仮面ライダーギーツ【Mother and Children】 作:キャメル16世
「ウルス、マーリとは仲直り出来たのか?」
「……あんたには関係ないだろ」
「…フッ…聞くまでもなかったか」
「うるせぇ」
クラムに着いていく中で、英寿達の中で盛り上がった話は、アクアとかなの関係性に関してだった。
「おや、有馬くんと喧嘩でもしたのかい?」
「別にそんなんじゃないですよ。ただ…」
「…ただ?」
「……」
アクアが黙っていると、クラムは不意に吹き出して微笑んだ。
「若いねぇ…君達くらいの年代だったら、そのくらいの仲違いは日常茶飯事だろう。ましてや相手が有馬くんなら尚更だ」
「……そういえば、お前達の関係は「今日あま」ってドラマからだったな。マーリも関係してるのか?」
「有馬くんは「今日あま」の主人公役だよ。有馬くんも昔から苦労する性格でね、使い勝手は良いけど…あ、今のは本人には内緒でね」
「……」
今とんでもない闇を見た気がするが…本人が聞いたらどれほどショックを受けるだろうか
「クラムさん、それより…」
「…ん?あぁ……話の途中だったね」
クラムは止めていた歩みを進め、再び話し始めた。
「『劇団ララライ』。そこのワークショップに通ってから、彼女は身なりにも気を使うようになり……良い食事の場所を訊いてくるようになった。流石に相手が誰かまでは分からないけれど、一気に大人の顔になったのを覚えているよ」
「……」
アクアはクラムの話を静かに聞いていた。
「興味があるなら、ララライの主宰を紹介しよう。そこなら、君の求めている答えに近付けるだろう」
「……」
アイが恋した人間。つまりそれは、ウルスやテラスの父親である可能性が高い人間
ウルスがアイについて調べている理由は単なる興味本位なんかじゃ無いはずだ…何か使命感のような、確実な目的がある
アイが目的でないならば、ウルスの目的はもしかして……
「どうしてそこまでしてくれるんですか?僕は実績も何もない役者くずれですよ?」
「…君達に可能性を感じるからだよ。この業界は貸し借りの世界だ」
クラムは淡々と語りながら進んだ。
いつしか英寿達は街灯の少ない森林にまで来ていた。
「知っての通り、デザイアグランプリは事務所と製作側によってキャスティングに大きく関わる。そしてキャスティングによって収益は何億と変わってくる。ここで貸しを作っておく事で、君達が売れっ子になりまさに今が旬という時、私はキャスティング戦争で大きなアドバンテージを得られるわけだ」
すると、クラムは突然歩みを停めた。
「…さぁ着いたよ。ここが目的の場所だ」
「……ここは…『今ガチ』のロケ地…?」
森林を抜けた先は、何故か夜の学校に繋がっていた
この学校は『今ガチ』の収録に使われた都立高校。こんなところに改まって何の用だ…?
「……っ!?」
すると、英寿は目を見開くようにして驚いた。
英寿の視線の先には、まるで空間がネジ曲がるかのようなうねりを起こしながら身体を再生させる、ローズジャマトの姿があったからだ。
「…ジャ…ジャァ…!ァァァ…!」
「ジャマト…!?倒しきれてなかったのか!」
すぐにバックルを構える英寿。
しかし、そんな彼をクラムは手を添えて静止させた。
「…エースくんは見ていたまえ。このデザイアグランプリに於いて、一体何が正義なのか…!」
「……え?」
《 VISION DRIVER 》
クラムはヴィジョンドライバーを構え、装着した。
「どうして僕等運営が、命を懸けたゲームを続けるのか……どうして仮面ライダーが存続するのか……」
《 STARE CONNECT 》
クラムが右手の親指をヴィジョンドライバーにタッチさせると、ヴィジョンリアクターがエメラルドグリーンに発光する。
