仮面ライダーギーツ【Mother and Children】 作:キャメル16世
3期が楽しみ
新生『B小町』
有馬かなをセンターに迎え、星野ルビーとMEMちょの3人構成で立ち上がった新生アイドルグループ。
かつて伝説的な盛り上がりを見せた『B小町』を復活させ、界隈では徐々に盛り上がりを見せている。
ジャパンアイドルフェス、略して「JIF」の開催が決定し、デザイアグランプリのプロデューサーであるクラムのコネにより、参加を許された。
本番まで残り数日。追い込みをかける為、新生『B小町』の元に協力な助っ人が2人現れた!
「ヤァ!」
「いやアンタかい!」
「俺も居るぜ」
「いやアンタもかい!」
そこにはジャージを来たぴえヨンと、眼鏡にスーツで着飾った英寿が居た。
「あっ、ぴえヨンおひさ!エースさん何その格好〜」
「フッ、まぁ…アイドルにはマネージャーが必要だろ?」
「えっ?ぴえヨン!?本物!?」
「アンタうちの稼ぎ頭でしょ!頼むから普通に働け!」
「ぴえヨンさんて、前職プロダンサーですもんね!アイドルの振付師の仕事もしてたって動画で……」
「そうなんだ!」
ぴえヨンの登場により感情を露わにするかな。まるで友達のように挨拶するルビー。そして本物のぴえヨンに会えた事で興奮するMEMちょ。
英寿はネクタイをクイッと上げながら、カッコつけて言っていた。
「どうですか?プロから見て私達は……多少形にはなってると思うんですが…」
「んーまぁ、これ位の仕上がりでステージ上がる子達は全然居るけどね。マジのクオリティ求めるって言うなら……──」
まずは体力だよね!
「坂道ダッシュあと10本!」
「「「ひぃーっ!」」」
別の日、B小町とぴえヨンは運動着に着替えて体力作りのトレーニングを始めていた。
ぴえヨンのフィジカルに何とか追い付くB小町。
「そして疲れ切った後にセットリスト通しで3回!ヘトヘトでもパフォーマンス落とさない体力がまず大事!笑顔も忘れずに!」
「「「はいっ!」」」
無酸素運動をした後に、追い込むように振付を繰り返し行う。B小町の3人は笑顔を忘れずに練習に励んでいた。
「はァァっ!」
「ふっ!はぁっ!」
「グッ…!」
そして極めつけに、バトルのトレーニング。
マグナムフォームのギーツと、エントリーフォームのマーリが対立している。
「どうしたマーリ!当日はジャマトも現れるかもしれない!そんな程度じゃ到底デザ神にはなれないぞ!」
「…クッ…はァァっ!」
1体1で稽古を付けてもらっているマーリ。ギーツの猛攻を避けながら、果敢にギーツに迫って行く。
「はァァァっ!」
「…っ」
マーリのキックが、ギーツの顔の目の前にまで来た。マーリは攻撃をそこで止める。
「……フッ…悪くないな」
「……ヘヘッ…」
「…よし、それじゃあもう1本だ!」
2人はどこか楽しみながら稽古に励んでいた。
その様子を、休憩中のルビーとMEMも見守っていた。
「うわぁ〜!先輩やるなぁ〜」
「エースもなんだかんだ楽しそうだねっ…それに……」
「……?」
「…有馬ちゃんも、凄い張り切ってるよ」
「……うん」
2人から見て、マーリの姿はとても勇ましく、そして逞しく見えた。
「私達も負けてられないねっ!」
「…うんっ!」
「……」
その後も特訓は続き、気が付けば2日が過ぎた。
「2曲目のサビ前さ!上側からぐるっと回って入れ替わったらカッコ良くない!?」
「あー良いかも!」
「だったら、台から飛び上がるように入れ替わるのはどうだ?」
練習場にて、振付の休憩時間の合間にルビーとMEMちょと英寿の3人は振付のアレンジを考えていた。
「エースさん〜ヒーローショーじゃないんだからァ〜」
「エース〜実は全然アイドル好きじゃないでしょ〜」
「む……」
英寿の提案に対して、ルビーとMEMちょは少し小馬鹿にしながらツッコむ。英寿はそれに対して解せぬ表情をしていた。
