青い瞳は綺麗だよ 作:へびのあし
・原作の裏ストーリーという形で進むので、基本的に改変はありません。
・独自設定や解釈が含まれます。
・登場人物や施設、出来事などは全て架空のものであり、一切事実とは関りありません。
ジュリーは僕の初めての生徒だよ。そして、僕を正しく評価してくれるただ一人の理解者でもある!
……へえ。つまりアレか、グッドルッキングガイってこと?
……絶対自称だと思ってたわ。
(五条先生×釘崎野薔薇の会話より)
* * *
大森さんは紫色のボンボン付きニット帽を被り、黒いロングコートを纏っている。ポケットに手を突っ込んで、空を眺めていた。
こちらに気づくと、大森さんは静かに微笑んだ。
思ったよりも普通の人だ、というのが印象だった。
「こ、こんにちは……じゃなくて、そっその、今晩は……」
「うん。」
乙骨憂太は、緊張していた。若干上擦った声は、どこか臆病の香りを含んでいる。
あぁかっこ悪い、と憂太は自分を情けなく思った。真希さんなら舌打ちの一つ二つして竹刀袋に右手の小指ぐらいかけていてもおかしくない……というかそうなるに違いないだろう、という妄想がむくむく湧いてきて鮮やかに脳裏を支配したくらい、締まらない挨拶をしてしまった。
キョドキョド怯えながら、という態度が情けなさのトドメだ。
(大森さんにはきっと、初対面で軽蔑されるだろうなぁ。)
いつものように落ち込んでネガティブ思考の海にズブズブ沈んでいこうとした憂太は、しかしいつまでたっても軽蔑のため息が聞こえてこないので(アレッ?)と首を傾げた。
大森さんは、微笑みを崩していなかった。
「今晩は。乙骨くん。」
憂太は目を見開いた。
(————とても優しいふわふわの毛糸みたいな、お母さんみたいな……なんて不思議な声なんだ!)
こんな呪術師に会ったことはない。
というか、“お母さんみたいな“なんて感想を抱かせる呪術師がこのセカイに存在することすら知らなかった!
もっとこう、呪術界は殺伐としていてドロドロの澱の溜まり場であるような気がしていたのだ。こんな存在がいたなら、すぐにその幼子の如き純粋さを汚して沈めてしまうような。
紫色のボンボンつき毛糸帽子が、急に色を持ったように眼前に迫ってくる。白黒写真がカラー写真になった瞬間のように、景色が温かみを増す。
これは、本当に、とても……
(————マズイ)
唇を噛んで、憂太は真っ青になった。
マズイ。
何がマズイって、女性が憂太に親切にすることがマズイ。
なぜって?!
死んだ恋人の里香ちゃんが嫉妬をするから!
「乙骨くん?どうかしたの?」
「……ひっ、い、いえっ……」
若干ギャグ調になってしまったが、実のところこれは本当に洒落にならない。憂太は目の色を変え、遠慮も何もなくごく自然に近寄ってくる大森さんから必死に距離をとった。
「もしかして緊張しているのかな。飴ちゃんあげる。」
「ダメです!絶対ダメっ!それだけは……あぁあ里香ちゃん!」
【ゆゔ た に 近寄る なあぁぁぁああああ】
呪いの女王が、その禍々しい姿の片鱗をあらわにした。
折本里香。
特級禍呪怨霊。
本来行われるはずだった乙骨憂太の秘匿処刑執行者として、現代最強の呪術師、五条悟が要請された理由がこれである。
死刑執行の対象者が“死のうとしている”のにも関わらず、“五条以外には誰も彼を処刑できない“という矛盾が出来上がってしまうくらいには、強力で厄介な呪いだった。
「おっと。」
「僕に近寄るな!死にたいのか!」
もう一度言う。特級の、禍呪怨霊である。それが憂太に憑いている。顕現すれば小指一本で人殺しをするもの。
憂太は怖かった。なぜって、知っている。ありありと肌で感じる。
大森さんがいかに実力者であっても、呪いの女王には勝てない!
傷つけたくない。もう誰も、自分のせいで人が血を流すのを見たくない。怖い。自分が怖い。自分が、人を傷つけてしまう自分が怖い……!
