lobotomy chronicle ~目指すはありふれた結末~   作:暇なグリッチ

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帝国兵は人殺しチュートリアル要員です


act13 慈悲はない

ウサミミ四十二人をぞろぞろ引き連れて峡谷を行く。

 

当然、魔物たちが絶好の獲物だとこぞって襲ってくるのだが、ただの一匹もそれが成功したものはいなかった。例外なく、ハウリア族に触れそうとしたものは例外なく俺のバグヴァイザーⅡで撃ち抜かれた。聞いたこともない何かの発射音と共に閃光が走り、気がつけばライセン大峡谷の凶悪な魔物が為すすべなく絶命していく光景に、兎人族達は唖然として、次いで、それを成し遂げている人物である俺に対して畏敬の念を向けているようだった。もっとも、小さな子供達は総じて、そのつぶらな瞳をキラキラさせて圧倒的な力を振る俺をヒーローだとでも言うように見つめている。....俺はそんなものじゃないぞ。

 

シア「ふふふ、政宗さん、チビッコ達が見つめていますよ~手でも振ってあげたらどうですか?」

政宗「....それはできん。俺はそんなお前たちが想像するようなものではない。」

シア「え〜.....」

 

俺は思った通りのことを言っただけだ。無言で撃たれなかっただけマシだと思ってくれ

 

カム「はっはっは、シアは随分と政宗殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて......シアももうそんな年頃か。父様は少し寂しいよ。だが、政宗殿なら安心か……」

 

目尻に涙を貯めて娘の門出を祝う父親のような表情をしているカム。周りのハウリアも生暖かい目でこちらを見ている。....なんだ?腹立ってきたぞ?

 

政宗「はぁ.......」

ユエ「.....」

 

やはり原作通りハウリア族はどこかズレているようだ。そうこうしている内に、一行は遂にライセン大峡谷から脱出できる場所にたどり着いた。遠見で見ると中々に立派な階段がある。岸壁に沿って壁を削って作ったのであろう階段は、五十メートルほど進む度に反対側に折り返すタイプ。階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見える。

やはり三者目線で見るのと自分で見るのとはまた違い、少し見入っているとシアが不安そうに話しかけてきた。

 

シア「帝国兵はまだいるでしょうか?

政宗「....いるだろうな。奴らは小汚いだろうしな。そういう奴は無駄に執着が強い」

シア「えっと.....じゃ、じゃあですよ?もし本当にいたりしたら.....政宗さん....どうするんですか?」

政宗「.....」

シア「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵.....人間族です。政宗さんと同じ。....敵対できますか?」

政宗「....お前、未来見えたんじゃないのか?」

シア「はい、見ました。帝国兵と相対する政宗さんを....

政宗「....なら何故聞くんだ?」

シア「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと.....」

政宗「.....」

 

シアの言葉に周りの兎人族達も神妙な顔付きで俺を見ている。小さな子供達はよく分からないとった顔をしながらも不穏な空気を察してか大人達と俺を交互に忙しなく見ている。

 

政宗「....今更躊躇うつもりもない。」

シア「えっ?」

政宗「この世界に来て、お前たちを護衛すると決めた。そんなことを最初から考えていないとでも思ったか?」

シア「それは.....」

政宗「.....それに、随分人が死ぬ光景には慣れている気がするんだ.....」

シア「?政宗さん....?」

ユエ「政宗....?」

政宗「っすまない。少し考え込んでいた」

 

俺はあまり現世のことを覚えていない。実を言うとなんで死んだかもよく覚えてないんだ。時々どうにかして思い出せないかやっているがやはり思い出すことはできない。まるで砂嵐がかかったように....神なのか?俺の前世をそんなに見せたくないのは.....

 

カム「政宗殿、何か過去にあったようですが、どうか無理なさらず.....」

政宗「.....構わん。ぐずぐずしていても終わらんからな。行くぞ」

カム「えぇ、樹海の案内も我々にお任せくだされ」

 

そうが快活に笑うカム。下手に正義感を持ち出されるよりもギブ&テイクな関係の方が信用に値したのだろう。その表情に含むところは全くなかった。

そして、遂に階段を上りきり、俺たちはライセン大峡谷からの脱出を果たす。

 

登りきった崖の上、そこには……

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

 三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、俺たちを見るなり驚いた表情を見せた。

だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ? こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」

 

帝国兵は、兎人族達を完全に獲物としてしか見ていないのか戦闘態勢をとる事もなく、下卑た笑みを浮かべ舐めるような視線を兎人族の女性達に向けている。ハウリア族は、その視線にただ怯えて震えるばかりだ。

帝国兵達が好き勝手に騒いでいると、ハウリア族にニヤついた笑みを浮かべていた小隊長と呼ばれた男が、ようやく俺の存在に気がついたらしい。

 

「あぁ? お前誰だ? 兎人族......じゃあねぇよな?」

政宗「そうだ。人間だが?」

「はぁ~?なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ?しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か?情報掴んで追っかけたとか?そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

政宗「....なぜお前に指図されねばならん?」

「......今、何て言った?」

政宗「お前の耳は節穴か?なぜお前に指図されねばならんと言ったんだ。単刀直入に言うぞ。断る.....これ以上ふざけた真似をしないでさっさと国に帰ることを勧めるぞ?」

 

聞き間違いかと問い返し、返って来たのは不遜な物言い。小隊長の額に青筋が浮かぶ。

 

「....小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

政宗「はっ.....誰もお前のような低俗に言われたくないな」

 

俺の言葉にスっと表情を消す小隊長。周囲の兵士達も剣呑な雰囲気で俺を睨んでいる。その時、小隊長が、剣呑な雰囲気に背中を押されたのか、俺の後ろから出てきたユエに気がついた。幼い容姿でありながら纏う雰囲気に艶があり、そのギャップからか、えもいわれぬ魅力を放っている美貌の少女に一瞬呆けていたが、俺の服の裾をギュッと握っていることからよほど近しい存在なのだろうと当たりをつけたようで、再び下碑た笑みを浮かべた。

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ」

政宗「.....クズが。つまるところ敵でいいんだな?」

「あぁ!?まだ状況が理解できてねぇのか!てめぇは、震えながら許しをこッ!?」スパンッ!!

