仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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第十六話「韜晦XV:バズらせのプロ」

あかねの自殺未遂のニュースが流れ、界隈では様々な議論が巻き起こった。

勿論それで引く奴も居るが、新たな火種に中傷も加速していく事態となった。

 

「注目度が上がってプラマイゼロ。こういうのは炎上対策としては良い手じゃないの」

昨今の黒川あかねの件を調べたミヤコはため息を付く。

 

「現に今も黒川あかねは番組出演を見送っていて、復帰の目処は立っていないわけなのだから」

「だいぶ話が大きくなったな。責任取れるのか?」

「俺は分の悪い賭けだと思ってない。注目度というのは盤上に賭けられたチップそのもの。このギャンブルから降りれば、あかねは勝負しないままボロボロになって負ける」

アクアと英寿もあかねの自殺未遂のニュースを見て、そんなあかねの無垢な笑みをこの目に焼き付けた。

 

「ポーカーはレイズしなきゃ勝てない。俺は手元にA(エース)が一枚でもあれば勝負する」

「……」

そのA(エース)がJOKERになるか、こいつは見物だな

 

「……現実はポーカーじゃないわよ」

 

アクアは早速行動に出た。

まずはとある収録日に、MEMに今ガチのメンバーが映ってる写真を要求した。

 

「えぇ〜…皆が映ってる映像や写真って言われても……」

だが、その希望は薄そうだ

 

「そんな沢山は無いよ?いうて100枚あるかないか…」

「めちゃくちゃあるじゃねーか」

失礼、前言撤回だ

 

「何に使うんだ?」

英寿の問に、アクアは答える。

 

「『今ガチ』はプロが編集したコンテンツだろ?そこには「あかねを悪役にしたら面白い」っていう意図が存在する。どんな聖人でも、一面だけ切り抜いて繋ぎ合わせれば悪人に仕立て上げられる。それが「演出」っていうもの。俺には映像編集のスキルもあるし素材さえあれば……」

「……なるほど。つまりアクたんは「私達目線の今ガチ」をやりたいんだ。それって誰かの入れ知恵?自分で考えたの?」

「…?自分だけど」

「へぇ〜勘所わるくない」

含みのある笑みを浮かべたMEMはアクアの顔をじっと見る。

 

「今のこの状況って、広告代理店風に言うと「能動視聴者数が多く強いインプレッションが期待出来る状況」ってやつなの」

MEMは人差し指を挙げて解説しだした。

 

「一見あかねへの叩きが目立っているけど、それって表面的なものでさ、実態としては数%程度こものでしかない。自殺未遂というセンシティブな話題…殆どの客層は叩くべきか擁護すべきか悩んでる「無言の人々(サイレントマジョリティー)」。つまり「答えを求めているユーザー」が多い」

「…なるほどな。つまりそこに『共感性の高い意見』を提供すれば、多くの人間がそれを正義と思い込む。世の中の意見を上書きさえしてしまえば、俺達の逆転勝ちだ」

ここで英寿が解釈した内容はMEMと合致しているらしく、MEMは英寿にグッドポーズをしていた。

 

「流石エース!その通りっ!アクたんが作った動画を私達なら公式アカウントにアップ出来るし、動線は確保出来てる。動画のクオリティ次第ではデカめのバズも期待出来る……完成したらデータちょうだい!アップしとくよ!」

「いや、それ位自分で……」

「アクたんは何曜日の何時にアップするのが一番RT稼げて、何文字程度の投稿が一番インプレッション高いか知ってるの?」

「いや……」

「私はネット上のマーケティングとセルフプロモーションでここまで来たんだよぉ?こう見えて、バズらせのプロなんだけど?」

 

 

「ふぅん?じゃあ俺楽曲提供するよ」

その後、ケンゴにその話をすると、楽曲提供を提案してきた。

 

「そんなの出来るのか?」

「いや俺ノーベル所属の音楽でメシ食ってるプロなんだけど……自分のバンドで作詞作曲してるし、ヨソに提供してたりすんだけど……」

「……どうした?」

「…いや、それに…未練もあるしな」

「未練…?」

ケンゴはギターを取り出し、弦を軽く弾いた。

 

「…実はさ、はるなと話してたんだ。まだ完成してない曲があるから、俺と合同制作しないかって」

「……はるなが…」

「……正直、恋愛感情があるかって言われると違うけど。でも、はるなとの約束だけは、しっかり守りたいんだ」

「……分かった。じゃあ曲はお前に任せる」

「…あぁ、任せろ!」

 

