仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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前回からだいぶ空いてしまいました……
もう【推しの子】2期も半分過ぎた…(多分)
2期が終わるまでにこの章を終わらせたかったですが…そういう訳にもいかなそうです……

でも構成的には2期の範囲も考えていますので、この章では終わりません。宣言します。



第二十二話「憧憬Ⅳ:センターは誰だ!?」

「「ジャパンアイドルフェス!?」」

「うん、『今ガチ』でお世話になったプロデューサーがコネあって……興味があるならねじ込んでくれるって……」

その日、集まっていたB小町の面々は、MEMちょからの報告に驚いていた。

 

「JIFって来月でしょ!無理無理!全然準備出来てないじゃない……私達みたいな新参者がいきなりそんな大きなステージ──」

「やろやろやろやろ!」

否定する有馬だったが、ジャパンアイドルフェスの字面を聞いたルビーは興奮した様子で肯定した。

 

「JIFだよJIF!新生『B小町』の初ライブがそんな大きなステージで出来るなんてすごくない!?」

「だけど確実に周りの心証良くないわよ。絶対コネコネコネコネ言われる…」

「大丈夫だって!私達は伝説的グループ『B小町』の後継者なんだから!」

「それもアンタが勝手に言い始めたんだけどね」

「でも実際やらないては無いと思うよぉ。普通のグループが何年も必死に活動してやっと立てる舞台……ここでやらなきゃ、何の為に活動するのって話になるよ?」

「……それはそう…」

得意気に有馬を説得するMEMちょ。

有馬もその説得に負けたか、観念した表情をとる。

 

「はー…やるっていうならやるわよ。これ仕事だし」

「よし決まり!」

有馬の肯定にガッツポーズをとるルビーとMEMちょ。

 

「じゃあそろそろアレ決めないとだね」

「アレだね!」

「…何の話?」

ふたりがアレアレ言ってるものが気になる有馬。

座っていたソファから立ち上がり、MEMちょの言葉に耳を傾けた。

 

「『B小町』のセンターを誰にするか!」

 

 

「ジャパンアイドルフェス。今年はデザイアグランプリ主催、か」

「そそ!ねぇねぇ〜一緒に観に行こうよ〜」

「断る。なんで俺がお前なんかと…」

JIFのホームページを閲覧するイラド。シックが誘うが、即答で断られてしまう。

 

「…はぁぁ…君ってほんと哀しい人間だよね。僕の純粋な気持ちに答えてくれないなんてさっ」

「……」

シックは気だるそうにソファに座ると、頭の後ろで手を組んだ。

 

「だいたいお前、そんなとこ行って何するつもりだよ」

「…それはもちろん♪僕の推しに会いに行くのさっ」

「お前の推し?ハッ…ぽっと出の新参者が出れる訳ねぇだろ」

「……いいや、彼女達ならきっと来るよ。僕はそう信じてる」

「……」

「それに!今年はデザイアグランプリ主催!君の推しにも会えるかもよぉ〜」

「……っ」

シックはイラドを煽るように誘う。

今度は応えたか、イラドは少し黙り込んだ。

 

「……俺はアイツに会う訳にはいかねぇ。行くなら一人で行ってこい」

「…ちぇっ、折角の推しに会えるチャンスなのにっ!なんでそんな哀しいこと言うのさ!イラドのバカ!」

シックは感情を顕にし、イラドの元を去った。

 

「……」

シックが去った後、イラドは頭の狐面をゆっくりと外す。いかんせん、顔は拝めない。

 

「……秘密だ」

 

 

『B小町』のセンターを誰にするか。

それを決定する為、メンバーの中で論争が勃発し、果ては闘いあって決着を──という事にはならなかった。

 

結局有馬がセンターになる事を拒否し、あからさまにセンターになりたがっていたルビーとMEMちょのどちらかでセンターを決める事となった。

 

センターに必要なものはなんなのか。

踊りが上手く自主性がある娘?メディア慣れしてて社交性がある娘?

