仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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前回登場したウエスタンバックル
彼の活躍は少し後になりそうです……

気長にお待ちください…



第十三話「韜晦XII:アイドル育成ゲーム」

「お兄ちゃんとエースさんは収録で忙しい。かたや私は……」

今日も今日とて暇を持て余すルビー。

かなは事務所のソファに寝そべり「よくわかるエリマキトカゲ」という本を読んでいた。

 

「先輩仕事無いの慣れてるでしょ?普段何して過ごしてたの?」

「脳顎にジャブ入れて脳揺らすぞコラ」

そして今日も強烈なノンデリカシーな発言がかなを苛立たせる。

 

「暇なら勉強してなさいよ。アイドルなんて売れても食えない上に旬の短い仕事なんだから。良い大学入る為に何かした方が人生にとってプラスよ」

「…身も蓋もない……」

かなの現実思考の提案に納得してしまうルビー、だが今更引き下がれない。

 

「なんか今出来る事は無いのかな?」

「持ち曲も無ければユニット名もまだ未定。今の私等に何が出来るってのよ」

「ユニット名がまだなのは先輩がゴネるからじゃん!」

「だって名前付けたらもうマジでしょ…私まだアイドル名乗る踏ん切り付いてないっていうか……」

ホワイトボードをバシッと叩くルビーにかなはドライな反応を示す。

 

「良いじゃん、「アイドル 有馬かな」って」

「恥ずかしいッ!実績の無い自称アイドルとか親になんて説明したら良いの!?」

「…実績があれば踏ん切りが付くのかしら?じゃあ実績を作りましょう」

するとどこから嗅ぎつけてきたのか、ミヤコがデジカメを持ってやって来た。

 

「それじゃあこれより、苺プロ主催のミニゲームを行います!」

「「……ミニゲーム?」」

ミヤコはカメラをセットすると共にそう宣言する。ルビーとかなはその様子を不思議そうに見ていた。

 

「そうよ、題して「アイドル育成ゲーム」。貴女達がアイドルとしての第一歩を踏み出す為のゲーム」

「おぉー!」

「…っていうか、そもそも勝手にゲームの主催なんてしていいんですか?デザグラの運営に怒られますよ?」

「大丈夫よ、別に個人でやる分には運営もとやかく言わないわ。それに、これは苺プロが苺プロによる苺プロの為のゲームなんだから」

「……」

なんとなく納得出来ていないかなだったが、渋い顔のまま頷いた。

 

「今アイドルカルチャーの中心はネット!草の根するにもここが一番コスパが良い。貴女達はまずはネットで名前を売る所から始めましょう」

「ユーチューバーって事!?」

「そう、ユーチューブで固定客を作ってライブに人を呼べば効率が良いでしょ?」

「ミヤコさん賢いっ!」

「…はぁー…社長、ネットを甘く見過ぎじゃないですか?」

かなは軽くため息を付くと、ルビーを指さした。

 

「こんな顔だけの女ネットに晒しても登録者いいとこ数千とかですよ」

「…なんだと?」

「ましてやデザグラでの実績も乏しい中で、数多いアイドルグループの中から私達みたいな弱小アイドルを見る人達なんてひと握りしか居ない。現実的に考えて結構厳しいと思いますけど……」

「素人が仕掛けたらそうでしょうけど、これでも苺プロはティックトッカーやユーチューバーを多く抱えるネットに強い事務所よ。ノウハウはあるわ」

さらにミヤコはこう付け加えた。

 

「それに苺プロはデザ神も排出してる。デザグラでは、この事務所の名前も少しは通ってるの」

「……」

ミヤコの目は何かを見据えていた。事務所の隅にひっそりと立たれているトロフィーが証明に照らされて光が反射する。

 

「…まぁ、丁度さっき協力してくれる人捕まえた所だから、彼に色々教わると良いわ」

「……?」

「…じゃ、あとはお願い」

「……オマカセ!」

すると、アヒル声が聞こえると共に事務所に海パン姿にヒヨコの被り物をした筋肉質な男が入って来た。

その人物の登場に、かなは目を見開いた。

 

「…へ……変質者だぁぁぁ!」

「あ!ぴえヨンだっ!」

「えっ!?誰!?」

「小中学生に大人気!覆面筋トレ系ユーチューバーの「ぴえヨン」をご存知ない!?仮面ライダーとしての活躍でも結構人気なんだよ!?」

「覆面筋トレ系ってジャンルがまず初耳!」

今やネットでミーム化している大人気ユーチューバー「ぴえヨン」。その異端な姿にかなは驚きを隠せずに居た。

 

