正義の味方になりたかったけど、そう思い通りには行かないよなあ… 作:考える僕
さて、見苦しい所を見せてしまったけど、
どうやら僕は生まれ変わったようだ。
それも前世の記憶を持って。
新しい家の内装は中世ヨーロッパ風のThe異世界みたいな感じだけど、一つだけ違和感がある。
言語が何故か日本語に似ていることも違和感だが、それよりも
体に不思議な力の流れがあるのだ。
僕は赤子の無駄に有り余る時間を使ってその力の流れを意識的に操作できないかやってみた。
するとどうだろう。できるのだ。
新しい力に目覚めると、人というのは試したくなるものだ。僕も例外では無い。
赤子と言えど、手の上げ下げくらいはできる。
(手を上げる時に力を手に集めて…下げる時に一気に指先まで力を流す!)
バギバキボキ
僕が手を下ろした瞬間、ベビーサークルの柵が見事に折れて吹き飛んだ。
結構な音がしたからだろう。ドタドタと僕のいる部屋に向かって誰かがかけてくるのが聞こえる。
ガチャりと扉が開いて、メイドが入ってきた。
あ、言い忘れてたけど、どうやらこの家、それなりに裕福だ。
今はそんなことより、誤魔化さないと…もう無理だよね…
「
「なにか大きな音がしたような……」
僕は満面の笑みでメイドを迎えるが、メイドは無惨になったベビーサークルを見ると直ぐに血相を変えてしまった。
「きゃーー!ぼぼぼぼ坊っちゃま!大丈夫ですか!?」
「すぐに旦那様を!」
と、部屋を急いで出ていってしまった…うーん…
その後、父親が来て、母親も来て、色々あーだこーだ、言っていたけれど、結局まあそんなこともあんじゃない?的なよく分からない結末を迎えた。
僕はこれを機に、暫くは大人しくしていようと誓った。
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僕の名前は ヒロ・ジャスティン
僕がこの世界に生まれてから…そうだなあ、たぶん10年くらいたった。
どうやら僕の感じた力は魔力と言うらしい。
魔力は身体強化という面でとても万能だと思う。頑張ってつけた筋肉よりも、魔力を使った方が圧倒的に強いのだ。
だけど、前世で僕が血眼になって鍛えた技術や力は決して無駄にはなっていなかったと思う。
だって、生まれた時から魔力の流れと使い方を熟知しているのだから。
そうそう、裕福だなと思っていた僕の家はどうやら貴族だったようだ。
魔剣士と呼ばれる職業を代々排出してる家らしいのだけど、
僕の父さんが病弱でそれになれなかったから、元々中央の伯爵だった僕の家は辺境に飛ばされてしまったらしい。
父さんは僕に魔剣士になれと、自分に叶わなかった夢を子供に押し付けるタイプの親だが、
おかげでこの世界の戦闘技術を学ぶ機会を得た。とは言っても、当然父さんは剣を使えないわけで、近くの男爵家…なんて言ったかなあ、そうそうカゲノー男爵家で、指導をしてもらっている。
カゲノー家には才能溢れるクレア・カゲノーという僕より年上の娘と、あと…影の薄い奴がいるのだけど、正直、
才能溢れるとは言ったものの脳筋ゴリ押しみたいな剣で、僕から言わせてみれば隙だらけだ。
僕はどうなのかって?最初は悩んだけど、
確か戦隊モノのヒーローとか、世直しする副将軍とかって、普段は一般の世界に溶け込んで、
悪を成敗する時だけ、力を示していたと思うんだ。
だから、あくまで平凡な魔剣士の子息を演じることにした。
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とは言っても、
万年筆をしばらく使わないとインクが乾いて使えなくなるように、
力も使わなければ錆び付いてしまうのだ。
で、僕は素晴らしいことに気がついた。この世界、治安があんまり良くない、