どれも違うらしい。

確かにどちらも大事だが、最も重要なものがある。

それは歌唱力だ。どんなに踊りが上手でも、どんなにメディア経験が豊富でも、歌が下手では話にならない。

 

その結論に辿り着いたルビーとMEMちょは、休日にカラオケ屋に行き2人それぞれ歌を披露した。

 

結果は以下の通りである。

 

MEMちょ:57点

星野ルビー:43点

 

「よくその点数で勝負に乗ってきたねぇ!?」

「そ…そっちだってヘタウマの部類じゃん!」

「アイドルは個性!ヘタウマでも商品価値はあるしぃ!?下手なのはどうしようもないじゃん!」

「下手な子がちょっとずつ上手くなってくのをリアルタイムで追える喜び!これを私はファンに提供しようと思ってるんですぅ!ドラマ性があるんですぅ!」

自分の下手さを全力でフォローする両者。

もはや下手な事に対し開き直ってる有様である。

 

 

 

「……」

「……」ズズズ…

「……」

「……」ズズズ…ズズズ…

「……」

「……」ズズ…ズ……

「……んで、今日は何の用だ?マーリ」

「別に。ただの気晴らしよ…」

「その割には機嫌が悪い様子だが?」

同時刻。何故か有馬と共にカラオケ屋に来ていた英寿。

その理由を追求しようとしたが、有馬は再びドリンクのストローに口を運んでしまった。

 

「どうだって良いでしょ?せっかく私が誘ってあげたんだから、黙って歌いなさい」

「要求が矛盾しすぎてるな……」

黙って歌え、なんて要求はどうやって叶えたら良いのだろうか

そんな事を考えながら、操作パネルに手を伸ばす英寿。

 

「困ったな……カラオケはあんま得意じゃないんだがな…」

「……」

 

「非常と野望♪Playing game♪ギリギリまでライフゲージ♪」

「……」

「Star of the star of the stars♪敗北など似合わない♪Star of the star of the stars♪照〜ら〜せよ〜♪Spotlight〜♪」

「……」

「……ふぅ」

カラオケの点数は89点。自分の中ではなかなかにいい点数であった。

 

「…上手いじゃない」

「ま、そんな事ないさ」

「……いいわね。私は歌下手だから」

英寿の歌を聞き終えた有馬は、英寿の顔をジトーっと見ながら僻むように言った。

 

「…ピーマン体操、だっけ?お前が子供の時に出してた曲」

「ちょっ…!誰から聞いたの!?」

「誰からでもいいだろ」

「……っ」

英寿も自分の頼んだドリンクに手を伸ばす。

 

「…そうよ、私の黒歴史。あの時は“子役”だから人気が出てただけ。その後に色んな分野に手出してみたけど人気は出ず。結局色んな会社と大人達に迷惑を蒙って、私はちゃっかりと飯を食う毎日」

「……」

「人から好かれるのって、ルビー達みたいに素直で可愛い子なのよ。私みたいに面倒で捻くれた女じゃなくてね」

「……随分と汐らしいな。嫌な事でもあったか?」

「…別に……」

「……」

ま、だいたい予想はつくがな

 

「そんな話をする為にわざわざ俺を呼んだのか?相談事ならウルスにしてもらえばいい」

「む、無理よ!アクアとなんて会えないわ…!」

「どうしてだ?大体、お前をアイドルに誘ったのはウルスなんだろ?あいつがアイドルに誘う程だ、もっと自分を買いかぶっても良いんじゃないのか?」

「…でもMEMちょの事も誘ってるし……」

「……」

面倒で捻くれた女だな……

だが……

 

「……フッ」

「…な、何よ」

「…いや、お前も一端に悩むんだな……流石は元天才子役様だ」

「……」

「だがな…俺からすればお前らはまだまだ子供だ。悩むのもいいが、もっと大人を頼っていいんだぜ?」

「……っ」

有馬は英寿の言葉に頬を少し赤らめて、思いっきり指を指す。

 