「……どっからあの元気が出てくるのかしら」
そんな彼女らの会話を、かなはベランダで聞いていた。
元々アイドルに対しての熱量が他の2人よりは低いかな。今でこそセンターを容認したが、今でもやりたくないという思いは変わらなかった。
だけどそれを口に出す訳にもいかず、かなは孤独に浸っていた。
「後悔してる?アイドルになった事」
「ぴえヨンさん…」
そんなかなの横に来たのは、ぴえヨンだった。
「いえ、自分で決めた事なので後悔とかは…」
「……」
「でも向いてないとは思ってます。全然アイドルやれる気がしない。センターなんてもってのほか…」
かなは心の内に秘めていた思いを吐き捨てた。
なにか助けを欲しがるような、そんな声色を見せる。
「歌上手いのに、なんでセンターそんなにイヤがるの?」
「だってセンターってグループの顔なんですよね。私なんかが居るべきポジションじゃ無い」
「私なんかって何?有馬かなは凄いと思うけど?」
「…皆そうやって適当な事を言うじゃないですか。なんにも知らないくせに……」
「……」
「私の何を知ってるんですか?」
かなは今度は心の闇を吐き捨てた。まるで泥を撒き散らすように、人を簡単に傷付けるような目で、ぴえヨンの表情を伺った。
「…んー…そうだなぁ……」
「……」
「毎朝走り込みと発声欠かさない努力家。口の悪さがコンプレックス。自分が評価されるより作品全体が評価される方が嬉しい。実はピーマンが大嫌い」
「えっ……私の事めちゃくちゃ見てくれてる。嬉しい……」
簡単に堕ちたかなは、頬を少し赤くして喜んでいた。
てか深いとこ突いてくるなぁ
やばっ…ぴえヨンちょっと好きになっちゃった
「もしかして私のファンなんですか?」
「そうだよ」
「えーうそー」
かなは夜空を見上げ、その表情は月明かりに照らされていた。
「…居たんだ…今の私にファン」
その後のアイツらがどんな会話をしたのかは俺は知らない
ただ2人は過ぎ行く時間の中で、2人だけの時間を過ごしていた
「ぴえヨン忙しいだろうに毎日来てくれて嬉しいなー」
「ねぇ!やっぱ動画で見るのとは全然違う!」
ルビーとMEMは並ぶ2人を見て言う。
「体型ももっとガッチリしてるイメージだったけど、意外と実物はスラッとしてるって言うかぁ…背格好なんてアクたんと同じじゃん」
「あはは!お兄ちゃんがあんなアヒル声出してたら一生笑う!」
「……」
その後もレッスンとトレーニングは続いた。
特訓によりパフォーマンスの向上、そして戦闘スキルの上昇が垣間見える。
そして何より変わったのが、有馬かなの態度だ。
「ありがとうございますぴえヨンさん!」
少し前までレッスンに対して前向きでなかったのに、ぴえヨンとの会話をきっかけにか、前向きに取り組むようになっていた。
「いやーホント優しいわーどっかのアクアとは大違いね」
「有馬ちゃん、アクたんの事そんなに嫌いなんだ?」
「好きになる要素が一個もないわよ!デリカシーと常識が無いし?クールぶってるけどただのムッツリ!兄妹揃って年上に対する態度がヤバイし!一度も敬語使われた事無いし!一度ガツンと言わなきゃ駄目かしらね!」
「……」
私も有馬ちゃんよりだいぶ年上のはずなんだけど、敬語使われた記憶が無い……
「あーあ!子供の頃はまだ可愛げがあったのにね」
「あれ?付き合い長いんだ?」
「そうよ小さい頃現場でね!私とアクアがまだ3つとか4つの頃!?あんなヤツ一度会ったら忘れられないじゃない!?」
「えっ…うん……」
「昔からずっとアイツが脳裏に居たのよ!あの頃は天使みたいだと思ってたのにあんな憎たらしく育っちゃって…私の思い出を汚さないで欲しいんだけど!」
「ん?ん〜〜?」
かなの怒号に、MEMは戸惑いを隠しきれない様子だった。
そして振り付けの練習中。
ぴえヨンはタブレットを手に、誰かと会話している様子だった。
