フォネティック・コーズ   作:山本電柱郎

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ハーメルンにでもXにでもコメント頂けるだけで飛び跳ねて喜びます。


Delta 6:ビーチ・パラダイス

コンコンコン、とドアがノックされる。

小さくキィと鳴ってドアが開き、舞香が顔を出す。

廊下に立つ男は舞香へ一度頭を下げた。

「デルタ班の皆様、ようこそお越し頂きました」

野崎が弟切へ小声で問いかける。

「…何でデルタ班の名前がここで出るんだ?」

「あ、野崎君は知らないんだっけ。ここのホテルはフォネティックコーズ(うち)のホテル班が経営してるんだよ」

「初耳だ。どんな班だ?」

「フォネティックコーズ社員の宿、もとい荷物になる武器などの受け取り場所となるホテルの経営、それを隠しがてら資金稼ぎとしてのホテル経営って感じかな」

「そんな班もあるのか」

「拠点ってのは大事だしね。シエラみたいに野宿できればいいんだけど、そうもいかないし。あ、あと、ここの班は三つある“非戦闘班”の一つだよ」

「教えてくれてありがとう弟切。それはそれとして大丈夫か?顔色が悪いぞ?」

「あ、あぁうん大丈夫だよ慣れてるし」

弟切は先程野崎が話しかけるより前からもみじにヘッドロックをかけられている。

現在は顔が赤くなるのを通り越して薄っすらと青くなっている。

「もみじさん、そろそろ落ち着いて。後で舞香とかが代わってくれるからさ」

「野崎!?」

舞香をさりげなく巻き込み、野崎は先程男から受け取った端末をいじっている千鶴を見る。

いつの間にか男は居なくなっており、舞香はもみじの腿に挟まれている。

弟切は変わらずヘッドロックをかけられているが、少しだけ顔色が良くなっている。

「千鶴は何してるの?」

「あ、野崎。終わった?」

「終わったよ。舞香がもみじさんの餌食になったけど。」

「気を付けな。次は私達だよ」

「こっわ。先やられてきてよ」

「やだよ。それで、ちょっと話があるんだけど…」

「何事?」

「ホテル班の班長さん…オーナーから通話がしたいって言われてね」

「通話ぁ?俺なんかしたっけ?」

「新人は何だかんだで貴重だし、そもそもあの映像が出回ってるしね」

「まっさかだけど初日の?」

「勿論!」

千鶴は笑顔で言う。

「最悪だよ」

「結構かっこよかったよ?目付き超悪かったし、それに…ん?」

端末が細かく震える。

「あ、準備できたんだ」

端末に表示された緑のボタンをタップすると、画面が切り替わる。

『繋がったか。久しぶりだな、千鶴』

「久しぶりだね。オーナー」

『隣の子が野崎君だね?君の動画やら噂やらがひっきりなしに流れてきててね、君の活躍は知っているよ』

「光栄です。オーナー」

『畏まりすぎだよ。今は勤務時間外だろう?』

「これは心からの尊敬由来の物です。仕事ではないので…」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。これは時間をとった甲斐があるな」

男は少しだけ椅子を軋ませる。

「それで、だ」

「何事ですか?」

「君…本当にただの学生?」

「本当にただの学生ですよ。ケンカも武術も経験がありません」

「こっわぁ…」

「怖!?」

 

 

 

オーナーとの通話が終わり、寝る前になって談義は再度熱を帯びた。

「俺は舞香と…」

「野崎くん、君は今や16歳の女子高生な訳で…私と寝ても別に問題は…無いよ?」

「あります!大アリです!」

「無いだろ」

「いやいや舞香よ〜く考えろ?あの私だぞ?」

「お前女子に口以外出さないだろ?」

「なら今女子のオメーはセーフだな。寝よう」

「なっ!?待て!おい!やめ…引き摺り込むな!!」

「残念だったな。今の俺は誰にも止められない」

「力強すぎ…あっ」

そのまま、舞香は布団に消えた。

「千鶴ちゃん…ドンマイ」

「もみじさぁぁぁん!!」

「おーよしよし」

 

 

 