「ユーチューブあんまり見ないから……こんな感じのが子供には人気なのね…」

かなはぴえヨンの顔をじっと見つめながら唖然とする。

 

「世の中ってやっぱり何かイビツよね……」

「ぴえヨンになんて口を…!ぴえヨンさん、ビシッと言ってやってください!」

「所詮ネットってインパクト勝負って言うか…テレビの企画を流用したキャラビジネスって言うか……」

「ボク年収1億ダヨ」

舐めたクチ利いてスンマセンでした

ぴえヨンからの衝撃の事実に即落ちするかな。口をがっぽり空けてあんぐりとしていた。

 

 

深夜のロケバスの中、夜の収録が終わった一同はロケバスの中で仮眠を取っていた。

 

「……」

「アクたんはいいのぉ?ゆき争奪戦に参加しなくって。売れたいなら私よりあっちに絡むのが正解だと思うよぉ」

「俺はいい、番組が終わるまで安全圏でやり過ごす」

しかしMEMちょとアクアは起きており、小声で会話を進めていた。

 

ここ最近、ゆきが突飛して目立っている。

先のゆき番組降板の話をきっかけに鷲見ゆきと熊野ノブユキのカップリングが番組の中心となり、そこに嫉妬心を見せるケンゴ。ゆきを巡る三角関係が成立し始めていた。

ゆきというゲームメーカーが機能し、その小悪魔っぷりが番組を盛り上げ中高生を中心に人気を獲得していった。

 

「野心がないなぁ」

「そっちはどうなんだ?いっちょ噛みしに行かないのか?」

「私はこのままおバカ系癒し枠キープ出来ればそれでいいかなぁ、エースとも共闘出来たしっ!自分のチャンネルにお客の導線引くのが目的だし。アクたんがマジでアプローチしてくるなら話は別だけど?」

「あまり期待はするな」

「……でも、私達より心配なのは…」

MEMちょの視線の先には、相も変わらずメモにペンを走らせている黒川あかねの姿だった。

 

 

 

「……マネージャー…レッスン室の鍵…」

「お前はクビになりてぇのか!?あぁ!?」

「…っ!」

ある日、自身の事務所で戦闘の訓練をしていた黒川あかね。マネージャーに借りた鍵を返す為部屋を訪れると、その部屋には社長の怒号が轟いた。

 

「最近あかねの出てるデザイアグランプリが人気出てるって言うから観てみたらなんだこれは!?総出演時間10分もいってねぇんじゃねぇのか!?」

「……」

社長の目の前には頭を下げ続けるあかねのマネージャー。社長の怒号はまだ続く。

 

「チャンスだって言うのにこれっぽっちも目立ってない!!ジャマトとの戦いでも役立たず!マネージャーのお前がしっかり指導しなくてどうする!?」

「…ですが社長…あかねも十分頑張って……」

「頑張るだけじゃ金にはならないんだよ!他にもやりてぇって言う奴が大勢居る中で選んでやったんだ!爪痕の一つでも残させろ!!」

 

マネージャーが部屋を後にし廊下に出ると、そこには顔を沈めたあかねが立っていた。

 

「マネージャー…ごめんなさい…」

「ごめん、聞こえてたか……あかねは精一杯やってるんだ、気にしなくていい。ちゃんと俺が防波堤になるから」

「……っ…」

マネージャーが去った後、1人残されたあかねは唇を震わせた。

 

「…わ…私が不甲斐ないから……」

事務所に託された重荷。彼女はバッグの中から自身のデザイアカードを取り出し、その重要さを改めて実感した。

 

「…頑張らなきゃ…頑張って…爪痕残さなきゃ……」

 

 

「イイカイ?登録者を稼ぐにはいくつかのテクニックがあるヨ!ナンだと思う?」

「毎日投稿!」

「元々の知名度?」

「うんうん、そうだね。デモ君達には毎日投稿する根気も知名度も無いヨネ?」

「辛辣ぅ〜〜」

「ところが手っ取り早く登録者を増やす裏テクがあるんだ!」

「そういうの待ってました!」

「おしえておしえて!」

「ソレはね〜〜…」

 

「「……」」

「ピヨピヨピヨ〜〜ぴえヨンチャンネルぅうぅ!」

これは後日ぴえヨンチャンネルにて配信された動画の1部。そこにはぴえヨンの他に、同じようなヒヨコの被り物をし顔を沈めた女性が2人立っていた。

 

「ハイ今回はネ!しがらみ案件デス!うちの事務所でアイドルユニット?なんかそういうのヤルらしくて、お前のチャンネルで使えと!」

ゴテゴテの編集にテロップが足される。

 

「最初断ろうと思ったんだケドね!社長が言うからさ……」

ここで、今回の企画が発表される。

 

「というワケで今回の企画!ぴえヨンブートダンス1時間ついてこれたら素顔出してヨシ!

