仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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第三十九話「爛漫Ⅹ:二人のエチュード」

A. あなたにとって、演技とはなんですか?

 

「私にとって演技は、自分を表現する為のものだと思います。私達役者は、本当は孤独で臆病で、自分をさらけ出すことを躊躇いがちです。ですが、演技だったらそれを全部さらけ出せます。私にとっての演技は、この業界で生き残る為の武器です」

 

「演技は私にとって、みんなから認められる為のものだと思います。誰しもが人からの評価を気にして、虚勢を張って背伸びして、諸刃の剣で相手を蹴落とそうとする。でも自分を完璧に演じる事が出来れば、そんな凶器から身を守る事が出来る。演技は私にとって、この業界で生き残る為の盾です」

 

A. あなたにとって、恋とはなんですか?

 

「わ、私はその…ちゃんとした恋愛はまだで……でも今の彼氏とは、良好な関係を築けてます!彼は用心深くてたまに卑怯で、意外と繊細で人並みに傷付いて…心配性なくせに他人に心配かけたくなくて……優しくて朗らかで、たまに子供っぽくなるところが、好きです…」

 

「そう、ですね……これは昔の話なのですが…すっごいムカつく奴が居て、私はその子をギャフンと言わせる為に色々頑張って…いつしか頭から離れられなくなってて……再開した時、彼に会った時は胸が踊った…でも生意気なのは変わんなくて、嘘吐きで頑固で負けず嫌いで、不器用で鈍感で……優しくて人の痛みに敏感で、こんな私を見つけてくれるところが好き……でした!これ、昔の話ですよ!?」

 

では最後の質問です

A. あなたにとって、理想とはなんですか?

 

 

新宿クラスタ、渋谷クラスタ。

ふたつの徒党が遂に衝突する。

 

「懐かしい顔ぶれですね…」

「匁!」

「貴方もここまで辿り着くとは思いませんでしたよ?キザミさん…僕よりも弱い貴方が…」

「俺は確かに弱いさ!けどな…仲間が居るからここまで来れた!決着付けるぞ、匁!」

「キザミ」と「匁」は再び対峙する事となる。

互いに剣を抜き、刃先を向ける。

 

「雑魚共は任せた…俺は敵の大将を潰す。この戦、最速で片付ける」

「お前強そうだな!その実力試してやるよ!」

「刀鬼」と「ブレイド」も対峙し、相反するふたつの組が向かい合う。

 

「「変身」」

「「変身!」」

互いの盟刀を掲げ、仮面ライダーの姿へと変化する。

 

仮面ライダーツルギと仮面ライダー匁、仮面ライダーブレードと仮面ライダー刀鬼の戦いが始まった。

 

「……はぁ…はぁ」

そんな中、一人敵陣の奥まで進んで来た「ツルギ」は道に迷っていた。

 

「あれ?無我夢中で走ってたら、私だけ着いちゃった……これは、私が「鞘姫」を倒してアイツらをギャフンと言わせるチャンスでは!?」

一人テンションが上がる「ツルギ」。

 

「出てきなさい!“鬼の姫”!」

「ツルギ」がその名を呼ぶと、彼女は姿を現した。

 

「アンタが「鞘姫」ね!……っ…混血…!?」

「貴方も混血は純血に劣ると思っているのですか?」

「……っ」

 

相も変わらず、私の演技が正しいみたいな顔してくれて…!

何がそんなに気に入らないのかしらね

 

「刀を抜きなさい!」

「…貴方には…これで充分です」

「鞘姫」は剣を鞘からや抜くこと無く戦意を魅せる。

 

「…舐めて…くれて!!変身!」

 

負けないよ、かなちゃん

私は貴方が居たからここに居る

昔の事なんて貴方は覚えても居ないんだろうけど…

 

ずーーっと、ずっと

何年も…

私はこの時を待っていた!