恐慌状態に陥った憂太は、ぎゅっと目を瞑ったままくるりと回れ右をした。
「あっ。」という大森さんの呟きは、聞こえなかったふりをした。
少しでも大森さんと距離をとる。
離れるんだ。
里香ちゃんの力の及ばないところまで!
「……くん。おーい。聞いてる?乙骨くん。」
走り出そうとしたまさにギリギリの瞬間、ぎゅっと肩を掴まれた。憂太はさっと青ざめる。ボディタッチは犯罪だ!大森さんが里香ちゃんに極悪犯罪者認定される!
憂太が渾身の力と無尽蔵の呪力の一部を使ってまで、大森さんの手を振り解こうとした、その瞬間だった。
【憂太 だいじょう ぶ?】
「……え…?あ、……えぇえ?」
里香ちゃんが、憂太に触れる大森さんを完全に無視していた。
一体どういうことだろう。……里香は家族でさえも憂太への接触を嫌がって怪我させたくらいだったのに。
憂太は困惑した。
大森さんは、相変わらず微笑んでいる。
「い、一体なにを……」
「
「は、はぁ……?」
イマイチよくわからない憂太は、首を傾げるしかない。「超絶変わってる僕の元教え子呼んどいたから!任務ガンバ!」としか告げずに自身を送り出したバカ目隠し(補足:現代最強の呪術師にして高専教師の五条悟)を恨めばいいのか。
今の状況を鑑みると、五条にも何かしらの思惑があったのだろうと思わせるが。だとしても、とにかく任務前に詳細な説明が欲しかった。
「乙骨くん。」
「……は、はい。」
「きみ、いい恋人持ってるね。うらやましいな。」
「あ……」
……里香を恋人だと見抜いた。
もとが女の子であることすら、わからないような。まるで腐った草スープと泥団子をこねて作った巨人の異形みたいな見た目の呪いなのに。
憂太の目に、知らず涙が浮かびそうになる。
やっぱりわかる人にはわかるんだ、と感動しつつ、理性ではこれは異常な状況であることも理解している。
……五条先生。やっぱり説明が欲しかったです。
憂太は胸の中でため息をつく。
ここへの移動に使った車の中で、憂太も努力した。
補助監督への必死の聞き込み。もはや五条の説明不足が常態化している中、憂太は毎回こうして移動中に補助監督から情報を聞き出すようになっていた。
しかし今回その成果は、あまり思わしくなかった。何しろ補助監督も、五条に呼び出されてよくわからないうちに案内係をさせられていたらしく……。
わかったのは、彼女が準一級の階級を持つこと(つまりある程度安心して頼れるけれど特別強くもない。規格外の憂太とくらべればだいぶ格下。)や、“宝石御化粧呪法“というなんだかスゴい名前の呪術を使うことなどが明らかになったくらい。あとは、家族がいない天涯孤独の身であることとか。
五条悟の最初の教え子だという、噂を呼びそうな肩書きの割に有名ではない……要はあまり活躍が目立たない地味な術師なのだそうで。
しかし、あの五条先生に『超絶変わってる僕の元教え子』と言わせたのだ。
活躍が目立たない=暗躍、ということ……?などという物騒な想像に至りそうになるのを堪えて、憂太は恐る恐る大森さんの目を見上げた。
全く揺らぎのない。
宝石みたいな“目”がそこにあった。
非人間的。しかし、穏やかで優しい表情を生み出す源。
憂太は不安になりながらも、ぎこちなく大森さんへ微笑みを返した。
大森さんは、すっと柔らかに目を細める。そして言った。
「じゃ、祓いに行こっか。乙骨くんは見学ね。待機場所は把握してる?」
「え、えぇと……。」
「これはもともと私の任務で、五条先生がムリヤリ乙骨くんを捩じ込んだんだよ。見て学ばせようという目的だから、遠目からしっかり落ち着いて観察できる場所を事前に地図で探させとくって、そう言われたんだけど。」
「す、すみません。多分、僕、何も聞いてないです……。」
大森さんは、黙ってコクリと首を傾げた。
微妙な沈黙ののち、大森さんは何くわぬ顔で言った。
「まあ。五条先生はたまに口数が少なくなるからしょうがないか。」
「え。」
