仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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第二十五話「憧憬Ⅶ:夢へのステップ!1・2・3!」

スターステージに『B小町』の3人が現れると、観客達は盛大な盛り上がりを見せた。

ある者はメンバーの名を叫び、ある者は必死にペンライトを振っていた。

 

今回のゲームでステージにジャマトが現れることを知っている者も一定数いる。

周りを警戒しつつ『B小町』のメンバーに目をやる者も、逃げれる準備だけはしっかりと済ませた者もいる。

 

そんな色んな感情が流れる中、早速最初の楽曲が流れた。

当時の『B小町』でもかなりの人気を誇っていた「STAR☆T☆RAIN」だ。

 

『B小町』のメンバーも、ステージの壇上に上がり観客の面々を見る。期待を乞う者、見極めようとする者、その者達の視線が、彼女達を容赦なく刺す。

 

一度ステージに上がれば別に緊張とか無い

むしろ冷静すぎる自分が居て

 

かなはステージに上がった自分を自己評価する。

 

集客は悪くない

うちにはインフルエンサーが居るから心配はしてなかったけど、思ったより赤いペンライトも目立つ

 

 

 

「一応サイリウムのカラーは私が赤!アイと同じ色!」

ルビー達はライブの先日、自身のサイリウムの色を決める会議をしていた。

 

「じゃあ私は黄色かなぁ」

「先輩は?」

「…なんでも良いなら、白」

それぞれが自分のイメージカラーを想像しながら色を決めるが、そんな中かなは白を選択した。

 

「白かぁ」

「駄目なの?」

「駄目じゃないけど、特別枠感出てズルいって思う子も居てモメがちだから…」

「ドルオタじゃない先輩らしいっちゃらしいから良いけど」

 

前よりの客が降ってる色は黄色ばかり

まぁ集客の柱がMEMちょで、うちの客はMEMちょ目当てで、皆あの子が見たくて来てる

やっぱりあの子がセンターの方が、客は喜んだだろうな

 

かながそんな事を考えながらライブに挑んでいる中。

観客の一部から、悲鳴が聞こえた。おそらく、中央後方付近。

 

「……っ!」

それに気が付いた『B小町』のメンバーも、歌うことを忘れ悲鳴の先を見る。

 

「…ジャァァ」

大きな蓮の葉のような笠を被った異形のジャマト。

細いツタが身体を構成し、その所々に円盤状の葉が引っ付いていた。

「オニバスジャマト」は『B小町』には目もくれず、目の前の観客を襲い始めた。

 

「…っ…まずいっ!」

「私に任せて!」

すると、我先にとルビーがステージを飛び出しドライバーを装着する。

 

「変身!」

 

《 ARMED SCISSORS 》

 

仮面ライダーテラスへと変身したルビーはオニバスジャマトを観客から引き剥がし、観客を捉えようとするツタをレイズシザースで切断する。

 

「……ルビー…!」

「2人はライブに集中!言ったでしょ?皆は私が守るっ!」

「……」

これこそが、ルビーが考案した作戦だった。

ライブ中に襲って来たジャマトは自分が対処し、ライブは継続させる。

捨て身でありながら、守りの体勢を固めた作戦だ。

 

しかし、この作戦には欠点がある。

アイドルは、メンバーが全員揃ってようやく完成する。この作戦でメンバーが一人でも離脱すれば、それはライブ成功とは言えない。

それをかなもMEMも理解していた。

 

確かに、このやり方が1番シンプルで1番効率がいい…

だけどそれでも犠牲にするものはある

どっちみちライブは失敗…

これが私達の、最初で最後のライブに……

 

「…っ!?」

しかし、かなは驚くべき光景を見る。

 

「We!Are!STAR☆T☆RAIN!Check!Now!Come on!Come on!Come on!Come on!」

なんとルビーはジャマトと戦いながらも、歌と踊りをし続けていたのだ。

 

 

 

その光景を、もう一人の存在が見ていた。

 

「…なるほどねぇ…ジャマトの相手をしながら歌も踊りも続ける。簡単そうに見えて、おいそれと出来ることでもない……流石、僕の推し…アイドルの鑑!」

シックはライブ中にジャマトと戦うテラスを見ながら感激を表現する。

 

