アヤに薬を飲ませるためにシービーがお姫様抱っこをして連れていったあと、俺は途中でコンビニによってご飯を買ってから旅館へと戻ってきた。
予定ではシービーたちと夜に遊び、店かコンビニで食べ物を買う予定だったから。
泊まる部屋に戻ってくると部屋暑く、部屋の窓を全部開けて風通しをよくする。これで海から来る風で少しは涼しくなるはずだ。
遠くから聞こえる波のおとを聞きつつ、買ってきたふたりぶんのおにぎりと惣菜にサラダを冷蔵庫へと放り込む。
ふたりで泊まる和室の部屋に自分ひとり。
さっきまでにぎやかだったぶん、さびしさがある。でももうちょっと時間が経てば戻ってくるはずだ。
そんなことを思いながらひとりでご飯をすませると、待つあいだに男風呂へと行く。
着替えを持って向かっている途中、よく鍛えられたウマ娘たちとすれ違っていて旅館には合宿に来ている子たちも泊まっている。
浴場へ移動中に「シービー先輩の幼馴染さんだ!」「さっき、いちゃいちゃ写真があがってた人だぁ!」と嬉しそうに言いながら隣にやってきた子たちに笑顔で手を振ってあげる。
シービーと一緒にいるだけでこの人気だ。
有名なシービーが俺の話や写真をあげているから、トレセン学園内でそこそこ知られている。
前にトレセン学園の感謝祭に言ったときには知らないウマ娘たちから色々とお店のものを渡されるぐらいに。
単に数が少ない男がいるということもあるだろうが。
シービーほど強い人気はないものの、ネット上でASMR音声の動画や雑談配信をやっているから、そっちで知っている人もわずかにいる。
浴場へ着くまでには複数のウマ娘と話をしたあと、ひとり静かに風呂へと入った。
そのあとは浴衣に着替えてから部屋へと戻る。
置いてあったスマホには電話の着信履歴と共にメッセージが来ていた。
内容は、薬を飲んで落ち着いたアヤが帰ってくるということ。ご飯もシービーと一緒に食べたとのことだ。
そのメッセージを読んでから、俺はぐるぐると部屋の中をゆっくりと歩いて回る。
それは思春期になったアヤに対してどういう対応をすればいいんだろうかと。
シービーのときは変わらず同じ対応を続けていたが。その結果は短期間だけだがシービーがすごく甘えてきた。
指や腕をあまがみし、尻尾を体のあちこちにふれさせてくるという。
力の加減がうまくできなくて打撲や内出血が増えて俺に対しての過激さが増えたシービーだったが、1年も経てば自身んの体と心に慣れて落ち着いていった。
そこにいたるまでは性的な意味で襲われるかと思い、怖くなってシービーに会わなくなった時期も。
だが、今回は違う!
以前の経験と勉強により、適度に欲求を解消していけば上手につきあっていけると本に書いてあったから、それを実行するだけ。
具体的にはアヤの興奮を抑えることをやる。
それはASMRだ。聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良い、脳がゾワゾワするといった感覚をあじわえるもの。
ウマ耳は人の耳より性能がよく、また感度もいいために音は効果がよくあるとのこと。
このときのためにボイストレーニングをするところへと通った。
実際に俺のささやき声の効果があるのは去年にシービーで試し、熱があるのに外で走ろうとするシービーを抑えるのには大変役立った。
効果実証済みな俺の声がアヤに役立たないわけがない。シービーのときと違い、自分から距離を取って自分自身に嫌悪と申し訳なさの気持ちでいっぱいなのはもうごめんだ。
自分自身で自分を応援したところで歩き回る足を止める。
アヤが帰って来るまではすることもなく、時間をつぶすために畳の床に寝転んではスマホでウマ娘情報やシービーのウマッターを眺めていく。
そうして時間を過ごしていると、小さなノック音が4回聞こえた。
慌てて起き上りドアへ行ってのぞき窓を見ると、そこには落ち着いているアヤの姿が。
その姿に安心し、鍵を外してドアを開ける。
「おかえり、アヤ」