それでいいの?え、いい?いいんだ……。
憂太の盛大な戸惑いを置き去りに、大森さんは任務の概要を説明してくれた。
とても親切で丁寧。わかりやすい教え方に、憂太としては五条悟より絶対彼女の方が教師に向いていると確信した。なお、五条悟がひどすぎるともいう。
「じゃ、そこのベンチに座っててね。路地裏見える?うん、あのゴミ箱の裏側あたりにある落書きの群れ、あれが呪霊の発生源みたいだから行ってくるね。」
とっくに帳は下ろされ、夕暮れだった風景は、真夜中の闇に包まれている。
こうなると、憂太の目も常時とは比べものにならないほど呪いを感知するようになる。路地裏の呪霊の数や悪質さがおかしいのは説明を受けるまでもなく明らかだった。
緑色の異形が、泥のようにゴボゴボと湧いている。呪霊の巣窟だ。そこへ大森さんは、何のためらいもなく踏み込んだ。
え、と思うほど気軽な足運びだった。
そして、ゆっくりと口を開く。
「おはよう。それと、初めまして。きみは何色が好きなんだろう?」
(呪霊に話が通じるわけないじゃん!)
思わず見学中の憂太はツッコんだ。
なお、もし話が通じるとしたら相手は特級クラスなので、多分大森さんが死ぬ時である。
憂太は思わずベンチから立ち上がりかけて、既に腰が浮いていた。“超絶変わってる僕の元教え子”という五条の言葉が今更のようにリフレインする。
当然、呪霊がまともな返事を返すわけもなく……
【血ぃ……血ぃのオ…血の色ぉヲ、見セロぉオ……】
……と思ったら意外と話が通じている!
憂太はギョッとして目を見開いた。
しかし、すぐに冷静さを取り戻す。
いや待てよ?もしかすると……と、慌てて目を凝らす。すると呪霊の発生源、路地裏の落書きの一つに『テメエの血の色を見せろ!』という赤スプレーの文字があって、憂太はホッとひと安心してしまった。
つまりそういう負の感情から湧いて出た呪霊だったというわけだ。
「紅かあ。なるほど……そのままの緑色だと、ちょっと顔色が悪いみたいに見えるもんね。うん、御化粧直してあげるよ」
その間にも、大森さんは、歩みを止めない。ゆっくり、落ち着いた足並みは、夜の波打ち際を歩く陰の優美さをすら纏っているように見えた。
ゆっくりと。黒いコートのポケットに手を突っ込んで、ゴソゴソと何かを漁り出す。呪霊が見えているのかどうか、どこかぼんやりした日常そのものの雰囲気の中で、大森さんは顎に指を当てて小首を傾げていた。
「でも、どうだろう。形が形だから、やっぱり紫色とかも似合いそうなんだよね。」
—————だってきみ、葡萄っぽいし。
そんなことを呟く大森さんの前に、呪霊が飛び出した。
危ない!!憂太はすでに完全に立ち上がり、何かあったらすぐに応戦できる体勢をとっていた。大森さん前!前見て!と憂太が内心絶叫しているのを尻目に、しかし大森さんは冷静そのもの。
【弾けテッ、死ねぇエエええ… テメエの、血の色ぉヲ、見セロぉオおおおお!】
「うん、じゃあ折衷案だ。紅紫色で手を打とう。」
—————宝石御化粧 紅紫のダイヤモンド
ふっと大森さんが口角を上げる。
俯き加減、目をほとんど瞑った大森さんが両腕を上げる。それはまるで、ネックレスをかけるような仕草だった。
大森さんの体に呪霊の手が届く、紙一重のところだった。ガタンと呪霊の全身が硬直する。自分の心臓をぶち抜く一歩手前に止まってプルプル震えている呪霊の手を見ているはずなのに、大森さんの目は微塵も揺らがない。
いつの間にか大森さんの手首に、奇妙な印の描かれた宝石の腕輪が嵌っていた。
そこから、異様な気配がゆらゆらと立ち昇っている。正確な形はとっていないようだが、聞いて確かめるまでもない。強力な呪いの気配だった。
「染まってよし」
唐突の金縛りに、激しく動揺している呪霊には当然のごとくお構いなし。
まるで何かに命令するように、大森さんが言葉を放った……その瞬間だった。毒々しい緑色だった呪霊の体表が、みるみる鮮やかな紅紫に塗り替えられてゆく。儚い芸術品のように。美しく物哀しい水彩絵の具のパレットのように。
