仮面ライダーギーツ【Mother and Children】 作:キャメル16世
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「この顔を見ても、そんな事が言えるのか?」
「……なんで…お前…!?」
「……雨宮…吾郎…」
イラドの正体が雨宮吾郎の顔と瓜二つである事を知った英寿とアクアは驚きを隠せずにいた。
「ど…どういう事だ…!?雨宮吾郎は死んだ筈じゃ…!」
「俺は雨宮吾郎自身じゃない。当然、雨宮吾郎の身体を乗っ取っている訳でもない。奴の遺体は、今も行方不明のままだ」
「……じゃあ…何故?」
「……俺のこの外見は、あくまでデザインされたものだ。故に俺自身の意思に関係なく、この外見で生まれてきた」
イラドは英寿の方を一瞬見た後、アクアに目線を合わせて語った。
「……だが俺は生まれながらに思った…俺は何故、こんな見た目で生まれてきたのだろう。この姿にデザインされた意味は…?っとな」
「……」
「……そしてある時、雨宮吾郎の存在…そして、星野アクア…お前の存在を知った」
アクアはイラドから目を離せなくなっていた。
まるで死人でも見ているかのような目だ。
「お前の人生を知り、俺はお前の怒りを知った。苦しみも、葛藤も…」
「……」
「…だが、俺はお前が感情を押し殺しているのを見て、腹が立った。お前はもっと怒っていい!いつまで周りの目を気にしている!?」
いよいよ感情が爆発したイラドは、アクアの胸ぐらを掴んだ。
「昔のお前はそんなんじゃなかった筈だ!どんな犠牲を払っても復讐を果たす!そう言っていただろう!」
「……っ」
「忘れちまったのか!?あぁ!?お前の理想はなんだ!?」
「……俺の…理想…」
「……ウルス…」
「……」
アクアから手を離したイラドは少し息を整えていた。
だがその間に、アクア自身の決断も決まったようだ。
「……あぁ…思い出したぞ」
「……」
「……俺の理想…!」
アクアの右目のハイライトが黒く染まった。
そして湧き出る負のオーラ。
「……その瞳…やっとその気になったか…」
イラドはそれを確認し、アクアの変化に気が付いた。
「…ならお前のやる事は一つだ。次のデザグラで、必ずデザ神への道を切り開け…!」
「……あぁ」
「……」
イラドは満足したのか、四次元ゲートを開きその向こうに消えてしまった。
「……帰るぞ」
「…お、おう」
英寿は呆気に取られ少々戸惑っていたが、会った当初のアクアのような雰囲気を感じただけで、それ以外の変化は感じられなかった為、深くは尋ねなかった。
その後、苺プロの事務所に帰って来た一行。
かなとアクアの仲違いも解消され、苺プロには再び平和が訪れつつあった。
ただ、先程のイラドとの会話で、英寿が気になる部分があった。
《俺のこの外見は、あくまでデザインされたものだ。故に俺自身の意思に関係なく、この外見で生まれてきた》
「……」
本来、サポーターの外見はサポーター自身がレーザーレイズライザーを使って自分自身をデザインするものの筈だ
だから実年齢関係なく年若い見た目に出来るし、仮面ライダーの姿になるのも、それに近い能力の筈だ
だが奴の言い方的に、外見のデザインはあくまで他者からによるもの
サポーター自身にその能力が付与されていないのであれば、奴をデザインしたのは……
「……創世の女神…?」
「クッ…!フゥ……」
やっとの思いでアジトに帰って来たシック。
戦いで敗れ浪費した身体と、破損したレーザーレイズライザーを手に大きなソファに横たわった。
「……ん」
「……」
すると、ほとんど同時刻にイラドも帰って来た。
イラドは能面を外し、真顔のままシックを見た。
「……あれっ…あのお面外しちゃったんだ……まぁ、似合ってなかったけど…」
「……ひと仕事して来たって顔だな」
「……ふふっ…まぁね……君もでしょ」
「…まぁな」
イラドはソファの背もたれに腰掛ける。
「ふふっ…ホント……僕らの推しって、ろくでもないよねぇ…」
「……」
「…無策だし、無鉄砲だし、ノーデリカシーだし…夢見がちだし、高望みし過ぎだし、そのくせプライド強めだし…楽観的で、超頑固で……」
