう。降りてしまったのだ。
そこで、最も出逢いたくなかった集団とカチ合わせる事となる。
「まさか此処で君の姿を見ることがあるとは、ね。『
子供のような背丈と相反するような深い知性と穏やかさを感じさせる声色。
輝く金髪に蒼い瞳。そして特徴的な長槍。
「フィンの言う通りだ。
女神も嫉妬する美貌にエメラルドを溶かした長髪。
冷淡で平坦で、三度の厳冬よりも凍りついた声色に感情を滲ませたエルフの女王。
……ふむ。先ずは落ち着こう。まだ慌てる時じゃない。
瓢箪の栓を抜き、流し込むように酒を飲みながら私はこう思ったの。
あ、オワッタ。と。
「正式に顔を合わせた事は無かったから、こんなところで何だけど自己紹介させて貰うよ。『ロキ・ファミリア』団長、『フィン・ディムナ』だ。先ず言っておきたいが、こちらに敵対の意思は無い。願わくば、君もそうであって欲しいものだね、『戦争狂』」
「副団長の『リヴェリア・リヨス・アールヴ』だ……最もお前から牙を剥くと言うのならば此方も相応の手段を取らせてもらうがな」
たなびく団旗に描かれているのは不敵な笑みを浮かべた道化の姿。
うん。アレだ。どう頑張っても自分を誤魔化しきれない。
都市最強二大派閥が一つ。
『ロキ・ファミリア』の精鋭達が勢揃いで私の目の前に現れた。
私は取り敢えず酒を飲んだ。
うん、ただの現実逃避である。
いや、だってめっちゃ睨んでるんだもん。
フィンさんと、ちょっと離れた所にいるやけに圧が凄いドワーフのオジサン以外の殆どの人間がものっっっ凄い表情で睨みつけて来てるんですけど⁉
私は内心でビビリ散らしながらも、ぎこち無い笑顔で自己紹介をした。
ニャンコ・ファミリアの団長のモネコです。『
何故か更に殺気が増した気がする。
何でやねん。私は泣きそうになりながらも恐怖を抑えつける為にもう一度酒を煽った。
スキルの関係であらゆる状態異常が効かない私は心地良い微酔いにはなれるものの、理性のタガが外れる程の深酔いが出来ない。
普段は有難いこの体質が、今この時ばかりは恨めしかった。
「済まないね。実は遠征帰りで皆、疲れていてね。オマケについさっきまで、ちょっとしたトラブルに巻き込まれていて多少、殺気立っているようだ。不快な気分にさせてしまったなら謝罪したい」
フィンさんが取り繕うように苦笑いでそう言ってくれるのだが、少なくともお隣のハイエルフ様の視線を見るに多少、殺気立っているなんてレベルじゃない気がするのだが……。
しかも流石は大手ロキ・ファミリアだけあってエルフの数も相当に多い。
『
私はフィンさんにこう伝えた。
遠征お疲れ様です。不快な気分になんてなっていませんのでお気遣いなく。
私は二つ名のせいで誤解されやすいですが、小心者の平和主義者なのです。
ですから、もちろんロキ・ファミリアの皆様に危害を加えるような事は致しませんので、どうか御安心して下さい。と。
だが、どうやら私のこの言葉が癪に障った人間がいたらしい。
「平和主義者だと? 本気で……本気で言っているのか貴様は……⁉」
ギチリ。そんな歯軋りの音がここまで聞こえそうな程に、怒りによってその美貌に罅を入れたのはリヴェリアさんだ。
これは不味い。エルフに憎まれている自覚はあったが、ハイエルフである彼女に敵対宣言されると非常に不味い。
冗談抜きでオラリオ中のエルフが私を殺しに来る可能性がある。
私は内心で慌てながらも、リヴェリアさんに真摯に語った。
数々の戦争遊戯に巻き込まれ、どうにも血の気が多い戦闘狂のように思われているが、それは大きな勘違いであること。
その証拠に今まで行われた十度の戦争遊戯、全てが相手側から申し込まれたモノで、当時はまだ新参者だった我が主神には断りきれなかった事。
確かに戦争遊戯で私は数多の死傷者を出して来たが、此方も命が懸かった事なので手加減出来なかった事。
嘘や誤魔化し何一つも無い私の語りに、何かを感じ入ってくれたのだろう。
やや俯き、身体を震わせているリヴェリアさんは……ほら、きっと、アレだよ。うん。
感動とかしてくれたんじゃ……ない、かなぁ?