ぎゃあーっと呪霊の断末魔が響く。
……苦しみに白目を剥きもがこうとする呪霊は、やがて銅像のごとく固まって完全に動かなくなった。
「……死んだね。お疲れ様、帰っておいで」
すぅっと魂のようなものが、呪霊の中から抜けてくる。と同時に、呪霊が粉々に砕け散った。美しく彩られた破片は夜空に煌めき、そして次第に消滅。
いつの間にか腕輪を外してコートの中にしまっていた大森さんが、こちらを振り向いた。
「……以上が、私の祓い方だよ。何か質問があったら、縛りに触れない範囲でなんでも教えてあげる」
大森さんは、呪霊と戦っているときと全く変わらない……散歩ついでにコンビニにでも寄っているような態度で、静かに微笑していた。
♢
大森さんにラーメンを奢ってもらい、その屋台でたくさんのおしゃべりをした。
任務見学をしたのは、同級生の呪言師、狗巻棘くんとのものが初めてだっただろうか。あの日の思い出もなかなか強烈だけれど、今日はもっと憂太にとって特別な日となった。
————大森さんは、怨霊に憑かれている。
それを聞いた時、色々な疑問やモヤモヤが一気に氷解した気がした。
憂太と同じ。だけれど、完全にどこまでも同じかと言わればそうではない。
大森さんの怨霊は憂太の里香に比べればとても弱い。完全な制御下に置かれているということで、大森さんが秘匿死刑の対象者となったことはないそうだ。
『秘匿死刑って、響きがなんだかかっこいい。ちょっと羨ましいな。』……などと言われた時には、憂太はなんと返事をしたらいいのかわからなくなってしまったが。
大森さん曰く、どうせ五条先生が助けてくれるんだからいいじゃん。と、いうことらしいが。
ちょっと納得しかけた憂太は、慌てて社会一般常識を思い出した。死刑は秘匿して決行するものでも、たった一人の最強のわがままで取り下げるものでもないということを。
紫色のボンボンが、ニット帽の横にぶらぶら揺れている。
屋台のオレンジの灯りに照らされてぼんやりとラーメンを啜る。隣では、味玉を五個も追加しちぎって粉々にした海苔を大量にまぶす大森さんの姿が。ちなみにネギは全部残していた。
美味しそうにものを食べる彼女の横顔は、なんだか幼い子供のようで。
幾年も成長を止めてしまったような、そんな奇妙な気配を憂太は感じ取ったのだった。
♢
<任務後乙骨憂太の質面攻めに対する五条の返答>
え、大森杏樹は何者かだって?
アッハー、やっぱ憂太も気になるか。気になるよねえ?
そんじゃまあ、彼女のあだ名から!え、そんなの興味ないって?まあまあ、大事なことだから。ジュリーって呼んであげな。喜ぶぞぉ彼女、僕がノリで発明したニックネームだからね。
なに、ふざけてないで話を進めろ?わかったわかった。真面目にいくよ。
まず大前提として、ジュリーは怨霊に憑かれてる。母親の亡霊だね。で、お互いに解呪する気がないから、あぁやってずっとそばにいるってわけ。
シングルマザーの家庭で、かなり貧乏だったらしいよ?母親がある時がんにかかって、あっさり死んで、それで身寄り無くなったところを『窓』に引き取られた。
実は、あの子のことは前々から目はつけてた。明らかに呪霊が見える側だったからね。ん、どうやってそういう子を見つけるかって?そりゃ、小学校を定期的に巡回するんだよ。低級呪霊連れてって、それに反応するかどうか調べる。ま、呪術界は万年人手不足で余裕ないからガバガバなんだけどね。
昔っから、彼女は不思議な子だったなぁ。
夜蛾学長の名物面接でも「お母さんがそう願うから呪術師になる。」って頑なに言い続けて。その目の色を見て学長が折れたんだよね。正直、あんなのは初めて見たよ。
ほら、他者への恨みは死後呪いに転ずる可能性があるからさ。フツーはあんなこと学長に言ったら、「今際の際にお前は命の終わりを他人のせいにするのか!」って一喝されて終わるじゃん?