「…その目で、確かめるといい」
今度は左手でドライバーのホルダーにあるプロビデンスカードを取り出し、プロビデンスカードを上へと投げる。
「……変身」
掲げた左手で指を鳴らし、落ちてくるプロビデンスカードを右手でキャッチすると、ドライバーにカードをリードさせた。
《 INSTALL 》
《 Domination by entertainment, STARE. 》
「…クラムが仮面ライダーに…変身した……」
「……」
仮面ライダーステアへと変身したクラム。その姿はグレアやゲイザーと同型であり、色はエメラルドグリーンを基調とした寒色によって構成されていた。
突然の変身に驚きを隠せない英寿と、何故かそれをわかっていたかのような顔をするアクア。
「ジャァ…ァァッ…!」
まだ身体を再生しきっていないローズジャマトは、辺りにツタを振り撒きながら、ステアへと突撃する。
「……フッ…!」
「ジャッ…!ァァ…!」
突撃してきたローズジャマトを軽々と受け止めるステア。余裕の表情を見せ、声を荒らげることも無くローズジャマトを地に伏せさせた。
「もう君の出番は終わりだよ、ジャマトくん」
「ジャァッ…!ジャジャァァァッ…ァァッ…!」
「…ご退場願おうか」
《 ERASE 》
カードを1回リードさせるステア。
地に伏したままのジャマトを蹴り上げ、空中で強力なキックを浴びせた。
「ジャァァッ…!」
「……やっぱり、“種持ち”か」
「…種持ち?」
「あぁ、そのようだね…」
《 DISAPPEAR 》
カードを2回リードさせるステア。
肩、胸、膝にあるヒュプノレイがステアから分離し、戦闘ドローンとなってローズジャマトへ向かう。
「手強い相手には、手強いやり方だ」
「ジャッ…!ジャァ…!」
ヒュプノレイから次々と射出されるビームによりローズジャマトは為す術も無く身体を破壊されていく。
「…さぁ、これでゲームセットだッ…!」
「ジャァッ!ジャァァァァッ……!」
ヒュプノレイから特大のビームが放たれ、そのビームに包まれたローズジャマトは、再び身体を再生させることも無く、チリとなって消えていった。
「……ふぅ」
変身を解除しドライバーを取り外したクラム。
澄ました顔で英寿達の元へと戻る。
「デザイアグランプリに於いて、ジャマトは必要不可欠な存在だ。しかし、稀にああやって厄介な個体が誕生する。ああなれば人類の驚異に成りかねない。だから僕達は、時よりああいうジャマトを排除しているんだよ」
「……」
クラムが英寿に今の状況の説明をした。
アクアもこの件に関して深く関わりがあるようで、クラムに対し浅く頷いていた。
「…さっきの種持ちってのは?」
「あぁ…ああいう厄介なジャマトには決まって、“これ”を持っている個体が居てね」
クラムがこれと言って取り出したのは、球根のような種だった。どうやらローズジャマトから回収したようだ。
「…これは確か……」
「力の種。ハエトリグサのジャマトが持ってた物と同じ物だ」
「……なるほど」
力の種を取り込んだジャマトの事を、彼らは種持ちと呼んでるのか…
「…んで、この種にはどんな力があるんだ?」
ジャマトの強化に使われる、と言うだけではない気がした
ウルスがこれを集めている以上、こいつには何か深いワケがあるようだ
「力の種は文字通り、ジャマトの力を底上げする効果がある。そしてこれは、この種自身に強大な力がある」
「…強大な力?」
「この世界にある全ての力の種が収束したその時、世界を破滅へと導くジャマトの破壊神が誕生する」
「……ジャマトの破壊神…!?」
クラムの発言に、英寿は震撼する。
英寿の世界でも、その予兆とも言える事件が起きた。
その悪夢が、この世界でも起きようとしているのか…?