「ただいま、ヒロ。別れたときより落ち着い──」
だが、その言葉は言いかけている途中で止まった。
部屋の中へ片足を入れているが、目は大きく見開いて俺を頭から下まで見たあと、着ている浴衣の隙間から見える下着を凝視してくる。
上の下着を見るぐらいなら以前からだから珍しくはないはずなのに。
あ、そうか。前と今では見たときの感情が違っているのか。
「つまらないものを見せて悪かったな」
「いえ、そんなのは全然。……今までわからなかったけど、ヒロは結構えっちな姿をしていたのね」
「え? あぁ、浴衣のことか」
「それだけじゃなく、今までのことよ。昨日なんて短パンだったじゃない。
……明日帰ったら病院に行って薬をもらわないと。そうでないと私が変になりそう」
そう悲しみながら言い、よろよろと部屋へ入って扉と鍵を閉めたアヤはすぐに畳へとちからなく膝をつく。
そんな姿を見た俺はアヤの前におなじく膝をついて目線を合わせる。
しかし短パンが楽なんだよ。幼馴染たちが相手だから、えっちと言われる服になっただけで。
普段、遊びに行くときはきっちり長袖長ズボンなのはわかってくれているとは思うが。
「それで、その服が何か悪かったのか」
「いつも見ていたあの服装は色気があったことがわかったのよ。そのことを今日になるまで気づかなかっただなんて。……心の成長ってすごいのね」
「……なんかごめん」
「いえ、いいのよ。知らないうちに私の心がつかまれていただけで。……それじゃあ、お風呂に行ってくるわ」
大きくため息をついたアヤは急いでバッグから着替えとタオルを取り出し、逃げるようにいなくなった。
これ、嫌われてはいないよな?
仲がいい幼馴染が実はえっちな姿だったなんて気づいたのは衝撃が大きいはずだ。
自分のことに置き換えて考えてみると、中2のときに3歳年上の幼馴染がギャルだったこととエロさに気づいたという感じだろうか。
だとしたら、それはアヤの立場からすればショックを受けるかもしれない。
部屋には俺ひとりだけになって静かになる。
そんな静けさがあると、なんだか不安になってきてシービーへスマホでメッセージを送る。
戻ってきてからのアヤとのやりとりを送った結果、シービーから帰ってきた言葉は『天然女たらし』というもの。
なんでそうなるんだ。
0歳の頃から知っているアヤは、血がつながっていない妹として大事にしていただけだというのに。
シービーにそう言われても対応を変えたくはない。今は一時的に俺へ興奮しやすくなっているようだが、心の成長に対応できれば今のシービーと同じようになるだろうし。
今までと変わらない対応を維持しつつ、臨機応変に対処するという方針でやっていこう。
そうと決まったら、お菓子を買ってくるか!
甘いものを食べて元気になってもらおうと勢いよく部屋を飛び出そうとするも、浴衣姿は目に毒と言われているので明日に着る予定の長袖長ズボンへと着替えた。
それで旅館の売店へ行ったところ、そこに居合わせたウマ娘たちに両手で抱えるぐらいのお菓子をプレゼントされた。
好意的な子たちの贈り物に断ることができずに受け取り、その変わりとしてロビーでウマ娘たちに包囲されて話をすることに。
幼馴染たちとの過ごし方を言い、いい声でその子たちが望む言葉をささやき、握手希望者には優しく手を握った。
それらは時間にして40分ほどだ。ここまでサービスをしてくれて優しい男の人は珍しいから、多少知名度がある一般人の俺でも人気が出ている。
世の中の男性たちはもっと女性に優しくしてやってもいいと思うんだが。そうすれば俺も今よりおだやかな生活が送れるというのに。
ロビーにある壁掛け時計を見て、アヤが風呂からあがったかもしれない時間だから話を切り上げてウマ娘の子たちと別れる。
両手いっぱいに持ったお菓子を見て部屋まで運んでくれると言ってくれた子もいたが、そのまま部屋に押し込まれるかもしれないから優しく断る。
隙あらば男性へと突撃する女の子は少なくはないから。
