仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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以前登場したソルブラスターフォームのもうひとつの姿であるルナブレイドフォーム。
本編での立ち位置で言えばコマンドフォーム辺りでしょうか…
とにかく、1粒で2度美味しいフォームを作りたいと思い、全く新しいシステムのバックルを考えてみました。

因みにゴーストバックルはモンスターバックルのリデコアイテムで考えています。側面のボタンを押すとオバケの目がカッと開く、みたいな。

もしこの作品が地上波流れてたらおもちゃ展開エグい事になってるだろうな……(小声)



第三十六話「爛漫Ⅶ:月とスッポン」

《 SET 》

 

SET

 

「変身」

「…変身…!」

 

GHOST

 

MOONLIGHT SLAYER

LUNA BLADE

 

《 READY FIGHT 》

READY FIGHT

 

レプリカのデザイアドライバーで変身した両者は睨みを利かせ相手を威嚇する。

 

「……はぁッ!」

先に攻撃を仕掛けたのはダルゼ。

ゴーストスラッシャーを首の後ろまで回した状態で突っ込んで来た。

 

「はっ!」

ギーツもクレセントブレードですぐに応戦し互いの刀身を擦り合わせる。

 

「ふっ!はァっ!」

その刀身を弾くギーツ。

続けて空中で無防備になるダルゼにキックを見舞う。

 

「ぐあっ…!」

攻撃を受けたダルゼだがすぐに体勢を建て直し再び突っ込んでくる。

 

「同じ手は効かないぞ…!」

再び攻撃を弾こうとしたギーツ。しかし彼のカウンターは空を切った。

 

「…っ!?」

「おりゃっ!」

「なっ…!」

いつの間にか背後に回っていたダルゼに一撃を喰らう。

 

「…なるほど。ゴーストバックルの力は一時的に実体を無くす…ってところか」

実体が無い幽霊に因んだ力だろうと推察したギーツは再び向かって来るダルゼに刀を突き立てたがその剣先はやはり空を切った。

 

「はァ!」

「…そのバックルの力、一応使いこなしてるみたいだな……だが」

「はァァっ!…うわっ!」

ダルゼは背中を見せたギーツに渾身の一撃を喰らわせようとした。

しかし突如として眩い光が彼の視界を包んだ。

 

「……それも完全じゃない」

クレセントブレードから放たれる月光の嵐が、彼の視界を眩ませた。

 

「はっ!ふっ!たァっ!」

「ぐわぁっ!」

実体を消す余裕が無くなったダルゼに猛攻撃を仕掛けるギーツ。しかしその攻撃の一つ一つが洗練されており靱やかな身のこなしだった。

 

「くっ…!まだだ…!」

「……フッ」

 

 

「……」

なんかやってるし……

 

まぁ許可無しに模擬戦仕掛けても良いって言ったのは私だけどさ……

それにしても派手にやってるな……

 

ふたりの戦いをスタジオの廊下から覗き見ていたクロメは変なトラブルを起こさない事を願って外に出た。

 

「……さーてと、今日もテキトーにぶらつこ」

ナビゲーターの仕事は基本的にデザイアグランプリ以外には特に無い。そのくせシロメは忙しそうにしてるけど、多分サボってる

 

暇を弄んだナビゲーターがする事なんて決まってる

『推し活』だ

 

「……ん〜…また新しい写真集出たんかぁ…」

今日は近くの本屋で見つけた女優の写真集に手を伸ばした。ミドルの黒髪が良く似合う彼女はハイライトを輝かせた瞳をカメラ目線で向けていた

 

「クラムさんから貰ってるお小遣いもそんなに無いし……今回は一冊だけだな」

本当は保存用観賞用で買いたかったけど

 

「…ふふ〜ん〜……」

そんなこんなで私は無事推しの写真集をゲットした

いつか本人のサインもまた貰いたいものだ

 

「……」

本来ナビゲーターとは、仮面ライダーに対しては中立な立場にいる

勝っても負けても、生きても死んでも、彼らに対する立場は変わらない

 

でも、その概念を壊されてしまったのだから

仕方の無い事だ

 