「こ…こんな時にばっか年上アピールすんなっ!言っとくけど、一応私の方が先輩なんだからね!?」

感情が顕になった有馬はそのままのテンションのままマイクをとった。とてもいい表情をしている。

 

「あったま来た!私も歌いまくってストレス発散してやるんだから!耳壊れても責任とらないわよ!!」

「…フッ…はいはい」

 

 

 

「…先輩……ピーマン体操の後も結構曲出てたんだ。知らなかった」

ルビーとMEMちょは休憩がてら、有馬の歌を歌おうとした。その最中、彼女がピーマン体操以外に楽曲を出している事を知る。

そしてその一曲にMVがある事も。

 

「聞いてみる?」

「うん!」

その曲は、「Full moon…!」という曲だった。

華やかしくも幻想的で、夏を感じさせる涼けさもあった。

そして響く美声。文句ひとつ言いようが無い、まるで月にまで届きそうな程であった。

 

「……ほんと、めんどくさい人だな…」

「これで下手っていうの…自分に厳しすぎない?」

 

 

 

「……っ」

「……」

カラオケの採点結果は、英寿の結果を大きく超える97点であった。

その結果に英寿も言葉が出ずにいた。

 

「……何よ、笑いたきゃ笑いなさいよ」

「……」

 

歌とは、点数だけで判別できるものでは無い。

曲のテンポ、間の開け方、息継ぎの仕方。そして何より、歌詞に込められた思いや熱情、それを汲み取りどれほど形に出来るかが重要だ。

 

「…英寿?」

「……いや…」

正直、本当に言葉が出ない

マーリが選んだ曲は何の変哲もない有名どころのバラードだった。しかし、そこらの一般人が歌う歌とはひと味もふた味も違った

これまで2000年間、幾多もの歌姫に会って来た

だが、これ程までに心打たれたものはそうそうない

 

「……?」

「……」

アイドル…か……

なかなかに悪くないイバラの道なのかもしれないな

 

 

「どういうわけで!JIFでセンターを務めるのは有馬かなちゃんです!センターに選ばれた今のお気持ちを一言!」

「そうですねーっ」

後日、カメラの前に集まる『B小町』の3人。

いよいよセンターが決まりウッキウキのルビーとMEMちょの傍らにニッコリ笑顔の有馬が微笑んだ。

 

「とりあえずカメラ止めろや」ニコッ

 

 

 

「言ったよね?何度も私、センターイヤだって」

「「……」」

椅子に座り膝を組み、目元を暗くした有馬から放たれるとてつもないプレッシャーは、思わずルビーとMEMちょをソファに正座させる程であった。

 

「なんかアレかな?どうせ私みたいなチョロくて流されやすい女は動画撮影中にしれっと既成事実作れば断れないと思ってのやつ?」

「「……っ」」

やばいバレてる!

 

「いやまぁね!二人でカラオケに行った時話し合ったんだけどさ、私達のどちらがセンターやってもパッとしないって話になって……そんな時、有馬ちゃんが出した曲のPV見て…」

「……!」

MEMちょからの白状の言葉に、有馬は反応する。

 

「…見ちゃったかぁ」

それはまるで、自分の過去を掘り起こし墓穴を掘ってしまったかのような表情だった。

 

「『ピーマン体操』がなまじ売れたから皆が曲もイケるって勘違いして、全員が大ヤケドしちゃったアレね」

「……」

「忘れて。あれは私の迷走時代の象徴。有馬かなが売り方に迷ってた頃の黒歴史だから」

「そんな風に言わなくても……」

「いやもうおしっこ漏れちゃう位売れなかったんだから。関係者全員が忘れたがってるから」

「……」

ルビーは自分を卑下する有馬の背中を見て、思い立った。

 

