正義の味方になりたかったけど、そう思い通りには行かないよなあ… 作:考える僕
ヒロ(ゼロ)のシャドウ様への勝率1%あれば世界の上澄みに…
うーん、まだシャドウ様も肉体的に完全な状態じゃないからなあ…
あ、でも条件的にはヒロも同じ…
挫折して剣を諦めたけど、もしかしたらこの時点でも世界の上澄みに…
(本人は気づいていない)
コメントありがとうございましたm(_ _)m
夜の闇夜に漆黒を纏う2人の影。
内1人が前へと進み出て言う。
「ヒャッハー!景気が良いね盗賊さん!僕はスタイリッシュ盗賊スレイヤー!」
「そんじゃ、有り金全部出してきな!逃げる奴は盗賊、逃げないやつは訓練された盗賊だー!」
彼の突然の訪問に盗賊たちは驚きはしたものの、彼の背丈と数を見て彼らの驚きは嘲笑へと変わった。
「なんだてめぇら、俺たちだって忙しいんだ。ガキのお守りをしてる暇はねぇ」
「さっさと帰んな、したら見逃してやるよ」
一人がそういうと彼の背後から笑い声が聞こえた。
しかし、漆黒の彼は止まらず、盗賊の方へと歩みを進める。
「ガキのお守り?金出すならさっさと出して、ホラ、早くー、次もあるんだからさー」
「君たちみたいな雑魚相手に時間を取るのも嫌なんだけど、お金出してもらわないと探すの面倒だからさー、ほらーはーやーくー」
漆黒の彼の挑発とも言える言動に盗賊はブチ切れた。
「てめぇ、優しくしてやりゃ調子に乗りやがって!」
「ガキだからって容赦はしねぇ、ぶっころっ、」
盗賊は腰の剣を抜き漆黒の彼に向けて雑に構えた。しかし盗賊はテンプレのセリフを言い終わるまもなく事切れた。
「ヒャッハー!!!」
まるで宴の始まりだとでも言うかのように、
ハイテンションで漆黒の彼は盗賊の群へと突っ込んで行った。
―――
「はあ…」
アルファが報告してくれた日から約1週間。
僕達はというよりシドは彼女の報告なんて忘れて、今夜も僕と一緒に盗賊ハントにきている。
夜の闇夜に紛れて悪を殲滅… いや、違う…
最近はただのお小遣い稼ぎになってきた気がする。
悪と言っても、辺境のこそ泥に近い奴らだ。
倒しても手応えがないし、愉快犯のような連れがいるせいで逆に申し訳なくなってくる。
もっとも、盗賊に情けをかけるつもりは無いけど。
「ヒロー、終わったよー、ここはヒロは何もしてないから僕が全部貰うけど文句ないよね?」
彼は遊びを楽しむ少年のような口調で話しかけてきた。今、人を殺めたばかりだとは思えない。
まさに愉快犯と言うやつだ。シドは盗賊狩りを純粋に遊びとして楽しんでいる。
今夜はどうやら僕が出るまもなく終わってしまったようだ。まさに瞬殺…
つい先程まで盗賊が宴会をしていたであろう場所には血溜まりと、無数の盗賊の亡骸が転がっている。この世界に宗教ってあったっけ…
悪人とはいえ供養だけでもした方が良い気がするなあ、そろっとシドは呪われそうだ…
当の本人はそんなの気にすることなく戦利品を漁っている。手つきがだんだんとプロのそういうのに近づいてる気がするのは僕だけなんだろうか…
彼いわく1番の戦利品は金貨だそうだ。宝石とか絵画みたいに換金する必要がなく。そのまま使えるかららしい。
僕は戦利品はあんまり気乗りしないけど、将来を考えて、少しばかり金貨を拝借している。
「いやぁ、今日の盗賊もいっぱい持ってたね〜この金貨、それにこの絵画。これからどう陰の実力者セットを作り上げていくか考えると心が満たされるぅ〜」
あたかも、それが元々自分のものであったかのように喜びに浸る彼に僕はツッコミを入れる。
「あのさあ、それ、前も言ったけど、元々は善人、一般の人の物だったんだから、有効活用とは言っても、あんまり余計なものに使うのは良くないと思うんだけど…」
「はぁ、ヒロは分かってないなあ、僕の出費に余計なものは何も無いよ。
全ては僕の陰の実力者としての雰囲気作りを完璧にするためなのさ!」
「それを無駄遣いって言うんだよ!」
「ん?あ、僕はここでーまたねヒロ」
「ちょっ、まて……」
僕が言い終わる前に彼は彼の屋敷の壁を飛び越えて帰って行った。
いつもこんな感じだからペースがなあ…
僕もブツブツと独り言を呟きながら、家路を急いだ。
―――
次の日、朝からアルファが僕の部屋を訪れていた。
気持ちのいい朝だあ!ふわぁーと伸びながら部屋を見渡したら部屋の隅に突然居た金髪の美少女。朝からビックリ…でも、目の保養。彼女がスライムスーツで現れたということはシャドーガーデンの連絡ということだ。
朝の眠気の残るからだを無理やり起こして、ヒロからゼロになる。
とは言っても、シド→シャドーほど、喋り方を変えたり態度を変えたりはしない…流石にあそこまでやるのは僕としては恥ずかしい。オフからあくまで仕事モードに切り替える感じだ。
「おはよう、アルファ、朝からどうしたんだい?」
僕が尋ねるとアルファは僕の方に歩みを進め、紙の束を手渡してきた。報告書だ。
