lobotomy chronicle ~目指すはありふれた結末~   作:暇なグリッチ

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敬礼ッ!


act16 ハウリアに、敬礼!

政宗「さてと、お前たちには戦闘訓練を受けてもらおうと思う。」

 

俺が大樹の近くに拠点を作った後、俺の第一声がそれだった

 

シア「え、えっと....政宗さん。戦闘訓練っていうのは....」

政宗「そのままだ。お前たちは俺がいなくなった後どうする?お前達は弱く、悪意や害意に対しては逃げるか隠れることしかできない。フェアベルゲンという隠れ家も、俺と言う庇護もなくなる。そうなったら今のお前たちじゃ間違いなく窮地に陥る。それでいいのか?お前たちは弱いままでいいと言うのか?」

「「「「「「.....」」」」」」

 

俺に突きつけられた否定できない現実にハウリアたちは押し黙る。

 

政宗「いいか?お前たちに俺がいなくなったらいよいよ終わりかもしれないんだ。隠れ家も庇護もなにもない。やってくるのは魔物と卑劣な人間共。助けはいない。幸運にも拾った命を自らの甘さで捨てるか?」

 

 

誰も言葉を発さず重苦しい空気が辺りを満たす。そして、ポツリと誰かが零した。

 

「そんなものいいわけがない」

 

 その言葉に触発されたようにハウリア族が顔を上げ始める。シアは既に決然とした表情だ。

 

政宗「ああ、その通りだ。いいわけがない。ならば、どうするか。答えは簡単だ。強くなればいい。襲い来るあらゆる障碍を打ち破り、自らの手で生存の権利を獲得すればいい」

「.....ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません....とても、そのような....」

 

どうする?俺は元から強かった。ハジメのような説得の仕方はできない。....それがなんだ。もっとやり方はある

 

政宗「それがどうした?お前たちに戦闘能力はない。だがお前たちの使えるものは戦闘に役立つ。どんなものも使い方をちょっと変えるだけで確実に凶器になる。己の使い方を変えろ、凶器になれ」

「凶器に....」

「なる.......」

政宗「さぁどうする?俺ができるのはお前たちが絶望を打ち砕く手助け。自分たちにできないと言うなら俺は止めないぞ。その時は本当に終わりというだけだ」

シア「.... やります。私に戦い方を教えてください!もう、弱いままは嫌です!」

 

ハウリア達の沈黙を破ったのはシアだった。その樹海全てに届けと言わんばかりの声が響く。先ほどからの決然とした表情は消えていなかった。

 

カム「政宗殿.....宜しく頼みます」

 

そして続くのは立ち上がったハウリア達を代表してそう答えた。短いが、その言葉には確かな意志が宿っていた。

 

政宗「いいだろう。ただし覚悟しろ。決して優しくないからな。これはあくまでお前たち自身が強くならなければならない。投げ出したやつにはもちろん声も掛けない。さらには制限時間は10日....こんな厳しい状況下だ。死に物狂いでやれ、待っているのは死か生かだけだぞ」

 

俺の言葉に、ハウリア族は皆、覚悟を宿した表情で頷いた。

 

政宗「だがな、ここでとある問題がある」

シア「問題?」

政宗「....俺は指導が絶望的に下手だ」

「「「「「「.....えっ?」」」」」」

政宗「いやだから、下手なんだよ」

シア「そ、それはわかってますよ!まさかそのままやるんですか?!」

政宗「流石に俺もそんな無謀じゃない。ということでお前たちの先生を連れてきた。

カム「先生....とな?」

政宗「あぁ、黒の兵隊!」

黒の兵隊「はい!私たちは黒の兵隊と申します!貴方達の先生をさせてもらうべくここに来ました!」

 

そこに出てきたのはピンク色のハートの中にピンク色の軍服を着た軍事が入っていると言う奇妙な見た目をした者が現れた

 

カム「まさかあなたもアブノーマリティ....とやらで?」

黒の兵隊「その通りであります!私たちは心の色が見えます!貴方達の心の色は目がチカチカするほどのピンク色!素晴らしい人像ですね!」

 

そう言われ、照れるハウリア達。だがここで一気に不穏になる。

 

黒の兵隊「本当は貴方方を護衛するのが私たちの仕事!ですが管理人によるとあなたたちは強くなりたいと存じております!よって貴方達のピンク色を汚します!大丈夫!完全に汚すわけではありません!少し!少しだけです!」

 

突然黒の兵隊のハートは灰色になり、目が真っ黒になる。

 

シア「え、えっと....兵隊さん?」

 

黒の兵隊「貴方達の最終目的は一つ!私たちの鎮圧です!既に武器は用意されてあります!さぁその手に取って!まずは貴方達の実力を図るために一度戦いましょう!それではあなたたちの運命に、敬礼!」

 

