仮面ライダーギーツ【Mother and Children】 作:キャメル16世
「……星野アクア…お前は一体、何者だ」
「……」
アクアの黒いハイライトを見て、英寿は少しだけ息を呑む。その冷徹な表情は、今まで見たどの
「…あんたは、もし芸能人にの子供に生まれていたらと考えた事はあるか?」
「……え?」
「容姿やコネクションを生まれた時から持ち合わせていたらと……」
アクアは遠くを見詰めた。まるで誰かを思い馳せるかのように、誰かの言葉を綴った。
「……もし生まれ変わったら、アイドルの子供に生まれていたらと…」
「……まさか…」
その言葉が確信に近かった。
今までアクアやルビーに感じていた違和感を、英寿はこの時ようやく理解した。
「……俺は前世の記憶を受け継ぎ、アイの双子の片割れとして生まれた存在だ」
「……転生…か」
これは予想外だった。自分以外にも輪廻転生をする者が居たとは。英寿はその言葉を信じる他無かった。
彼の言う事が真実であるならば、全ての出来事に合点が行く。
前世の記憶があるならば、赤ん坊であっても喋れることは、過去の英寿が体感している。
「…こいつは驚いたな」
「……この事は誰も知らない。ルビー以外はな」
「…お前の妹も転生者なのか?」
「あぁ…アイのファンが前世の筈だ。まぁ今更中身を知ろうとも思わないがな」
星野アクアと星野ルビーは共に転生者であり、そのどちらもが奇しくもアイのファンという、なんとも美味しい転生をしたものだ。
「推しの子供としての産まれたってことか…」
「……そういうあんたこそ、何か隠してるだろ。俺は全てを話した…あんたの事も教えろ」
「……フッ」
英寿もアクアに全てを話した。自分は別の世界から来た存在であり、2000年もの間輪廻転生を繰り返し、自身の最初の母親を探す人生を繰り返していた事を。
アクアはそれを静かに聞き入れ、時たま驚いた表情を見せた。
「…あんたにも、そんな過去があったんだな」
「まぁ結局俺は俺の世界の神様になった訳だが、何故だかこの世界ではその力を使えない。だからまたデザ神になって、俺は俺の世界に帰る必要がある」
「だからデザイアグランプリに参加したのか」
「この世界のデザグラは俺の居た世界のデザグラとはまるで違う。そう簡単にデザ神にはさせてくれなさそうだが…最後に勝つのは、俺だ」
自信ありげに答える英寿。そんな彼を見て、アクアもまた少しだけ微笑んだ。
彼の右目のハイライトは、既に戻っていた。
「運営と繋がっていたのは、コネを使ってあのゲームで勝つ為だった。あんたと会う前に、俺はとある男に接触した。「クラム」、「今日あま」っていうドラマのプロデューサーだった男だ。その時クラムPに、次のゲームに勝ったら特別なゲームへの推薦状を渡すと言われてな」
「…なるほどな、運営とジャマトの性質を利用して推薦状を勝ち取ったって訳か」
「本当は俺一人で独占するつもりだったが…」
「……フッ…」
そこで、アクアは英寿を軽く睨んだ。それに対して英寿は鼻で笑うように口角を上げた。
「あんたは俺にとって邪魔な存在だ…でも、今回の事でよく分かった」
「……」
「…あんたの力は使える。俺は全力で、あんたを利用させてもらう…俺の理想を叶える為に」
「…使えるものは使う。俺と同じ考えだな」
アクアは英寿の目をしっかりと見据えて宣言した。そしてそれは、英寿も同じだった。
つくづく思う。俺とこいつは本当に似た者同士だ
自分の理想の為に、人を欺き利用する。そしてその覚悟のあり方も…
「俺もお前を利用させてもらうぞ。最後の最後までな」
「……」
並では無い。こいつはこいつなりの決死の覚悟で、俺を利用するつもりだ
「……っ」
すると、アクアの携帯にLINEの通知が入った。
相手はルビーで「遅い!」と文字が並べられ、その下には怒ったうさぎのイラストのスタンプが付け加えられていた。
「……フッ…そろそろ帰るか」
「…あぁ……ルビーに怒られるのだけは勘弁だ」
とある平和な土日休み。
