lobotomy chronicle ~目指すはありふれた結末~ 作:暇なグリッチ
あと帰ってきた際の話は飛ばします、あちらも特にこれといった見所ないもので....
俺はすっかり人が少なくなり、それでもいつも以上の活気があるような気がする町を背後に即席の城壁に腰掛けて、どこを見るわけでもなくその眼差しを遠くに向けていた。傍らには、当然の如くユエとシア、アンジェラがいる。俺の傍に、三人はただ静かに寄り添っていた。ちなみにターボは緊張感もなく居眠りしておりミレディに顔に落書きされ、ホドはそれを止めようとするものの逆にミレディに共犯にされかけていた。....お前らでグループ出来てないか?
そしてそこへ愛子と生徒達、ティオ、ウィル、デビッド達数人の護衛騎士がやって来た。
愛子「南雲君、準備はどうですか?何か、必要なものはありますか?」
政宗「ない。大丈夫だ」
そこに俺の態度が気に食わなかったのかデビットが食いかかってくる。
「おい、貴様。愛子が....自分の恩師が声をかけているというのに何だその態度は。本来なら、貴様の持つアーティファクト類の事や、大群を撃退する方法についても詳細を聞かねばならんところを見逃してやっているのは、愛子が頼み込んできたからだぞ? 少しは.....」
愛子「デビッドさん。少し静かにしていてもらえますか?」
「うっ.....承知した.....」
あっさり引いたな....まるで忠犬だ。
愛子「南雲君。黒ローブの男のことですが.....」
政宗「正体を確かめるんだろう?言われなくても殺さん。俺も気になるもんでな、連れてきてやる」
愛子「南雲君....はい、ありがとうございます」
愛子先生は俺が協力的な態度に驚いたようだがすぐに察したのか愛子先生は苦笑いしつつ礼を言った。まぁ殆ど確定してるようなものだがそれでも真偽を確かめたい。できることなら親友を殺したくはないからな....
ティオ「ふむ、よいかな。妾もご主....ゴホンッ! お主に話が.....というより頼みがあるのじゃが、聞いてもらえるかの?」
政宗「ティオか.....さっさと言え」
ティオ「んっ...!まるで興味もないといった塩対応....!やはりこういうのもいいものじゃな.....」
俺が冷たく接すると逆に顔を赤らめるティオ。ダメだこいつ.....早くなんとかしないと....
ティオ「んっ、んっ! えっとじゃな、お主は、この戦いが終わったらウィル坊を送り届けて、また旅に出るのじゃろ?」
政宗「当たり前だ」
ティオ「うむ、頼みというのはそれでな.....妾も同行させてほしいのじゃが.....」
政宗「........」
ティオ「む、無視じゃと....?!....ハァハァ.....妾の予想を超えてきおった...さすがご主.... コホンッ!もちろん、タダでとは言わん!これよりお主を〝ご主人様〟と呼び、妾の全てを捧げよう!身も心も全てじゃ!どうzy」
政宗「いらん」
いや、無視したというか普通にこれからどのみち仲間に入れないと面倒だろうしな....と思うと面倒だったからあえて答えなかっただけなんだが.....
ティオ「そんな.....酷いのじゃ.....妾をこんな体にしたのはご主人様じゃろうに......責任とって欲しいのじゃ!」
全員の視線が「えっ!?」というように俺を見る。やめろ俺は無実だ。
政宗「.....」
ティオ「あぅ、またそんな汚物を見るような目で.....ハァハァ....ごくりっ.....その、ほら、妾強いじゃろ?」
政宗「自分で言うか?」
ティオ「里でも、妾は一、二を争うくらいでな、特に耐久力は群を抜いておった。じゃから、他者に組み伏せられることも、痛みらしい痛みを感じることも、今の今までなかったのじゃ」
近くにティオが竜人族と知らない護衛騎士達がいるので、その辺りを省略してポツポツと語るティオ。
ティオ「それがじゃ、ご主人様と戦って、初めてボッコボッコにされた挙句、組み伏せられ、痛みと敗北を一度に味わったのじゃ。そう、あの体の芯まで響く蹴り!嫌らしいところばかり責める衝撃!体中が痛みで満たされて......ハァハァ」
え?俺そんないやらしいところなんて責めたか....?....いや、こんなくだらんこと考えるのは性に合わん。
ユエ「.....つまり、政宗が新しい扉を開いちゃった?」
ティオ「その通りじゃ!妾の体はもう、ご主人様なしではダメなのじゃ!」
政宗「OK、一回殺したら直るか?」
なんか腹立ってきたなこいつ。いちいち余計なことしか言わんぞ.....