ひとりになった俺は泊まっている部屋の前まで戻ってきて、けれど両手がふさがっているために膝でどんどんとノックをする。
中からアヤの声が聞こえ、いることに安心した。
「両手にお菓子がいっぱいで開けれないんだ」
「待ってて、開けるから」
そう言ってすぐに扉が開く。
そこにいたのは浴衣姿のアヤだ。
入浴場から戻ってきたばかりなのか、髪はほんのりとしっとりしていて耳カバーがなくて顔が赤くなっている。
だからかいつもよりも、ほんのちょっとだけ色気が感じられる。
「どうしたの?」
「いや、浴衣がよく似合っているなと思って」
「……そういう褒め言葉は、買い物に行って出会った子にも言ってきたのでしょうね」
小さくため息をついたアヤは俺からお菓子を奪い取ると不満そうに部屋の中へと早足で戻っていく。
慌てて俺はあとをついていき、弁明のために口を開いた。
「いや、そんなことはしない。もし言ったら勢いでセクハラをされるのは経験済みだからな。相手を選んで発言をしているし、こういうのはアヤとシービーにしか言わないって」
「それならいいけど」
さっきよりもおだやかな声で返事をしたアヤは部屋に置かれているちゃぶ台の上に持っていたお菓子を全部置くと、両手で自身の体をきつく抱きしめる。
目をつむって我慢している表情は、たかぶった感情を抑えているのだと思う。
お風呂を入った影響でテンションが高くなっているからだろう。
気づいたからには声をかけず、そっと部屋の隅であぐらをして座る。
「できるだけ早く慣れるように頑張るから、私を避けないで」
「俺から見てダメだとわかったら、しばらくは会わないようにする」
「それで構わないわ。私は本能のままで行動してヒロを傷つけたくないから」
熱っぽい溜息をついたアヤは縁側へ行き、置いてある椅子に座るとぐったりと背もたれに体を預ける。
そのあいだ、俺は部屋にあるテーブルを隅っこに置いて布団を敷く。
時間はまだ9時で寝るのには早いが、安定剤の効果で眠くなるだろうと思って。
たとえ今がちょっとばかり興奮しているとしても、すぐにおさまるだろう。
本来なら旅館の人が敷いてくれるものだが、女性を警戒して断っている。だから自分たちでやる必要がある。
仕舞われている場所からふたりぶんの布団を持つと、慌ててアヤが立ち上がるも片手で座るようにジェスチャーをして座らせた。
そのことに不満な顔を向けてくるも、これくらいならすぐに終わるし、なにより静かに落ち着いていて欲しいから。
ひとつめを敷いたあと、ふたつめはすこし離した位置に置く。
昨日までなら、ぴったりとくっつけてはいたが今日からは気をつかっている。
思春期に目覚めた女の子は男に対して強く興味を持ち始め、場合によっては男を毛嫌いすることもある。
他にも親と一緒に服を洗わないでとか、異様に清潔さに気をつける。生理で荒れやすくなるなど。
……今まで生理のときは生理だから気が荒れると恥ずかしさもなく言ってくれた。でも今は俺に対して恥ずかしさがあるから、女性の性については相談してくれなくなると思う。
そうでないと困る。
今までは妹たるアヤのために女性心理を勉強する必要があったものの、これからはシービーに全部を任せられる。
これからは自分自身でなんとかすることが増えるのに安心すると同時にさびしいという気持ちも。
まだ恋人もいないのに、娘に嫌われる親の気持ちが理解できそうだ。
布団を敷いたあとは暇な時間ができ、アヤに迷惑をかけないよう壁に背中を預けて座ってはスマホで小説を見ていく。
読むことに集中していると、ふと左肩に熱を感じる。
驚いて隣を見るとアヤが肩をくっつけて座っていて、俺と同じようにスマホで小説を読んでいた。
それからはお互いにくっつけたまま言葉もなく、でも居心地が悪いわけじゃない時間を過ごす。
時間が午後10時をちょっと過ぎていて、眠くなった俺はスマホを横に置く。
「そろそろ寝ようか」
「シービーにもらった薬を飲むから待って」
お互い一緒に立ち上がり、俺は布団へ。
アヤは冷蔵庫に冷やしてあるペットボトルの水を取り出し、薬を飲む。