私はまた酒を飲んだ。
「本気で、言っているのか? あのような地獄を作り出した貴様が、本気でそんな戯言を言っているのか……?」
「リヴェリア、落ち着け。此処でニャンコ・ファミリアと抗争を起こすのは認められ無い」
なんか抗争とか、ちょっと物騒な言葉が聞こえた気がするけど、気の所為だ。
明らかに気の短そうなヴィジュアル系バンドに居てもおかしく無い狼人の兄ちゃんや、強者オーラが半端なくて戦闘能力がズバ抜けてそうなアマゾネスの姉妹が身構えているのも、きっと気の所為に違いない。
「嗚呼、理解っている。理解っているさ、フィン。私だって、そんな事は理解っているんだ」
胸に手を当て必死に感情を押し殺そうとしているリヴェリアさんの様子に、背後に控えているエルフの集団からの殺気がマシマシとなった。
殺気マシマシ意思カタメ。あまりのストレスに胃もたれ起こしそうになりながら、酒を煽って恐怖を沈める。
ヤバい。そろそろ空になりそう。
「一つだけ。一つだけ貴様に問いたい」
激情を押し殺したリヴェリアさんの静かな声が、ダンジョン内に染み渡るように響く。
「何故、数多の同胞に対し、口にするにも悍しい邪智暴虐を働いたのだ」
リヴェリアさんの翡翠の瞳が、私を貫いた。
「答えろ!! 『戦争狂』!!」
さて。ぶっちゃけ恐くてゲロ吐きそうな私だが、流石にこの状況で逃げ出すわけにもいかないだろう。
ダンジョン内では神が居ないのだから適当に誤魔化すのも有りかも知れないが、明らかに頭脳明晰そうなフィンさん。
そして王族としての高い教養を持っているであろうリヴェリアさんが、私程度の口車で誤魔化せるとは到底思えない。
だから私は、正直にこう答えた。
それが、最も効率が良かったからです。
「効率だと?」
その通りです。私は大きく頷いた。
確かに私の行動はエルフの価値観からは許されないのかも知れない。
だが、戦争遊戯では常に私は最小の犠牲と労力で最大の効率と利益を獲る事を目的としている。
その為ならば私は、戦争遊戯の規則に違反しない限り、効率さえ良ければどんな事だってする。
「貴様……本気で? いや、正気か?」
そっちが聞いてきたから態々こうして丁寧に説明しているというのに失礼な。
若干、気分を害しながらも私は頷いた。
勿論、本気だし、正気だ。
私は効率良く事を運ぶ為なら、道徳観やら倫理観といった、暴力こそが正義であるオラリオにおいて犬の糞程の価値も無い、馬鹿馬鹿しい綺麗事など中指立てて糞食らえと捨て去るタイプの人間だ。
もう何度も繰り返しているが、私は平和主義者だ。
故に、私の平和を乱そうとする者の存在は許容出来ない。
だからこそ敵対する者は全て排除しなければ安心できない。
何故なら私は小心者だからだ。老若男女、種族すら関係無く、敵対者は排除する。
恐らくだがリヴェリアさん含めたエルフの人々が私に対して強い嫌悪を抱くようになったのは、七回目だか八回目だかの戦争遊戯だろう。
主神がエルフ好きなのか、それとも単純に同族が集まりやすい環境だったのか所属団員の殆どがエルフのファミリアが相手だった。
野戦での総力戦で、相手は確か70名ぐらいは居た気がする。
ふむ。色々と思い出してきたが、私はあの時も効率良く利益を得る為に動いていた。
確かに私は戦争遊戯がアーティファクト的な何かの力でオラリオ全土に放送されると知っていた。
その上で召喚した数千ものにゃんこによる部隊をいくつかに別けて奇襲し、何人かのエルフの女性を人質として攫った。
肌に触れられる事を激しく嫌うエルフの女性達を強引に全裸にひん剝き、オラリオ中の晒し者にした。
団長の首を差し出さなければ、誠に気が向かないが、この女達に苦痛を与える事になるだろう。
魔法によって作ったであろう堅牢な石の砦に閉じ籠もった相手ファミリアに内輪揉めを起こすように煽った。
宣言通り、私は女性達に陵辱的な行為を行った。
詠唱出来ないように喉を潰し、片耳と片目をそれぞれ抉った。
乳首を切り落とし、女性器と肛門にそれぞれ熱した鉄棒を挿入したり、陰核と呼ばれる部位を潰したりと、苦痛と恥辱を存分に与えた。
「人間のやる事じゃ無い……!!」
山吹色の髪をしたエルフが真っ青な顔で私を睨んでいるが、取り敢えず無視をする。
私だってやりたくてやった訳では無いのだ。
