lobotomy chronicle ~目指すはありふれた結末~ 作:暇なグリッチ
ブルックからフューレンまでは約六日間。
今はフューレンまであと三日といった距離だ。あと半分といったところだな。特に何事もなく順調をにここまで来た。もうそろそろ何かあるだろうがな.... この日も、特に何もないまま野営の準備となった。冒険者達の食事関係は自腹だ。周囲を警戒しながらの食事なため、商隊の人々としては一緒に食べても落ち着かないのだろう。別々に食べるのは暗黙のルールになっているようだ。まぁ俺としては一切関係ないが。
「カッーー、うめぇ! ホント、美味いわぁ~、流石シアちゃん!もう、亜人とか関係ないから俺の嫁にならない?」
「ガツッガツッ、ゴクンッ、ぷはっ、てめぇ、何抜け駆けしてやがる!それなら俺はアンジェラさんだ!!」
「はっ、お前みたいな小汚いブ男が何言ってんだ?身の程を弁えろ。ところでミレディちゃん、町についたら一緒に食事でもどう?もちろん、俺のおごりで」
「なら俺は俺はユエちゃんだ!ユエちゃん、俺と食事に!」
「ユエちゃんのスプーン.......ハァハァ」
....随分生意気な奴らだな。まず威圧で黙らせてから.....おっと、もう震えてるのか。軟弱だな?
政宗「はっはっはっ....腹の中のものを盛大にぶちまけたいのはどいつだ?」
「「「「「調子に乗ってすんませんっしたー!!!」」」」」
見事なハモリとシンクロした土下座で即座に謝罪する冒険者達。威厳も何もないなこいつら。
シア「もう、政宗さん。せっかくの食事の時間なんですから、少し騒ぐくらいいいじゃないですか。そ、それに、誰がなんと言おうと、わ、私は政宗さんのものですよ?」
政宗「.....」
シア「黙秘権ですかぁ?!」
まぁバッサリ切り捨てようとも思ったが最近扱いが酷くなってきているためちょっとナーフしてノーコメントとさせてもらった。
ユエ「....政宗」
政宗「ん?....どうしたユエ」
ユエの咎めるような目線に少し後ずさってしまった。そして「....メッ!」と人差し指をピッと突きつけられた。さらには罰鳥まで現れ「ダメっ!ダメっ!」と突きはしないもののピョンピョンしながら講義してきた。
政宗「すまん、これでも優しくしていたつもりだったんだが.....」
シア「政宗さん!そんな態度取るなら上手に焼けた串焼き肉あげませんよ!」
罰鳥「お肉抜き!お肉抜き!」
政宗「なんでお前はそう言うネタを.....もういい、すまなかった。ほら、さっさと肉を....」
シア「ふふ、食べたいですか?で、では、あ~ん」
政宗「....」
やられた、これが狙いか....他のメンバーに目を向けるがアンジェラとユエはいそいそと串焼き肉を手にとって待機しており、ターボとミレディはこちらを生暖かい目で見ている。ターボ、仲間ができたからってついに完全に傍観者側に行ったな貴様.....
シア「あ〜ん」
政宗「.....」
仕方ない、大人しく食うとしよう。.....美味い。
ユエ「.....あ〜ん」
政宗「.....」
今度は反対側からユエに串焼き肉を差し出される。うん、美味い。今度はいつの間にか正面にいたアンジェラからだ。
アンジェラ「政宗、あ〜ん」
政宗「.....」
罰鳥「しっかり食べる!!しっかり食べる!!」
...美味い、そして俺はこれを繰り返す。無言、無言でだ。いや、だって話すことないだろうこんなの。まぁ話すことと言えばターボが「盛んですのぉ、おばあさんや」とか言ったらミレディが「誰がババアじゃぁゴラァ!!!」とブチギレ、プロレスごっこ(ガチ)になっていたくらいだ。罰鳥は気づいたら俺の肩で寝ていた。
そして2日後、もちろん平和に終わるわけもなく、どうやら戦いの匂いがしてきた。最初に気づいたのはシアとアンジェラだ。
シア「敵襲です!数は百以上!森の中から来ます!」
アンジェラ「恐らくあと数分で接敵ですね」
その警告を聞いて、冒険者達の間に一気に緊張が走る。アンジェラ、お前やはり優秀だな...シアもそうだが接敵にいち早く気づけるのはかなり助かる。
「くそっ、百以上だと? 最近、襲われた話を聞かなかったのは勢力を溜め込んでいたからなのか? ったく、街道の異変くらい調査しとけよ!」
まぁ、原作でも余裕で蹂躙できたし、さっさと終わらせるとしよう。
政宗「悩むようなら俺達が殺るぞ?」
「えっ?」
政宗「いや、だから悩むようなら俺たちが懴滅するぞと言ってるのだが?」
「い、いや、それは確かに、このままでは商隊を無傷で守るのは難しいのだが......えっと、出来るのか? このあたりに出現する魔物はそれほど強いわけではないが、数が......」
政宗「造作もない。すぐ終わらせる。ユエがな」
すぐ横に佇むユエの肩にポンッと手を置いた。ユエも、特に気負った様子も見せずに、そんな仕事朝飯前だと言わんばかりに、「ん....」と返事をした。
「わかった。初撃はユエちゃんに任せよう。仮に殲滅できなくても数を相当数減らしてくれるなら問題ない。我々の魔法で更に減らし、最後は直接叩けばいい。みな、わかったな!」
「「「「了解!」」」」
先ほどとは全然違うな。やはりベテランというのは伊達じゃないらしい。正直そんなことしなくてもいいんだがな。
政宗「ユエ、一応詠唱を頼む。出ないと面倒だ」
ユエ「.....詠唱.....詠唱?」
ミレディ「おいおいまさかわからんのかね嬢さん.....」
プロトターボ「お嬢様恐ろし恐ろし.....」
ユエ「.....大丈夫、問題ない」
アンジェラ「どこで知ったんですかねそのネタ」
政宗「言うな、聞くだけ無駄だぞ....」
シア「接敵、十秒前ですよ~」
さぁ、ここはおそらく原作通り....