「明日は病院に行く?」
「ええ。安定剤があったほうがいいでしょう?」
「どうしても我慢ができなくなったら言ってくれ。よっぽど無理じゃなきゃ受け入れるから」
「それは絶対に嫌。もし、あなたを傷つけてしまったら私は後悔してもしきれないから」
そういうアヤの顔は、すでに今の自分自身を許せないかのように思い詰めている。
責任感が強く、迷惑をかけないためになんでもひとりで解決しようとする。
大事なアヤのためなら、迷惑をかけられるのは嬉しいのに頼ってくれと言ってもあまり頼ってくれはしない。
抱き着いてきて甘えるのは昔からしてくれたけど。
「悲しそうな顔をしないで。頼るときは頼るって約束をするから」
「前もそうやって頼ってくれなかったのを覚えているんだが?」
「それはトレセン学園の受験じゃない。あれは自分の力でやりたかっただけ。ほら、早く寝ましょう」
アヤは部屋の明かりは天井の部分からぶらさがばっているヒモを引っ張って消し、小さいオレンジ色の光へと変える。
言いたいことは他にあるものの布団の上でどさっと倒れ、その気持ちを抑えて寝ることにする。
「ねぇ、薬の効き目が出るまで話をしてもいいかしら」
「何か言いたいことがあるんだ?」
「ええ。こんなにも幸せでいいのかってことを」
「今日は3人で遊んだだけじゃないか」
天井を見上げていた視線を横へ向けると、うすぐらい部屋の中でもわかるぐらいにアヤが落ち込んでいる表情になっていた。
心に感じている罪悪感が顔に出ているかのような。
「もし妹がいたら、もっと楽しかったんじゃないかって。夢に妹がときどき出てきて、私にあることを言ってくるの。
夢で『私だけ死んだのに、お姉ちゃんだけ幸せでズルい』ってことを強くね」
「アヤの妹なら、そんなことは言わないって。きっとお姉ちゃんを取られたという怒りで俺相手に独占欲を出すと思う」
「そうかしら」
「そうだとも。それに、ふたりいたとしても俺は同時に甘やかすし、幸せにしてやる」
「ずいぶんとはっきり言うのね」
「かわいい妹がふたりいたら、ふたりともかわいがるだろ」
何をあたりまえのことを聞いてくるんだ、と不思議に思いながら返事をする。
そうしたら急に俺から顔をそむけて言葉が帰ってこなくなった。
それから10秒ほど経ってから返事が来た。
「妹が夢に出たら、そう言っておくわ」
「そうしてくれ。もし妹に責められて自殺をしたら追いかけるからな」
「ダメよ、そんなの! あなたにはシービーがいるじゃない!!」
布団から跳ね起きたアヤは力強く怒りを込めた目で見てくる。
そのことに驚くも、そうなるほど大事に思っていてくれるのが嬉しい。
一時期は本気で自殺を考えていたが、この様子だともう考えていないみたいだ。小学生だったときは一緒に死んでくれるのを期待した目で見てきたから。
「シービーはひとりでもやっていけそうだが、アヤは見ていないと不安になるんだ」
「私よりもシービーのほうこそ危ないと思うけど」
「それはないだろ。あの自由奔放で周囲を気にしないシービーだぞ?」
一年中したいことをしたいときにする、自由を形にしたシービーだ。
そんなあいつは精神の安定度は高いだろ。
なのにアヤは大きくため息をつくと布団へと勢いよく倒れこむ。
俺がバカだでも言いたいかのような動きに不満を持つしかない。
死んだら落ち込みはするけど、1年も経てば俺たちなら死後の世界でも楽しくやっていけているという意識になりそうだが。
「ヒロが自転車で転んで出血したとき、シービーがすごく慌てたのを覚えている? 覚えているのなら、そういう考えにはならないと思うわ」
「……あー、あれか。いま思い出した。それなら俺もおまえも死ぬのはダメだな」
「そうね」
「よし、それなら自殺未遂にしようか。事前に飛び降りても大丈夫そうな場所を調べて、着地点に低い木々があれば大ケガだけで済むかもしれない」
「死ぬ可能性があるのはダメよ」
「じゃあアヤもダメだからな。他にも自分を痛めつける自傷行為も」
「ええ、約束するわ」