「……あぁ」
「……でも、不思議だよね…推しって」
「……」
「どれだけ思い通りになってくれなくても、不思議と嫌いになれない……むしろ応援したくなる…」
「……あぁ」
「……ホント…厄介だよ、推しは…」
「……そうだな…」
シックは戦いによる疲れか、眠りについた。
彼女に傷付けられてしまった、レーザーレイズライザーを抱えて。
「……さて…俺もサポーターとして、もうひと仕事するかな」
「あかね、次の仕事が決まったぞ」
「えっ、これ本当ですか!?」
そんなある日、黒川あかねの元に1本の朗報が降って来た。
「…アクアくん…また一緒にお仕事出来るね」
「いやー!取ってきたよ久々の大型版権!」
とある居酒屋の個室。
髪の右大部分を金色に染めたグラサン男、
「累計五千万部突破!アニメ映画も超絶大ヒット!泣く子も黙る人気マンガ『東京ブレイド』の舞台化企画!」
「あー知ってる知ってる。これ知り合いもアニメ観てハマってたよ。舞台って事は2.5次元て奴か」
「そうそう!だけど今回はクラムちゃんも参戦って事で〜!デザグラとのスペシャルコラボステージって感じにしたくてさぁ〜!」
「デザグラとのね〜…」
「そそ!予算もガッツリ取ってきたし!今回は派手にいくよー!ステージも面白いとこでさぁ!360°回転させて、CGを多用し原作の雰囲気を再現!裏方もいいとこ押さえておいた!」
雷田は企画書を堂々とクラムに見せつける。
ステージは円形上に広がる会場で、大弾幕自体が巨大な液晶になっているという構造となっているようだ。
「そして、舞台化にあたって『劇団ララライ』の協力も取り付けた」
「おー、アツいねぇ。あの金田一さんをよく口説き落としたもんだ」
「やっぱ予算の力よ。舞台はどこも懐事情厳しいから…あとはキャスティングなんだけど……ララライから黒川あかねはツモれそう。でも客層的にイケメンと美女は必須なワケ。あそこは若いキャスト少ないから。何人か外部の子引っ張ってこないとねぇ…」
雷田はクラムに含みのある笑みを見せる。
どうやらここは短なる企画照会の場ではないようだ。
「このへん強いのはやっぱクラムちゃんでしょうよ!デザグラにも携わってるし!なんか良い子居ない?」
「…居ない事はないけど?多分これから来る子達」
クラムも同じように含みのある笑みを見せつける。
「紹介しても良いけど、貸し一つだぜ?」
「いやいや!クラムちゃんが目を掛けてる子達の成長のチャンスをあげるってんだから、むしろこっちが貸し一つでしょ!」
「……」
「……」
「……んふ…ふふふ」
「…ふふふ」
「「ふふふふふふ…」」
暫しこの楽しい雰囲気は続き、クラムが切り出した。
「商談成立だな」
カシャ
とある休日、人気の少ないカフェに訪れたアクアとあかねは2人でパフェやクレープを食べるツーショット写真をスマホで撮影した。
「こんな感じでいいかな?」
「分かんないけど良いんじゃね?」
「とりあえず、これでファン向け彼氏彼女のアリバイは作れた。しばらくは安泰だけど」
2人はアリバイ作りの為、SNSへ投稿する用の写真を撮っていたのだ。
「例の件…もうそっちには話行った?」
「……『東京ブレイド』の話か?」
「そうそう!。お世話になってるララライって劇団が中心になってやるから、私にも話来てるんだ」
「……」
劇団ララライ……
《『劇団ララライ』。そこのワークショップに通ってから、彼女は身なりにも気を使うようになり……いい食事の場所を聞いてくるようになった》
《恋は人を変えるという。そこだろうね…アイが恋をしたのは》
「もちろんやる」
「だよね!私は「
即答するアクアに、あかねは嬉しそうに話した。
「2.5はBL需要が高いと思うんだけど、これはアリなのか?」
「原作が男女カップリング多い作品だから。もちろん女の子はそういう見方する人多いけど。「刀鬼」はサブキャラだけどラブコメ要素で男性からの指示も割とあるキャラかな。ヒロインキャラと相棒キャラのどっちと結ばれるかで毎週盛り上がってるよ」
