仮面ライダーギーツ【Mother and Children】 作:キャメル16世
どこか既視感のある名前……はて、彼らは一体何者なのでしょうか?
それでは第十四話をどうぞ
鷲見ゆきと熊野ノブユキのカップリングが人気を博し、番組は予想外の好調を見せていた。
だが賞賛の声が一定数いる事に対して、一部ではマイナスな言葉も飛び交っている。
言わずもがな、鷲見ゆきと熊野ノブユキ、そしてそこに嫉妬心を見せる森本ケンゴが番組の中心となる。個人のユーチューブチャンネルで既に人気沸騰中のMEMちょ。ジャマトとの戦いで一目置いた浮世英寿と星野アクア。
この場に於いて未だ爪痕を残せていないのは、黒川あかねだけだった。
『うん!今ガチ見てるよ〜☺️
ゆきちゃん可愛くって好き!
あかねは空気だから好きとか嫌いとか無い』
「……頑張らないと…」
それは本人も自覚している事だった。
「……」
収録の日、英寿は1人で空き教室に居た。
校舎の一番端の2階のベランダで、黄昏れるように外を見詰めていた。
「……」
《結局のところ、人は人のエゴによって動く。需要と供給、視聴者のニーズに応えるのが、俺達運営の仕事なんだよ》
《君には何か光るものがあると思っている。もしその常識を壊したいのであれば……俺は君を応援したいと思っている》
先日、クラムとの邂逅の中でした会話。
デザイアグランプリの実態……やはりこの世界の運営も腐っているようだな…
だが、あのクラムという男……
《…いただきます》
英寿は当時のクラムの姿を思い出した。
脳裏に移るのは、出された食事を前に丁寧に手を合わせている姿だった。
「……ま、気にし過ぎか」
とにかく、このゲームで勝たない事には話は進まない。クラムから渡されたウエスタンバックルも、有効活用させてもらおう
「……っ」
「……あ」
英寿が不意に振り向くと、教室内にモジモジとした黒川あかねが居た事に気が付いた。
「…カメレオか、何の用だ」
「あ、いや…ちょっと世間話でもしようかなって…」
「……」
英寿はその言葉の意味を即座に理解した。
最近のあかねは少しペースを上げてきている傾向にある。しかし、その姿が世間では見苦しいとされ、今ではネットの笑い者に成り果てようとしている。
「俺なんかと居るより、ウィニー達の方に行った方が目立つんじゃないのか?」
「そ、そうかもしれないけど…ほら!ジャマトとの戦い、凄かったでしょ?私もどうやったらあんな風に戦えるのかなって……」
「……」
確かにこれは、いたたまれない
今のカメレオは、自分を奮い立たせて一矢報いようとしているのが見え見えだ
これでは逆効果だ
このままではネットのおもちゃにされ続け、この業界では生きる事を困難とされてしまうだろう
「……」
ならばこそ、今俺が取るべき行動…
「……人とバックルには相性がある。他の奴の戦い方もよく見る事だな」
「…あっ…う、うん!」
英寿は出来る限りあかねに寄り添った。
自身の持つデザグラに関する知識を糧に、今のあかねに何かを伝えられたらと言葉を綴った。
それに対してあかねは紳士に向き合い、ことある事にメモにペンを走らせていた。
「…それに、今のお前の戦い方には意志がない。勝とうとする強い意志が」
「……っ」
メモに走っていたペンが止まる。
「……これは命を懸けたゲームだ。報酬は世界を思うがままにする権利。このゲームに勝つ為にはそれなりの意志が必要だぞ」
「……」
「…焦る気持ちも分かる。だが、今のままではいつまでたってもデザ神にはなれないぞ」
「……」
あかねのメモを持つ手に力が入る。
英寿はあかねが何かを抱えている事を見抜いていた。
あかねが何に悩み何に苦しんでいるのか、英寿はそれを聞き出す為に彼女を説得した。
今はここに定点カメラも隠しカメラも、ましてやスタッフも居ない。その事を調べておいて英寿は今ここに居る。
今この時間はこの二人だけのものだ。英寿はこの場を利用して彼女の本心を聞き出したかったのである。
「……英寿くんはさ、誰かの期待に応えたいって思った事はある?」
「……え?」
それは突拍子もない質問だった。
「…私の所属してる劇団ララライはね、最近落ちこぼれて来ちゃって……私が力になれればって思って、このゲームのオーディションを受けたんだ」
「……」
「……事務所の中でオーディションに受かった人は他にも何人か居てね、でも誰が入るか話し合った時、クラムさんに言われたんだ…」
『君がいい。君はいざという時に身を投げ出せる人間だ』
「……」
あの男が、そんな事を……