そんな不穏な影も形もない昼下がりの事である。
「ミヤえもーん!早く私をアイドルにしてよー!」
「急かさないで…アイドルグループ作ります、はいオーディションってわけにもいかないの。ちゃんとしたグループ作るにはちゃんとしたスカウト雇ったり手続きがいるのよ」
現在もアイドルになれておらず苺プロのタレント止まりとなってしまっているルビー。嫌気がさしてミヤコに八つ当たりする始末となっていた。
「でもこのままじゃ…!」
「あの子特に仕事無いらしいよ」
「えっ、一般人じゃん」
「なんか一般人が紛れ込んでる」
「やっかいなミーハーじゃん」
「このままじゃいじめられる!」
「そうそう可愛い子なんて見つからないのよ。意欲のある子は大手のオーディションに粗方持っていかれちゃうし」
「…芸能科に寿みなみちゃんっていう胸バカでかくて可愛い子が居るんだけど……」
「よその事務所の子でしょ駄目!」
ルビーの横暴にミヤコも大分やつれ始めていた。
「フリーの子ならまだしも…事務所間の揉め事は御免よ」
「……」
すると、そばで二人の会話を静かに聞いていたアクアが反応した。
「……フリーなら…居るじゃん」
「…え?」
「フリーランスで、名前が売れてる割に仕事が無くて……顔が可愛い子」
「……アイドル?」
「そう!エースさんはどう思う!?」
「……別に可愛ければいいんじゃないのかな?」
「もぉーっ!可愛いだけじゃアイドルにはなれないんだよぉー!」
平日の昼休み、一緒に昼ごはんを食べるルビー、みなみ、そして英寿。
ルビーは昨日事務所でも話したアイドルの話を英寿に持ちかけた。
みなみは黙々とお弁当のおかずを口に運んでいた。
「そこでお兄ちゃんがね?有馬かなをアイドルに誘ったらどうかって…」
「有馬かな…マーリの事か…」
「確かに売れるとは思うだけどねー…」
「…どうした?」
「…ほら、私とロリ先輩はただならぬ因縁があるじゃない?」
「そうなのか?」
知らないが……ロリ先輩…?
「誘うだけ誘ってみたらどうだ?」
「……ん〜…」
腕組みをして深く悩んでいる様子のルビー。英寿は口にあるものを飲み込んで更に言葉を続けた。
「一刻も早くアイドルとして活動始めたいんだろ?意地張ってる場合なのか?」
「……」
「…お前の理想なんだろ?」
理想を叶える方法はデザグラで勝つ事だけじゃない。実力で願いを叶える事も可能だ。
それもアイドルになって有名になる程度のことであれば、尚更だ。
おそらくルビーは、デザイアグランプリで書いた願いはあくまで願掛けの様なもので、本当は自力でアイドルになって売れる事を望んでいるのではないだろうか。
「……そうだよね…確かにそうだ」
その言葉が、ルビーの心を少し変えた。
「有馬かなさん…私と、アイドルやりませんか?」
その日の放課後、かなを公園に呼び出したアクアとルビーは、かなへアイドルへの勧誘を始めた。
「…アイドル?何よ急に……」
「苺プロでアイドルユニット組む企画が動いてるの。そのメンバーを探してて…有馬さんフリーって聞いたからまぁ…有り体に言うと、スカウト?」
「……これマジな話?」
「大事でマジな話」
「…ちょっと考える時間頂戴」
「……」
「……」
いや……ナシでしょ
アイドル活動を始めたら「若手役者枠」の仕事を失い、新陳代謝の激しい「アイドル枠」の仕事がメインになる。アイドル枠で跳ねなかったらどちらの仕事も失う
セルフプロデュース上のリスクが大きすぎる
ただ……
かなは自身をじっと見つめるルビーを見つめた。
星野ルビー
この子からは天才アイドル「アイ」を彷彿とさせる何かを感じる。アイとは一度仕事しただけだけど、売れるべくして売れた「本物」だった
芸能人としての嗅覚が、この子に「可能性」を感じてる
だけど苺プロは大手じゃないし、新規プロジェクトで実績もない。第一……私はアイドルで売れる程可愛くなんて……
私は無謀な賭けに乗るほど愚かじゃない
「……悪いけど…」
「頼む有馬かな。妹とアイドルやってくれ」
すると、アクアが食い気味にかなに催促した。