「いよいよ明日は本番、どうでしょう彼女達」
『大分良くなったんじゃないかな。ルビーちゃんのダンスは元々仕上がってるし、MEMちょは戦闘スキルも抜群。有馬さんは実直で飲み込みも早い、ダンスも歌も戦闘も申し分ない。午後はバミリ意識で練習して、明日に備えてゆっくり休むと良いよ』
しかし、その声はどちらもぴえヨンとは似つくわない声だった。
その会話を、英寿も聞いていた。
「はい。休憩中にこんな面倒なお願い聞いて頂いてありがとうございます」
「……」
『いや、ボクも彼女達を気に入ってるからね。頼ってくれて嬉しいよ……だけどちょっとショックだなぁ』
「……」
『君がボクになりすましても誰も気付かないんだから』
そう、この電話相手こそが本物のぴえヨンであり、このぴえヨンはアクアが変装していたものだったのだ。
『たいしたもんだよ。演技やってる人なら簡単に出来るものなの?』
「どうなんでしょう。出来る人は出来るんじゃないですか?」
『ふーん?でもこれやる必要あった?わざわざボクになりすまさなくても……』
「僕が何言ってもきっと反発されるので」
そう言って見たのは、かなの姿だった。
「ぴえヨンさんの言葉なら素直に聞き入れてくれると思いますから」
『君の言葉でもちゃんと聞いてくれると思うけどね』
「……僕は、割と弱いんですよ」
「……」
アクアは通話を切り、タブレットを伏せた。
それを待っていたように、英寿が切り出した。
「いつまでこんな事やってるつもりだ?そいつの言う通り、このままじゃ状況は一向に良くならないぞ」
「……」
「……誰だって悩みや葛藤はある。だが人は、それをさらけ出すことで、人と向き合える」
英寿はかなの方をチラッと見る。そこには、熱心に練習に打ち込む少女達の姿があった。
「…なら俺は、人とは向き合えない」
アクアはそう言うと、マスクを被ったまま英寿の元を離れる。
「…いつまで仮面を被ってるつもりだ?」
英寿は3人には聞こえないように、だが少しだけ力強く言い放った。
それに対し、アクアも足を止める。
「……何言ってる」
「…っ?」
「…俺達は、常に仮面を被ってるんだ。仮面を外せば、俺達はこのゲームには勝てない」
「……」
「…それが俺達“仮面ライダー”の宿命だ。俺が仮面ライダーでいる限り、俺は俺の化けの皮を剥がすつもりは無い」
「……」
コミカルなマスクをしているのにも関わらず、その言葉は非常に重く、胸に突き刺さってくるような痛みがある。それはまるでアクアの心情を表しているかのようだ。
「……」
英寿はその後の言葉が見つからず、ただ立ち去る彼の背中を見つめる事しか出来なかった……
「はーー!いよいよだね!私達もアイドルデビューだよ!」
その日の夜。
明日に備え事務所で合宿するルビーは布団を並べて横になっていた。そんな中彼女は楽しみすぎて眠れない様子だった。
「どうするどうする!?」
「うっるさいわねー…」
隣のかなの寝込みを邪魔して。
「良いから寝なさい。睡眠の重要さを舐めるんじゃないわよ」
「でも全然寝れない!楽しみすぎる!どーしよー!!」
「……ほんと、楽しそうでいいわね」
「…先輩は楽しくなさそうで良くないね」
たまに出るルビーの毒舌。しかし今回は的を得ている発言だ。
「……むしろどうしてアンタはそんなに楽しそうなのよ。明日がどうなるかなんて誰にも予想出来ない。私等みたいなコネ組は大ブーイングかもしれないし、そもそも客が居なさすぎて閑古鳥鳴いてるかもしれない。それに今年はデザイアグランプリ主催…無事に帰って来れる保証もないのよ?どうしてそんなにもポジティブに居られるのか……」
「んー?」
かながここまで言う理由は、最後の抵抗なのかもしれない。そしてルビー達がそれを受け入れない事も承知の上だ。
だけど、それでもかなは知りたかったのかもしれない。
ルビーが上を目指す、その理由を……