「……それじゃ、たまには仕事しますかっ」

シックは手元の端末を操作し、テラスに向かって何かを送った。

 

「さぁ、ここからが腕の見せどころだよォ?」

 

 

 

「ふっ!はぁっ!」

「ジャァァッ!」

「よしっ!……ん?」

 

《 Secret mission, Clear. 》

 

「おっ!これって…!」

すると、テラスの目の前にミッションボックスが出現し、テラスはそれを興味津々に開ける。

 

中には大きなバックルが入っていた。

天面に1から3の数字が書かれたボタンに、前面に大きな9分割された模様ボタンがある。

その名も「ステップバックル」。シックから送られたサポートアイテムだ。

 

「…よぉ〜しっ!使ってみよう!」

「……ジャァ…」

テラスなバックルを構えて、天面の1と書かれたボタンを押す。

 

《 1!》

 

続けて2と3のボタンを押す。

 

《 2!》

 

「…ジャッ…ジャァッ!」

 

《 3!》

 

3番まで押した事でリズミカルな音声がバックルから流れる。その音楽に、テラスも身を乗らせる。

 

「…よぉ〜っし!ノってきたァァ!」

 

《 SET 》

 

バックルにセットした事で、前面の9マスのボタンが3色に光り始める。

赤、黄、白。まるで今の『B小町』を表しているかのようだった。

 

「…ふんっ!」

テラスが9マスのボタンを思いっきり押し込む。

テラスの上半身にアーマーが形成され、その装備はどことなくアイドル衣装を彷彿とさせた。

 

《 STEP 》

《 READY FIGHT 》

 

「はっ!」

「ジャッ!」

ステップフォームへと変身したテラスは、先程よりももっとリズミカルにジャマトに接近、戦闘を繰り広げた。

 

華麗な足捌きによりジャマトを翻弄する。

 

「ふっ!ほっ!やぁっ!」

「ジャジャッ…!」

しかし、オニバスジャマトは攻撃を受けた後テラスに向かって無数のツタを伸ばした。

そのツタはテラスの足首にまとわりつき、足技を封印した。

 

「えっ!ちょっ!?」

「ジャジャジャァ!」

口からヘドロのような爆弾を吐き出し、テラスにダメージを与える。

 

「こんのっ!こうなったら…!」

 

《 REVOLVE ON 》

 

テラスはドライバーを180°回転させ、上半身と下半身を入れ替える。

そうすることにより、足首をまとわりついていたツタが手首に、下半身は自由となった。

 

「ほっ!おりゃァ!」

「ジャァ…!」

テラスは手首のツタを引き寄せるようにジャンプし、寄せられたジャマトにキックをお見舞する。同時に手首の拘束も解かれた。

 

《 REVOLVE ON 》

 

再び上半身と下半身を入れ替えたテラスはバックルに手を伸ばす。

 

《 1!》

 

バックルの1のボタンを押し込み、リズミカルな音楽と共に9マスのボタンが赤色に光る。

 

「ジャァァ…」

「行っくよォ!とぉ!」

高く飛び上がったテラスは、前方に空中回転しながら9マスボタンを押し込んだ。

 

《 STEP 1 STRIKE 》

 

「てりゃァァ!」

「ジャッ!ジャァァ!」

強力なかかと落としを脳天に食らったオニバスジャマトは爆散する。

 

「…やったァァ!……っ?」

喜んだのも束の間、テラスはある違和感に気が付く。

 

「ジャァァ…」

「ジャァ……」

「……うっそぉ…」

振り向くとそこには、先程倒した筈のオニバスジャマトが佇んでいた。しかも1匹では無い、数十体の別個体が後ろに佇んでいる。

 

「……っ」

そろそろ戻らなければ、ライブは本格的に失敗となる。しかし、ここで戻れば観客への被害はもっと酷いことになる。

それを理解した上で、テラスは再び戦闘態勢に出る。が……

 

「…っ!うわっ…!?」

今度は足首だけでなく、手首も拘束されてしまった。これではリボルブオンする事も攻撃する事すら出来ない。

 

「ジャァッ!」

「ジャァァ!」

先頭の2体が襲いかかって来る。一気に距離を縮められ彼らの攻撃が寸前の所まで来た。

 

「……クッ!」

咄嗟に目を閉じたテラス。しかし次に聞こえたのは、2発の銃声だった。

 

