仮面ライダーギーツ【Mother and Children】 作:キャメル16世
「徹底した役作り、与えられた役への深い考察と洞察、それらを完璧に演じきる天性のセンス」
「……」
「…リアリティショー映えする性格じゃなかったみたいだけど、役者としては『天才』と言う他ない」
「……」
「…黒川あかねという人物は、そういう人間だ」
ラウンジにて会話をする英寿とクラム。
「……お前、一体何を見ている…?」
英寿はふと、クラムに問い掛けた。
クラムはアイの映像を見ているにも関わらず、アイではない何かを見ていた。
「……勿論、君たちの…未来だよ」
「ア……あかね…」
「アクアどしたの?幽霊とか見たような顔して」
「いや……」
「……」
こいつは驚いた
今のカメレオは、カメレオであってカメレオじゃない。まるで誰かが憑依しているかのようだ
まるでアイを完コピしたかのような素振り
これがカメレオの実力……
こいつは…
「……フッ」
思いがけない展開に、英寿は久々に高揚していた。
これから何が起こるのか、何が巻き起こるのかは分からない。それでも、不思議と不安に感じない。
何があっても大丈夫なのだと、この場の空気が感じさせてくれた。
「あかねおかえりー!」
「みんなっ待たせてごめんねっ!」
「ほんとだよ、待ってたぞぉ」
「また楽しくやろうね!」
あかねの元に駆け寄るメンバー達。
ゆきはあかねと手を合わせて喜びを露わにしていた。
「なんか元気そうで良かったけど…もう大丈夫なのか?」
「えっ、何が?」
「「「「「「……」」」」」」
ノブユキの心配に、あかねはあっけらかんとした表情で答えた。それに対し、撮影のメンバーは一同にきょとんとした表情をとった。
「何がって……そりゃ」
「あー盛大に燃えちゃったからねぇ!もしかしてその話?」
「……」
「やっちゃったなぁとは思うけど、あれくらいよくある話でしょ!私は全然!」
「あかね…なんか雰囲気変わった」
「…んーちょっとそうかも?ゆきはこういう私…嫌い?」
あかねはゆきに顔を近付けて試すような口調で問い掛けた。
ゆきはそれに対し首をフルフルと横に振り、またもやポカーンとした表情であかねに見入った。
「アクア、今日は一緒に居ようよ」
「……うん」
一瞬で、持って行った
キャストも、スタッフも、カメラマンですら
視線を向けざる得ない不思議な引力
まるでアイのようなカリスマ性
それが彼女にもあった
「聞いたよ。あの動画、何日も徹夜してアクアが作ってくれたって。嬉しかったな…ありがと、アクア」
「……うん」
「…あかねがなんか変なのはもうわかったけど、アクたんもなんか変じゃない?」
「……そうか?」
不意に、MEMが英寿にそんな事を言う。
「…確かめてみよう」
すると、MEMはそっとアクアに近付いた。
「ねぇアクたん〜そこのポーチ取ってぇ?」
「今考え事してる、自分で取って」
「それ位いいじゃん。取ってあげなよ」
「うん」
「ほらぁ!あかねにだけなんか素直ぉ!」
あかねが介入した事で素直にポーチを取ってあげるアクア。それに対しMEMはアクアを指差しながら指摘した。
「マジでアクたん、ああいう感じか好きなんだ…」
「……」
「そんなんじゃねぇ」
「ほらほら好きなんか〜?こういうあかねが好きなんか〜?」
「…やめろ」
「ん〜〜?」
「だから…!」
するとアクアは、まるで顔を隠すように手を添えると頬を赤らめて悶えた。
「マジでやめ……」
「いや反応……ガチじゃん…」
「…っ」
耐えきれなくなったのか、アクアは逃げるように教室を後にした。
「あかねどうする!?これガチでガチのやつあるよ!?どうするどうする!?」
「ど……どうしたら良いのかなぁ…」
「あっ!いつものあかねに戻っちゃったァ!」
MEMの追及にあかねも頬を赤くする。
「まさかあいつがあんな顔をするとはな……カメレオ的にはどうなんだ?」
「マジで付き合うルートある!?」
「……ありかなしかで言ったら……ある」
「きゃーー!」
あかねのウブな反応にMEMのボルテージは最高潮に。
「面白くなってきたぁぁぁ!!」
「面白くない」
一方、苺プロの事務所で今日の放送を見ていた有馬かな。あかねが快進撃を見せる中で不快感を顕にしていた。
「もうなんか飽きたわ。見るの辞ーめた、そもそも人の恋愛を安全圏から眺めるなんてコンセプトが悪趣味なのよね、誰と誰の掛け合わせが良いとか、なんなの?馬主なの?菊花賞狙える馬産ませたいの?はーやだやだもう観ない〜アクアの顔も見たくない〜バイバイさよなら〜〜」
かなは大きなため息をつきながらまるで自分に言い聞かせるようにつらつらと言葉を並べ、流れる動作で部屋を後にした。
「……」
しかし、ルビーの見る目は違った。
画面に映し出された、誰もが目を奪われるようなオーラを醸し出す少女。そんな彼女に、ある者の面影を感じたからだ。
「……ママ」
幼年期、アイと数年一緒に居たけれど
俺はアイの事を、結局何一つ知る事が出来なかった気がする
何一つ、分かってやれなかった気がする
どこまでが嘘で、どこからが本当なのか
俺にとってアイってなんだ?
