仮面ライダーギーツ【Mother and Children】 作:キャメル16世
前回退場してしまった木南はるな
オリジナルキャラとして描きましたが、ただの噛ませ犬にならぬようにしたいですね
皆様の中にこのキャラが少しでも残るのであれば幸いです
それでは第十二話をどうぞ
「……はるな…」
「……」
仮面ライダードルフィーの退場により、現場は殺伐とした空気が流れ、当然の事ながら皆ドルフィーの死を受け入れられず、落胆する者が多く居た
だが……
『[速報]新シーズンが始まった「今ガチ」にて、初回から退場者が発生!遺された7人の行方は…!?』
『1名無し:マジかー、はるちゃん好きだったのになー残念』
『5み民:ってか今回の出場者メンツ緩くね?顔はいいけどな〜』
『7島国育ち:MEMちょ頑張れ!』
ネットの反応は俺の思っていたものと違っていた
やはり、この世界は狂ってる
「おかしな話だよな。みんなデザイアグランプリのやり方に慣れ過ぎて、退場者が出ても気にしなくなった。実際に人が死んでんのにな」
「……」
ケンゴの言葉に、英寿は嫌悪感の表情を見せていた。
この世界は、英寿が望む「誰もが幸せになれる世界」とはかけ離れている。
「これからどうするつもりなんだ?」
「……」
そしてその価値観の違いは現場でも感じている。
現場のスタッフははるなの退場を知らされてもなお撮影を続行すると言い出した。
現在も撮影は続かれている。彼等に向けられたカメラの視線は、容赦なく心を蝕んでいった。
「…理想を叶える為だ、続けるしかないだろ」
「……お前らも同じ意見なのか」
英寿は教室内で俯く残りの5人に問い掛ける。
みんな顔を揃えて苦い表情をしながらも頷いた。
ただ1人を除いて。
「…私……もう『今ガチ』辞めたい」
「……っ」
ゆきが目尻に涙を浮かべて答えた。
「ゆき……」
「私、共演した人が退場するのこれが初めてで……こんな気持ちになるとは思わなかった…!これから先、どんな気持ちで恋愛すればいいのか…私わかんないよ…!」
「……」
ゆきは嘆いた。はるなの死と向き合えないまま、どんな恋愛をするべきなのか。それを自問自答しては、答えの無い問題とぶつかっていたのだ。
それは現場の連中も分かってる。皆が皆そんな価値観になっていない事は少なからず分かる。
撮影しているスタッフも、本心でははるなの死を悔やんでいる筈だ。演出なんかじゃない、これはただの事故だ。
だがそれを仕事と割り切り、自分を奮い立たせているに違いない。実際はるなのマネージャーは、この現場の中で1番冷静を装い、1番涙を流しているのを、英寿は知っていた。
「……俺、馬鹿だからよく分かんねぇけどよ」
すると、ノブユキが呟いた後、ゆきの前に立った。
「…今俺達がこの番組続けねぇで、誰が喜ぶんだよ」
「……えっ?」
「…正直はるなが居なくなっちまったのは寂しい…けど、それと俺達が番組を降りる理由は違うんじゃねぇのか?」
「……」
ノブユキはゆきのみならず、周りのみんなにも問うように語りかけた。
「この番組を楽しみにしてくれてる人達が居る。それに応えるのが、俺達の役目だ。はるなが応えられなかった分、俺達がその無念を晴らそうぜ!」
「……ノブくん…」
「もし辛い事があったら、また俺がいつでも話聞くからさ!ゆきが辞めるなら俺もやめるからな!そんな事言わないで続けようぜ!」
「……私は──」
「…なるほどね、初っ端からこの展開は異例ね」
「……お兄ちゃんとエースさん大丈夫かな?」
「大丈夫でしょ?前回のゲームでの活躍は目を引くものが……」
「じゃなくて、人とのコミュニケーション大丈夫かなぁ?」
「……ま、まぁ…どっちも癖アリ難アリだものね」
苺プロの事務所にて、暇を持て余しているルビーとかなは、アクアと英寿が出演している「今ガチ」の鑑賞を行っていた。
「…実際のところさ、共演してる人が退場するってどんな気持ちなのかな……」
「……」
「…先輩はそういう経験あるの?」
「……あるわよ。何年この業界に居ると思ってるの?」
子役時代であっても、仮面ライダーにはエントリーされていた
でも幾度となくジャマトを捌いてきたのは、いつも年上の戦える年代の人達だった
私はそこでは荷物でしかなくて、守られる立場にあった
共演者が退場するところを、何度も目の前で見てきた
それもみんな、私を庇った行動の結果だった。そしてみんな口を揃えて言う。「かなちゃんは生きて」って
「……先輩?」
「…なんでもないわ。ちょっとトイレ」
「あ、うん…行っトイレ〜……」
「……」