「私その言葉をもらってちょっと自信がついて来て…私に出来る事なら、全部やろうって思ったんだ……でも…」
「……」
「…番組では目立ててないし、戦いでは足を引っ張るし…事務所では私のせいでマネージャーが怒られるし、ファンの期待も裏切ってるし……」
「……」
あかねは次々と言葉を募らせた。
自分が今どのような状況にあるのか、あかねは自己分析した結果を英寿に報告するようにしていた。
「私はみんなの期待に応えたくて、この番組に出てると思った……でも違った。本当は、誰かに褒められたくて…認められたくて……子供っぽいよね…でも、私って結局、何の為に戦ってるんだろうって……」
あかねは空を仰ぐように窓の外を見つめた。
窓から見える校庭の木の枝には、小鳥が平和を象徴するように留まっていた。
「……」
「……いいんじゃないか?ワガママになっても」
「…えっ?」
「別に自分の為に戦う事は、決して悪い事じゃない。確かに人間は誰かに認められたい生き物だ。そしてその為に自分自身を偽る。それが人間の悪いところだ…だが」
その小鳥の横に、もう1匹同じ種類の小鳥が留まる。まるで互いを支え合うように、身を寄せ合っていた。
「…お前はいつも、自分の全てを見せている。お前は表も裏もない、まさにリアルだ。案外、この中で一番リアリティショーをしているのは、お前かもな」
「……英寿くん…」
慰めるつもりでは無かったが……
と、少しだけ反省していると、廊下から気配がした。
「…なーんだ、やっぱりそんな事だろうと思った」
この教室にゆきが入って来たのだ。どうやら今までの会話は聞かれていたらしい。
「…あかね、最近焦ってる?」
「……」
「放送も終盤だしね、気持ちは分かるけど…」
「……別にそんなんじゃ…」
あかねは一瞬言葉を詰まらせた。だが直ぐに反論した。
「私はどうにか目立って…爪痕を残したいだけ……」
「そっ……」
ゆきはまるで無感情に返した。
「……でもそうはさせないよ」
「……っ」
「私は私が一番目立つように戦う。悪く思わないでね」
「……」
ゆきの含みのある笑みが、あかねの表情を固くさせた。それと同時に、鼓舞されたような気がした。
やれるもんならやってみろ
とでも言いたげな顔だ
ゆきちゃんとは、なんでこんなに違うのだろう
ゆきちゃんより目立たなきゃ…
あかねはゆきに対して敵意を込めた視線を向けた。
その時だった。
「…あ、みんなこんなところに居た!」
「メムちゃん…?どうしたの?」
MEMが廊下を走り英寿とあかね、そしてゆきの事を探していたようだ。
「…ジャマトだよ!また薔薇のジャマトが現れたんだよ!」
「……フッ…よし、行くか…カメレオ」
「……うんっ!」
「……さてと、ここから挽回と行くか…!」
「はぁっ!」
「ふっ!おりゃァ!」
「ジャ…!ジャァ…ッ!」
既に戦闘を始めていたウィニーとウッキー。
ローズジャマトと対峙し、2対1の攻防戦を繰り広げていた。
「ジャァ…!ジャァァッ!」
「クッ…来るぞ!あの攻撃だ!」
「おぅよ!」
《 HYBRID 》
《 GIGANT BLASTER 》
ウィニーはギガントブラスターバックルをパワードビルダーバックルに装填し重厚感のある銃型の武器、ギガントブラスターを召喚しローズジャマトに銃口を向け、エネルギーを貯め始めた。
これはウィニーとウッキーで編み出した、ローズジャマトに勝つ為の戦略だ。
「時間稼ぎよろしく!」
「あぁ!」
ウッキーはウィニーの指示を受け、ビートアックスのエレメントドラムを3回叩いた。
《 FUNK BLIZZARD 》
「…あの時の無念…晴らさせてもらうぞ!」
弦を引くとファンキーで愉快な曲が流れ始め、辺りを冷気で包んだ。
《 TACTICAL BLIZZARD 》
「はぁぁっ!」
インプットリガーを押すと同時に、ウッキーはビートアックスを地面に振りかざした。
「ジャッ…!」
「……よしっ!」
攻撃は地面から氷柱が突き上がるように放たれ、ローズジャマトはその攻撃に包まれて身体を凍らせてしまった。
「ナイスゥ!」
ここで、ウィニーのギガントブラスターのエネルギーの蓄積も完了した。
「充填完了ッ!一発ぶっ放すぜぇぇ!」
「行けっ!」
《 GIGANT VICTORY 》
「おりゃァァァっ!」
ギガントブラスターの銃口から特大のエネルギー弾が放たれる。
凍りついたローズジャマトを確実に捉え、その軌道はまっすぐ向かっていった。
やがて攻撃はローズジャマトに的中。ウッキーが張り巡らせた氷もを破り、大きな衝撃と爆発を生んだ。
「……やったか…?」
ローズジャマトの攻撃が止んだ。それはつまり、ローズジャマトの撃破に成功したという事になる。