「はっ!はぁっ!」

「ジャッ!」

「ジャジャッ!」

「…っ!エースさん!?なんで!?」

「……お前達のプロデューサーだからな」

現れた浮世英寿こと、仮面ライダーギーツがマグナムシューターでテラスに近付いたジャマトを退けたのだ。

 

「今回のゲームはあくまでライブの成功失敗を判別するものだ。参加者以外のプレイヤーが来てもなんの問題もない。それに、お前はライブよりも観客の命をとった。それが最善の選択かは知らないが、少なくとも…少しは成長したみたいだな、テラス」

「……エースさん…」

「…お前はステージに戻れ。お前の仲間が待ってるぞ」

「うん!ありがとう、エースさん!」

変身を解除したルビーは、意気揚々とステージに向かって行く。

 

「…テラス!」

「……?」

しかし、途中でギーツに呼び止められる。

不思議そうな顔で振り向く彼女に、ギーツはこう呼び掛けた。

 

「……楽しんでこい!」

「…っ……うんっ!」

満点の笑顔で答えたルビーは、今日一の笑顔でステージへと戻って行った。

 

「……ん」

「ジャァァ…」

「ジャァ…!」

「……今、アイドルの卵が孵ろうとしてるところだ」

後ろの気配を感じ、ギーツはジャマトに銃口を向けながら振り向いた。

 

「……不死鳥という名の、卵がなッ!」

 

*

 

「ルビー、大丈夫だった?」

「うん!エースさんが助けてくれたからっ!ヘヘッ!」

「……っ」

「みんなー!ごめんおまたせぇー!それじゃ改めて、先程お送りした曲は、「STAR☆T☆RAIN」でーす!」

「……」

 

ああ…この子は眩しいな……

アイドルが好きで、ずっと楽しそうで、アイドルになる為に生まれてきたみたいな子

今もこの瞬間も誰かの心を奪って、どんどんファンを増やして、こういう子が上がっていくんだろう

 

「それじゃあ次はみんなお待ちかねのあの大ヒットソング!「サインはB」!!」

「……」

羨ましい……

 

みんなに見てもらえて

求められて

私の事を見てくれる人は誰も居ない

ママもマネージャーも、私の事ほったらかして

ファンですら見てるのは昔の私の面影だけ

 

『誰か私を見て』

それだけを十数年叫び続けてきたのに

 

私が必要だと言って

それさえ言ってくれるなら私はどれだけでも頑張ってみせる

 

あの子は使えるって言って

そしたら馬車馬のように働くよ

 

頑張ったねって褒めて

そしたらもっともっと頑張るのに

 

誰か

誰か…

 

私はここに居ていいって言って

 

*

 

「ジャァッ!」

「ふっ!たぁ!」

ステージ後方でジャマトの相手をするギーツ。

観客に、そしてステージに影響が出ないように細心の注意を払って戦う。

 

「ジャァァ…」

「ジャジャ…」

しかしどこから湧いてくるのか、このジャマトはいくら倒しても無数に現れる。

 

とても厄介なジャマトだ…

さてはクラムの言っていた種持ちか?

 

そして、問題はそれだけじゃなかった。

 

「…くっ…!なっ!?」

次の瞬間、ギーツの足元からジャマトの頭と腕が現れ、ギーツを抱き締めるように捕縛した。

それと同時に足元の地面がまるで水面のように柔らかくなり、果ては足が沈み始めた。

 

「…まさか…!地面を液状化させられるのか!?」

液状化した地面に吸い込まれれば、一巻の終わりだ

息は出来るとは思うが、水中では身動きが取れない。戦闘では劣悪環境でしかない

 

ギーツは抗いながらも思考を巡らせる。

 

「…っそうだ!コイツがあれば…!」

「ジャァッ!」

「うわっ…!」

何かを取り出そうとしたギーツを、ジャマトは完全に地面に引きずり下ろした。

しばらく静かだったが、次の瞬間地面から1本のワイヤーが伸びて近くの柱に引っかかった。

 

《 DUAL ON 》

《 MAGNUM 》

《 ARMED WINCH 》

 

「よっと!」

地面から飛び出して来たギーツ。

レイズウインチの力で地面の中から引き上がってきたのだ。

 