「「刀鬼」の相棒キャラ……「つるぎ」か」
「あっちもそろそろ決まるはず。誰になるんだろうね…」
「私よ」
すると、突如2人の耳に見知った声が聞こえる。
「…有馬…と、なんであんたまで居る?」
「買い出しの連れだ、気にするな」
そこには私服の有馬かなと浮世英寿が居た。英寿の方は買い出し後であろう手提げバッグをいくつも抱えていた。
「そういや、あんたにもオファー来てたな。誰役なんだ?」
「俺は「
「リアルタイムの投稿は止めなさい。こういう投稿から悪質なファンに追いかけられてストーカー被害に遭う事もある。外での写真は全て予約投稿が基本」
SNSの投稿を見た有馬達が、近くに居たあかね達に注意しに来たのだ。
「また変なモメ事で周りに迷惑かけたいの?学習しないわね、黒川あかね」
「……かなちゃんがつるぎ役かぁ……共演は何年ぶり?てっきり役者辞めたんだと思ってた…今はアイドルだもんね?」
「……あかね?」
「ずっと板上に引きこもってお金にならない仕事してても仕方なくない?あっ、そう言えば最近恋愛リアリティショー出てたっけ…私生活切り売りして人気出てきたらしいじゃない?ヨカッタワネー」
「……有馬?」
2人が目を合わせた途端、急に2人の態度が高圧的になった。
普段穏やかなあかねはもちろん、普段サバサバしているかなですら、その変化に気付く程だ。
その違和感にはアクアも英寿も流石に気が付く。
「とにかく、お仕事デートの続きは場所を変えなさい。行くわよ、エース」
「お、おう…またな、カメレオ……」
不機嫌なまま去るかなと後を着いていく英寿。
席に残されたアクアは気まずそうにあかねを見る。
あかねは俯き、身体を小刻みに震わせていた。
「…有馬と知り合いだったのか」
「同い年で私達は子役の時からこの業界に居るから…それはもう……」
「…まぁ……仲良くやれよ?」
「出来ないよ。昔からやりたかった役を片っ端から持って行かれて…想像してよ…!」
しかしその震えは、怒りを通り越した何かを感じる。
「あの天才子役と同じ年に生まれちゃった役者の気持ちを……でも、今は負けない…!かなちゃんがピーマン体操とかふざけた曲出してる間も、私はずっと稽古してた…!」
「……」
「積年の恨みを晴らすチャンスがやっと来た…負けないぞ……ふふふふ…」
彼女もある意味、復讐に燃えているようだ。
「…役者ってどいつもこいつも……」
そんなあかねの姿を見て、アクアはつくづく思う。
「……」
「…絶対負けない絶対負けない絶対負けない絶対負けない……」ブツブツ
「……負けず嫌い多いな…」
英寿を眼中にも無いかなを見て、彼も思うのだった。
「かつて天才と呼ばれた子役と、今ままさに天才と呼ばれてる役者。ここをぶつけるクラムちゃんも上手くてエグいねぇ」
『東京ブレイド』の出演者の一覧を見る雷田は、改めてクラムのキャスティング能力に感心する。
「『東京ブレイド』の舞台…個人的にも楽しみになってきたなぁ…!」
私さ、ルビーももしかしたらこの先…
アイドルになるのかもって思ってて……
アクアは、役者さん?
ふたりは…どんな大人になるのかな…?
「……アイ…」
アイをあんな目に遭わせた奴が、芸能界に居る…
アクアは、電線に留まるカラスに見つめられながら、過去の記憶を甦らせる。
どんな手を使ってでも…必ず見つけ出してやる…!
ある物を握りしめ、それを握っていた掌をゆっくりと開いた。
その手には、薄く紫がかったIDコアが握られており、ライダーのクレストは、ウサギのような模様だった。
IDコアを再び握り締めたアクアは、その瞳のハイライトを真っ黒に染め、理想の為に未来を見据えるのだった。
その為なら…俺は…!
第二十九話「憧憬F:次なるステージへ」
次回
「『ソニックステージ』所属、鳴嶋メルトです」
「今回の舞台はデザグラとのスペシャルコラボステージ。演者同士によるエキシビジョン」
「今回下手な子居ないねぇ」
「皆、演技上手…良い舞台になると思う…」
「有馬…だっけ。遠慮しないで良いよ」
「あれを超える演技、俺はどう戦う…?」
第三十話「爛漫Ⅰ:役者というもの」