あらすじ?作者の近況?
月明かりが照らす公園に、男の影が浮かぶ。
帽子を被り、モノクルを掛けた紳士的な服装。
白い髪に良く合う服に、シンプルながら気品のある彫刻の施された杖。
“ジェントル”の名に恥じぬ格好をした男と、夜の公園とは少しミスマッチな少女が三人。
周囲には不良風の青少年が倒れている。
何とも奇妙で言い表し難い光景が夜の公園に静寂と共に広がる。
『野崎くん、無事かい?』
「俺はね。それより、千鶴がやばそうなんだけど」
弟切の声が少し固まる。
『取り敢えず今回は逃げられてもいいから、千鶴を守ってくれるかい?』
微かに震えた声で弟切が言う。
「りょーかい」
軽い口調で返した野崎が、ジェントルに向き直す。
ジェントルは少しだけ微笑むと前方に跳躍し、野崎に飛び掛かった。
人の目で捉えられる限界より少し遅い程度のスピードで黒い影が開いし、ステッキによる殴打が頭上から野崎を襲う。
腕を交差させて受け止めた野崎だったが、その顔は痛みに歪んでいる。
(この子…避けれた筈なのに…)
そんなことを思いながら、ジェントルは飛び退く。
「避けれたろう?今の攻撃は。」
問い掛けるジェントルに、苦笑しながら野崎は返す。
「避けれるも何も、避けたら当たっちまうだろ?」
黒髪を揺らす少女は、交差した時前方に来ていた左手をダラリと垂らしながら言う。
「そうか…ならこれはどうだね?」
ジェントルが向けたストックの先は銃口のような穴が開き、側面にライフリングのような溝もある。
「映画とかでよく見るやつか、ちょっと羨ましいぜ」
マズルから光が飛び出すと同時に、野崎の身体を覆い隠せるサイズの盾が野崎の前に現れた。
舞香が盾を野崎の前に出したらしく、弾丸が当たって跳ね返る音が聞こえる。
「野崎!朝の模擬戦みたいに武器出せ!」
叫ぶ舞香の声を聞き、朝の事を思い出す。
(あの
左腕は折れてまともに動かせない。
片手ではハンドガンは撃てない。
かと言って近接武器を使える距離まで近づけるとも思えない。
煙幕やフラッシュグレネードなどを使って気を逸らさせても奇襲が出来るかと聞かれれば素人の野崎にはほぼ不可能と言える状況下、思考が盾の陰で回る。
風に吹かれ、舞い上がった葉が野崎の横へと落ちる。
「落ちる、か」
(武器を出す時、舞香は少し離れたところに居たのに盾を設置できた。だったら行ける筈だ…アレが。)
その晩は晴れていた。
月が照り、星が煌めく。
流星が軌跡を描く。
夜空に何かが閃いた。
ホログラムが空へと浮かび、ジェントルの上で雲のように重なり合う。
風に吹かれ靡いたジェントルの外套が貫かれる。
黒光りする刃が地面へと突き立てられている。
降り始めの雨のように落ちてきたナイフが、次第に豪雨のように降り注ぐ。
「お返しだ。ジェントル」
降り注ぐ金属音に掻き消されそうな声で、野崎が言う。
誤算だった。
ジェントルの着ていたコートが高い防刃性のある生地で出来ていた事。
ジェントルは細身な割にそれなりの力があり、あの程度の物量では押し切れないと言う事。
杖の先から金属製の刃が顔を出している。
(当たる!)