全ては15年前

あの日が、私の全てを変えた

変えられた…

変えられてしまった……

 

「……はぁ」

因果は巡る。そういう言葉を残したくなる

私は別にポエマーじゃないから、こんな事独り言のように並べるけど…

 

クロメは懐から黒いカメレオンのキーホルダーを取り出した。

結局あの後、彼女と一緒に取った戦利品だ。

 

やっぱり推しの居る人生は幸せだ

推しという存在が居るだけで、そういう気持ちになれる

そういう気持ちにさせてくれる

推しとはそういう存在だ

 

「その気持ち、分かるよ〜」

「……」

「推しが居ると、とっても幸せな気持ちになれるよね〜」

「……」

「…だけど同時に、とっても哀しい気持ちになる……そうでしょ?」

「……シック…」

サポーターのシック…

よく「哀しい」という言葉を口にする。確かアクアくんの妹をサポートしてた筈…

 

正直私は彼が苦手だ

何を考えているのか分からない

彼の哀しい笑顔の奥底には、黒く深い闇が潜んでいる気がする

 

「……なに?」

「いやぁ〜…推しの居る気持ちを共有しようと思ってね〜……一緒にお茶でもどうだい?」

「遠慮しとく。これから業務に戻らないと…」

「そっかそっか!それじゃあ仕方ない……」

「……」

多少の嘘は吐いたけど、上手く回避出来るか…?

 

「……じゃあ代わりに…ナビゲーターちゃんにひとつ、お願い事があるんだけど…」

「……お願い事…?」

「…うん!……僕の“お願い”、聞いてくれるかな?」

「……」

 

 

「たぁっ!」

「ふっ…!」

ダルゼとギーツの戦いは、若干ギーツが優勢に立っていた。

攻撃を仕掛けるダルゼだったが、それを上手く否され、カウンターに転換されてしまう。

その都度実体を消し難を逃れているが、防戦一方となってしまっていた。

 

「どうした…!この程度か…!?」

「クッ…!はぁぁッ!」

ダルゼは剣を大きく振り上げて今度こそ渾身の一撃を叩き込む。

 

「…っ!」

「……はぁッ!」

しかし、その攻撃はギーツに簡単に受け止められ、またもや弾き飛ばされる。

 

「クッ……」

「……お前の剣は軽い」

「…っ!」

尻を着いたダルゼに、ギーツはクレセントブレードの刃先を向ける。

 

「…今のお前からは、勝とうとする意志を感じない。勝とうとする工夫も、情熱も……だからお前の剣は軽い」

「……」

「もっと本気で来い。その程度で俺に勝つつもりか?」

「……」

ダルゼは暫くの沈黙の後、彼なりの答えを出した。

 

「……別に…元々勝つつもりじゃない」

「…は?」

これが彼の正直な答えだった。

 

「俺があんたに勝てない事くらい分かってる。俺はただ、少しでも本番の感覚を掴みたくて……」

「……じゃあお前は…なんでこの舞台を受けた」

「……えっ?」

ギーツはここで改めて彼に問いかける。

 

「この舞台を受けて、お前は何を望んだ…?この舞台の先に何を見た…?お前の理想の世界はなんだ!?」

「……」

ギーツの心からの問いかけに、ダルゼは俯きながら答えた。

 

「……今の俺に…理想なんて無い」

「……なに…?」

「知ってるだろ?俺が『今日あま』のドラマで散々やらかして、製作陣や役者のみんな、原作者の先生にめちゃくちゃ迷惑かけて……あんなすげぇ作品を…すげぇ作品になる筈だったあのドラマを…俺がダメにしちまった」

彼は後悔していた。

そしてあのドラマでの撮影は、彼のこれまでの糧にもなっていた。

しかし、それは決して前向きなものでは無かった。

 

「そんな俺が……理想を語っていい筈無いだろ…」

「……」

「だけど何とかこの業界に必死に食らいついて、この舞台のオファーを貰った時もすげぇ不安だった…でも、今の俺とあの頃の俺は違うって、証明したかったんだ……だから少しでもこの舞台が良くなるように…!少しでも多くの人が、この舞台が良かったと思えるように…!そうやって少しづつ……」