 

刹那、小隊長は首が吹っ飛んだ。小隊長だけではない。他六人の首を俺の黄昏により飛ばされ、俺は帝国兵たちの後ろにいた。吹っ飛んだ首は何が起きたかわからないような呆けた顔で地面にドシャッと音を立てて落ちた。突然、小隊長を含め仲間の首が吹っ飛ぶ異常事態に兵士達が半ばパニックになりながらも、武器を俺達に向ける。過程はわからなくても原因はわかっているが故の、中々に迅速な行動だ。人格面は褒められたものではないが、流石は帝国兵。実力は本物らしいな。

 

政宗「.....これが人を殺す感覚か......案外何も感じないが、覚えておこう.....さぁ、あとは任せるぞ、罰鳥、大鳥、長鳥」

 

早速俺に攻撃しようとしていた帝国兵たちが俺の呼んだ名前に反応し、行動を止めた。その時、帝国兵のうち1人が首を何かに喰われた。

 

「な、なんだッ.....がぁっ!!」

 

すぐに原因を探ろうとしたものは後ろを向いた瞬間罪を測られ、首を吊られた。

 

「なんだ?!どうなっている?!」

罰鳥「悪いやつ!!悪いやつ!!」

「な、なんだこの鳥!!死ね!!!」

 

そして罰鳥の懲罰を受けたものは逆上し、罰鳥を斬った。それが一番してはいけないことだとも知らずに.....

 

罰鳥「!!.....悪いやつ!!死刑!!死刑!!!」

「はっ....」ブシュッ!

 

反撃をした帝国兵は真っ赤に染まった罰鳥の腹から出てきた口で重い罰を下された。

 

「な、なんだこいつら?!」

「この魔物達をさっさと殺s.....」バクッ

「クソッ!!なんだあの気持ち悪い鳥共は!!」

「撤退だ!撤退しろぉ!!!」

 

パニックに陥った帝国兵はがむちゃらに攻撃し、罰鳥に罰を下され、遠距離から安全に魔法を撃とうとしたものたちはまとめて長鳥.....いや、審判鳥に罪を測られ、例外なく首を吊られる。逃げようとしたものはどんどんランプに魅了されその首を喰われる。気づけばそこには屍しかなかった。

 

政宗「....よくやった。もう戻れ。どうせ聞き出してももう輸送済みと言うのがオチだろうな。それに商品には使えないような老人などは殺しているだろう.....」

罰鳥「褒めて!褒めて!」

大鳥「怪物から守れて良かったよ」

審判鳥「.....公平な決断を下せて実に有意義だった」

 

俺に飛びついてきた罰鳥を撫でる。ちなみに奴らは怪物の配下という程でやっつけてもらった。本人たちは満足そうだ。そして後ろを見ると息を呑むハウリア族。俺の実力は特に問題ではないようで、罰鳥達の恐ろしさを目の前にしたのが怖かったらしい。それはシアも同じだったのか、おずおずと俺に尋ねた。

 

シア「あの、最後の許しを乞いていた人くらいは見逃しても良かったのでは.....?」

政宗「.....本気で言っているのか?」

シア「えっ....」

ユエ「.....一度、剣を抜いた者が、結果、相手の方が強かったからと言って見逃してもらおうなんて都合が良すぎ」

シア「そ、それは.....」

ユエ「.....そもそも、守られているだけのあなた達がそんな目を政宗に向けるのはお門違い」

シア「....」

 

ユエは静かに怒っているらしい。守られておきながら、俺に向ける視線に負の感情を宿すなど許さないと言わんばかりである。当然といえば当然なので、ハウリア族達もバツが悪そうな表情をしている。

 

プロトターボ「まま、ここら辺にしとこうぜ?カムさんだっけか。あんたらも反省しろよ?」

政宗「俺も特段攻めるつもりはないが、その甘すぎるのもどうかと思うぞ」

カム「申し訳ない。別に、貴方に含むところがあるわけではないのだ。ただ、こういう争いに我らは慣れておらんのでな....少々、驚いただけなのだ」

シア「政宗さん、すみません....」

プロトターボ「ほんと甘いねぇ.....こんなやつから甘さを切って落とせなんてできんのか?」

政宗「.....」

 

.....否定できない。ちなみにプロトターボが黙っていたのは「ちっと空気読んだ。割とそわそわしてたんだぜ?」とのことだ。しかもバイク形態からしれっと人間形態に戻り、暗い雰囲気になったハウリア族たちを笑わせていた。....お前本当にムードメーカーだな。そして残された馬車を有効活用するために再びプロトターボにバイク形態になってもらい、馬車と連結させると馬に乗るものと分けて俺たちは樹海に向かった。




おや?なにやら政宗くんの様子が.....
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