「『ピーマン体操』、正直オンチだと思った」

「……」

「だけど2枚目の曲は凄く上手になってて、3枚目はそれよりもっと……」

ルビーは自分の思いを正直に打ち明けた。それで有馬が傷付くかもしれないと分かった上で。しかし、それでもルビーは彼女の努力を認めていた。認めている事を、解って欲しかった。

 

「一杯練習したんだよね?すごく頑張って、皆の期待に応えようと……そんな責任感のある先輩になら、『B小町』のセンターを──」

「うるさい!」

しかし、それは少し早計だったかもしれない。

 

「そうやって適当に褒めてれば私が落ちるとでも思ってるんでしょ!馬鹿にして!!」

「……っ」

「こればっかりは本当に無理!何度頼まれてもセンターはやらないから!」

「……」

これが有馬の本音、なのだろう。

 

「勝手に話進めて、ごめん……もう言わない…」

だからこそ、自分達も見せるべきだ。

 

「でも最後に、私達の曲を聞いて…」

彼女に誠意を……

そう思うと、ルビーとMEMちょはマイクを持つ格好をした。

 

 

「「「ア・ナ・タのアイドル♪サインはB♡」」」

 

「いやだいぶ良いんじゃない!?」

「やっぱかなちゃんセンターハマってる!これならJIFもイケるよ!」

「あぁぁぁぁ!もぉぉぉぉ!どうして私はいつもこうぅぅっ!」

結果的に『B小町』のセンターは有馬に決まった。

 

「いやぁ…まさかあの地獄みたいな空気からの大逆転あるとは思わなかったよ」

「私は最初からこうなるって思ってたよ?」

「黙れヘタウマとオンチ!アイドル志望の奴等がここまで歌ヒドいとは思ってなかった…英寿の方がちゃんと歌えてたわよ。カオの良さにかまけてのうのうと生きてきたのが歌から感じ取れる」

「辛辣ぅー」

辛辣な言葉を2人にぶつけるかなに対し、心を無にしてツッコんだ。

 

「たしかにこれなら、私がやるのが一番……」

だけど

本当にやりたくない

 

かなが抱えるものは、一筋縄では解決出来ないものだった。だが、彼女はそれを誰にも言えずに居た。

 

「ホント、アンタ達は私が居ないと駄目ね!せいぜい私が引き立つように頑張りなさい!」

なんでこの口はいつも、私の気持ちと逆の事を言うんだろう

 

「話は纏まったみたいね」

「…社長」

かながセンターを容認すると、ミヤコがやって来た。

 

「ステージまでもう数日もない。これから追い込みをかける所だろうし…サポートしてくれる子達捕まえたから、こき使ってあげて」

「サポートしてくれる子達?」

ミヤコの発言にルビーは不思議そうに答える。

するとミヤコは事務所の開いた扉の方へ手を招き入れようにする。

ゆっくりとドアが開き、かなは内心ドキドキしていた。

 

「それって、もしかしてアク……」

アクアが自分達の面倒を見てくれるのかもしれない。

センターになった自分を見てくれるのかもしれないと少しだけ、ほんの少しだけ心を弾ませた。

 

「ヤァ!」

「いやアンタかい!」

「俺も居るぜ」

「いやアンタもかい!」

ドアから姿を見せたのは、ぴえヨンと眼鏡をかけた英寿だった。

 

 

 

デザイアグランプリ主催のイベントは、

イベントの参加プレイヤー以外の

エントリーも可能となる。

 

 

第二十二話「憧憬Ⅳ:センターは誰だ!?」




次回

「後悔してる?アイドルになった事」
「アイドルにはマネージャーが必要だろ?」
「憧れだから」
「その人に言われたの、もし私がアイドルになったら推してくれるって」
「僕は、割と弱いんですよ」
「俺達は、常に仮面を被ってるんだ」

第二十三話「憧憬Ⅴ:マスクの下」
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