「クレアさんが教団によって、さらわれたわ…」
「え」
「え?」
僕が突然の報告に疑問の混じった声を出すと、アルファは知らなかったの!?とでも言うかのように続いて声を発した。
「ゔ、ゔん、まあシャドウが放置してたからいずれこうなるとは思ってたけどねー…」
「そうなのよ…彼は私たちよりも遥かに早く教団の襲撃を察知していたはずなのに何も行動を起こさなかった…きっと彼にしか分からない深い考えが…」
アルファは考える人のように腕を組んで考え始めた。だけどいくら考えても答えは出てくるはずは無い。
まあ、そうだよね…彼女たちシャドーガーデンは何故かシャドウの行動全てに何かしらの深い意図があると考えているらしい…僕に言わせれば、彼は何も考えてない…たまたまそうなっただけなのに…あ、でもこの件をシャドウはどうするつもりなんだろうか…仮にもクレアさんは実の姉な訳だし…
疑問に思ったのでアルファに尋ねてみた。
「この件はシャドウに報告は?」
「ええ、今ベータが行っているわ」
「どうするって?」
「まだ、ベータが戻ってきてないから分からないわ…」
「ゼロ、あなたはシャドウが何を考えているか、私たちよりは分かるはずだわ。あなたはどう思うの?」
アルファが期待を込めた眼差しで僕を見てくる…知るわけないじゃないか…第一にシャドウが何も考えてないんだから…でも、分からないと答える訳には行かない……そうだなそれっぽい適当な…
あ、これでいいや。
「きっとシャドウはわざとクレアさんを誘拐させて、教団のアジトを見つけるつもりなんだよ」
「そうね…でもそれじゃあ誘拐させてどうやってアジトを探すの?」
「そこはシャドウの影の叡智ってやつじゃないのかな?」
「ええ、確かにシャドウの叡智は底が知れないものね…」
僕たちが話していると部屋の窓から銀髪のエルフが入ってきた。ちなみにここ3階。
ふわりと軽い身のこなしで僕の部屋に着地すると、銀髪の彼女は背筋を正して僕に一礼する。
彼女はベータ。アルファに続いて、2番目のシャドーガーデンメンバーだ。
彼女もまた、悪魔憑きだった時からは想像もできない程の美人なんだけど、僕としてはアルファの方が好みだ。まあそれはいいとして。報告を聞こう。
「聞いてください、ゼロ様、アルファ様!シャドウ様に資料と地図をお見せしたところ、教団のアジトはここだと、一瞬でお示しになられたんです!しかも私たちではたどり着けなかった答えに!、さすがシャドウ様!すごい!すごい!すごい!すご…」
「少し落ち着きなさいベータ、ゼロの前よ」
「あ…失礼しました…」
シャドウの凄さを興奮気味に話すベータをアルファが落ち着かせる。
「シャドウ様がお示しになられた場所なのですが…」
そう言ってベータが地図を広げ、バツの印の着いたところを指さす。そこだけ、不自然に刃物でも刺さっていたかのように切れ込みが入っていた。
「実は私たちの既に入手していた情報は教団のダミーだったんです」
「シャドウ様のお示しになられたところは、こことここの地形的なデータ…………」
あ、ごめん、僕わかんない。
突然高度な話に入ったので、僕はなぜシャドウがそんな場所を当てたのか考えてみる…
シャドウが密かに情報収集をしていた…うーん、完璧に陰の実力者になろうと躍起になっている彼なら、カッコつけるために情報収集したのだろうか…いや、ダメだ、これはシャドーガーデンのシャドウ様バンザイの思考回路だ…もっと簡単に考えよう…
あの切れ込み…うーん、僕としては適当にやったと考えたいんだけど、それはそれで非現実的…
僕が思考をめぐらせていると、説明が終わったのか、アルファが話しかけてきた。
「さすがはシャドウの信用置く協力者ね!彼が情報を手に入れるためにわざと対策をしなかったと見破るんだもの!」
「ん?ああ、その通りさ」
「じゃあ、私たちで事前の調査はしておくから、いつでも出れるように準備しておいてね」
「ああ、よろしく頼むよ」
彼女はそう言い残し、ベータと共に窓から出ていった。ちなみにここ3階。
なんか僕まで勘違いの対象になってきてる気がするんだよね…
まあ、悪い気はしないからいいけど…彼女達の将来が心配だ…
―――
日が落ちて、世を照らすのが月だけの薄暗い世界になった頃。
コンコンと僕の部屋の窓をノックする音が聞こえた。シド、いや、シャドウだ。
漆黒のコートが月明かりに照らされて、孤高の存在を感じさせる。
「ヒロ〜、準備できたって〜、一緒に行こー!」
能天気に話しかけてくる彼のせいで、彼の孤高の存在感は消失した…
準備が整ったのか、クレアさん無事だといいなあ。脳筋野郎だとは思っていたけど、凡人の振りをしている僕に剣のコツを教えてくれるから、そんなに嫌いじゃない。
出来れば無事であることをを祈りたい。
「よし、じゃあ行くかー」
僕も彼と同じく漆黒を身に纏う。漆黒のヒーローゼロ?だ。
僕はシャドウに並んで、窓から月明かりの世界へと飛び込んだ。