 

 

有馬かなは、当時国民的天才子役として一世を風靡していた

そのきっかけとも言えるドラマは、私は何周も何周も見ていた

当時の私は、子供ながらに彼女の演技に感動しては、彼女の演技を巻き戻して見ていた

 

「巻き戻し!巻き戻してママ!」

「あかねは本当にかなちゃんが大好きねぇ」

「うん…だってすごいんだよ…!10秒で泣ける天才子役なんだよ…!」

彼女の肩書きとも言えるその二つ名を、私は他人事ながら誇りに感じていた

 

「かわいくてお芝居上手でっ、おとなあいてでもハキハキお喋り出来てっ……すごいなぁ…すごいなぁ…!」

私は有馬かなを尊敬していた

それはこれからも覆ることの無い事実

 

「なら、あかねも演技やってみるか?」

「あらっ良いんじゃない?こないだ児童劇団のパンフレット貰ったのよね」

「えっ…えっ…」

そして、転機はこの時訪れた

 

「わっ…わたしには出来ないよぉ……わ…わたし人見知りだし……こわがりだし……なんにもできないしぃ……」

「そういう引っ込み思案な所も治るかもよ?」

「そうそう、かなちゃんとお友達になれるかもしれないぞ?」

「…えっ…?」

私の心は純粋だった

 

かなちゃんとお友達になれるかもしれない。

当時の私を児童劇団に入団させるには、十分すぎるほどの理由だった

 

「かなちゃんとお友達になれたら……幸せで死んじゃう…!」

 

そこからは努力の日々だった

日々の発声練習。柔軟体操。苦手だったピーマンだって克服しようと頑張った

挫折も味わった。何度演技を辞めようかと悩んだ

でもその度に、彼女の笑顔が私を励ましてくれた

 

かなちゃんみたいになりたくて

たくさん頑張って

かなちゃんに近付くために

 

それを目標に……

 

本当に大好きだった

 

初めてかなちゃんと会った、あの日までは──

 

 

その日はとあるドラマのオーディションの日だった

私は勝負の日、必ずかなちゃんと同じようなベレー帽を被っていた

運営の人によれば、このドラマにはかなちゃんもオーディションを受けに来るらしい

 

やっとここまで来た…

私は胸を膨らませて会場へと向かった

 

会場に付いた私は、母達が雑談をしている間に飲み物を買おうと自動販売機に手を伸ばしていた

 

そんな時、大人の手が私の押そうとしていたボタンを押した

 

「あっ…ありがとうございます!」

「かなちゃん、緊張してるの?」

「あっえっと……」

この帽子を見たからだろう。男性は私をかなちゃんだと勘違いしていた

 

「わたしは……」

「安心して、かなちゃんを選ぶ事はもう決まってるから。これ、形だけのオーディションだから」

「……え?」

私の話を聞かない男性は、自分の言いたい事だけを口にしていた

 

「かなちゃんもリラックスして──」

「私がどうかしたの?」

そんな時、彼女の声が後ろから聞こえた

 

「あれ…?かなちゃん…?」

「…っ!」

かなちゃん…!ほんもの…!

 

間近で見たかなちゃんは、いつもより一層可愛く見えた

 

「やっべ……」

男性はどこか気まずそうに私の元を後にする

 

2人きりになった私は、これまでの想いを伝える事にした

 

「えっと……わたしかなちゃんのファンで……」

「…みたいね」

「……えっと…あはは……あの人、変な事言うんだよ?」

「……」

「このオーディション、かなちゃんを選ぶ事はもう決まってるって……」

「……ふぅん…」

「…何かの間違いだよね?かなちゃんはそんなズルしないよね」

「してたらなんなの」

「……」

彼女の口から、聞きたくない言葉が出て来た

 

「知らないなら教えてあげる。こういうの出来レースって言うの。一応オーディションしたって体裁で箔を付けるけど、本当は最初から私を選ぶ事も全部決まってるのよ」

「…かなちゃんは……それでいいの?」

「良いに決まってるでしょ、仕事貰えるんだから」

「オーディションて良い演技した人を選ぶものでしょ?演技を見る前から…」

「分かんない子ね…!」

かなちゃんは振り向く事もなく声を荒らげていた

 