ティオ「それにのう....」
ティオが、突然、今までの変態じみた様子とは異なり、自分のお尻に当てて恥じらうようにモジモジし始める。
ティオ「......妾の初めても奪われてしもうたし」
その言葉に、全員の顔がバッと音を立てて俺に向けられた。俺はもちろん残像ができるくらい全力で首を横に振った。
ティオ「妾、自分より強い男しか伴侶として認めないと決めておったのじゃ....じゃが、里にはそんな相手おらんしの.....敗北して、組み伏せられて.....初めてじゃったのに.....いきなりお尻でなんて.....しかもあんなに激しく.....もうお嫁に行けないのじゃ....じゃからご主人様よ。責任とって欲しいのじゃ」
ああもう....こいつのせいで四面楚歌じゃないか.....ホドは俺のことをまだ詳しく知らないからか本気で引いてるし....俺は無実、無実なんだ.....
政宗「あー....お前、色々やることあるんだろう?その為に里を出てきたんじゃないのか?」
ユエ達にまで視線を逸らされてしまい、苦し紛れに〝竜人族の調査〟とやらはどうしたという話に無理やり変えさせた。
ティオ「うむ。問題ない。ご主人様の傍にいる方が絶対効率いいからの。まさに、一石二鳥じゃ.....ほら、旅中では色々あるじゃろ? イラっとしたときは妾で発散していいんじゃよ? ちょっと強めでもいいんじゃよ? ご主人様にとっていい事づくしじゃろ?」
政宗「存在自体がデメリットな奴が何を言ってる?」
クソッ.....これも全部俺がこいつを変態化させなければ.....
政宗「!....来たらしいな」
俺は北の山脈地帯の方角へ視線を向ける。先ほど俺の耳につけておいた通信装置に十二人目の使徒から連絡が入った。どうやら独自に調べたらしく俺がそろそろ香織に会いにいくというのは本気だと知ってからやる気がやけに高くこういう仕事も積極的にしている。もうただの部下じゃないか.....
そして黒ローブの男もしっかりいる。やはり清水のようだ。
ユエ「....政宗」
シア「....政宗さん」
アンジェラ「政宗....」
やはり三人は真剣だな。来るべき時が来たと察したのだろう。ちなみにミレディはやっと先ほど起きた顔に落書きされたターボと鬼ごっこになっており、ホドはあまりの緊張のなさに少し引いていた。
政宗「来るぞ、予定よりかなり早いが、到達まで三十分程度。数は五万強。複数の魔物の混成だ」
魔物の数を聞き、更に増加していることに顔を青ざめさせる愛子先生達。
政宗「大丈夫だ、愛子先生。たかだか数万増えたくらい何の問題もない。予定通り、万一に備えて戦える者は〝壁際〟で待機させてくれ。まぁ、出番はないと思うがな」
まぁよほどのことがない限り俺は負けないと思う。というよりこの程度で負けるわけにはいかん。
愛子「わかりました.....君をここに立たせた先生が言う事ではないかもしれませんが.....どうか無事で.....」
そうして町中に知らせを運ぶべく駆け戻っていった。生徒達も、一度俺を複雑そうな目で見ると愛子先生を追いかけて走っていった。
ウィルは、ティオに何かを語りかけると、俺に頭を下げて愛子先生達を追いかけていった。そしてティオが苦笑いしながら答える。
ティオ「今回の出来事を妾が力を尽くして見事乗り切ったのなら、冒険者達の事、少なくともウィル坊は許すという話じゃ.....そういうわけで助太刀させてもらうからの。何、魔力なら大分回復しておるし竜化せんでも妾の炎と風は中々のものじゃぞ?」
無駄に自己主張の激しい胸を殊更強調しながら胸を張るティオに、俺は無言で魔晶石の指輪を投げた。疑問顔のティオだったが、それが神結晶を加工した魔力タンクと理解すると大きく目を見開き、俺に震える声と潤む瞳を向けた。
ティオ「ご主人様.....戦いの前にプロポーズとは.....妾、もちろん、返事は.....」