あの時の私は知らなかった。守られていたのは、人間としての「有馬かな」じゃなく、女優としての「有馬かな」だという事を
だからみんな、見込みが無くなった私を遠ざけた。戦いにも不向きで、守られるだけの私は…いつしか
「……」
でも、
彼女は私を1人の人間として守ってくれた
あの背中があったから、今の私が居る
「…………でも……なんで…」
「……」
時刻は夜。
アクアは事務所のベランダの柵に体重を預けながら、夜空を見上げるでもなく、手の中に
「…よう」
「……」
「……随分と湿気た顔だな。そんなに仲間の死が応えたか?」
「…あんたには関係ないだろ」
いつの間にかベランダに来ていた英寿は、アクアに問いかけた。アクアは手の中にある物を英寿には見えないようにそっとポケットに仕舞う。
「…そういうあんたは余裕そうだな」
「……あぁ、いちいち気に病んでても仕方ないからな。済んでしまった事はもう元には戻らない…なら、せめて次に進む為に何が必要なのか……それを考える方が大事だからな」
「……あんたはもう、この先を見てるんだな」
アクアは英寿を睨むように見た。アクアの瞳の輝きは再び黒くなり、憎悪に満ちた目だった。
「…でも悪いけど、僕にはやる事がある。それをやり遂げない限り、僕に未来はやって来ない」
「……」
前から思っていた事がある
ウルスには大きな目的がある
そして、その目的は単なる自分の為のものじゃない。使命のような、宿命のような…
きっとそれは、ウルス本人でなければ成し得ない事なのだろう。他の誰でもない、ウルス自身の手で叶えたい事なのだろう
「…まぁ、そう思いつめるな。せっかくの恋愛リアリティショーだ、単純に恋愛を楽しんでも良いんじゃないのか?」
「……するわけない、仕事だぞ」
だが、もしその矛先が復讐に似たものならば
きっとウルスは幸せにはなれない
こいつの肩の荷が降りる日は、いつか来るのだろうか
俺はその日が来るまで、こいつを見守っていたいと思う
「そうか?お前の妹はお前の彼女にはホークローが相応しいって意気揚々に言ってたぞ?あいつは純粋で良い子だって」
「…そうか、じゃあルビーには見る目がないからしばらく恋愛すんなって伝えといてくれ」
「……」
英寿は翌日の昼間、休日の街を1人で歩いていた。
仲間の死は、これまでに幾度となく体験して来た
そして、その仲間の死を悲しむ仲間の顔も…
俺達は自分達の願いの為に時には協力し合い、時には競い合い、時には争い合う
だが、誰も仲間の死を望んではいなかった
だからこそ、何度その体験をしても
胸は痛むものだ
「……」
あのバラのジャマトの強さは別格だった
だが気になるのは、何故本来関係ない筈のジャマトが今回のゲームに現れたのか
ゲームを盛り上げる為、と言えばそれで終わりだが、運営に近付けばその真意に近付けるかもしれない…
英寿は新たな決意と共に、次なる1歩を踏み出した。
「……やぁ」
「…誰だ」
すると、英寿の前に1人の男が現れる。
ほうれい線のある面立ちにラフなスーツを携えた男だ。
「君とは初めましてだったね…俺はクラム。このゲームのプロデューサーだ」
「……あんたが…」
英寿とクラムの初めての邂逅。
そして英寿は既に気が付いていた。
クラムから感じる独特なオーラと、その違和感を。
「君と、少し話をしたいと思ってね。少しいいかな」
「…丁度いい、俺もあんたらに聞きたい事があったんだ」
「……ほぉ…」
英寿はクラムの背を見るように進んで行く。
いつも通りの景色が、移り変わることも無く、着いた先はなんてことの無い、少し寂れた定食屋だった。
入ると中には客はおらず、厨房にいた中年の男性は新聞紙を読んでいた手を止めいらっしゃいませと大きく叫ぶ。急いで立ち上がるも、脚が悪いのか片足を引き摺りながら厨房に立つ。
すると店主の声を聞きつけたのか、部屋の奥から中学生程の女の子がやって来て、メモ帳とペンを持って彼らのテーブルへと向かった。
「ビールと烏龍茶を一杯づつ、あと唐揚げ定食にトンカツ、それと……サバの味噌煮を頼むよ」
「っ…かしこまりました!」
一瞬の間が空いた後、店員が満点の笑顔で答える。なにかに狼狽えるような、そんな間だった。そしてその面影に、英寿は既視感を感じていた。
しかし、何故クラムがこんなところに英寿を連れて来たのか、その真実はすぐに明かされる。
「…ここは…?」
「……はるな君の実家だよ。寂れた定食屋を営む両親、その跡を継ぐつもりの次女、そしてまだ幼稚園児の幼い三女が居る。ちなみに、彼女の好物は自家製のサバの味噌煮だよ」