だから夜出歩けば盗賊に出会うのだ。
盗賊というのは悪だ、ならば僕が成敗しなくてはならない。
そんなわけで、夜な夜な家を抜け出しては盗賊を襲撃、いや成敗して回っている。
正直弱い。
だから、今日も普通に終わるはずだったんだけど…
夜の闇の中にひとつのあかりが見える、商人の馬車を襲撃に成功した盗賊が宴会を開いているのだ。
そのあかりのすぐ前に魔力で強化したジャンプで降り立った。
「何者だ!」
盗賊に対して僕はこう言い放った。
「美しい夜の闇を人々の恐怖変える盗人達よ、今宵我が貴様らに正義の鉄槌を下さん」
「ハハハ、何を抜かすかと思えば、たった一人でこの人数を相手できるわけがねぇ」
「お前らやっ、ぎゃ」
長々と挑発してくる盗賊の頭と胴体を切り離した。
「てめぇ、舐めやがってぶっこ、ぎゃ」
「うーん、君たちさあ早くきなよ、喋るのも時間の無駄だし」
「うらああ!」
盗賊たちが一斉に僕に向かって剣を振り下ろす。しかしその剣は僕の間合いで全て砕け散った。
それと共に一回転し、今度は盗賊たちの上半身と下半身を切り離した。
あと半分かなあ、という時に僕は異質な魔力を感じた、
「ヒャッハー!おらおらおらおらおら!」
僕はその時直感した。ヤバい奴だ、コイツはやばい、単純に色々とヤバい。
彼は次々と盗賊を斬り伏せこちらに突進してくる。
「お前で最後だあ!うりゃあ!」
カキーン
鉄と鉄がぶつかり合う音が鳴った。
しかし、そいつの持っていた剣はうねうねと形を変えると、僕に僕の剣をすり抜けてこちらに伸びてきた。
「うお、」
慌てて僕は後ろへ飛び去りそれをかわす。
「貴様、何者だ!?」
奴は変なポーズを決めて僕に言った。
「我が名はシャドウ、影に潜み、影を狩る者…貴様、盗賊にしてはなかなか…
頑張れば2分は長生きさせてやろう。」
「え、いやあ、僕盗賊じゃないんだけどなあ…」
「え?」
「うん」
そんなわけで、落ち着いて、話し合いをした結果、まあ何故か意気投合したんだけど…
彼は陰の実力者というのに憧れているんだとか…
なんでも、物語の主人公でもなく、ラスボスでもなく、物語に介入して実力を見せつけて、
貴様何者だあ!的な感じのことをしたいんだそうだ。いやあ、マジ意味不明。
僕は僕で正義の味方になりたいと言ったところ彼は、
「それはいい、謎の人物僕と、正義のヒーローの君が、実は2人がかつて共に夢を語り合った友
だったみたいなの、いやあ良い最高だね!」
うん、は?
彼の意味わからない理解に僕は理解が追いついていないが、彼が勝手にどんどん話を進めていき。
結果的にまあ、暫くは一緒に夜集まって盗賊を狩ることになった…
後日彼の正体が分かったのだけど、まさかカゲノー家の影の薄い彼だったとは…
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シャドウこと、シド・カゲノーと行動を共にするようになってしばらくしたある日、いつものように盗賊を殲滅して、戦利品を払拭していた時だった。
初めは盗賊を倒した戦利品とはいえ、元々は他人の持ち物だったんだから、正義の味方として彼の行為には反対したんだけど、
シドがこのまま放置していても、誰かが持っていくんだし、だったら僕たちが有効活用した方が良いと言われて、何故か腑に落ちてしまった。
そんなわけで、今日も色々漁っているんだけど…
今日は檻に入った生きる肉塊を見つけてしまった…
僕はこの世界の知識をつけるべく、色々と勉強していたから、この存在に心当たりがあった。
悪魔憑きだ。
元々は普通の人間だが、ある日を境に肉体が腐り出す。
教会が回収して浄化という名の処刑を行うのだけど…まあ、病人の虐殺だ。
僕は正義の味方として、これを救う方法を考えるべきなのだろうが、