「もういい…」

「……え?」

声色を変えたギーツは変身を解き、その時の彼の表情は、心底呆れた表情をとっていた。

 

「…俺とお前は似た者同士だと思ってたんだがな……とんだお門違いだったようだ」

「……え…?」

「理想が無い…?じゃあお前は一体何の為に戦ってるんだ…?」

「…だ、だから…俺は、以前の俺を超える為に……」

「そうじゃない!」

ダルゼに睨みを利かせる英寿。

彼の胸元を掴み顔を掴み寄せる。

 

「これまで戦ってきたライダー達は、みな自分の理想や他人の幸せの為に戦って来ていた。全ては世界をよりよくする為、未来に進む為に……その為だったら、命だって差し出す覚悟で」

「……」

「だがお前はどうだ…?理想も無い、覚悟も無い。そんな奴が戦いに挑んで…他の死んで行ったライダー達はどう思う…?お前は!命を差し出して散っていた仮面ライダー達の覚悟と勇気を踏みにじってるんだぞ!?」

「…っっ」

これまで見て来たライダー達の散る姿を英寿は思い出していた。ここまで鮮明に思い出すのは、きっとイラドによるフラッシュバックも影響しているだろう。

 

「理想を叶える為だったら自分の命すら厭わない…それが仮面ライダーだ!だがお前は過去の自分に縛られ、見えない何かに囚われている。そんなのは仮面ライダーじゃない……お前は仮面ライダー失格だ…」

ダルゼの胸ぐらを強引に突き放す英寿。

彼に背中を見せ放心状態の彼を更に詰める。

 

「理想無き思想に意味なんて無い。俺は俺の理想の為に戦う」

「……ま、待ってくれ!俺はまだ…!」

「稽古は終いだ…後は本番でケリを付ける。もっとも、俺がお前に負ける事は無いだろうがな」

「……」

その後無言でスタジオを去る英寿。

 

やっと変身を解いたメルトは、取り外したゴーストバックルを力強く握り、彼の言葉を反芻していた。

 

《お前は過去の自分に縛られ、見えない何かに囚われている》

 

《お前は仮面ライダー失格だ…》

 

「……」

分かってんだよ…そんなの……

 

あいつと()った時から、ずっと……

 

 

「……」ジーー

「…何睨んでるのよ」

「睨んでないんですケド」

「ウソつきなさい。いつも眠たそうな目が私の時だけ異様にキッとしてるでしょ」

ある日の稽古前。

楽屋で有馬かなと黒川あかねによる口問答が始まっていた。

 

「誰に対してもこうなんですケド!かなちゃんが自分の事特別な存在だとか思い上がってるからそう感じるだけじゃない?「私を誰だと思ってるのー天才子役よー」って」

あかねは頬をプクーッと膨らませて拗ねた表情をとる。

 

「過去の栄光にみっともなくしがみついて…今の自分を磨く努力はしてるの?」

「…おやおやまぁまぁ…随分と口が悪くいらっしゃってまぁ……」

しかし、あかねのいつもの煽りに対してかなは余裕の表情だった。

 

「さぞかし私の事が嫌いなんでしょうねぇー…大嫌いで大嫌いでしょうがないからそういう事言う……」

かなはそう言いつつ自分の荷物から何かを探して取り出した。

 

「そうなのよね?黒川あかねちゃん?」

「…!」

かなが取り出したのは一冊の特集。

そしてそれを見たあかねは声にならない驚きを見せる。

 

「それっ…!」

「ん?なんだそれは」

楽屋に来た英寿とアクア。英寿はかなの持っていた特集を見て問いかける。

 

「ちょっとねー小耳に挟んじゃったのねーかの天才役者と名高い黒川あかねが演劇を始めるきっかけになった役者が居るってぇー」

「やめて!なんでそんなの持ってるの!?」

「まぁ〜?あんなに凄い役者さんの憧れの人ってどんな人かと気になって、黒川さんが子役の時初めて演った舞台のインタビューがあるって聞いて、当時のバックナンバー通販で買ってみたらね…そしてらぁ……あれっ!?あっれ〜〜!?」