よく見ると、店内のあちらこちらにはるなのCDの自作の宣伝版があり、店内BGMは正しく彼女のものだった。
「…悪趣味だな。退場者の家で優雅にランチとは」
「今の俺はただの客さ。それに……」
「お待たせしました〜!」
クラムが何かを言いかけると、中学生の店員が次々とテーブルに料理を配膳した。
「…いただきます」
「……」
クラムは丁寧に両手を合わせると、料理を頬張り出した。
「……それで、俺にはなんの用があるんだ?」
「……デザイアグランプリの真実について、知りたくないかい?」
「……」
クラムのその言葉に反応する英寿。
「今ゆき君が番組を降板するしないで少し盛り上がってるだろう?彼女もあくどいよねぇ…あれで注目を集めて一気に爪痕を残す算段だよ」
「……あんたはそれを俺に言って何がしたい?」
「何って…君は今の番組に何が足りないと思う?」
「……」
「…答えは「過激さ」だよ。最近はコンプラがあーだこーだで皆派手に出る事を恐れてる。でも時代が追いついたのかな?デザイアグランプリはその理念さえもぶっ壊す。まさに、エキサイティングなグッドゲームだよ」
「……」
英寿はクラムの話を淡々と聞いていた。目の前に出された料理に手を出すでもなく、彼との意思疎通を測っていた。
「…だがあのジャマトのせいで、ドルフィーが退場した。応えろ、何故今回のゲームでジャマトが現れた?あんたら運営がゲームを盛り上げる為だけに用意したのか…?」
英寿はクラムを問い詰めた。しかし、それに対してクラムの表情は変わらなかった。むしろ先程より口角が上がっていた。
「…君、鋭いねぇ…でも、まだまだ甘いよ」
「……?」
「…あのジャマトはデザイアグランプリの運営が用意している訳じゃない。提供されたんだ、ジャマトを運営しているスポンサーからね」
「……ジャマトの…スポンサー…」
やはり、アルキメデルのような奴らが……
「世間一般的にジャマトは自然発生した天然の怪物。でも実際はジャマトを支配する機関が存在する」
「そいつらは誰だ…!?」
「悪いけど、それは応えられない。俺にも黙秘権はある。これは保身に走っている訳じゃない…もし口外すれば、世界の均衡が崩れる。この意味を、君なら理解出来るだろう?」
「……っ」
言わんといていることは解る。それ故に卑怯だ。
この男はこの世界全てを人質にとっているのだから。
「確かにジャマトという存在は、ゲームを盛り上げる為にデザイアグランプリでは重宝されて来た。それを視聴者も理解している。実際、ジャマトの居るゲームと居ないゲームでは、視聴率に雲泥の差が出来てしまった」
「…数字を取る為に、出演者には命を賭けろと?」
「まぁ、否定はしない。だが物は言いようだ。数字をとって人気が欲しいなら、ゲームに勝ってみせろ…とも言う。実際にそうやってデザイアグランプリは発展して来た」
「……」
否定出来なかった
俺がいた世界でも、理想の世界を叶える代わりに世界を救う事を要求されていた
世界を救う為に命を賭けろと言われたんじゃない。理想を叶える為に、命を賭けろと言われて戦ってきたんだ
「…結局のところ、人は人のエゴによって動く。需要と供給、視聴者のニーズに応えるのが、俺達運営の仕事なんだよ」
「……それが、デザイアグランプリの実態と言いたいのか」
「あぁ…だが君には何か光るものがあると思っている。もし、その常識を壊したいのであれば……」
するとクラムは、テーブルの皿を避けてプレゼントボックスを取り出した。
ボックスを開けると、また見た事のない大型のバックルが入っていた。
「俺は君を応援したいと思っている」
「……」
そのバックルは茶色のカウボーイ風な牛柄等が施されたバックル、「ウエスタンバックル」だ。
「…明日も撮影だろ?今日はゆっくり休んで、明日に備えてくれ。大将、ごちそうさまでした」
「…あいよー」
「…じゃあまたね、エース君」
クラムは机の上に飯代を置いた後、大将に挨拶をして定食屋を後にした。
「……」
英寿はその後ひとりでしばらく考えていた。
はるなの音楽が、異様に耳に届く。
何度も何度も、この声を頭の中で反芻し、英寿は決意の目で、前を向くのだった。
第十二話「韜晦XI:ダレかの面影」
次回
「それじゃあこれより、苺プロ主催のミニゲームを行います!」
「「ミニゲーム?」」
「変質者だぁぁぁ!」
「ぴえヨンブートダンス1時間ついてこれたら素顔出してヨシ!」
「野心がないなぁ」
「わ…私が不甲斐ないから……」
「私達の名前は……」
第十三話「韜晦XII:アイドル育成ゲーム」