ファン?母親?
それとも……
「……」
有馬かな。
今の彼女の胸の内には、何やら悶々とした何かが住み着いていた。
それは『今ガチ』の放送…いや、星野アクアの顔を思い出す事で増大する。
彼女にはこの正体が分からなかった。
登校中、『今ガチ』の噂を口にする女子高生の会話を聞いただけでも、その悶々は増えていく一方である。
だからこそ、彼女は初めて知ることになる。
「……有馬」
「…っ」
「有馬かな。なぁ…今から学校サボって遊ばね?」
「……いく」
その悶々は、本人の顔をまっすぐ見る事で綺麗さっぱり消えてしまうという事を。
「……ん?」
あれは…ウルスとマーリ?
これから学校の筈だが…何やってるんだ?
学校に向かう最中の英寿。
その最中、学校をサボろうとするアクアとかなの姿を目撃した。
「……」
ウルスのカメレオに対する見る目が、明らかに変わった
だが、それはおそらくカメレオがアイに似ている
即ち、アイの面影をカメレオに重ねてしまっているだけなのではないだろうか
それが悪手なのかは、俺には分からない
だが確かに言える事は、ウルスがアイに抱く感情
それが母親としてなのか、はたまたファンとしてなのか
もしくは……
「……」
今考えても仕方の無い事だな
どの道を選ぶかは、ウルス自身が決める事だ
「……」
……さて
俺もそろそろ、腹を括るとするか…
これから先は、競い合いになる
もうすぐ番組も最終回になる
もうすぐゲームが終わる
もうすぐデザ神が決まる
全てが、決まる
「……さぁ…ここからがハイライトだ」
「エースさん何してんのー?早く行かないと遅刻するよー!」
「……」
まぁ、学業優先だがな
有馬と話して、分かった
やっぱり黒川あかねに対する感情は、そういうのじゃない
有馬には感謝しなくちゃな
自分の感情に整理がついた
俺は黒川あかねに星野アイの幻影を見てるだけ
「いよいよ撮影も終わりだね?寂しいなぁ」
撮影も佳境に入った頃、あかねがアクアにそんな事を言う。
「アクアくんの言う通りキャラ付けしたら人気も出て……かなり助かったよ!ありがとう」
「…アイの演技……いや、役作りか。まるで夢を…本物を見てるみたいだった。アレってどうやってるんだ?」
「いやそんな大層な物じゃ……」
アクアの質問にあかねはちょっと恥ずかしそうに答える。
「一応プロファイリングの本とか読んだりはしてるんだけどね、一杯調べて自分なりの解釈してるだけ。色々勝手な設定とか足しちゃってるし」
「勝手な設定?」
「うん。例えば…アイには実は隠し子が居る……とか」
「……」
「だとしたら色んな感情のラインに整合性が取れるしっ、不可解だった数々の行動の理由が分かる。何を考えてどういう人格なのか、数式パズルみたいに分かってくる」
「……アイの思考パターンってどれ位分かるんだ?」
「…んー……どういう生き方をして来てどういう男が好きか…まで、多分だいたい分かると思うケド?」
あかねの瞳にはいつの間にか星が宿っていた。
もう既に、アイを再現し始めたのだろう。
「た、大変だぁ!ジャマトが…ジャマトが現れたぞぉ!」
すると、スタッフの1人が叫びながら教室に入って来た。
その声を聞き、あかねとアクアは顔を見合わせて外へと向かった。
「ジャ〜…」
「ジャッ…ジャジャッ…!」
外には幾多ものポーンジャマト、そしてその中央にはローズジャマトが佇んでいた。
「やっぱり現れたか」
「おっしゃァ!これまでの借りを返してやるぜ!」
「あぁ…!あいつの分も…!」
「これが最後の戦い…ってヤツかな!」
「なんだか負ける気がしないねぇー!」
既に外に集まっていた5人。
そこにアクアとあかねが合流する。あかねの瞳には星が宿り、その顔も自信に満ち溢れていた。
「みんな!あのバラのジャマトは私とアクアで倒す!行こっ!アクアっ!」
「……あぁ」
「…ったく、仕方ねぇなぁ!」
全員がデザイアドライバーを装着する。
ノブユキはパワードビルダーバックルを、ケンゴはビートバックル、ゆきはクローバックル、MEMはヴァンパイアバックル、アクアはソルジャーバックル、あかねはウィップバックル、そして英寿はウエスタンバックルをセットする。
「「「「「「「変身ッ!」」」」」」」
各々が変身ポーズを取り、バックルを起動させる。
《 DEPLOYED POWERED SYSTEM 》
《 GIGANT SWORD 》
《 BEAT 》
《 ARMED CLAW 》
《 VAMPIRE 》
《 SOLDIER 》
《 ARMED WHIP 》
《 WESTERN 》
7人全員が仮面ライダーへの変身を完了する。