ユエ「彼の者、常闇に紅き光をもたらさん、古の牢獄を打ち砕き、障碍の尽くを退けん、最強の片割れたるこの力、彼の者と共にありて、天すら飲みこむ光となれ、〝雷龍星雲〟」
って違う?!あの雷の龍だけでなく魔力を帯びた星の音が巨大な雷の弾となっていた。ああそうか。星の音があったんだな..... ユエの細く綺麗な指に合わせて、天すら呑み込むと詠われた雷龍は魔物達へとその顎門を開き襲いかかった。
ゴォガァアアア!!!
「うわっ!?」
「どわぁあ!?」
「きゃぁあああ!!
魔物たちがその顎門へ自ら身を投げるだけでなく、周りの星の音が逃げた魔物たちに容赦なく突撃し皆殺しにしていく。これは原作よりも酷い蹂躙だな.....そしてしばらくすると蹂躙が終わり、もう何もなかった。
ユエ「....ん、やり過ぎた」
政宗「なんだあの魔法は....普通に知らないんだが」
シア「ユエさんのオリジナルらしいですよ?政宗さんから聞いた龍の話と例の魔法、そして星の音?でしたっけ、を組み合わせたものらしいです」
ミレディ「いやぁあんな使い方は予想外だよ、やっぱり金髪ちゃんはイカれてるねぇ」
政宗「ギルドで籠ってる間にそんなことを....というよりお前、さっきの詠唱....」
ユエ「ん....出会いと、未来を詠ってみた」
そして後付けで「.....星の音はちょっとおまけでつけてみた」と無言ながらドヤァといった擬音が聞こえてくるかのようだった。
「おいおいおいおいおい、何なのあれ?何なんですか、あれっ!」
「へ、変な生き物が....空に、空に....あっ、夢か」
「へへ、俺、町についたら結婚するんだ」
「動揺してるのは分かったから落ち着け。お前には恋人どころか女友達すらいないだろうが」
「魔法だって生きてるんだ!変な生き物になってもおかしくない!だから俺もおかしくない!」
「いや、魔法に生死は関係ないからな?明らかに異常事態だからな?」
「なにぃ!?てめぇ、ユエちゃんが異常だとでもいうのか!? アァン!?」
「落ち着けお前等! いいか、ユエちゃんは女神、これで全ての説明がつく!」
「「「「なるほど!」」」」
ダメだ、こいつらは壊れてる....まぁ俺もまさか星の音と組み合わせるとは思ってなかったため正直結構驚いていた。思わず声を出すところだった.....「ユエさま万歳!」とか言い出した冒険者達の中で唯一まともなリーダーガリティマは、そんな仲間達を見て盛大に溜息を吐くと俺たちの元へやってくる。
「はぁ、まずは礼を言う。ユエちゃんのおかげで被害ゼロで切り抜けることが出来た」
政宗「今は仕事仲間だ。礼はいらん。」
ユエ「....ん、仕事しただけ」
「はは、そうか.......で、だ。さっきのは何だ?」
ユエ「.....オリジナル」
「オ、オリジナル? 自分で創った魔法ってことか?上級魔法、いや、もしかしたら最上級を?」
ユエ「......創ってない。複合魔法」
「複合魔法?だが、一体、何と何を組み合わせればあんな……」
ユエ「.....それは秘密」
「ッ.....それは、まぁ、そうだろうな。切り札のタネを簡単に明かす冒険者などいないしな....」
深い溜息と共に、追及を諦めたガリティマ。ベテラン冒険者なだけに暗黙のルールには敏感らしい。肩を竦めると、壊れた仲間を正気に戻しにかかった。このまま〝ユエ教〟なんて新興宗教が生まれたらごめんだ。ガリティマには是非とも頑張ってもらおう。
ユエが、全ての商隊の人々と冒険者達の度肝を抜いた日以降、特に何事もなく、俺たちは遂に中立商業都市フューレンに到着した。現在俺たちは入場受付の列に並んでいる。ちなみに俺は馬車の屋根でユエに膝枕されながらシアとアンジェラを侍らせている....というクズ男にしか見えない光景だ。俺は断じてクズじゃない。ちなみにターボとミレディは俺たちを邪魔しないように距離を置いて昼寝中だ。お前らいつの間にか仲良くなってないか....?