跳躍に合わせ、隠し持っていたバリスティックナイフの刃を飛ばす。
ジェントルも脇腹にバリスティックナイフが刺さったまま杖を振る。
野崎の頬が切れ、血が垂れる。
すれ違った後、追撃を繰り出そうとお互い武器を構える。
相打ちも覚悟した、振り向きざまの一閃。
お互いの刃が刺さる寸前で、閃光が公園を包んだ。
「どうしたんだいジェントル、ボロボロじゃないか」
閃光の中、男の声が聞こえる。
閃光が晴れた時にはジェントルが間合いの外に出ており、スーツにネクタイの男が立っていた。
「誰だ…てめぇ…」
アドレナリンが切れたらしく、野崎は膝をついている。
スーツの男は野崎の質問に答える事なく背を向けて歩き出した。
(
震える片手でバリスティックナイフを飛ばす。
スーツの男は飛んできた刃を指で止めるとそのまま変わらないスピードで野崎の前に投げ返した。
また公園の出口に向き直し、歩き去る男の後ろ姿を見ながらヘッドセットへ話しかける。
「司令官、取り逃しました」
『生きてただけ良かったよ。しかも、千鶴との練習戦だけであれだけ戦えるとはね…』
「千鶴は?」
『取り敢えずは無事だってさ。野崎君が
「なら良かった」
通話を切り、車の運転手に肩を貸して貰いながら、野崎は公園を後にした。
「腕いってぇ…」
昨晩の無茶が祟ったか、身体が動かない。
枕元に置いてある水を飲んだりする程度は出来るが、服が水を含んでいるように重く感じる。
軋む身体のまま、少し上体を起こしてみた。
自分の身体にも関わらず、いつ見ても慣れない。
年に比べて大きめな胸が付いた体に、心の中のエロガキが反応する。
(腕が動けばな…)
そう心の中で呟き、また寝転んだ。
「もう動かして良いよ」
「え?折れてたんじゃ…」
「最近の医療は凄いのよ」
骨折していた筈の左腕をさすりながら、女医風の女性は言う。
にわかには信じがたい。野崎はそう思ったが、痛みが引いていた事やレントゲンに写った骨から信じざるを得なかった。
医務室から出た後、袖を捲って腕を見てみる。
細かな擦り傷、切り傷は残っているが、昨日のような痛みは残っていない。
野崎は廊下を歩き、そのまま自室へと向かった。
「あ、野崎。ケガ大丈夫?」
野崎の部屋の前に居た千鶴が話しかけてくる。
「平気だよ。そっちこそ、ケガは大丈夫?」
「鼻折れてたらしいけどね。最近の医療は凄いからね〜」
「もみじさんも同じ事言ってたわ…」
もみじ、と言うのは医務室で働いている職員、
オレンジ色の髪に美しい顔立ちから、若手の社員からは好かれているものの、その酒癖の悪さから一度飲み会を経ると途端に恐れられるようになっている。
「そーだ。野崎、買い物行かない?」
「へ?」
「必要な物とかあるし、舞香も来るってよ」
「何ボサっとしてんだ、行こうぜ」
いつの間にか着替えてバッグを小脇に抱えた野崎を見ながら、少し引いたように千鶴は呟いた。
「ほんっと舞香好きだよね…」
某Aから始まりNで終わる商業施設の中、三人は
「
メモ帳を見ながら歩く千鶴の後ろを、野崎が舞香に張り付きながら着いていく。
(緊張する!)
野崎浩介は異性と付き合った事はおろか、遊びに行ったことすらまともにないと言うd…
硬派な男なので、例え今一緒に歩いている二人が今や同性でも緊張してしまう…とは本人の弁である。
「ねぇ野崎、その服ってさ…」
野崎の服装は最近暖かくなってきた事もあって文字が大きく書かれたTシャツに薄手の上着、そしてジーンズとスニーカーといった服装だった。
千鶴が野崎ににじり寄る。
「あ、舞香!置いてくなよ!」
千鶴の後ろを指差す野崎。
千鶴が振り返ると、舞香は変わらずそこに立っていた。
また振り返ると、野崎がいない。
「どこ行った!?」
舞香に聞こうと振り返るも、舞香もいなくなって居た。
商業施設内、模型店。
二人並んで陳列された模型を見る野崎と舞香。
二人とも、別の商品を見たり、気になった商品を見せ合いながら店内を物色する。
「なぁ野崎」
「ん?」
「そのTシャツ、何て書いてあんの?」
「あぁこれ?『夜叉猿』だよ」
「飛騨でも行くの?」
その時、野崎のスマホが震え出した。
名前を見た野崎が、「げ」と小さく言った後、二人とも肩を掴まれた。
骨折した事ないので想像で書いてます。
腕とか折れたらその時の体験を通していい感じに直します。