治ったという事例を知らない。
このまま、一思いに…とか考えていたら、楽しい玩具を見るような目をしたシドが、
「ねぇ、ヒロ、僕いいこと思いついた。これで実験しよう!」
「そんな非人道的な事できるわけな…」
僕の言葉を遮って興奮気味にシドは続ける。
「いいじゃないか、これを治せるかもしれないんだ!よし運ぶぞー!」
「はあ……」
こうして、シドの人体実験が始まり、あーでもない、こーでもないと、約1ヶ月…
僕が少し遅れて集合場所の廃村に行くと…シドが犯罪を犯していた。
「あ、ヒロ来たねー」
「シ、シド、お前……」
彼の目の前には生まれたままの姿の金髪の美しいエルフの少女が寝ていた。
状況と現状からして、証拠は十分だ。
まさかシドがついに犯罪に手を染めるとは…成敗しなくてはならない。
「治ったんだよ、あんなに腐ってたのにねー」
ん?確かに部屋にあった肉塊の姿が見当たらない…
とすると…まじかあ…
「ううん…ここは……」
僕らの準備が整う前に彼女は目を覚ました。
彼女は自分の姿を見ると、
「私の体…治った…の…」
困惑しているようだが、そこでシドが彼女に言う。
「君の体を蝕んでいた病は治った、さあ故郷へ帰るといい」
僕は気づいた、ああ、コイツは無責任なんだなと…
だけど、彼女は言った。
「私は悪魔憑きになって、帰る場所も家も何も無い…だから、私を助けてくれたあなたに恩を返
えさせて」
「うむ…しばし待て」
シドはそう言うと、僕を小屋の外へ連れ出した。
「ねえ、ヒロ、どうすればいい?」
「そんなこと知らねぇよ、第一お前のせいだからな」
「うーん…あ、いいこと思いついた。ヒロ、少し付き合ってよ」
「聞くだけは聞こう」
というわけで、再び小屋の中。
少女に対して、シドは語り始めた。
「君の体を蝕んでいたのはディアボロスの呪いだ。」
「ディアボロスの呪い?」
少女は小首を傾げる。
「遥か昔魔人ディアボロスは3人の英雄によって打ち倒された」
「だが、ディアボロスは死の間際、英雄たちに呪いをかけた。それがディアボロスの呪いだ」
「悪魔憑きは英雄の子孫であるという証だった。だから昔は世界を救った英雄の子達として、保護
され讃ええられていた」
「だけど、今は讃えられるどころか…」
彼女が顔を歪めて言った。
「何者かが歴史をねじ曲げたのだ、魔人の復活を企むもの達によってな」
「それはいったい…」
「ディアボロス教団。魔人ディアボロスの復活をのぞみ、君たちを迫害した者たちだ」
「君はその者達のせいで、故郷も家族も全てを失ったのだ、憎くはないか?」
「憎いわ、憎くないわけないでしょう」
「僕たちの敵はディアボロス教団。そして彼らは決して表の世界に出てこない」
「だから僕たちも影に潜むんだ。影に潜み、影を狩るんだ」
「困難な道のりだろうが、協力してくれるね?」
「あなた達がそれを望むなら私は命を懸けましょう」
「そうか、なら、今日から君はアルファだ」
「そして僕の名前はシャドウ、隣の彼は僕の協力者ゼロだ」
「我々はシャドーガーデン、さあ、アルファ、共に行こう」
「ええ」
シャドウの差し出した手をアルファが握ると彼女の体は漆黒に包まれた。
それにしても、シドのアドリブ力と発想力には驚いた。だけど、存在しない仮想の組織を作り上げて、敵にするなんて…バレるよね…だってこのアルファっていうエルフ、頭良さそうなんだもん…
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ゼロの意味。七影、及びシャドウガーデンがギリシャ数字を元にした名前であるが、ゼロと言う数字はギリシャ数字には存在していない。だから、ヒロは存在しない協力者である的な…
単純にかっこいいからかなぁ…