かなは特集のページをペラペラと捲り、わざとらしい表情でそのページをあかねに見せびらかした。

 

そのページには大々的に当時のあかねがかなに憧れて演劇を始めたという旨が記されていた。

 

「憧れの人って私!?あかねちゃん私に憧れて演劇始めたのぉ?」

「……っっ」

かなの猛攻に下唇を固く噛んで恥ずかしがるあかね。

それに追い打ちをかけるようにかなの攻めは加速する。

 

「やだもーっ!私が大好きならそう言ってくれたらいいのにーっ!ごめんねぇ!?私は貴方の事全然好きじゃなくてぇ!一方通行の想いでごめんねー!?」

「容赦ねぇなお前」

容赦の無いかなの煽りにすかさずアクアがツッコミを入れる。

 

「誰!?誰が教えたの!?ララライの誰かでしょ!」

「…すまん」

「姫川さん…っ…!」

すんなり手を挙げた姫川に、流石に強く言えないあかねだった。

 

 

 

「あーもうむかつく!なんなのあの人は!!」

「まぁ有馬は口悪い所あるからな」

「悪いのは口じゃなくて性格だよ!昔はもっと酷かったんだから!」

一旦かなから離れたあかねとアクアは引き続き彼女の愚痴が炸裂していた。

 

「いや、俺も子役の有馬と共演した事あるし」

「なら味方してよ!性格終わってたでしょ!?」

「いやそんな……」

ここでアクアはある事を思い出す。

 

「そういえば殺してやろうと思ってたわ」

「でしょ!」

一切淀みのないその言葉がアクアの腹から声を上げた。

 

「私の時だって……」

「……?」

「…もう稽古が始まる。行こう」

 

 

 

「あー気分良かったわねー!見た?あのカオ!本気で悔しそうだったわね!」

「お前、夜道には気を付けろよ」

英寿とかな、そしてメルトもあかねから離れて彼女の自慢げな感想を聞いていた。

 

「こんな使い方するって知ってたら教えてなかった」

姫川も反省している様子だった。

 

「なんでそんな黒川に突っかかるワケ?仮にも同じ事務所のアクアの彼女なんだしさ、上手く──」

「ビジネス上のね?」

「─やった方が……」

かなの目に気圧されるメルト。

 

「まぁ理由は色々あるけど、こんなの同年代の意地よ。別にあかねと共演するのは今回が初めてじゃない。なんでか演る度に揉めてきたのよ。デザイアグランプリでも何度も互いに競い合った。あかねと私は演技の向き合い方から違うし、役柄に対するアプローチも、良い演技っていうものの考え方も違う」

かなは壇上で稽古を続けるあかねの演技を目で追った。

 

「あの子の演技からは、「私が正しい」「貴方は違う」。そういう圧を感じるワケ。ほんとーにムカつく…天才子役も、第二次性徴期過ぎたら只の一般人て言われ続けて、実際私にはとんと仕事が来なくなって、黒川あかねは天才とか言われて今まさに評価されていて、このままだとあの子が正しかったってなるじゃない」

「……因縁の相手って事だな」

「…安っぽい言い方したらそうなるわね。でも安心して…私はあの子に演技で負けてるなんて、一度も思った事ないから」

そう言い残し、かなも壇上に向かう。

あかねの元に一直線に向かい、その鋭い視線を送る。

 

「…実際お前から見てどうだ?」

「なにが」

「マーリとカメレオ、どっちの方が優秀だ?」

「…二人は子役からやってるベテランで、どっちも上手いしデザグラでの戦績も悪くは無い。優劣つけるだけ野暮だと思うけど」

「そこをあえて言うなら?」

「……」

英寿とメルトは姫川に二人の事を問い詰める。

 

「黒川は異質な演技するし、天才って言われるだけある。だけど有馬の方が、演技というものに執着が強い」

「……」

姫川の推察は正しかった。

そしてその考えは、英寿も納得させる。

 

「まぁどっちに転んでもおかしくない。本番のし上がり次第って所だろうけど、今回は有馬が勝つ」

姫川はそういうと、メガネを外し続けて壇上に向かった。

 