ま、とにかく。
彼女はイカれてる。この僕をして驚かせてくれる。簡単な例で言えば、彼女は“負の感情“がほとんどゼロだっていう事とかね。ああいや、“負の感覚“に関してはあるんだけどね?痛いとか苦しいとか、感じてないわけじゃないはずなのに、そこに飛び込むことへの恐怖が欠落してる。死ぬのだって怖くないみたいだね。まるで宇宙人だと思ったよ。
ほら、憂太はさ、怒りが呪いのもとだってのはわかる?
……そう、彼女には怒りがない。凪なんだ。春から冬までずっと凪いだ海で、なぜか雨後にかかるはずの虹だけがかかってるみたいな?
ま、それでもグレートティーチャー五条に教育できない生徒なんていなかったけど?未熟で暗くてちょーっと危うい温泉卵みたいな感じだった彼女を、見事準一級呪術師まで育て上げたけど?
ちょいちょい、ここ五条先生を崇め讃えるところなんだけど。
彼女はいつもそうしてくれたのになー。
いや、本当だって。嘘じゃないから本人に確かめてごらんよ。
……ほんっと、
あの子はいい子だったよな……
「重要な情報いっぱいあるじゃないか!どうして任務前に全部話してくれなかったんですか!」
「忘れてた!メンゴ!」
「メンゴじゃないだろバカ目隠し!」
絶対わざとだ。単純に説明を面倒くさがった結果に決まっている。だって、無駄に脳の回転率高いこの教師が忘れてたわけない。
乙骨憂太は歯軋りした。
五条悟はなんでもできるから最強なのだ。なんだかんだ育ちもいいからバッチリ英才教育受けてるし、何より地頭だってずば抜けている。他人が汗水垂らし崖を上る努力を、一飛びで到達した雲の高みから見物して爆笑するような人物だ。
しかも……
彼は黒い目隠しをする黒ずくめの男という怪しさ満点の格好にも関わらず、街に出れば立ってるだけで多くの女の子の目を奪うのである。
ここまでくると色々と理不尽だと思う。
銀髪の爽やか長身イケメンの容姿が、なんでこんな性格くずの男に恵まれたんだろう。
乙骨憂太はとても疑問に思うが、神様は残酷だ。
天は人に二物を与えずというが、そんなの嘘じゃないか。
憂太は、自分を秘匿死刑から救ってくれた恩師をじっと見つめる。
————でも、一人は寂しいよ?
たった一人で死んでいこうと思ったあの頃。闇の中で、彼の言葉が一点のろうそくの炎の灯りだった。
さて、“五条悟“とは、一体全体何者なんだろうか。
・現代最強の呪術師
・呪術界の御三家、五条家の当主
・東京都立呪術高等専門学校の教師
・およそ400年ぶりに六眼と無下限呪術の抱き合わせで生まれた麒麟児
・自分勝手の権化
・若者の青春を何より大事にする人
・自称グッドルッキングガイ&グレートティーチャー五条
・上層部を腐ったみかんと称しバチバチの敵対関係を作るアブナイ人
・……………そして?
————本当、呪術界は底の見えない人ばっかり集まるんだなぁ。
憂太は自分のことを棚上げにして、深々とため息をつくのだった。
おまけ:乙骨憂太
「え、自分で言うのもなんだけど、僕は基本素直でわかりやすい一般人の性格だと思うんだけど……
————純愛?蝶よりも花よりも丁寧に扱え……そ、それはっ……え?人生初の呪言でぶっ放した単語が『死ね』……
……うん。すみません、僕もみんなと同類だったかもしれないですね。アハハ……。」