「…やっぱり使えるな、コレ」

初めは使い方が分からなかったが、何かと役に立つウインチバックルに感心するギーツ。

沈んだ影響でマグナムシューターは地中に取り残されてしまったようだが、多少は問題ないだろう。

 

すると、不思議と観客席に目が行った。

観客の大半が赤や黄色のサイリウムを振っている中、ステージ中央の少し左寄りの位置で、1本の白いサイリウムが見えた。

 

「あいつは……フッ…」

人とは向き合えないとは言いつつも、しっかりとお人好しだな……

 

「ジャァァ…」

「…さぁ、ラストスパートだ。お前らのタネは分かった…ここからが、ハイライトだ!」

 

*

 

ステージ中央の、ちょうど有馬かなの視線に入る位置。

そこで白、そして赤と黄色のサイリウムを持った星野アクアが、真顔でノリノリのヲタ芸を披露していた。

この奇行に対し、流石の『B小町』のメンバーも気が付く。

 

その中でもかなは、笑いが込み上げて仕方がなかった。

 

馬鹿みたい!スましたカオして何してんのあいつ!

ご丁寧に三人のサイリウム振って、箱推し気取り?この浮気者め!

 

本当にムカつく男

目に物見せてやる

 

「わた〜しを♪推〜してくれるの〜なら♪爆レスをあ〜げる〜♪」

決めたわ

私がアイドルやってる間に、必ずアンタのサイリウムを真っ白に染め上げてやる!

 

「ア・ナ・タのアイドル〜♪」

私の事、大好きにさせてみせる!

 

「サインはB♪チュッ♪」

 

アンタの推しの子になってやる!

 

「……っ」

かなから向けられたウィンクに、アクアは目を輝かせる。

アイドルの素質、それが彼女にもあるとは思ってはいたが、それ以前に…今の有馬かなの瞳は、今まで以上に輝いていた。

 

*

 

「はぁッ!はァァっ!」

「ジャジャァァ!」

「……クッ!」

「ジャァァ……」

「…これじゃあキリがないな」

どれくらい経っただろうか。ジャマトはいくら倒しても全滅する事は無く、無数に現れるジャマトにギーツは苦戦を強いられていた。

 

「エースさ〜ん!」

「こっちは終わったよォォ!」

「……ん」

ステージの上から彼を呼ぶ声が轟く。

どうやらライブは無事に終わったようだ。

 

「エース!そこを退きなさい!今度は私達が相手よ!」

「……ふっ…仕方ない、ハイライトは譲ってやるか」

あとはこのジャマトを倒すだけだ。

『B小町』の3人はアイドル衣装のまま、デザイアドライバーを装着する。

 

彼女達はそれぞれ、ステップバックル、ヴァンパイアバックル、そしてかなはまた新たな蒼いバックルを構えていた。

潜水艇をイメージした、「マリンバックル」だ。

 

《 SET 》

 

それぞれバックルを装填し、変身ポーズをとる。

その姿に、観客達も歓声を挙げる。

 

「「「変身ッ!」」」

 

《 STEP 》

 

《 VAMPIRE 》

 

《 MARIN 》

 

ルビーは再びステップフォームへと、MEMちょはヴァンパイアフォームへと、そしてかなはマリンバックルの力で上半身に少し重厚感のある蒼色のアーマーが装着される。両腕には水流ファンが装備され、肩にはコマンドフォームのような小型のキャノンが備え付けられていた。

複眼は髪色と同じ小豆色に変化し、その輝きは健在だった。

 

「……行くわよ、アンタ達…!」

「うんっ!」

「よぉ〜しっ!」

「……ここからが私たちの、ハイライトよッ!」

 

《 READY FIGHT 》

 

 

 

ルール条件に則っている場合でも、

ジャマトを倒さない限り

ゲームクリアにはならない。

 

 

第二十五話「憧憬Ⅶ:夢へのステップ!1・2・3!」




次回

「あとは私たちに任せて頂戴」
「流石は天才子役様だ」
「私は新人…新人アイドル、有馬かな!」
「絶対に勝とうね!みんな!」
「アクア君のサポーターが、私になんの用かなぁ?」
「お前の知らない事を、俺は知っている」
「教えてやるよ。アイツの全てを」

第二十六話「憧憬Ⅷ:アクアとマリンと芽吹く想い」
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