「…俺が居るから」

姫川は壇上のアクアと向き合い、互いに睨み合う。

ここもある意味因縁と言える仲だ。

 

「……今回は布陣が分かりやすくて助かる」

「…え?」

「カメレオとマーリ。姫川とウルス。互いに何かしらの理念や信念があってこの舞台に挑んでいる…これは本番になるまで、勝敗が別れるだろうな……まぁ」

「……」

「俺とお前は既に、もう勝負が決まったみたいなものだろうけどな」

「……っ」

英寿はメルトを煽ると共に威圧を掛ける。

彼も壇上のアクアやあかねの方に向かい、かなと姫川とすれ違う。

 

「俺もお前に負けるつもりは無い」

「……」

すれ違い様、英寿は姫川に語りかける。

 

「このゲームのハイライトは、俺が頂く」

「……」

無言で去る姫川。しかしそこには確かなライバル視を感じていた。

 

「有馬。このあと稽古付き合ってくんね?」

「勿論。私から言おうと思ってた所」

「……」

 

「アクアくん、エースくん時間が足りない。早く監督さんの所行こう」

「そうだな」

「あぁ」

 

かくして、各々の思惑が策略する中互いの理想がぶつかり合う。

 

「……」

「……」

 

絶対負けない!

 

そうして日々は流れ…

舞台『東京ブレイド』公演初日がやってくる……

 

 

「…………アイ……アイ……」

深夜の苺プロの稽古場。

アクアは独り、前日を迎えた舞台の稽古を続けていた。

 

そしてその合間に、アイの写真を眺めるルーティンを繰り返す。

 

「…アイ……っ!!」

しかし、どうやってもこの激情は抑えられない。

 

「……っ」

「…よぉ。こんな夜中まで稽古とは、関心だなぁ」

すると、背後に人が立っていることに気が付いた。

イラドはアクアの様子を見て、嘲笑うかのようにしていた。

 

「本番は明日じゃなかったのか?寝不足はお肌の大敵だぜ?」

「……」

「……煮えたぎる様な怒りと後悔」

「…っ」

「凍りつく様な悲しみと復讐心」

「……」

イラドは返事の無いアクアに容赦なく語りかける。

 

「これまでの稽古の中で、幾度となくその情景と感情に触れてきた筈だ。お前は俺達の怒りから逃げる事なんて出来ない……」

「……」

それは同時に、己の怒りの権化も語りかけてくる。

彼を呪う、追い詰める言葉を。

 

「お前がしっかりしていれば…」

俺がしっかりしていれば…

「お前の母親は死なずに済んだ…」

アイは死なずに済んだ…

「お前のせいだ…」

俺のせいだ…

「お前が星野アイを…!」

俺がアイを…!

 

「…ウッ!……っっ…!」

アクアは必死に口を抑える。

身体中から込み上げてくる何かを抑え込む為だ。

 

「お前は理想の為なら、どんな犠牲も厭うな」

「……」

「そうでなければ、俺が一瞬で引き戻す」

「……っ…」

顔を上げたアクアの瞳のハイライトは、真っ黒に染まっていた。

 

「……どうやら案外、すぐに見られるかもな。お前の理想の世界を…」

「……」

「…楽しみにしてるぞ。明日の舞台も、お前の理想も」

 

いつの前にか姿を消したイラド。

再び1人になったアクアは、鏡に映った苦しむ自分の姿を見て思うのだった…

 

……これで良い

 

 

 

ナビゲーターのプライベートは

業務以外では基本的に尊重される。

しかし、他者からの依頼があった場合は

それに応じなければならない。

 

 

第三十六話「爛漫Ⅶ:月とスッポン」




次回

「なんだこれ……光って…!」
「全ての盟刀から“最強”と認められた者は、国家を手にする」
「負けねぇぞこらぁ!」
「アンタとまた演るの楽しみにしてたのよ」
「私も、かなちゃんと演るの楽しみにしてたよ」
「そして掴み取る…このゲームのハイライトをな」

第三十七話「爛漫Ⅷ:開幕!目覚めの盟刀」
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