「まったく豪胆ですな。周囲の目が気になりませんかな?」
政宗「慣れてもなければこんなものせんからな」
「フューレンに入れば更に問題が増えそうですな。やはり、彼女を売る気は.....」
政宗「....」
俺が「その件は終わったはずだが?」と言うように圧を送ると両手を上げて降参のポーズをとった。
政宗「で?そんな話じゃないだろう?要件を」
「いえ、似たようなものですよ。売買交渉です。貴方のもつアーティファクト。やはり譲ってはもらえませんか?商会に来ていただければ、公証人立会の下、一生遊んで暮らせるだけの金額をお支払いしますよ。貴方のアーティファクト、特に〝宝物庫〟は、商人にとっては喉から手が出るほど手に入れたいものですからな」
そこはやはり商人魂といったところか....殺してでもというような笑っていない眼だ。しつこいな....少し殺気を浴びせるとようやく商人の勘がマズイ相手と警鐘を鳴らしたのか、すごすごと引き下がった。....ほぅ、まだ諦めんか?
政宗「.......何度言わせる気だ?もう諦めろと言っているんだ。」
「しかし、そのアーティファクトは一個人が持つにはあまりに有用過ぎる。その価値を知った者は理性を効かせられないかもしれませんぞ?そうなれば、かなり面倒なことになるでしょなぁ....例えば、彼女達の身にッ!?」
.....そろそろ説教といかせてもらおうか?
政宗「クッハッハッハッ......それは宣戦布告か?貴様.....」
私は奴に黄昏を向けながら溜まった怒りをなんとかガタを外さないようにぶつける。少しでも気を緩めると手が出てしまいそうだ。
「ち、違います。どうか......私は、ぐっ....あなたが......あまり隠そうとしておられない......ので、そういうこともあるる.......と、ただ、それだけで.....うっ」
政宗「....はっ、そう言うことにしておいてやろう。」
私は奴に向けていた黄昏をしまい。殺気を解く。
政宗「いいか、お前が何をしようとお前の勝手だ。あるいは誰かに言いふらして、そいつらがどんな行動を取っても構わない。ただ、敵意をもって俺の前に立ちはだかったなら.....生き残れると思うなよ?国でも、世界でも、関係ない。全て血の海に沈める。」
「.....はぁはぁ、なるほど。割に合わない取引でしたな.....」
政宗「....今回は見逃してやる。次がないことを祈るんだな」
「....全くですな。私も耄碌したものだ。欲に目がくらんで竜の尻を蹴り飛ばすとは.....」
〝竜の尻を蹴り飛ばす〟とは、この世界の諺で、竜とは竜人族を指す。彼等はその全身を覆うウロコで鉄壁の防御力を誇るが、目や口内を除けば唯一尻穴の付近にウロコがなく弱点となっている。防御力の高さ故に、眠りが深く、一度眠ると余程のことがない限り起きないのだが、弱点の尻を刺激されると一発で目を覚まし烈火の如く怒り狂うという。昔、何を思ったのか、それを実行して叩き潰された阿呆がいたとか。そこからちなんで、手を出さなければ無害な相手にわざわざ手を出して返り討ちに遭う愚か者という意味で伝わるようになったという。....って話だっけか
「そう言えば、ユエ殿のあの魔法も竜を模したものでしたな。詫びと言ってはなんですが、あれが竜であるとは、あまり知られぬがいいでしょう。竜人族は、教会からはよく思われていませんからな。まぁ、竜というより蛇という方が近いので大丈夫でしょうが」
政宗「ほぅ?そうなのか?」
「ええ、人にも魔物にも成れる半端者。なのに恐ろしく強い。そして、どの神も信仰していなかった不信心者。これだけあれば、教会の権威主義者には面白くない存在というのも頷けるでしょう」
政宗「なるほどな。にしても随分言うじゃないか。不信心者と思われるぞ?」
「私が信仰しているのは神であって、権威をかさに着る〝人〟ではありません。人は〝客〟ですな」
政宗「....なんとなくお前のことがわかった気がするな。根っからの商人なんだな。暴走するのも頷ける」
バツの悪そうな表情と誇らしげな表情が入り混じり、実に複雑な表情をするモットー。先ほどの狂的な態度は、もう見られない。俺の殺気に、今度こそ冷水を浴びせられた気持ちなのだろう。
「とんだ失態を晒しましたが、ご入り用の際は、我が商会を是非ご贔屓に。あなたは普通の冒険者とは違う。特異な人間とは繋がりを持っておきたいので、それなりに勉強させてもらいますよ」
政宗「はっ、本当に商人魂が逞しいことだな.....」
もはや呆れるぞ.... 「では、失礼しました」と踵を返し前列へ戻っていくモットー。ここからまだまだ波乱がありそうだ.....
最近アブノーマリティの出番ないな.....そろそろ出番増やそうかなって思ってます。
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