正義の味方になりたかったけど、そう思い通りには行かないよなあ… 作:考える僕
僕の座右の銘は「正義は勝つ」
なぜかって?
単純に言葉の意味と響きが好きなだけだ。
だけど僕は憧れているんだ、圧倒的な力で正義を執行する正義の味方に。
きっかけ?そんなものはとうに忘れてしまった。
憧れるうちに具体的な憧れの対象は幾度となく変わったからだ。
だけど、僕の信念の奥深くにある「正義の味方になりたい」という熱い情熱は
一度も冷めることは無かった。
だから僕は考えた。強大な悪に立ち向かうには何が必要か。
ガソリンの爆発に耐えられる強靭な肉体、全てを凌駕する膨大な知恵、
全てを粉砕する圧倒的な破壊力、全てを見通す予知能力………
考えれば考える程に尽きない。
終わらない思考を考えつくし、ある日僕はついに核心にたどり着いた。
「そうだ、全てだ……全てが必要だ………」
それに気がついてからの僕は一日の内4分の1を消費する睡眠を極限まで削り、世界に存在するありとあらゆる知識を頭に叩き込んだ。数十の言語、おばあちゃんの知恵袋、なんでもいいから知識と呼べる全てのものを。
肉体の強化もだ、剣道、空手、合気道、総合格闘技、水泳、弓道、カポエイラ、相撲…
この世に存在するスポーツを一心不乱、手当たり次第に試し、極め、肉体を強靭なものにした。
僕は来るべき日、正義の味方として、悪を打ち倒す日のために、研鑽を積んで行った。
そう、来るべき日のために。
―――――――――
(うーん、どうしたものか…)
僕は今、底の見えない暗闇の中にいる。
いや、ここが底なのかもしれない。いずれにしても、ただ、暗闇の中なのだ。
―――
僕は正義の味方になるために、何者にも負けない力と知恵を獲得し、
来るべき日のために準備していた…はずだった…
僕は見落としていたんだ、人類が恐れ、如何なる強者でも抗うことの出来ない存在を。
寿命とその終わりだ。
僕、
僕の高校最後の夏。
世界は最も小さくも恐ろしい、最凶の存在によって、恐怖に陥れられた。
それはミクロ以下の大きさ、集団で生物の生命力を吸い取り、増殖しまた次の生命を媒体とする。彼らはあっという間に世界に分布した。
彼らは人類史上最強災厄の存在だと僕は思う。
僕の人類最強の肉体も、彼らの前では無力だった。
僕は不運にも彼らの媒体となって、生命力を吸い取られ、力尽きた。
これから始まるはずだった僕の正義の味方としての物語は、幕をあげる前から、幕を下ろした。
―――
そして今僕はどこか分からない暗闇の中にいる。
死んだらどうなるのか?それは人類が誰も解決できなかった永久の謎だったんだけど、
僕がたった今体感しているこれが答えだとしたら、随分と呆気ない答えだなと思う。
それにしてもここ、居心地は悪くない、まるでベットの上に寝かされているようだ。
そして絶え間なく、体を流れる何か力の流れ…
中心から指先に至るまで、耐えることなく流れている。ん?
なんで感覚があるだろう…
肉体は多分燃やされちゃうからないだろうし、魂?いやいやいや。
感覚があるなんて、おかしいじゃないか。
そんなことを考えていたら急に体にぐっと、負荷がかかった。
なにかに持ち上げられている?
背中と頭をなにかに支えられているようだ。
僕は本能的に目を開けるという動作に出た。
目に飛び込んできたのは眩しい光、多分長い時間暗闇にいたからだろう。
目がチカチカするのが落ち着いてまず認識できたのは、男の顔だった。
(誰だこいつ?)
僕は心の中でそう思いつつ、周囲を見る。
第一印象はお城の中だ、それもヨーロッパの。
僕の頭の中は混と乱の2文字で埋め尽くされていた。
「