「……でも、私そこまで可愛く…」
「いや可愛いだろ。俺も酔狂でアイドルやってくれなんて言わない。有馬はそこらのアイドルよりずっと可愛い。有馬になら大事な妹を預けられると思ってる」
アクアは饒舌にかなを説得した。それに対し、かなは戸惑いを隠しきれていなかった。
「えっ…でも……」
「頼む、アイドルやってくれ」
「…む…無理!」
「頼む」
「やらないって!」
「有馬の事信頼して頼んでるんだ」
「もうっ!…何度言われても無理なものは無理!絶対やらないから!」
「苺プロへようこそ、歓迎します」
事務所の机に置かれた契約書の氏名欄には、有馬かなの文字と印鑑が押されていた。
「頭では駄目って分かってるのに…!なんで私はいつもこう…!」
「一緒にがんばろうね、先輩」
へなへなな表情で頭を抑えるかな。ルビーは嬉しさと親しみと煽りを込めて労った。
「…まさか本当に引っ張って来るとはな…どんな手を使った?」
「別に、ただの人読み」
事務所にいた英寿も感心しつつ、アクアにそのタネを聞いた。
「有馬かなは共感力が強く
「……フッ…流石だな」
「あんた達、そういう事ばかりしてるとそのうち酷い目見るわよ。夜道には気をつけなさい?」
苦言をするミヤコはそういうものの、アクアから反省の色は見えなかった。
「僕は別に悪い事したとは思ってないよ。別に、嘘は
有馬かな
苺プロ 加入
「…ねぇ、ところであんた達次の仕事とかないの?この間のゲームでもらった推薦状の件は?」
「あぁ…その件ならもう話が進んでるぞ」
英寿はかなの質問に対し、パソコンで検索してその画面を見せた。
「これだ。俺とウルスで一緒に出る予定になってる」
「えっ…!?アクアが恋愛…!?」
画面には、制服を着た8人の男女が並ぶとある番組のビジュアル。番組名は「今からガチ恋♡始めます」。
いわゆる、恋愛リアリティショーである。
「やぁやぁ皆の衆、お集まり頂き誠に感謝するよぉ」
それは数日前の話である。
シロメによって集められた8人の若い男女。男子が4人女子が4人で構成されたそのメンツは、クラムPによって集められた人材達だ。
ファッションモデルの高校1年生。長い艶やかな黒髪とオシャレなネイルがチャームポイント。
シンガーソングライターの高校1年生。先月リリースした楽曲がSNSを中心に大バズりし、今でも勢いが止まらないまさに時の人。
ダンサーの高校2年生。整った顔とダンススキルで様々な人を魅了する。
浮世英寿:仮面ライダーギーツ
タレントの高校1年生。突然現れたダークホースにして底知れぬ力を持ち合わせる。
女優の高校2年生。凛々しい顔立ちの奥に潜むミステリアスな雰囲気は多くの人を魅了する。
MEMちょ:仮面ライダーマーニア
ユーチューバーの高校3年生。最近では登録者数37万人を突破し好調に活動を続けている。
バンドマンの高校3年生。ギターを弾く澄んだ横顔が密かに人気を集めている。
星野アクア:仮面ライダーウルス
役者の高校1年生。以前行われたゲームで容疑者となっていたが、大逆転を収め信用を取り戻した。
「突然だけど…君達には、今からガチの恋愛をしてもらいます」
シロメは改まって全員の顔を見た。
ニヤリと笑っては、満面の笑みをこちらに向けて何かを企んでいる気満々の表情だった。
「推薦状を得た君達は実に優秀だよぉ!だけど今回のゲームはそんじゃそこらのゲームとは違ぁう!」
シロメは人差し指をちっちっと横に振って得意げな顔をした後、腕を大きく広げて宣言するように叫んだ。
「クラムPの持ち込み企画!この中で最も視聴率が得られた者がぁ……デザ神になれるよ…うふふっ!」
第九話「韜晦Ⅷ:アイドルの素質」
次回
「このゲームに勝つのは俺だ」
「今回は誰がデザ神になれるかなぁ〜」
「…なんで君はこの仕事受けたの?」
「知ってる?前シーズンのカップル、最後にキスしたんだよ」
「お、盛り上がってるねー」
「クラムさん…!」
「…さぁ、デモンストレーションだ」
第十話「韜晦Ⅸ:恋愛リアリティショー」