「……っ!」
だが、現実はそこまで甘くは無い。
煙の向こうから2本の茨のツタが現れ、無慈悲にも2人の仮面ライダーを薙ぎ払った。
「うわぁっ!」
「グッ……くそっ…!」
再び変身解除まで追い込まれた2人。その2人が確認したのは、ウィニーの特大の攻撃を受けても尚四肢を保っている姿のローズジャマトだった。
「……ジャァァ…」
「……なんだよこれ…なんつー強さだ…」
「大丈夫か!?」
「…ハッ…ノブくん…!」
そこに英寿、あかね、ゆき、MEMの4人が駆けつけ、遅れてアクアがやって来た。
「随分と派手にやってくれたな…」
「今度こそリベンジよ…!変身ッ!」
ゆきが先陣を切った。ホークローへの変身を完了しレイズクローを構えてローズジャマトに向かって行く。
「あっ!ゆきぃ!」
「……」
すると、それに続くようにあかねが前に出た。
デザイアドライバーを装着し、ウィップバックルを構えた。
《 SET 》
ウィップバックルをドライバーにセットしたあかねは、自身の前で手を花のように広げ、右の手を身体に添えるように構えた。
「……変身」
《 ARMED WHIP 》
《 READY FIGHT 》
「……はぁぁっ!」
カメレオへの変身を完了したあかねはホークローと同じようにローズジャマトに迫っていった。
「あかねまで…!エース、私達も…!」
「……いや、あいつらを信じよう」
「…えっ?」
2人を追おうとしたMEMだが、それを英寿は制止させ、2人の勇姿を見守る事にした。
「ジャァッ!」
「はるなの仇、ここで取らせて貰うわよっ!」
ホークローのレイズクローによる攻撃が炸裂する。しかし、ローズジャマトはその攻撃を再び最小限の動きで避けてダメージを回避した。
「ふっ!」
「…っ!あかね!?」
ローズジャマトがカメレオのレイズウィップによって拘束されたことによって、ホークローはカメレオの存在に驚いていた。
「……私も…負けないからっ!」
「…ふふっ!そう来なくっちゃ!」
動けなくなったローズジャマトにホークローは一矢報いる。だがそんな事も束の間、ローズジャマトの次なる攻撃が来る。
「確かにあの2人は今はライバルかもしれない。だが、互いを認め合い、尊敬し合える何かがあるならば……分かり合える」
「……エース…」
「……」
2人の戦いを見て、英寿はMEMに語り掛けた。2人を見守る事にしたその理由を。
その言葉を聞き、アクアもその様子を固唾を飲んで見守っていた。
「ジャァ…!」
「ふっ…!ふんっ!」
「ジャジャ…!」
「はっ!はっ!はぁっ!」
2人の連携がローズジャマトに確実にダメージを与えて行く。
ゆきちゃん……
ゆきちゃんは確かに強くて、優しくて、みんなに照らされる人かもしれない
でもね、私だって負けてない!
毎日血反吐を吐くようにレッスンして、特訓して、やっとここまで昇り積めて来たの…!
ここまでの努力を、ここで絶やさせたりはしない!
私は私なりの戦い方で戦う。私に期待してくれてる人の為にも──
「ジャァ…ァァ……」
「よぉしっ!ここで決めるよぉ!」
「……っ!」
まずい…!
ゆきちゃんに先を越されちゃう!
「……クッ」
やめて…!
やめてよ…!
私が…!
私が先に…!
《 WHIP STRIKE 》
「ハァァァっ!」
ホークローがクローバックルに手を伸ばした瞬間、カメレオが先にウィップバックルを操作し、レイズウィップに力を溜め込んだ。
レイズウィップを振りかざしたカメレオであったが、それは結果的に悪手となる。
「……ハッ…!」
「……えっ…?」
レイズウィップは軌道を乱しながら、ローズジャマトに向かっていった筈だった。
だが攻撃はローズジャマトに掠ると共に、ホークローの元へと向かっていった。
「…あっ!」
気付いた時には、カメレオの攻撃がホークローの頬に当たっていた。
悲鳴を上げて倒れるホークロー。
パニックに乗じて逃げ出すローズジャマト。
そして変身が解除されたゆきに向かって集まるノブユキやスタッフの面々。
「………………あ…………あっ……」
あかねは変身が解けても尚、放心状態のままだった。
この出来事が、後の大きな火種になる事を
この場の誰もが予想出来ていなかった
第十四話「韜晦XIII:あかねが残した爪痕」
次回
「…わた……そんなつも……ちが…!」
「知ってるよ、あかねが努力家なの」
「悪い事をしたなら石を投げてもいいよね?」
「誰かが悲鳴を上げたら直ぐに動かなきゃ手遅れになる」
「……もういいや」
「………………疲れた」
第十五話「韜晦XⅣ:嵐の日」