すると黒の兵隊は攻撃を始めた。突然の出来事でみんなとりあえず武器を取るも攻撃の痛みで動けなかったりと散々だった。....まぁ、殺さないようにとか、何日も響くような攻撃はやめろと言っておいたから多少は放置でいいだろう。俺は適当なところで昼寝することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は今すごく暇だ。鍛錬したり色々作ったりとしているがビックリするほど暇だ。訓練を見に行こうにも「私たちが許可をしない限り来るのはおやめください!10日後、または私たちに追いつけるほどに力をつければまたお呼びいたします!それでは彼らの成長に、敬礼!」と言われたため見に行くわけにもいかない。俺は近くの木にもたれ掛かり、瞑目していた。すると二人の気配を感じる目を開ける。....これはシアが勝った、と言う感じでいいのか?明らかに機嫌がいいのを見る限りそうっぽいな。ちなみにシアが武器を欲しいと言ったためEGOの「後悔」を渡した。....意外と似合うもんだな。するとシアが話しかけてきた

 

シア「政宗さん!政宗さん!聞いて下さい!私、遂にユエさんに勝ちましたよ!大勝利ですよ!いや~、政宗さんにもお見せしたかったですよぉ~、私の華麗な戦いぶりを!負けたと知った時のユエさんたらもへぶっ!?」

 

調子に乗りすぎたシアはユエにジャンピングビンタを喰らわされた。....まぁ、自業自得か。

 

政宗「....魔法の適性やらはどうなんだ?」

ユエ「...ん、政宗と変わらない」

政宗「そうか、それは残念だな....だが武器に大槌を所望すると言うことはやはり適性は身体強化系か?」

ユエ「ん.....正直化け物レベル」

政宗「なるほどな、それだけでお釣りが来そうか?」

ユエ「....多分余裕で来る」

政宗「なるほどな...ちょうど火力が欲しかった」

ユエ「....政宗だけでなんとかなりそう」

政宗「いや、案外そうでもないんだぞユエ.....」

 

実際そうだ、確かに俺は個としてもかなり強い。だが意外とユエがいないと詰むところだってあるものだ

そしてやっと悶絶から帰ってきたシアが俺に告げる

 

シア「政宗さん、私をあなたの旅に連れて行ってください!」

政宗「....まず聞くぞ?あのハウリア達まで連れて行けなんて言わないな?」

シア「違いますよ!今は私だけの話ですよ!父様達には修行が始まる前に話をしました。一族の迷惑になるからってだけじゃ認めないけど.......その......」

政宗「?なんだ、言ってみろ」

 

何やら急にモジモジし始めるシア。指先をツンツンしながら頬を染めて上目遣いでこちらをチラチラと見る.....あっ(察)

 

シア「その?.......私自身が、付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって......」

政宗「なんでついて来たいんだ。別に今の強さなら基本負けることはないだろうし、一族の迷惑にはならないだろう?」

シア「で、ですからぁ、それは、そのぉ.....」

 

これは....ほぼ確定か....

 

シア「政宗さんの傍に居たいからですぅ!しゅきなのでぇ!」

政宗「.....はぁ」

 

知 っ て た

俺なんで惚れられるんだろうな、ハジメのあの厳しさの中のちょっとした優しさがいいんじゃないのか?俺みたいな甘ったれた男になんでそんな....

 

政宗「なんでよりによって俺なんだ....なぁ、一度考え直してみろ、ただ状況に釣られただけじゃないのか?」

シア「状況が全く関係ないとは言いません。窮地を何度も救われて、同じ体質で......長老方に啖呵切って私との約束を守ってくれたときは本当に嬉しかったですし.....ただ、状況が関係あろうとなかろうと、もうそういう気持ちを持ってしまったんだから仕方ないじゃないですか。いまだに名前は呼んでくれませんが私が抱きついたりしても特段拒むこともないですし....」

 

いや、まぁ拒む理由もないし、面倒だからな....

 

政宗「.....俺は心底どうでもいいが。ユエ、どうなんだ?」

ユエ「....................政宗、連れて行こう」

政宗「お前そんな嫌なのか.....なるほど、これが勝負の賭けってことか」

政宗「はぁ......ついてきたとて応えられるかはわからんぞ?」

シア「知らないんですか?未来は絶対じゃあないんですよ?」

政宗「間違いなく危険だぞ?」

シア「化物でよかったです。御蔭で貴方について行けます」

政宗「俺の望みは故郷に帰ることだ。もう家族とは会えないかもしれないぞ?」

シア「話し合いました。〝それでも〟です。父様達もわかってくれました」

政宗「俺の故郷はお前には確実に住み難いところだぞ」

シア「何度でも言いましょう。〝それでも〟です」

 

これは.....止めるのは無理そうだな....

 

政宗「.....わかったわかった。俺の負けだ。物好きだなお前は.....」

 

俺が手を挙げ、降参の意を表すと樹海の中に一つの歓声と、不機嫌そうな鼻を鳴らす音が響くのだった。




黒の兵隊さんを出したかったんや....
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