そもそも戦争遊戯を吹っ掛けて来た相手の主神が悪いのだから。
さて、話を戻す。
その結果、激昂した一部のエルフ達は私の思惑通りに折角作り上げた砦から飛び出し、私に向かって突貫して来た。
遠距離から魔法が飛んで来ないように、常に女達を肉壁に出来る立ち位置に居た甲斐があるというものだ。
遠距離戦が出来なくなり捨て身の首刈り戦法に頼るしか無いように選択肢を潰したのだから、当然ではある。
もちろん攻め入って来た者は皆殺しにした。
このタイミングでもう一度団長の首を差し出すように要求すると、砦の内部が騒がしくなった。
どうやら目論見通りに内輪揉めが始まってくれたらしい。
私はさらに敵を挑発するために女性への暴行を続けた。
「悪魔め……!! この人間の屑が!!!!」
別のエルフが騒いでいるが、説明を求めたのは御宅の副団長様だろうに。
運良く妊娠初期状態の者が捕えた者の中に居たので、死なないように出血量を確認しながら腹を裂き、胎子を取り出しては目の前で踏み潰した。
突貫して来た男達の死体から男性器を切り取り、ミンチにした物を無理やり飲み込ませた。
実はここら辺から思いついた拷問のストックが尽きかけていて、割と手当たり次第やっていた覚えがある。
根が善良で素直な私は、美女達の苦痛に喘ぐ姿を見ても何とも思わないので、作業ゲーをやっている感覚だったのを思い出す。
そうした仲間の悲惨な姿に我慢出来なくなった敵達が此方に突貫し、また抹殺。
その繰り返しを行う事によって私は実に効率良く敵を擦り減らした。
挑発行為とは戦争において昔から多用されるだけあって、実に有効な手段なのだな。と感心したのを覚えている。
結局、最後まで砦に籠もって生き残っていた団長も、私が満を持して攻め込んだ時には謀反でも起こされたのか、何人かのエルフの死骸の上に横たわっており、虫の息。
最後は百匹単位で召喚した『ネコボンバー』に、予め大金払って仕入れていた爆弾代わりになる大量の石を巻き付け、そのまま自爆を命令。
要塞ごと爆殺した。
汚い花火だった。
そもそも私の召喚できるにゃんこには、広範囲攻撃である魔法を防ぐキャラクターが極端に少ないのだ。
つまり魔法詠唱者や魔剣は私が苦手とする致命的な弱点でもある。
この時に敵対したファミリアにはレベル3が五人はいて、レベル4は団長と副団長で二人は居た筈だ。
そんな真正面から当たれば、苦戦どころか敗北すら有り得る状況だったのである。
それでも勝ったのは私だ。
私が勝ったのだ。
正義は必ず勝つのである。
何故なら勝った者が正義を決めるのだから。
「おい、屑野郎」
さて、何やらシンと静まってしまったロキ・ファミリアの中から仲間を押し退けるようにして私の前に出て来たのは銀髪の狼人だ。
彼は燃え盛るような殺気を隠そうともせず、私の前に立った。
ロキ・ファミリアの何人かが 「よせ、ベート!!」や「抑えろベート!!」と騒いでいる事から察するに、この青年の名前はベートさんと言うのだろう。
「……何人だ」
はて? 何の事だろうか?
申し訳無いのだが、質問があるならばもう少し具体的に、分かりやすく言葉を尽くして欲しい。
「テメェは……今まで何人の雑魚を殺して来た……?」
ふむ。見た目からしてヤンチャっぽい雰囲気のベートさんだ。
雑魚とは即ち、相対して来た敵の事を彼なりに表現したものなのだろう。
私は思考をまとめる為、もう一度酒を煽る。
すると、残念な事に瓢箪の中身が空になってしまったではないか。
私はギラつく視線をぶつける、ベートさんを見上げ、ちょっとだけ考えた後に、こう答えた。
貴方は、今まで飲み干した酒の数なんて覚えているんですか?
・ネコ半魚人
ネコとしての限界を超えたキャラクター。
更なるスピードを手に入れたが大会には出禁になった。
浮いてる敵に超ダメージを与える。675ヴァリス。
・ネコボンバー
日々のストレスを思う存分爆発させるネコ。
日常にはないスリルとショックが病みつきに。
必ず黒い敵の動きを一瞬止める(範囲攻撃)。510ヴァリス。
グロ描写
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入れろ。内臓抉り取れ。
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止めろ。自重しろ。