「こんな端役、そこそこ演技出来てればそれで良いの!だったら知名度ある私を使うのは普通の事!要はお金になるかどうかだけ!良い演技する子役より、有名な子役を使う方が視聴率が取れる、だったらそっちの方が良いでしょ!演技なんてどーでも良いの!!」

「……」

「…ハァ…ハァ」

全てを吐き出したかなちゃんは、俯いたままだった

 

「……ちがうよ…ちがうでしょ?かなちゃんは本当はそんな事思ってないでしょ?演技がどうでも良いなんて…だってかなちゃんは──」

「分かった様な事…!なによこの帽子!!」

突然振り返ったかなちゃんは、私の帽子を振り払うように飛ばした

 

「……っ」

「馬鹿みたい!私はアンタみないなのが一番嫌い!」

「……」

「…私の真似なんかするな…!」

 

自然と涙が溢れてくる

その後のオーディションが上手くいく筈もなく、私はショックで暫く演技が出来なくなっていた

 

そんな時だった……

 

《君の理想の世界を叶えてみない?デザイアグランプリ!エントリー募集中!!》

 

「……デザイア…グランプリ…」

 

 

「…わたしを…デザイアグランプリにエントリーしてください」

「……すまないね。まだ身体的に成熟していない10歳未満の子供をエントリーさせる訳にはいかないんだ。デザイアグランプリにはそれなりの危険が伴う。10歳以上になったら、また考えてみるといいよ」

「……お願いです…どうしても叶えたい“りそうのせかい”があるんです…」

「……」

「……どうして?…どうしてかなちゃんはあんな事言ったの…?」

「……」

「教えてください!どうしてかなちゃんは……!」

「……君はまだ幼い。今からでも、それを知る為の力を身に付ける事は出来る筈だよ」

「……えっ?」

「デザイアグランプリはあらゆる理想の世界を叶えることが出来る。しかし、人の心理にまで触れる事は出来ない。ならばそれを知る方法はただ一つ……君自身が、彼女の事を知ろうと努力する事だ」

 

わたしには分からなかった

分からないから、沢山勉強したよ

 

 

 

「はぁぁっ!」

「……」

今なら、かなちゃんがどうしてあんな事言ったのか

ちょっとだけ分かるよ

 

「クッ…はぁっ!」

「……」

怖かったんだよね?

 

ちょっとずつ減っていく仕事

歌とかの方がお金になって、大人がそれを褒めてくれるから……

自分を見て欲しかったんだよね?

必要とされたかったんだよね?

 

《星は一人じゃ輝けない。私は、星を照らす存在になれたらって思うんです》

 

周りと歩幅を合わせて

息を合わせて

周りが求める仕事をちゃんとこなして

 

皆と一緒に、生きていこうと思ったんだよね?

 

そんなの駄目だよ?

 

そんな演技、違うよ?

私が大好きだったかなちゃんは、もっと身勝手で圧倒的な役者だったよ?

 

星を照らす存在なんかじゃない

自分自身が眩しく輝く太陽みたいな演技してたよ?

 

今のかなちゃんは嫌い

大嫌い

 

周りの大人に潰されちゃったんだよね?

皆と合わせろって

 

かなちゃんがするべき演技は、もっと身勝手でかっこよくて、凄い

 

周りを食べちゃう様な演技でしょ?

周りに合わせてちゃ駄目

周りに合わさせる位じゃないと

 

「……っ」

「……」

見ててね

私も、ちょっとだけ出来るようになったんだよ?

 

周りを食べちゃう様な演技

 

「……変身」

「……っ」

 

私は私が一番目立つ様に戦う!

だから、一緒にぶつかってきてよ!