「オーバートレーニングもするなよ?」
せっかくだから、必要以上にトレーニングする癖をなくそうと思って言ったがアヤは俺から目をそらしては無言で無視をしてくる。
こいつめ。翌朝になったら、布団をひっぺがして包んでやるからな。
本気で俺が注意したらやめるだろうが、それはアヤの意思を曲げることになる。走り続けなければならないという、
アヤの両親は走ることに関しては頼りにならない。
特に母親はそれだけでなく、娘とのかかわり方も悪い。
レースじゃなく、走り続けることと亡くなった妹をずっと思い続けているアヤを不気味に思っている。
母親からすれば、亡くなってしまった娘のことは静かに眠らせてあげたいのだろう。
だというのに、何かあるごとにアヤが「妹だったら」というのを言葉の前にして言うから嫌がっている。
4年前、俺が中学2年生のときに『アヤに亡くなった娘のことを忘れさせて欲しい。私はもう辛いことを思い出したくないから』と言われた。
俺はそれを断った。そんなのは当然だろう。家族のことは家族で解決するものだろうし、俺が慕われているとはいえ部外者だ。
母親だというのに、自分の娘を俺に任せるとか、まったくふざけている。
娘を他人に任せるのは結婚のときだけにして欲しい。
母親がアヤの言動にまいってしまってからは、アヤの弟である息子をすごく愛しているようになった。
仲が険悪なだけではない。母親と娘で上辺だけの家族関係になっているだけだ。
母親を信じられなくなったアヤは、俺へと依存するようになったが。
不安なときは俺に泊まってくれるようにお願いし、俺のほうの自宅へと泊まり込みにくることもあった。
一時期はシービーと一緒に、親子関係の改善がならないか頑張ってはみたものの、双方の意識が変わらないことには無理という結論になった。
妹からの強迫観念はどうしたらなくなるんだろうかと俺はずっと悩み続けている。
妹は自分が生まれるかわりに死んだ、という考えを変えられないかと。
生まれるかわりではなく、妹が姉に生きて欲しいとそう思わせたい。もうアヤが妹で深く悩むたびに俺が自傷すれば、強引に解決できる気がしそうではあるんだが。
むしろ、俺がいなくなればアヤは1人で問題解決を──
「ねぇ、ヒロ」
「なんだ?」
「私のために無理をするとか、怪我をしたらひどいことをするからね」
ちょうど、そのことを考えていたから俺の意識が読まれたようで驚いて返事ができない。
3秒ほど経ったあとに、俺はごまかしの言葉を静かに伝える。
「なんだよ、ひどいことって。優しいアヤが俺にそんなことできるもんか」
「監禁するわ」
「……俺が動くときは何か言うことにしよう」
「勝手にいなくなるときは、私も連れていってね」
そう悲しげに言い、俺の布団へと転がりこんでくる。
体を回転させ、こっちにやってくる姿はかわいいとしか表現できない。
俺の足に尻尾を巻き付け、腕を抱きしめてくる。腕にはブラがない胸のやわらかさとあたたかさが来て、ちょっとだけドキドキする
胸がないときの、小学生の頃と違って心も体も大人のようになっているんだなと。
自分で考え、自分で行動をすることが増えてきている。それがなんだか子離れ、いや兄離れのようでちょっとだけさびしい。
「アヤを置いて、どこかへなんて行かないさ」
抱き着かれていないほうの腕を伸ばし、頭や耳をなでているとアヤはいつの間にか眠りについていた。
今日は幸せな夢を見て欲しいと思い、そのまま優しく頭をなで続けていく。
いつまでも小さな子供と思っていた。でもきちんと大人になっていることが実感でき、そのうちに問題は自分自身で解決するかもしれない。
トレセン学園での友達とふれあい、同室のかわいい葦毛の子から良い影響を受けて。
俺は気持ちよさそうに寝ているアヤの顔と寝息を聞きながら目をつむる。
そうすると眠気がやってきて俺も寝てしまう。
明日も楽しい1日になればいいなと思いながら。
ハーレムを意識して書いたけど、終盤になって違うと気付いた。
続きはありません。