そして突如として始まるマッスルダンス。2人は横並びでぴえヨンの動きに合わせて、身体に負担のかかるポーズや姿勢をとっていた。

 

かなとルビーはこの企画に於いて、被り物を付けられた上にこのキツイダンスを強いられていた。

 

「一番宣伝になるのは結局コラボ!有名ユーチューバーとコラボするのが一番手っ取り早い!」

今回の撮影の前に練られた企画会議では、ぴえヨンによる指導が課せられていた。

 

「今回の場合僕のチャンネルに出演する事なんだけど、企画どうする?君達一応アイドルだし寝起きドッキリとかやる?」

「あー良いんじゃないですか?」

「えっ、でも…寝起きドッキリやるって予め言われたらドッキリにならなくない?」

「……あんたマジで言ってる?本当にアイドルの寝起き撮りに行って男と寝てたらどうするの?」

「あぁいうのは前日に通達が言ってるものだよ」

「そうなの!?」

新たなる事実に驚きを隠せないルビー。だが、その時に彼女の表情が変わった。

 

「…でも私達の初めての仕事だよ?嘘は、いやだ!」

 

それでこれかよ!極端すぎる!!

私は走り込みとかしてるから耐えられるけど、ズブで素人のこの子には……

 

「ははは!」

「…っ」

「きっつ!!きっつ死んじゃう!あはははは!」

「……」

 

「…はいお見事!着ぐるみ取って自己紹介どうぞ!」

「…いちごぷろしょぞく…ほしのるびーで…かめんらいだーてらす……自称…アイドルです…!」

「はいそっちも!」

「…有馬かな!仮面ライダーマーリ!自称アイドルですこんにちは!」

「名前は聞き覚えある!」

「聞き覚えだけかよ!」

汗だくで息を切らした2人は、被り物を外して自己紹介する。そこでぴえヨンはカメラのスイッチを切った。

 

「いや凄い凄い、本当は編集して1時間やった事にしようと思ってたんだけど、マジでガチったね。視聴者には伝わらん事だけどさ、やっぱ現場の人間は見てるワケで。僕は君等好きよ?」

「……っ」

「…あっ、大事な事聞き忘れてた。二人のユニット名とかあるの?」

「「…あー……」」

ぴえヨンの質問に、ルビーはかなに視線を送る。

 

「…もうルビーが好きに決めていいわよ」

「いいの?」

ルビーは目をキラキラと輝かせて、自分達のユニット名を発表した。

これは彼女がはるか前より考えていた、念願の命名だった。

 

「えっと、じゃあ私達の名前は……『B小町』!」

「えっ…それ大丈夫なの?」

 

 

「……へぇ〜…また面白い子達が出てきたねぇ」

「…気に食わねぇ。所詮は二番煎じのアイドルユニットだろ」

早速ぴえヨンの動画を見て、反応するもの達が居た。

 

「もぉ〜…「イラド」はいつもそうやってぇ……僕は好きだなぁ…かつてのアイドルユニットを復活させる、受け継がれる意志!泣けるねぇ…」

「「シック」、あまり感情移入するな。どうせ吹けば飛ぶような連中だ」

シックと呼ばれた青年は、火照ったルビーを見つめたながら目尻を拭った。

 

「哀しい事言うなよぉ……そんな事言って、イラドがいつも見てる『今ガチ』の彼も、全然活躍出来てないじゃないかぁ」

「……いいや、あいつは必ず成り上がってくる」

イラドと呼ばれた男は端末に映る今ガチの映像を見て呟いた。そして彼の顔には、近未来的な狐面があり、薄暗く光る目の奥には何が見えるのか……

 

「……お前の復讐への怒りは、そんな程度で終わる筈がねぇ…なぁそうだろ……星野アクア…!」

指圧の強い指が、液晶に映るアクアの表情を歪ませていた。

 

 

 

デザイアグランプリでの

勝敗を左右されるわけでなければ、

ミニゲームの開催が可能となる。

 

 

第十三話「韜晦XII:アイドル育成ゲーム」




次回

「これは命を懸けたゲームだ」
「あかね、最近焦ってる?」
「英寿くんはさ、誰かの期待に応えたいって思った事はある?」
「いいんじゃないか?ワガママになっても」
「私は私が一番目立つように戦う。悪く思わないでね」
「あの時の無念、晴らさせて貰うぞ!」
「私も…負けないからっ!」

第十四話「韜晦XIII:あかねが残した爪痕」
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