「その種はあと何個あるんだ?」
「さぁね…それは集めてみないと分からない。とりあえず僕達は、3つの力の種を保有している」
「デザグラの運営…と言うより、クラムさんがそれを管理してる。多分、外部に流出する心配は無い」
「…フッ…多分、ね。とにかく、これで目的は達成だ」
クラムはアクアの言葉に軽く笑ってから話を切り替えた。
「これでまた、君には借りを作れたかな?」
「…えぇ」
クラムはアクアの目を見て、含みのある笑みで言った。
「随分とウルスにご執心だな。そんなにコイツに拘るのか?」
「さっきも言ったけど、プロデューサーという仕事はキャスティングによって収益が変わってくる。将来有望な人材には恩を売るのが道理って物さ」
「……」
「もちろん君達にだけしてる訳じゃない。有馬かなくんやMEMちょくんにも、可能性を感じてる」
「……!」
すると、クラムは含みのある笑みを浮かべ、端末で何かを見ていた。
「君達、なんだか面白い事始めたみたいだね。あの『B小町』を復活させたそうじゃないか」
「……」
「…なかなか、有望な投資対象だと思っているよ」
「……まさか…」
まだまだ分からないことだらけだ
強力なジャマトを倒し、ジャマトの破壊神を生み出すと言われる力の種を回収し、それを阻止する
それが奴らの言い分だが……
本当にそれが本来の目的なのか?
先日の一件から数日後。英寿はひとり、アクアとクラムの言動について考えていた。
ジャマトの破壊神…ゴッドジャマトは、俺の世界でもひと騒がせしてくれた厄介な存在だ。実物をこの目で見た訳じゃないが、ひとたびそいつが誕生してしまえばこの世界だけじゃない、未来にどんな影響を及ぼすか分からない
その驚異を知っているからこそ、奴らの動向に賛同するのも悪い話じゃないのかもしれない
ただ、どうやらこの世界では俺の居た世界の理が通用しないらしい
ゴッドジャマトの存在が俺の居た世界のゴッドジャマトと同一なのか…
はたまた全く別の存在なのか……
ジャマトの破壊神……
また余計な心配が増えたな
「…あれ、エース君?」
「……ん、カメレオ」
英寿が考え込んでいると、向こうの道路に黒川あかねの姿が見えた。久々に英寿の顔を見たあかねも、喜びを露わにして英寿に手を振っていた。
「その後はどうだ?カメレオ」
「うん!おかげさまで順調だよっ!エース君は?」
「…まぁ、ぼちぼちだな。『今ガチ』の影響で、何回か雑誌の撮影に行ったぐらいだ」
「あ、それみたよ!なんだっけ、「スターの才覚」?だっけ?表紙のキャッチコピー」
「あぁ、俺が考えた。俺はいずれ、スターオブザスターオブザスターズになる予定だからな」
「…ス、スターオブザスターズ…?なんかよくわからないけど、上手くやってるんだね」
軽い冗談を挟みつつ、彼らの会話は自然と弾んだ。そして何より、あかねの機嫌がやけに良かったのが印象的でもあった。
「それで、ウルスとは上手くやってるのか?」
「う、うんっ!最近はアリバイ作りで、デートの写真をインスタに載せたりしてる」
「そうか」
「さっきも電話しててねっ、今度いつ会うか予定立ててたんだぁ〜」
「……」
なるほど、やけに機嫌がいいのはそういう事か
と、英寿は自己完結する。
「……」
こいつは…カメレオは、プライベートのウルスを知っている……
ここはひとつ、カマをかけてみてもいいかもしれない
「…カメレオ、ひとつ頼みがある」
「ん?なに?」
「今度ウルスと会った時……」
俺はカメレオにひとつ頼み事をした
次にウルスに会った時、これを聞いて欲しいと…
「お兄ちゃん!ついに私達「B小町」にも、デザグラからのお呼び出しが来たよ!」
「……ん」
ルビーはウッキウキなご様子でアクアにその広告ページを見せる。
その広告ページには、デカデカとこう綴ってあった。
『アイドルジャパンフェス開催!今年はデザイアグランプリが主催!』
「……」
その広告ページを、アクアはじっと見つめた。
その瞳の星を、黒く染めて。
「……ウルス…お前にとって…」
お前にとって、ジャマトはどういう存在なんだ?
第二十一話「憧憬Ⅲ:ステアの信念」
次回
「『B小町』のセンターを誰にするか!」
「そっちだってヘタウマの部類じゃん…!」
「とりあえずカメラ止めろや」
「ねぇねぇ〜一緒に観に行こうよ〜」
「俺はアイツに会う訳にはいかねぇ」
「カラオケはあんま得意じゃないんだがな」
第二十二話「憧憬Ⅳ:センターは誰だ!?」