政宗「たわけ。貸してやるから、砲台の役目を果たせって意味だ。あとで絶対に返せ。ところで今のボケ見たことあるな?」
ユエ「.....なるほど、これが黒歴史」
思考パターンが変態と同じであることに嫌そうな顔で肩を落とすユエ。俺の否定を華麗にスルーして指輪をニヨニヨしながら眺めるティオを極力無視していると、遂に、肉眼でも魔物の大群を捉えることができるようになった。〝壁際〟に続々と弓や魔法陣を携えた者達が集まってくる。大地が地響きを伝え始め、遠くに砂埃と魔物の咆哮が聞こえ始めると、そこかしこで神に祈りを捧げる者や、今にも死にそうな顔で生唾を飲み込む者が増え始めた。
そして俺は前に出、錬成で地面を盛り上げながら即席の演説台を作成する。全員の視線が自分に集まったことを確認し、俺は某預言者の如く演説を始めた。
政宗「聞け!ウルの町の勇敢なる者どもよ!我々の勝利はすでに確定している!」
いきなり何を言い出すのだと、隣り合う者同士で顔を見合わせる住人達。俺はそんなことも知らんというように演説を続ける。
政宗「何故か。答えは一つ!我々には女神がついている!そう、皆も知っているだろう。〝豊穣の女神〟愛子様だ!」
その言葉に、皆が口々に愛子様?豊穣の女神様?とざわつき始めた。愛子先生には申し訳ないが利用させてもらおう。
政宗「我らの傍に愛子様がいる限り、敗北はありえない! 愛子様こそ! 我ら人類の味方にして〝豊穣〟と〝勝利〟をもたらす、天が遣わした現人神である! 我はとある者をここに送るためにここに来た。彼女の皆を守りたいという思いに応えやって来た!見よ!これが、愛子様により我々に贈られた神の使いである!」
そうしてこれでもかと後光を浴びながら降り立つのはアブノーマリティの白夜。神々しさだけでいえばアブノーマリティでもトップだろう。
白夜「女神の名の下に!貴様ら全て粛清してくれよう!」
まぁあいつの言う女神をおそらく別のやつだろうがな.....そして奴が少し何かを溜める動作をした瞬間、極太の赤き光線が放たれた。あの全体攻撃の赤い波動と応用らしい。その光線を一払いするだけでプテラノドンもどきは一瞬にして殲滅された。
そして俺は悠然と振り返った。そこには、唖然として口を開きっぱなしにしている人々の姿があった。
政宗「もはや愛子様の女神という名は肩書きなどではない。祝え!新たな女神の生誕である!愛子様、万歳!」
俺は最後の締めに愛子先生を讃える言葉を張り上げた。すると、次の瞬間.....
「「「「「「愛子様、万歳! 愛子様、万歳! 愛子様、万歳! 愛子様、万歳!」」」」」」
「「「「「「女神様、万歳! 女神様、万歳! 女神様、万歳! 女神様、万歳!」」」」」」
どうやら、不安や恐怖も吹き飛んだようで、町の人々は皆一様に、希望に目を輝かせ愛子先生を女神として讃える雄叫びを上げた。遠くで、愛子先生が顔を真っ赤にしてぷるぷると震えている。その瞳は真っ直ぐに俺に向けられており、小さな口が「ど・う・い・う・こ・と・で・す・か!」と動いている。許せ愛子、俺も正直こんなの俺らしくないからあまりやりたくなかったんだ。
俺は宝物庫はバグヴァイザーⅡとクロニクルガシャットを取り出した。右にはいつも通りユエが、左には俺がさらっと作って貸し与えたギガントを担ぐシアが、その更に隣にはティオ、ユエのさらに隣にはアンジェラが並び立つ。ターボとミレディも空気を読みしっかり並び立った。
俺がそれぞれに視線を移すとしっかりうなづいてくれた。ティオは....触れないでおこう。
俺は視線を大群に戻す。バグヴァイザーⅡを腰のバックルにつける。
政宗「....では、やるとしようか」
ちなみにホドは戦えないためこの中に混ざれず少し萎えてました。
それと、UAが20000突破しました!これからも頑張らせていただきます!!
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