午前4時、早朝。

本来なら起きる時間は5時30分の筈だが、野崎は目が覚めてしまった。

「あ、野崎くん起きた?」

「あぁ。なんだか寝心地が良かった」

「それは横で寝てる舞香のお陰じゃないかい?」

横では舞香が口角を上げつつ、それでいて眉間に皺を寄せていた。

「俺は好きじゃないが“私”は好きなんでしょうね。まな板フェチから随分と変わったものですよ」

「黙れ…お前にまな板の何が…zzz」

「三つ子の魂百までっすね」

「性癖も性根も同じ“性”だもんね」

「うわ、知りたくなかった!」

「二人とも…どうしたの?」

「千鶴?起こしちゃった?」

「いや〜?なんか勝手に起きた感じ〜」

「まだ早いから寝てて。千鶴が寝ぼけてると下手したらこっちの脳天に穴が開く」

寝ぼけた千鶴に頭の横を撃ち抜かれた経験が頭をよぎる。

「そんな物騒な…」

野崎は千鶴を少々強引に布団へ戻し、上から布団をかける。

そうすると千鶴は数秒もせずに眠りについた。

「まだまだ高校生。無理に睡眠時間なんて削れば身体に不調が出ちまうモンさ」

「それは僕に言っているのかい?」

「…千鶴にですよ」

「君だって高校生だろう?人のこと言えないぞ?」

「無理してないんで」

軽い調子で二人は言い合う。

「じゃあその隈はなんだい?」

「これは…」

「…人を傷付ける仕事は合わないかい?」

「その言い方はやめて欲しいですね」

「?」

想像と違う反応に、弟切は驚いた。

それを気にせず、野崎は続ける。

「これは人を助ける仕事ですよ」

「つっても、俺はまだしっかりと人助けした事ないっすけど」

野崎は笑って言う。

「そう…そうだね。ちょっと忘れてたみたいだ」

「そりゃ良かったっす。あと」

「あと?」

「パジャマのズボン下がってますよ」

「あ」

 

 

 

「相棒」

「どうしたレルネ」

「あれ見て」

レルネが窓の外を指差す。

そこには、奇妙な声で鳴く小さなシカがいた。

「あれは…キョン?」

「だねぇ」

 

 

デルタ班はこの後、港に巣食う薬物の売人グループをコンテナ数個と共に警察へ引き渡した。

そして、念願の海へ向かうのであった。

 

 

 

「おー!!」

「海とか久しぶりだなぁ」

照りつける日差し、吹く海風。

何かと海が無いことでいじられるG県民の5人は海辺の道で水平線を見つめていた。

「さ、早く着替えて遊ぼう」

舞香がそう言う。

本人曰く、「俺は水着を下に着てきた!」そうだ。

千鶴ともみじが女子更衣室へ消えていった後、一人残った野崎へ着替え終えた弟切と舞香が声をかける。

「どうした野崎、着替えてこないのか?」

「野崎君、体調でも悪いのかい?」

野崎は震える声で答える。

「いや…違う。俺は…」

「俺は?」

「俺は…変われなかった…あの聖域には踏み入れれない…!」

「どういう…」

「俺の身体は確かに少女になった。ただ、俺は“俺”だ。」

「確かにそうだな…俺もそうだった。ただな」

「?」

「考えてみろ。お前は罪を隠しているわけじゃ無い。許されているんだ」

「許されて…る?」

「そうだ。お前は変わって、許される様になったんだ」

「変わった…か」

理解(わか)ったみたいだな」

舞香に背中を押され、野崎は更衣室へ消えていった。

「舞香ちゃん…あれどういう…?」

「あいつは許されたんだ。世界にな」

 

 

「野崎君!これ以上はいけない!」

弟切が抵抗する。

「口答えか?」

「そうだ!」

「いけない奴だなぁ」

「もういけない男でいい!だから…だから体を砂に埋めるのは止めてくれ!あと何で縦に埋めるんだ!横に埋めてくれよ!」

砂浜から弟切の首が生えている。

「そりゃあ無理な話だ。これからスイカ割りだからな」

「スイカ割るんだよね!?」

「勿論。そうだろ?千鶴」

「野崎もその邪魔なもんだけ砂浜に出して埋まれば?」

「へ!?」

その後、二人とも埋められ、野崎は舞香に顔を、千鶴に胸をフルスイングされた。

「うっわ!野崎テメー、さりげに足舐めてんじゃねぇよ!」

 

 

海に西日が沈む。

赤く染まった海に背を向け、デルタ班は更衣室へ向かった。

直に、舞香の小さな絶叫が響いた。

「の、野崎!」

「どうした!」

「俺、今日下に水着着て手ぶらで来ただろ?」

「そうだな。とても良かった」

「下着…忘れた…」

「」

野崎は絶句した。理性を抑え込むためにだ。

その後、舞香は手ぶらのまま、手ブラで帰ったのだとか。

 

 

 

「ねぇ相棒」

「どうした?」

「旅行楽しかったねぇ」

「旅行っつうか殆ど仕事だったけどな」

「弾大丈夫?ホテルとかに忘れてくると結構事件になるよ」

「問題ない」

「それならいいんだけど」

SAAをホルスターに納め、コートを羽織る。

ライフルもリボルバーも覗かない、厚手で丈の長いコートは、夏場には向かないが、タカヒロたちの仕事には向いている。

西部開拓時代(ウエスタン)の銃を携えたガンマン。

彼の仕事は…殺し屋だ。




結構短くなった気もしますね。
Twitterの日常アカウントが動かなくなったのでちょっと萎えてます。
え?もう10話?作者は暇なのか?課題やれ!
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