その後は映像をどのようにするかの作戦会議が行われた。ゆきやノブユキも交えて話し合いを進めると、ゆきが不意に語った。

 

「でもやっぱりさ、あのシーンは欲しくない?」

「あのシーン?」

「ほら、あかねが私叩いちゃって、それを私が優しく抱きしめるシーン♥」

「あー…でもあそこカメラ止まって……」

「ふふっ、甘いなぁ…プロモデルである私が定点カメラの位置を気にしてないと思う?一応カメラに気持ち良く映るポジでやってたんだよ?」

「色々台無しなんだけど……」

「…絶対スタッフは取っといてる。分かって隠してるんだよ、ズルいよねー」

「……」

 

 

 

「…いやまぁ、あるにはあるけどね?」

ゆきの言葉を聞いて、英寿は番組のディレクターを訪ねた。Dは秘蔵の映像について言及するとサラッと白状した。

 

「映像データの持ち出しは禁止、流石に渡せないぞ」

「…そうだな。表に出れば、出演者を悪役に仕立て上げる演出をしたって白状するようなもんだからなぁ」

「……」

「この注目されてる中、そんな事をすればカメレオに対するバッシングが番組へ向かいかねない」

「……理解が早くて助かるよ」

Dの目元は帽子の唾で影が出来ていたが、何か自分に言い聞かせるように語った。

 

「僕等がやっているのは「リアリティショー」というエンタメだ。皆リアリティのあるイザコザが楽しみで番組を観ている。僕等はあかねに何も強制していない。それはあかねの選択で、僕等は視聴者に向け分かりやすく演出してるだけ」

「……」

「嫌ならNG出せば良かった、そうすればこっちだって使わなかった、違うかい?」

どうやらこの男は、自分に何かを言い聞かせて保身に走っているようだった。

本当はあかねに対しての罪悪感を持っているにも関わらず、自分達は何も関与していないと白を切り続けた。

 

「あいつは責任感が強いんだ」

「知ってるよ、ずっと撮ってるんだし。あかねはプロで、僕等も仕事でやっている」

「……プロね…」

今ガチのメンバーが口を揃えて言う。

自分はプロで、その道には詳しいし失敗はしない、と。

 

「…あんた、今いくつだ」

「35だけど?」

「あいつは17だ」

「……」

だが、英寿の見解は異なっていた。

 

「プロだろうとなんだろうと、17歳なんて間違いばかりのお子様だ」

「……」

「…大人が守ってやらないで、どうするんだ」

英寿の眼差しが、Dに視線を逸らさせた。

だが、Dも決して責任逃れがしたい訳じゃない。

 

「……はぁ…言えてるなぁ」

英寿の説得が、彼の心を少しだけ変えた。

 

 

「あー違う違うぅ!」

「そこ長尺の方が素人が頑張って作った感出るって!」

「ここで俺達の曲でしょ!」

「バーンって感じで行こうぜ!」

「……うっせぇなぁ…」

とある日の休日、5人で集まった今ガチのメンバーは、MEMの部屋で映像の制作にあたって居た。

 

皆が集まって笑ったり

女子で変顔を自撮りをしたり

男子で腕相撲大会を開いたり

キャンプやケーキ作り、アクアの誕生日会

はるながいた頃にはカラオケ大会を開いた

勿論はるなが優勝

 

そのひとつの映像には、番組内では語られなかった出演者達の裏の顔があった。

番組内ではライバル関係にあった者たちも、カメラ外では意気投合する友人に、クールな性格の者ほどよく笑ったり。

だが人々はこれを裏の顔とは呼ばないだろう。

だって、ここに映っているものこそが、出演者達の本当の顔、即ち“リアル”なのだから……

 

後日アップされたこの動画は24時間後に7万4000RTを達成

黒川あかねのイメージを変革すると同時に、『今ガチ』の人気を決定付けるものとなった

 

一方英寿は……

 

「君達がアップしたあの動画のおかげで、あかねくんに対するバッシングが激減した。まだ完全とまではいかないが…彼女も次の収録から復帰するそうだね」

「あぁ、どうやらウルス達が上手くやってくれたみたいだ」

どこかの喫煙所でクラムが吸うタバコの副流煙を浴びていた。

 