 

 

盟刀・花蓮(かれん)を鞘から抜いた「鞘姫」は仮面ライダー鞘姫へと姿を変えた。

 

その長い刀身を駆使した戦いで、観客を魅了する。

 

「盟刀・花蓮、一ノ刃…百花繚蘭!」

まるで花びらが舞うように、彼女の動きに皆圧倒されていた。

 

「……っ」

これだけの役者が居る中で、全員が平等な演出の場面なのに…

間違いなく、今この子が主役だ

 

「クッ…はっ!」

「……」

楽しい演技してくれるじゃない

まぁ良くも活き活きと

 

「盟刀・恋華!一ノ刃!籠蝶恋雲!」

「盟刀・花蓮、三ノ刃、仁面桃花」

「はぁぁっ!」

「…ふっ!」

そう、勝負したいのね

それとも一緒に踊りたいの?

 

それはとても楽しそうな提案だわ…!

 

「コレで決める!」

私もアンタと白黒つけ──!

 

《有馬かなね〜…顔は良いけど、どの役やっても主張強いんだよねぇ》

 

《有馬さんはそのままで大丈夫だよ!…でも、もうちょっとだけ周りにレベルを合わせても……》

 

《正直、有馬かなって子役ん時が一番可愛かったよなぁ》

 

「……」

…………

 

「……っ?」

なんで急に……

 

かなは自身の演技を抑え込むことで、前に出たあかねの存在感を更に大きくさせた。

黒子のように存在感を消し、舞台装置に徹する。

これが有馬かなが芸能界で生きていけた最大の理由、それは「使いやすい役者」を演じる事だった。

 

「……」

そう、これが正しいの

黒川あかねが良い演技をするなら、コッチはそれを立てる演技をしてあげるべき

作品が良くなるのが皆の幸せ

 

自我は要らない

これが私の演り方

 

《星は一人じゃ輝けない。私は、星を照らす存在になれたらって思うんです》

 

『ほら』

 

『照らしてあげるから』

 

『もっと輝きな』

 

「……っ」

違うよ…そうじゃない

どうしてそんな演技をするの?

 

私はかなちゃんと真正面から演りたかっただけなのに

そんな演技させるつもりじゃなかったのに……

 

 

「…私が間違ってたのかな……」

シーンが一区切りし、あかねは舞台裏で嘆いていた。

 

「これじゃ私がただ出しゃばっただけじゃない……自分勝手で、わがままで…ごめ──」

「それで良い」

「…っ」

そんな彼女に、アクアが声を掛けた。

 

「有馬の奴、腹立つ演技してんな。小器用に自分が作品の質高めてるみたいな顔して…」

「……」

「あいつは自分を分かってない。有馬は──」

 

《他の役者の大根ぶりが浮き彫りになってぶり大根でしょ!》

 

《それでも、光はあるから……》

 

《ありがとうございますぴえヨンさん!》

 

《ここからが私たちの、ハイライトよッ!》

 

「私を見ろって顔してる時が、一番輝いてるのに」

「……」プクー

「有馬に勝ちたいって言うならこのままで良いけどな」

「…そういうのじゃないの分かるでしょ?」

アクアはあかねを煽るように語りかけた。

あかねもそれを分かっていたかのように応えた。

嘆いている暇なんて無いと。

 

「私が勝ちたいのはそういうかなちゃんじゃない。本気のかなちゃんに勝ちたいの」

「…そうか」

そんな彼女の顔も、本気そのものだった。

満足したアクアは目を閉じながら微笑んだ。

 

「だったら前に引きずり出すぞ。俺達で」

 

 

 

デザ神になればあらゆる理想を叶えられる。

しかし、人の心理にまでは

干渉する事は出来ない。

 

 

第三十九話「爛漫Ⅹ:二人のエチュード」




次回

「お前ならどんなアドリブだろうと合わせられるだろ?」
「私を誰だと思ってるの?」
「カントク、この子をお願い」
「本当のお前はなんだ?本当のお前は、どんな演技がしたい…?」
「俺も有馬の演りたい芝居を見てみたい」
「アクア!アンタが悪いんだからね!」

第四十話「爛漫XI:悪魔の微笑み、天使の囁き」
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