ギーツのウエスタンフォームは、カウボーイを模したような装備で、ゆったりとした長袖に牛柄のコートのようなものが羽織られている。
《 READY FIGHT 》
「さぁ、ここ……」
「ここからがハイライト…でしょ?」
「……あぁ」
ギーツの決め台詞を横取りしたカメレオは、真っ先にローズジャマトへと向かって行った。
「はぁっ!」
「…ジャ…!」
「はっ!たぁ!」
「ジャ〜…!」
カメレオはレイズウィップを駆使してローズジャマトに隙を与えない攻撃を仕掛ける。
以前のような戦闘スタイルとは全く別だ。
「……あの戦い方…」
ウルスも違和感を感じながらも、自分を奮い立たせてローズジャマトに向かって行く。
「はぁっ!」
「ジャッ…!」
「…ウルス…!もう大丈夫なのか…?」
ギーツはポーンジャマトの相手をしながらウルスに質問する。ウルスは以前、ローズジャマトの姿を見て顔を青くしていた。
なにかのトラウマを抱えていると思っていたが…
「あぁ…!俺はもう…諦めない!」
「ジャ〜ッ!」
「どんなに敵が強くても、どんなに壁にぶち当たっても…!」
《 IRON CHARGE 》
《 TACTICAL EDGE 》
「ジャァァ!」
「乗り越えてみせる…!俺の、理想の為に…!」
「……フッ」
ウルスの攻撃がローズジャマトに大きなダメージを与えた。
「おりゃァァ!」
「ふっ!はぁっ!」
「ジャ〜!」
そして、無数のジャマトを相手するギーツとマーニア。
ギーツは専用拡張武器である小型二丁拳銃「ウエスタンピストル」を両手に装備し、向かってくるポーンジャマトを撃って行く。
「エースッ!」
「…あぁ…!」
マーニアの合図の後に、ギーツはウエスタンバックルを操作する。
《 WESTERN STRIKE 》
「はぁぁっ!」
ウエスタンバックルを操作すると同時に、マーニアはコウモリのような翼を広げて空に羽ばたいた。
それを見計らい、ギーツはウエスタンピストルに溜め込んだ弾を周りのジャマトに円形状に撃っていく。
《 VAMPIRE STRIKE 》
「おりゃァァァァ!」
ギーツの攻撃の後、今度はマーニアがヴァンパイアレイピアを駆使し周りのジャマトを羽ばたきながら切り刻んでいく。
「よっしゃぁぁ!スコアも大量ぉ!」
「……フッ……ん?」
腰に手を置き、安堵の表情を見せるギーツ。
しかし、どこからか感じる視線に違和感を感じていた。
《 STEEL CHARGE 》
《 TACTICAL SMASH 》
「はぁぁっ!」
「ジャ…!」
ソルジャーランサーを投げ飛ばし、ローズジャマトに突き刺すウルス。
「ジャ…ジャ〜…!」
「……っ」
しかし、ローズジャマトはソルジャーランサーをゆっくりと引き抜き、乱暴に地面に投げ捨てた。
「ジャァ…ジャァァァァッ!!」
「…っ!」
ローズジャマトは全身から茨のツタを出現させ、辺り一面を薙ぎ払い始めた。
「アクアッ!」
「っ!」
すると、カメレオがウルスを抱き抱えるように攻撃を避けた事で難を逃れた。
「…大丈夫…?」
「…あ、あぁ……」
体制を立て直したカメレオとウルス。するとカメレオは、顎に手を添えて何やら考え事をし始めた。
「このままじゃ勝てない……あのジャマト、次から次へと見た事ない技を……」
「……?」
「…だったら、私達も見た事ない攻撃をすれば良いんだよ!」
「…え?」
「…エース!」
思い立ったカメレオは、近くにいたギーツに向かって叫んだ。
「……ん?」
「そのバックル…ちょうだい!」
「……フッ……ったく…欲張りだなぁ」
カメレオの要求に対し、ギーツは鼻で笑いながら答えた。だが、素直にバックルを取り外し、それをじっと凝視した後に、カメレオに視線を送った。
「…受け取れ!」
「……っ…ありがとッ!」
《 REVOLVE ON 》
ギーツからウエスタンバックルを受け取ったカメレオは、ドライバーを回転した後バックルをセットした。
《 SET 》
《 DUAL ON 》
《 WESTERN 》
《 ARMED WHIP 》
ウエスタンアームドウィップへと変化したカメレオは、「ウエスタンピストル」と「レイズウィップ」をあざとく構える。
《 READY FIGHT 》
「よぉ〜しっ!ド派手に行っくよ〜☆」
第十七話「韜晦XⅥ:変幻自在☆ウエスタン」
次回
「やっぱり全力で行くしかねぇなぁ!」
「付き合うよ、最後まで」
「決めるよ、アクアっ!」
「恒例の一大イベント…告白タイムの時間だ…!」
「……アクアくん…?」
「……それじゃあ始めるよ。新しい世界を…」
第十八話「韜晦F:君とのファーストキス」