「彼の事も期待してるんだ……勿論あかねくんにもね」

「…カメレオにも…?」

「そうさ、君は知らないかもしれないが、劇団ララライの黒川あかねと言えば、天才役者として界隈では有名なんだよ。確かに彼女はまだ17歳の少女だ、だが…プロと呼べる程の実力は有している」

クラムは英寿を試すような目で見る。

 

「そのうち、彼女の実力も知ることになるだろうさ。演技でだけでなく、彼女は戦闘でもその才を発揮する。だから僕はオーディションで彼女を選んだんだ」

「……」

「…彼女は演じる事でまるで人が変わるようになる。一つ一つの所作も、表情も、戦闘スタイルも、直ぐに環境に順応する。まるで変幻自在のカメレオンのようにね。その才は十分ジャマトの驚異になり得る」

「…それが俺となんの関係があるんだ?」

英寿は我慢出来ず、クラムが何故自分にそんな話をするのか問い掛けた。それに対し、クラムは待ってましたと言わんばかりな顔をした。

 

「今度あかねくんがね、アクアくんの好みの女を演じて番組に出る事にしたそうなんだよ。演じる事でその役が鎧になる。そう彼からのアドバイスでね」

「…なんでそんなことを……」

いや、こんな事を聞くのは野暮だな

もしこいつらも俺の居た世界の運営のように未来の存在なら、そんな事をするのは容易だ

 

「アクアくんの好みの女、誰だと思う?」

「……まさか…」

「…そう、B小町のアイ。あかねくんは彼女を完璧に演じる為に今必死に彼女の事を調べあげてるようだよ」

「……」

「…そこで、今日は君にも知ってもらいたいんだ…アイくんの事をね」

「……は?」

すると、クラムは吸っていたタバコの火を消した後、英寿の方へ振り向いた。

 

「……付いておいで」

 

 

 

「……ここは…」

英寿がクラムに連れてこられた場所は、英寿の世界でのデザイア神殿のサロンに似ていた。

 

「ようこそ、デザイア神殿のラウンジへ」

「……ラウンジ…」

ややこしいが、この世界ではこの部屋はそう呼ばれるのか

 

「俺をここに連れてきて一体何をするんだ?」

「まぁただの映像鑑賞だ。言っただろう?アイ君の事を知ってもらいたいって…」

すると、ラウンジに映像が映し出される。

そこには紫がかった髪の可憐な美少女が、ステージの上で歌って踊っている映像だった。

その容姿、そのパフォーマンス、そして両目に宿る一番星のような輝き。聞かずとも自ずと解る。

 

「……彼女が…」

「そう、彼女こそが「アイ」。B小町のセンターにして、デザイアグランプリでは3度の優勝を果たしている最強で無敵のデザ神!」

「……え?」

「…彼女は紛れもない天才だったよ…アイドルとしても、仮面ライダーとしても」

 

 

アイの映像を見て思った事がある

彼女の才能は唯一無二、天性のものだと

それをカメレオが演技ひとつで真似る事など、到底出来ないという事を

 

「本日よりあかねちゃん復帰になります」

「皆さん、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!頑張りでお返ししたいと思っています、宜しくお願いします!」

 

だからこそ、あの日は驚いた

 

「それではカメラ回しはじめまーす」

「……行くぞ」

「…うん、そうだね…アクアっ」

「……っ」

 

星野アクアの表情はみるみる変わっていった

誰かの面影を感じさせる、そんな口調に

心揺さぶられた

 

「…ふあっ…眠いんだよね〜収録早すぎてさー…あっもうカメラ回ってる?」

 

太陽のような笑顔

完璧なパフォーマンス

まるで無敵と思える言動

 

吸い寄せられる、天性の瞳

 

「…てへっ☆!」

「……」

 

その全てが、黒川あかねに宿ってしまったからである

 

 

 

ラウンジへの入場には、

運営スタッフの同行が必要である。

 

 

第十六話「韜晦XV:バズらせのプロ」




次回

「アクア、今日は一緒に居ようよ」
「ほらぁ!あかねにだけなんか素直ぉ!」
「今から学校サボって遊ばね?」
「…ったく…欲張りだなぁ」
「面白くなってきたぁぁぁ!!」
「よぉ〜しっ!ド派手に行っくよ〜☆」

第十七話「韜晦XⅥ:変幻自在☆ウエスタン」
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