「憧れだから」
「……」
その答えは、とっても単純なものだった。
「私は昔……ずーーっと部屋の外に出れない生活してて、未来に希望も何も無くて。そのまま静かに、ドキドキもワクワクもしないまま死んでいくんだろうなって思ってた…だけど、ドルオタになってから毎日が楽しくて、胸の中が好きって気持ちで満たされて……」
ルビーは自身の過去を語った。それは自身の前世の頃の記憶だ。意識が遠のいているのか、その事を自覚しないままかなに語り続けた。
「でね……そんな時ある人に出会って……」
「…ある人?」
「うん、初恋の人」
「あら甘酸っぱい」
「その人に言われたの…もし私がアイドルになったら推してくれるって……その時からずっと、アイドルになる事を夢見てた……」
「……」
「先生…今どこに居るんだろう……きっとまだドルオタやってるだろうし……アイドルで売れていけば…きっと……」
「……良いわね、アンタには推してくれる人が居てくれて」
ルビーが寝た事を確かめたかなは、ルビーの頭をそっと触った。
「私にはそんな人居ない。皆子役時代の私を見て、今の私を見てくれる人は居ない」
そして部屋を後にしたかなは、ルビーの話を反芻していた。
それにしてもルビーが引きこもりだったとは意外ね
アクアも社長も苦労してたのねー……っ!
そこでかなはとんでもない物を目にする。
ぴえヨンのマスク!?
それは部屋の机に置かれたぴえヨンのマスク。そしてその横には人の気配。
間違いなく、ぴえヨンの
頑なに取らないから気になってたのよね
あのマスクの下はどんなツラしてるのか!
「さてさてやって来ました!ジャパンアイドルフェス!」
次の日、いよいよJIFの当日を迎えた『B小町』。
会場に着くなりおおはじゃぎで現場を目指す。
「今日お前らが立つのは10個あるステージのうちスターステージ。結構地下アイドルも多いステージだな」
自称プロデューサーの英寿も同行し、案内をする。
「出来ればメインステージが良かったけど…」
「流石に過ぎた願いだよねーっ」
「あー緊張してきたぁ…上手くやれるかなぁ」
「大丈夫!睡眠はしっかりとったでしょ!」
「まぁ『B小町』の振り付けってハードなのばっかだし、ちゃんと寝ないとキツイよね」
「うちは踊りメインだからね!やっぱりちゃんと寝ないと!」
「……」
ところで先程から会話に参加していない有馬かな。
彼女は彼女でとんでもない悩みを抱えていた。
昨夜見た光景。
それはぴえヨンのマスクを取ったアクアの姿だった。
その姿を見たかなは結局……
どうしよ……
結局一睡も出来なかった…
「証明!もう少し前に!」
「あ、フェンスはこっちに運んどいて!」
「よし!本番まであと3時間!ちゃっちゃと終わらせるぞー!」
アイドルフェス会場。
そこでは何人ものスタッフ達が、今日のライブの為にステージの設営の最終確認の真っ最中だった。
「……ん?」
「どした」
すると、そこで一人のスタッフが違和感に気付く。
「……いや、なんか聞こえた気がして…」
しかし振り返るも、そこには何も無かった。
「こっわ。幽霊にでも憑かれたんじゃね?」
「やめろって!まぁ、気のせいだよなぁ……」
その場の確認も済み、スタッフ達は会場を後にする。
だがしかし、先程のスタッフが見つめた先。
大きな葉っぱが地面に乗っていた。しかし、その周りの地面は波紋が広がるように波打っていた。
「……ジャァァ…」
葉っぱの下から地面に顔を覗かせる謎のジャマトは、今か今かと獲物を待ち続けていた……
第二十三話「憧憬Ⅴ:マスクの下」
次回
「何この地獄みたいな場所……」
「今回はどんなゲームなんだ?」
「ライブ会場に突然、ジャマトが現れたら?」
「ステージに…!ジャマトが…!!」
「今回のライブ…お前らしく振る舞え」
「一人じゃないから…怖いのよ」
第二十四話「憧憬Ⅵ:有馬かなの受難」